第194回 「生態形成の時代」
謹賀新年
昨年は、アベノミクス、株高、五輪招致で曙光が射し、「共感」がキーの年となりました。一昨年前、パナソニックが7650億の赤字、デフレ、円高、株安といった状況から見ると潮目が大きく変わった一年でした。
新たな年を迎え、皆さんどんな夢を抱いているでしょうか?
1995年、アマゾンを立ち上げた起業家ジェフ・ベゾスは、インターネットの黎明期にネット書籍販売店を開設した頃、「私は、世界最大の小売業になりたい」と、夢をよく語っていたといいます。
アマゾンは、本、CD、DVDなどの商品でネット通販ポータルを拡大し、今では、家電、カメラ、パソコン、玩具、化粧品、スポーツ用品、ペット用品、ファッションとあらゆる商品を取り扱う世界有数の小売業になっています。
ジェフ・ベゾスは、成長の打ち手として、世界での利用者にクレジットカードの登録をさせ、商品販売代金の回収帳合システムを拡充しました。
その後、靴のオンライン小売店ザッポスを買収し、ファッション、バッグ、ジュエリーといった感性商品を領域に取り込み、返品自由を可能にする物流を強化する為に、自走式ロボットシステム開発のキバ・システムを650億円で買収しています。
ジェフ・ベゾスが描いた枠組み形成が、アマゾンの成長の大きな原動力になっています。
アマゾンのジェフ・ベゾスが育ったシリコンバレーを中心とした西海岸では、アマゾンだけでなく、アップル、グーグル、ヤフー、マイクロソフトといった世界企業が誕生し、今もなお多くのベンチャー企業が創生されています。
その背景に、シリコンバレーには森のような独自のエコシステムが整っていると考えられています。
エコシステムとは、複数の企業が商品開発や事業活動などで、業界の枠を超え広く共存共栄してゆく仕組みの「生態系」のことをいいます。
木や、水や肥料や鳥たちの営みのサイクルで森が育ち、大きくなると、様々な動物や虫が集まり、天然の雨も降って、さらに森が拡大されていきます。水が循環するから生態系が保たれ、森が豊かになります。
こういった様々な生態インフラ網による起業や成長環境が整っていることが、企業成長には重要な要素です。
ジェフ・ベゾスは、世界最強の小売業を目指す夢を形にするには、「生態系を形成していく」ことにあると考え、手を打ちました。
日本では、2006年の頃、楽天の三木谷さんが、「楽天経済圏」という言葉を打ち出し、楽天市場、楽天トラベル、楽天ブックス、楽天オークション、楽天イーグルス、楽天ウェディング、楽天銀行、楽天証券、楽天カード、楽天不動産、楽天ソーラー、楽天でんわ...と、個人の人生の中でインターネットに関わることは、すべて取り組んでいこうと企業生態系を描き、グループで形成しています。
リアル世界をネットにそのまま持ち込むのではなく、ネット特性を生かした生態系を形成することで競争優位に立ち、圧倒的勝者になる時代の幕開けを迎えました。
皆さんのこの一年が、健康で輝きに満ちた一年でありますように。
本年もどうぞ宜しくお願いします。
2014年 元旦![]()
第193回 「共創」
アベノミクスで染まった2013年も、あと一ヶ月となりました。
今年度の新規株式上場市場は、上場企業の初値がほとんど公開価格を上回り、昨年度より3割増え54社が上場し、市場から3800億の資金を調達する見通しです。
来年は、LINEを始め70社を超える企業が上場すると予測され、IPO市場が復活してきました。
日本の活力の源泉となるIPO企業が増え嬉しいことですが、注目されたベンチャー企業が、一転して転落し短命化していることが気になります。
企業の栄枯盛衰には、アンビジョン(大志)サクセス(成功)アロガンス(傲慢)ディクライン(衰退)といった段階があります。グリーなどのゲームIT業界は華々しい成長を遂げましたが、一気に踊り場に入りディクラインに陥る変転著しい状況下にあります。
ここ数年のディクライン(衰退)企業の共通項として、シャープの様に自前主義に固執し、共創しなかったことが要因と考えられます。どんな事業にも、必ず寿命があります。
家電業界のようなコモディティー化した分野では、軒並み価格の競争に至り利益を失っていきます。
企業のサスティナブル(ゴーイングコンサーン)には、新たな成長エンジンを創り続け、パートナーとビジネスを積極的に組んでいくことが欠かせません。
新たな商品が生まれ事業が育っていく際、ユニクロと東レのような、共創が存在しています。変化の激しい環境で、新しい事業の成功率を高めるには、共創視点での掛けあわせが成功要因です。自社の枠を超えた企業とアセットを活かし、共創で開発した結果、化学反応が起きハイブリッドな商品や事業が数多く創生されています。
日本では、イノベーションの生態系が未成熟なため、ベンチャー企業が創生されにくい環境ですが、「オープンイノベーションによる共創」は、スピード経営が問われる今日、ますます重要なあり方として、ピボット戦略と共に拡がっていくものと思います。
第192回 「運とタイミング」
経営の成功者達は、よく「運」や「タイミング」という言葉を口にします。
「運」の正体は何か解りませんが、運をつかむには、運を持つ人との繋がりとタイミングが大切のように思います。
小学生の頃、先生から、「時々姿を現しスッと通り過ぎる、前髪だけあってキューピーのような顔をしたチャンスの神様」の話を聞きました。
チャンスだと思った時、迷って神様の前髪をしっかり掴まずにいると、その間に通り過ぎて、後から手を伸ばしても後ろ髪の無い神様を引き寄せることはできず、チャンスを逃してしまうのだそうです。
今、日本を代表する企業の創業年をみると、トヨタ、キヤノン、ソニー、ホンダといった企業が、ほぼ1940年前後に創業しています。今日の日本経済を牽引する企業の創業者達は、この時代に「チャンスの神様」の前髪をしっかり掴み、全力で引き寄せたのだと思います。
本田宗一郎さん(ホンダ創業者)と井深大(ソニー創業者)さんが、仲が良かったとはよく知られている事実ですが、この頃、運の強い人達がよく一堂に集っていたと聞きます。
運の姿は見えませんが、はっきり感じることは、「運」は人に付くもので、人に寄り添う性質があり、人との交わりから生まれてくることです。
運を持つ相互ネットワークの中から、運を引き寄せ、大きなパワーが生まれ、1940年代に日本を代表する多くの企業が誕生しています。
陽転思考で、運のいい人達の渦中にいると、運に出逢う機会に恵まれます。そして、運気の流れに乗るタイミングが大切に思います。
経済の波や人のバイオリズムには、「流れ」があります。流れを自覚し感じ取る感性を持つことで、潮の変わり目に気づき、タイミングを測れるようになるのだと思います。
政権交代やオリンピック招致から流れが変わりはじめています。アベノミクス成長戦略の中で、ベンチャー開業率10%に向けて、投資税制がドラスティックに変わる流れになってきました。法人のベンチャーキャピタルへの出資の8割まで、損失準備金として認められる税制恩典が検討されています。
日本では米国のような個人のエンジェル投資家が育っていませんが、法人版エンジェル税制によってVC業界へ資金が流れ機会の窓が大きく開く可能性が出てきました。
運を持つ人や企業との繋がりの中で流れを掴み、「チャンスの神様」の前髪をしっかり掴み、全力で引き寄せ、人生のCEOを実現して欲しく思います。
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第191回 「機会によって自らを変えよ!」
世界最大級のイベント2020年夏オリンピック・パラリンピック東京開催は、どんなビジネス機会をもたらすのでしょうか?
20年近く閉塞感に包まれた日本の、景気低迷からの脱却と、産業構造の転換や企業イノベーションには、またとない絶好のビジネスチャンスを迎えました。
開催まであと7年、9月8日以降、視界が晴れて7年後が身近になりました。夢と目標が明快な世界都市東京を舞台にしたオリンピックは、日本企業の持つ技術・食・サービスを始め、様々なコンテンツを世界にアピールする機会です。
過日、投資先の起業家と東京オリンピックに向けて、「自分達が、どの様にこのビジネス機会を捉えて、挑戦してゆくか」をテーマに、話が盛り上がりました。
スケジュール目標が明確なので、7年後の人々の意識や営みの姿をイメージし、オリンピック前のビジネス機会、オリンピック期間中の機会、その後の機会といったステージで、各論の話しになりました。
「夏の開催なので猛暑を想定し、経営資源を活かし、誰に、何を、どのように提供するか、競争優位を定め、誰と組んでやっていくのか。それは、アスリートだけのものでなく、事業提案から商品開発をして、実績をブランド化して、マーケティングしてゆく。その為には、今から、明日、来年、何をすべきか ...」、と、時間を忘れ話し込んでしまいました。
ビジネスには、機会を自ら創りだしてゆくあり方と、機会によって自らを変えるあり方があります。リクルートの社訓で、「自ら機会を創りだし」のフレーズはよく知られているところですが、「機会によって自らを変えよ!」とのフレーズはそう多く語られていません。経営は、環境にどう適応していくかが、いつの時代も問われるテーマです。
今、2000年前後に続く第二次ベンチャーブームが起きています。上場によって手にした資金・経営資源・ノウハウによって、起業の連鎖が生まれ始めているからです。
オリンピックビジネス機会と資金循環の流れを引き寄せ、ベンチャーと大手企業のコネクトによるインキュベーションチャンスを迎えています。
2020年まで、自らの機会として、どんな関わりの中から、誰が、何を創り上げていくのか楽しみです!
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幡随院長兵衛・ばんずいんちょうべい
過日、浅草の木馬亭で江戸時代、庶民の英雄だった幡随院長兵衛の芝居を
観ました。
幡随院長兵衛は、浅草 花川戸 で口入れ屋(今でいう人材斡旋業)を営んでいたといわれている人物です。
幡随院長兵衛の生き様は江戸の華と呼ばれ、「人は一代、名は末代の幡随院長兵衛・・」の有名なセリフで歌舞伎や落語 講談等で今でも演じられています。
芝居の内容は、若い者の揉め事の手打ちを口実に、旗本奴の頭領に呼び出され、幡随長兵衛はこれが罠であることを勘づいていたが、引きとめる周囲の者たちを「怖がって逃げたとあっちゃあ名折れになる、人は一代、名は末代」の啖呵を切って振り切り、殺されるのを承知で、一人で旗本屋敷に乗り込みました。
酒宴でわざと衣服を汚されて入浴を勧められ、湯殿で裸でいるところを襲われ殺されたという内容でした。
350年にわたり、歌舞伎や芝居で演じられてきた庶民のヒーロー幡随院長兵衛の名は、末代の今も、語り継がれている。