第190回 「オンリーワン企業MUJI」
過日、33年間無印ブランドを色あせることなく維持し続け、世界にMUJIブランドとして力強く展開している良品計画社長の金井さんの話を聞く機会がありました。
創業時から、「豊かさってなんだろう」「カッコいいってどういうことなんだろう」を求め続けたという良品計画は、今ではスプーン一本から、お菓子、雑貨、衣料品、ベッド、更には古い団地を再生し住宅に至るまで扱い、現在国内379店、海外206店の規模になっています。
無印良品の生まれた原点は、堤清二さんとグラフィックデザイナーの巨匠・故田中一光さんが、大量消費という社会現象に、アンチテーゼとして、本当の豊かさを問い続けた理念であり、時には顧客のウォンツとは逆方向の商品を提供してきたところにあります。
田中一光さんが語った、「簡素が豪華に引け目を感ずることなく、その簡素の中に秘めた知性なり感性なりが、むしろ誇りに思える世界、こういった価値観をいま世界に発信できれば、もっと少ない資源で豊かさとか美意識を謳歌できる。だから、MUJIと茶の湯を世界語にしよう」という言葉に、無印良品を創り上げた理念が、表現されているように思います。
他と比較する「相対価値」でなく、自分達の信じる「絶対価値」を、収入に関係なく誇りを持って豊かな生活ができる無印良品の提案は、今、多くの人々に愛され年々共感の輪が拡がっています。
現在、良品計画のフェイスブックのコミュニティページに、75万人を超える人々が、MUJI「いいね」で繋がっています。
これだけの多くのMUJIファンと繋がったプラットホームができてくると、良品計画独自でオウンドメディアを使い、マス広告ではできなかった「顧客とのダイレクトな関係」を築き、最適なコミュニケーションを図ることができるようになります。
MUJIのコンセプトに共感した人々への新たなマーケティング戦略が、「かっこいい生き方・MUJIライフスタイル」として波紋が拡がっていく流れを、今後注目してゆきたいと思います。
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第189回 「大学発ベンチャー」
今年に入り、日本のIPO市場が活気づいている。6月11日、東証マザーズに創薬ベンチャーのペプチドリームが上場し、公開価格の数倍の初値がつき、時価総額が1000億を超え話題となった。この事例が、IPO市場の活況を象徴している。
1980年代以降、アメリカでベンチャー企業が数多く誕生した。
スタンフォード大学で、学生のジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが開発した検索サイトを、企業と共創してヤフーが誕生したように、大学と企業とのTLO(技術移転機関)によって、多くのベンチャー企業が誕生し、米国の原動力になっている。
注目すべきは、米国を代表するベンチャー企業の多くが、大学で生まれた技術をもとに起業していることだ。TLOは、大学の研究成果と企業のニーズを結びつけ、新しい価値と競争力のある商品を創り出す機会となった。
企業内での研究開発は、時間・コスト・社内規定・風土といった制約の中で行うだけに、新しい発見や独自の技術が創造されるケースは極めて少ない。
一方、大学の研究者や学生にとっては、自分の興味テーマを恵まれた環境の中で開発することができる。彼らが、企業ニーズとベクトルを合わせると、新規事業創出の原動力となり、事業につながる大きなパワーとなる。
米国のベンチャー企業に共通している強みは、特許を所有していることにある。特許はベンチャー企業にとって、競争社会の中で力強く生き抜く大きなファクターだ。
昨今、日本のIPO企業で注目されている企業群は、東京大学で開発されたミドリムシの株式会社ユーグレナや、ペプチド薬を企業と研究開発したペプチドリーム株式会社を始め、多くの大学発ベンチャー企業である。
現在、日本では20万人を超える研究者が大学におり、国家予算の研究資金が使われている。今後、日本の産学共同技術を企業に移転するTLOにより、大手企業とベンチャー企業が共創することで、新産業や新しい事業が創生、インキュベートされることに注目してゆきたい。
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第188回 「繋がる」
6月12日、ホテルニューオータニにて、経済産業省と東京ニュービジネス協議会の協賛による大手企業とベンチャー企業、ベンチャー企業支援企業の大交流会「&connect!(コネクト)」が行われました。
出逢いの機会を求め1000人を超える人々が集い、熱気溢れる時空となりました。
8年前の6月12日、スタンフォード大学の卒業式で、希代の起業家スティーブ・ジョブズが語ったスピーチは世界の称賛を浴びました。その中で、次のようなことを語っています。
「自身の大学時代から様々な経験や出逢いが、ふり返ってみると点と点がつながって大きな実現する力になった。将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできない。できるのは、後からつなぎ合わせることだけだ。だから、人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。」
日本もようやくこのところ、大手企業とベンチャー企業の結びつきによる成長戦略に取り組むアライアンスの動きを目にし始めました。
互いの強みを生かし、弱い所を相互補完することによって、経営資源を有効活用し成長実現を目指している、リクルートとオイシックスの合弁企業ゴチマルのようなケースが増えています。
ベンチャー企業が力強く存続発展し、大手企業はイノベーションのジレンマから脱皮してゆくアライアンスは、これからの有効な経営戦略です。
ベンチャー企業と大手企業が「つながる」ことによって、新たなバリューを創生する機会を増大してゆくことが、これからの企業の生き方になる予兆を感じます。
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第187回 「渋沢栄一賞」
今から12年前、「新潟で501社の会社を創って起業のメッカにしよう」と、異業種交流会501がスタートしました。
明治維新の時代に近代経済の礎を築いた渋沢栄一は、500社の企業設立に関わったといわれています。この会は、渋沢栄一の業績を一社でも上回る企業を育成し、地域経済を活性化させ雇用創出することを目的に設立した会です。
501会会長である新潟総合学院創業者の池田弘さんの「志を形にするには、"地域の特性を活かしたベンチャー企業やグローバル企業をインキュベートして、新潟を起業のメッカにしてゆく"ことだ」というメッセージに強く共感し、私の郷里でもある新潟が、地域のインキュベーションモデルになれば素晴らしいとの思いで、共にチャレンジしました。
資源のない日本の今日の豊かさは、多くの起業家によってもたらされました。
起業家の存在なくして今日の日本の繁栄は考えられません。渋沢栄一は、第一銀行を設立し、王子製紙、サッポロビール、帝国ホテル、東急電鉄始め様々な500もの企業の創業を支援し、困窮した幕臣を救済したといわれています。
渋沢栄一の出身地である埼玉県が、2002年に「渋沢栄一賞」を創設しました。
渋沢栄一の精神を受け継ぎ、地域に根ざした企業活動と社会貢献を行っている企業経営者に授与される賞です。
この度、渋沢栄一の精神を汲んだ起業家支援育成組織「異業種交流会501」を始め、各社の株式公開及び公開並み企業への育成を目指す起業支援プロジェクトにも取り組んできた501会会長池田弘さんの活動が認められ、第11回渋沢栄一賞を受賞されました。
過日、新潟のオークラホテルにて、多くの政財界の皆さんが集い、受賞を祝う会が賑やかに執り行われ、6月に、ホテルオークラ東京でも予定しています。
「渋沢栄一賞」は、池田さん始め関係者の皆さんと私にとっても嬉しい出来事で、勇気を貰った受賞でした。
日本は今、多くの課題を抱え困難な状況下におかれています。これまでの501会の試みが、地域を活性化してゆく一つのスタンダードモデルとして、日本を元気にしてゆくモデルになれば望外の喜びです。
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第186回 「キャリアの節目に」
「今の会社は、自分には合わないので」「自分がやりたい仕事とは違う気がして」といった声を、転職者からよく聞きます。
「あなたにとって仕事の目的って何ですか?何をしたいのですか?」と質問をすると、返答に戸惑う人がいます。問いに答えられない人は仕事のスタンスやテーマを持たず、条件や短期的目線で、転職を繰り返している人が多いように感じます。
キャリアは、デザイン(設計)とドリフト(流れ)の連続で成り立っています。そして、仕事を通じて様々な人との関わりや、選択、活動、成長、人生観などを含む人生そのものともいえます。
混迷の時代だからこそ、節目に立った時これからのキャリアを考えるにあたり、自分と仕事の間に存在する価値や意味や目的から、「自分がいったい何をしたいのか、何を成し遂げたいのか」を問い直していくことが肝要です。
誰しも、仕事で行き詰まりや悩みを感じることがあります。こういった時、「なぜ私は今、こう考えるのだろう」と、自分を見つめ、これまでの自分とありたい自分との脈絡を見つけて欲しく思います。
キャリアをデザインしていくにあたり、自分が仕事をしていく上でのキャリアの不動点を確認しておく「キャリア・アンカー」という考え方があります。
キャリア・アンカーとは、船の錨(アンカー)に例えて、どんな組織・環境で仕事をしても、その人の拠り所となる不動のアンカーがあるという概念です。
キャリア・アンカーは、人によって違い、専門職的、起業家的、マネージメント的、生活スタイル的、安定志向、社会貢献等のアンカーの分類があり、自分がキャリアを形成していくうえで譲ることのできない価値観や欲求を現しています。
混迷を極め、先行きの見えない不安な時代を、私達は今、生きています。多くの人が、仕事を通じて生きる意味や価値を見いだせず、指針を見失っているのではないでしょうか?
百人百色、それぞれ自分の不動の「錨」アンカーを自覚して、何の為に働くのか見据えて充実したキャリア人生を送って欲しく思います。
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