前回は、鉄が過剰になることでがんが発生しやすくなることを
お伝えしました。
では、生命に必要なはずの鉄が過剰になると、
がんが発生しやすくなるのでしょうか。
鉄が過剰になることで起こること
鉄は鉄剤などで摂りすぎることによって、制御不能になります。
なぜなら、鉄結合タンパク質や鉄輸送タンパク質にも限界があり、
それに結合できなくなった鉄は遊離鉄となって溢れます。
鉄結合タンパク質である、血中のフェリチン濃度が高くなると、炎症が疑われます。
フェリチンとは貯蔵鉄のことで、本来は細胞内にあるからです。
フェリチンの血中濃度が高いということは、炎症など何かが起こっていて、
それによって組織が破壊されていると考えます。
遊離鉄が過剰になって起こることで、がんに関連するものは、
フェントン反応によるハイドロキシラジカル生成です。
フェントン反応というのはイギリスの化学者、
ヘンリー・ジョン・ホルストマン・フェントンが発見した化学反応です。
ハイドロキシラジカルというのは、体内で発生する最強の活性酸素です。
一般的には悪玉活性酸素と呼ばれているようです。
非常に毒性が強く、様々なものを酸化させていきます。
体内にある鉄とミトコンドリアから発生する過酸化水素が反応することで、
ハイドロキシラジカルが生成されます。[1]
また還元型ビタミンCも鉄と反応してハイドロキシラジカルが生成されます。[2]
このハイドロキシラジカルは、中でもプーファ(多価不飽和脂肪酸)を酸化させ、
酸化した過酸化脂質やアルデヒドが、細胞の機能と構造を破壊していきます。[3]
フェントン反応が起こることで、
がん発生と関連していることが示唆されています。[4][5][6]
(他にもタンパク質のカルボニル化。つまり脂質過酸化反応です。)
また、フェリチンはハイドロキシラジカルや
プーファが酸化してできたアルデヒドによって破壊され、
遊離鉄が放出される現象があります。
これをフェロトーシスといいます。[7][8]
このフェロトーシスが起こると、さらに血中の遊離鉄が増加する
悪循環にハマってしまいます。
いかに身体の中の遊離鉄を少なくするか、
これががん発生と大きく関連しています。
では、どうすれば体内の遊離鉄を減らせるのでしょうか?
【関連記事】
【参考文献】
[1]Minerals and Cancer: Overview of the Possible Diagnostic Value
Cancers (Basel). 2022 Mar; 14(5): 1256.
[2]Redox Interactions of Vitamin C and Iron: Inhibition of the Pro-Oxidant Activity by Deferiprone
Int J Mol Sci . 2020 May 31;21(11):3967.
[3]Advanced lipid peroxidation end products in oxidative damage to proteins. Potential role in diseases and therapeutic prospects for the inhibitors
Br J Pharmacol . 2008 Jan;153(1):6-20.
[4]Oxidative Stress and Its Significant Roles in Neurodegenerative Diseases and Cancer
Int J Mol Sci. 2015 Jan; 16(1): 193–217.
[5]Iron promoters of the Fenton reaction and lipid peroxidation can be released from haemoglobin by peroxides
FEBS Lett . 1986 Jun 9;201(2):291-5.
[6]Inflammation-induced protein carbonylation contributes to poor prognosis for cholangiocarcinoma
Free Radic Biol Med . 2012 Apr 15;52(8):1465-72.
[7]Programmed Cell-Death by Ferroptosis: Antioxidants as Mitigators
Int J Mol Sci . 2019 Oct 8;20(19):4968.
[8]Alteration of Iron Concentration in Alzheimer’s Disease as a Possible Diagnostic Biomarker Unveiling Ferroptosis
Int J Mol Sci. 2021 May; 22(9): 4479.
食材や健康全般についてのご質問フォーム(無料)
記事について
すべての記事の内容は、日々学びを重ね、新しい発見や見地があれば更新しています。 各記事に内容に関しましては、より最新に近い記事をご覧ください。 よろしくお願い申し上げます。