Tue 211019 長く濃厚なションボリ/明日はなでしこ忌/2匹のラストデイズ 4107回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 211019 長く濃厚なションボリ/明日はなでしこ忌/2匹のラストデイズ 4107回

 ワタクシにはたいへん悪いクセがあって、とにかく何かのきっかけで、滅多やたらにションボリするのである。しかもそのションボリが濃厚&濃密で、ちょっとやそっとで回復することはまずあり得ない。いったんションボリすれば、1年や2年は平気でションボリし続ける。

 

 17年間も一緒に生活したニャゴロワが亡くなったのが、20191016日。そのころから急激にブログ更新の頻度が下がり、1ヶ月に4回とか5回とか、昔に比較すれば信じがたい状況が続いている。「そろそろ立ち直らなきゃ」と焦るうちに、いつの間にかブログの世界全体が風前の灯になってしまった。

   (ニャゴロワが死んでから、2年が経過した 1)

 

 キジトラのなでしこは、20021224日生まれ。純白のニャゴロワも、20021224日生まれ。どっちが先に生まれたのか分からないから、どっちが姉でどっちが妹なのかも判断がつきかねるが、なでしこは体重3kg+α、ニャゴロワは5kg+α、大きさから言えばどう見てもニャゴが姉に見えた。

 

 ただし性格の面から見ると、なでしこはいつも沈着冷静でマコトに賢く控えめ、声も深みのあるアルトで考え深げに人間と会話した。一方のニャゴは、人間で言えば100歳近いオバーチャンネコになっても、まだ甲高いソプラノで大好きなゴハンをタップリねだり続けた。むしろニャゴのほうが妹だったのかもしれない。

   (ニャゴロワが死んでから、2年が経過した 2)

 

 最初にワタクシが「濃厚ションボリ」に陥ったのは、201012月のこと。その1ヶ月前にワタクシ自身が網膜剥離の緊急手術を受け、失明の危機から見事に生還したばかりであったが、あんなに元気だったニャゴがいきなりゴハンを受け付けなくなって、「重篤な腎不全」の診断を受けた。

 

「余命100日」「夏までは無理でしょう」の宣告であって、ちょうどクリスマスの時期、もうニャゴに大好きな缶詰を買ってあげられないのかと思うと、ペットショップの店先で泣きくずれ、しばらくそのまま動けなくなった。

 

 まさかそのネコが余命100日宣告の後に9年=3200日も長生きするとは思わなかったが、その直後から連日の点滴の努力が続いた。なかなかジッとしないネコを、なだめになだめてジッとさせ、後ろ首をソフトに摘んでそこから太い注射針を刺し、15分ほどの点滴に耐えさせる。

 

 純白の首筋が、時には鮮血で赤く染まったりするのである。ソプラノの声で悲しそうにミーミー泣いたかと思うと、腹筋に全身の力を込めて深く太い声で抗議の声を上げる。なでしこがニャゴの目の前にやってきて、ひどく悲しげに不幸な姉の表情を見つめていた。

     (なでしこが死んで、もう6年が経過した)

 

 そのなでしこも2013年には同じ腎不全になった。ニャゴと同じ点滴をしなければならなくなって、それでもなでしこはどんどん痩せていく。その20151020日、腎不全を発症してからわずか2年で、なでしこは天国に旅立った。

 

 何しろ食が細いのだ。獣医さんですら「マズくてとても食べられません」という腎臓病ネコ専用のフードを、それでもニャゴは平気で満腹するまで食べ続けたが、なでしこの方は、おいしい缶詰やらチャウチュールやらを与えても、ほとんど見向きもしなかった。

 

 最後には体重も2kgを切った。獣医さんもすっかり諦め、「入院はもうやめにして、最後の数日間ぐらい、なつかしいオウチで過ごさせてあげるのがいいでしょう」とアドバイスしてくれた。

 

 毛並みの滑らかなネコで、息をするのをやめてしまったからも、冷たくなった毛皮を撫でてやると、その柔らかい感触はまだそのままだった。翌日、東京都調布の深大寺で火葬したが、火葬直前に最後に撫でてやった時にも、まだ生きている時と同じ滑らかさなのだった。

(元気だったニャゴロワ。こんなに白いネコが、他に存在するだろうか)

 

 妹なでしこが天国に旅立って1匹きりになった後も、ニャゴは気丈に生き続けた。病気になって7年、2000回も点滴を繰り返せば、点滴する側の人間もすっかり上手になって、もう純白の背中に鮮血がにじむことはなくなった。

 

 しかし2017年、亡くなる2年前ぐらいからはすっかり体力も衰えて、椅子やソファや机に飛び上がるにも、足の力だけでは足りなくなった。まず右の手のひらを椅子の座面に固定し、まるで人間の跳び箱みたいに、腕と足の力と反動を利用して、やっとのことで跳び乗るのである。

 

 そうやって1匹だけで4年、なでしこのいないオウチで痛い点滴に耐えながら生き延び、2019年の秋になった。台風が次々と日本を襲った秋であったが、9月末、ワタクシが南イタリア・プーリアの海岸を2週間ほど旅して帰ってくると、ニャゴの容体が急激に悪化していた。

 

 暗く目を見開いて蹲ったまま、大好きなゴハンにももう見向きもしない。夜中も目を開いたまま、もう呼吸も自由に出来ない様子。レンタルの酸素室をテレビの前に置いて、楽に呼吸ができるようにしてあげたが、状況はどんどん悪化していった。

 (2019年12月28日、オーストリア・リンツの大聖堂で 1)

 

 獣医師によれば、肺の脇に大きな腫瘍ができていて、腫瘍から滲み出る水分が肺を圧迫しているのだという。レントゲンの写真に写った白い影は、確かにあまりに大きい。体重もどんどん減って、かつてあんなに重たかったニャゴが、とうとう2kg台にまで来てしまった。

 

 1012日、巨大台風が首都圏を襲った。次第に迫ってくる台風の雲の渦巻きを気象予報で眺めつつ、大事をとってニャゴを入院させることにした。病院の暗い酸素室に小さく蹲ったニャゴの白い顔を眺めつつ、何とかこの台風を生き延びてくれればいいと願った。

 

 台風が去った快晴の朝、すぐにニャゴを退院させてオウチに連れて帰り、なでしこの時と同じように「ラスト数日だけでも懐かしいオウチの中で」と決めた。そして1016日、夕暮れ5時半を過ぎた薄闇の中で、ニャゴロワも苦しい呼吸をやめて天国に旅立った。

 

 ワタクシの長い濃厚ションボリは、だからあれからすでに2年も続いていることになる。あの夕暮れから2ヶ月後、コロナが世界を席巻しはじめ、「ションボリ退治に外国をのし歩く」という選択肢も完全に封じられたまま、とうとうまるまる2年が経過する。

 (2019年12月28日、オーストリア・リンツの大聖堂で 2)

 

 確かにニャゴの死の2ヶ月後、今井君はウィーンにたった1週間の短い旅をした。1222日まで公開授業のスケジュールが詰まっていて、ウィーンに到着したのは1223日、そこから30日までのホントに短い旅だった。

 

 しかしやっぱりあのウィーンの旅は、なでしこやニャゴロワが健在で元気に走り回っていた時代の旅とは、何もかも完全に違っていた。その証拠に、あれから2年が経過しても、いまだに旅行記を書き終わっていない。

 

 あの頃からブログの更新がすっかり途絶えがちになって、1ヶ月にわずか5回か6回、かつて10年=3652日にわたって1日も休まずに書き続けたエネルギーと迫力は、もはやどうしても湧き上がってこない。

 

「新しくネコを飼えばいいじゃないか」というヒトもいる。例えば三毛猫を飼って、名前を「ミケシコ」とする。黒猫を飼って、名前を「クロロワ」とする。ワタクシの中では、柄のネコはナデシコと同じように「◯◯シコ」でなければならないし、無地のネコはニャゴロワにならって「〇〇ロワ」でなければならない。

 

 しかし諸君、2匹のネコと20年近く暮らした後、ホンの2年や3年で別のネコをオウチに招き入れるなどということは、少なくともワタクシには出来そうにない。

 

 ミケシコも、クロロワも、あと6年か7年か、いや少なくともまだ10年が経過するまでは、ションボリ解除の役には立ってくれそうにない。

 (2019年12月28日、オーストリア・リンツの大聖堂で 3)

 

 なお、最近になって読者に加わっていただいた諸君は、以下の記事でも読んで、読書の秋の夜長の友としてくれたまえ。

 

【なでしこラストデイズ】 

Sun 150927 なでしこは10月20日、永眠いたしました(なでしこ ラストデイズ 1)

 

Mon 150928 なでしこの通夜 派手な姉と地味な妹 新刊書(なでしこ ラストデイズ 2)

 

Tue 150929 お葬式 なでしこ忌 リュックと麦わら帽子(なでしこ ラストデイズ 3)

 

Wed 150930 号泣 障子に映ったなでしこの影 ノラや(なでしこ ラストデイズ 4)

 

Thu 151001 もう号泣は終わり 徳島の大盛況 さあ、音読だ(なでしこ ラストデイズ 5)

 

Fri 151002 花はおそかった 神田神保町・にゃんこ堂のこと(なでしこ ラストデイズ6)

 

【にゃごろわラストデイズ】

Sat 191019 ニャゴロワは、永眠いたしました(にゃごろわラストデイズ1)3880回

 

Fri 191025 もう、いない/9年前に書くはずだった(にゃごろわラストデイズ2)3881回

 

Tue 191029 理想の叔母さま/やっぱり、いない(にゃごろわラストデイズ3)3882回

 

Sun 191103 英語民間テストの中止&延期について(にゃごろわラストデイズ4)3883回

 

Sat 191109 京都で、英語民間試験中止を考える(にゃごろわラストデイズ5)3884回

 

Thu 191114 大学入試、こんなふうにしたらいい(にゃごろわラストデイズ6)3885回

 

1E(Cd) EschenbachMOZARTDIE KLAVIERSONATEN 1/5

2E(Cd) EschenbachMOZARTDIE KLAVIERSONATEN 2/5

3E(Cd) Bobby CaldwellHEART OF MINE

4E(Cd) LET’S GROOVE 

7D(DPl) 文楽:摂州合邦辻「合邦住家」竹本津大夫  加賀見山旧錦絵「長局の段・奥庭の段」竹本越路大夫

10D(DPl) 能:観世流 鞍馬天狗(梅若実)/ 観世流 恋重荷(観世銕之丞 森茂好)

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