Fri 200124 ルーマニア&ブルガリアの旅/正月の大阪で文楽/天王寺・明治屋  3905回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 200124 ルーマニア&ブルガリアの旅/正月の大阪で文楽/天王寺・明治屋  3905回

 せっかく「旅行記を再開します」と宣言し、センター試験もその長い歴史の幕を閉じたことだし、「これはいい機会だ、ワタクシもこの機会に便乗して若干の軌道修正を図ろう」と考え、前回の記事に掲載する写真もあえてセンター試験とは完全に無関係、モナコの美しい夜景を数枚選択した。

 

 しかし諸君、こうして日々悠々と生きていれば、やっぱり毎日毎日新しく書きたいこともズンズン蓄積して、なかなか1年前の旅行記に集中する気分になれない。だってモナコに滞在して、来る日も来る日も春のカーニバルに熱中していたのは昨年2月下旬だ。もう丸1年前の遠い過去の記憶である。

 

 それより今のワタクシは、3ヶ月後の旅の計画に熱中している。例えば5月初旬に出国、6月初旬に帰国。目的地はルーマニアとブルガリア。ドラキュラとチャウシェスクの恐ろしい記憶が生々しい春のルーマニアから東欧に入る。

 

 ルーマニアに半月ほど滞在して、おもむろに黒海の西岸を南下すれば、そこはブルガリアだ。どこまでも咲き乱れるバラの花畑を、元気でジューシーなみつばちマーヤ軍が、イェニチェリ軍団を先頭に進軍するオスマントルコ軍よろしくブンブン飛び回る。ブルガリアの旅は、やっぱり6月上旬でなければならない。

(大阪・国立文楽劇場に飾られた「にらみ鯛」。すぐ近くの黒門市場が寄贈する)

 

 ということは、まず昨年の初夏のスケジュールを確認しなければならない。6月初旬に公開授業のスケジュールが入る年もあるから、もしその頃にワタクシがブルガリア国内でブンブンやっていたら、「今井先生の公開授業でぐぐっと生徒増を図ろうじゃないか」と考える校舎に申し訳ない。

 

 幸いなことに、昨年は6月12日まで公開授業が入っていない。おお、これなら大丈夫そうじゃないか。旅の始まりを5月10日とし、帰国の日を6月9日に設定すれば、ブルガリアのバラ祭りの最高潮も目撃して来られそうだ。

 

 だから今の今井君は、ホクホクしながらトルコ航空とエミレーツ航空の国際線ダイヤを調べている。アエロフロートも北欧系も候補に入れているし、ちょっと贅沢だがエールフランスも悪くない。

 (大阪・国立文楽劇場に飾られた「にらみ鯛」、全体図)

 

「あれれ、ANAはどうしたの?」であるが、長く続けてきたANAファンを、そろそろ今井は卒業するつもりでいる。思えば2010年ごろ、「一個人としても日本経済にわずかでも貢献ができれば」「Buy Japan!!」という思いの中で、「これから国際線はANA1本」と決めた。

 

 おかげで9年連続のダイアモンドメンバー、「ミリオンマイラー」のタグも獲得した。しかし諸君、やっぱりワタクシは、この数年のANAの著しいサービス低下が我慢できないのである。

 

 CAさんの1人からアルコールが検出されたからといって、ヒコーキの出発が遅れるような事案はもってのほかであるが、特に国際線のサービスの低下には思わず「わざとやってんの?」の溜め息が出る。例えば諸君、後方座席の荷物入れが約10席分、最初から閉鎖されて「使用禁止」になっていたりする。

 

 エコノミー席の機内食はどんどん貧弱になり、あまりの貧弱さにワタクシはシートに落ち着くや否や「必要ありません」と断っている。3〜4年前から余りにレベルダウンしたから、往路も復路もワタクシは搭乗前に空港のレストランで満腹してから乗るようにしている。

 

 ドリンクも同様のアリサマ。ワインはかつてはエコノミー席でもボトルで提供されていたのに、プラスチックのコップにジャッと半分ほど、マコトに邪険に注がれて終わりの状態だし、食事の最後に配られていたリキュール類なんか、もう影も形もない。「エコノミーでそんな贅沢は言わないでください」という雰囲気なのだ。

    (毎年1月には大阪文楽劇場でこれを眺める)

 

 何と言っても決定的だったのは、「エコノミーからプレミアムエコノミーへのアップグレード」。ダイアモンドメンバーなら、数年前までは確実に無料アップグレードできていたのに、この3年ほどは24時間前の事前チェックインで必死に頑張っても、最初から「全席予約済み」の表示が出るばかりである。

 

 いやはや、こんなことならダイアモンドメンバーになんか何のメリットもない。国内線の搭乗時に「グループ1」とか変におだてられ、50人も100人もの長い列を作っているオジサマ連がいるが、たった2分か3分ヒコーキに先に乗り込むために、15分も早くから列を作っているなんて、まさに「まっぴら御免」であって、今井は今や国内線でも一番後ろから悠々と、ギリギリの時間に乗り込むことにしている。

 

 というわけで、いつもなら3月末から4月中旬にかけてANAで旅するヨーロッパに、今年は5月中旬から6月初旬にトルコ航空かエミレーツで旅することになりそうだ。

 

 ANAからは相変わらず「ダイアモンドメンバー専用タグ」だの、「ミリオンマイラータグ」だの、いろいろゴテゴテ送ってくるけれども、タグはもちろん即座に引き出しの奥に投げ込み、スカイコインは国内線専用とする。国際線でANAを利用することは、事態が改善しない限り今後あまりありそうにない。

    (今年の正月文楽は、おめでたい演目が並んだ)

 

 だから1月21日朝、「ま、今年は国内線だけでダイアモンドメンバーを目指しますかね」と決意し、羽田空港から大阪伊丹空港へ、2020年初めてのヒコーキに乗り込んだ。

 

 年初の大阪行きは、例年なら1月3日なのである。まだ羽田空港には門松が飾られ、プレミアムクラスの機内食には華やかなおせち料理が出る頃だ。快晴の空に高く頭を突き出した富士の山を眼下に眺めながら味わうおせち料理は格別。お正月の初フライトなら、サービス低下を実感することもなかった。

 

 しかし諸君、2020年の今井君は、1月6日から1月17日まで「新A組」の収録で吉祥寺スタジオに缶詰の状況。「長文読解問題を、万が一リスニング形式で出題されても、自信を持って合格答案が作成できる上級者」を目指した新A組は、まさに「真A組」でもあって、さすがの今井君も収録時に緊張を隠せなかった。

 

 だって、徹底的にリスニングなのだ。あの難解な京都大学の長文問題も、音声にしても7分かかる東京大学の長文問題も、徹底的に聴きまくる。毎回の授業の後の「確認テスト」もリスニング形式で、20回の授業のための音声教材を一気に続けて聴いてみると、なんと120分かかる。

 

 これほど重量感のある教材の収録が1月6日から控えているのに、まさか1月3日にヒコーキのおせち料理、そのまま大阪で5時間も文楽を楽しんで、恐竜時代から付き合いが続く友人とクマ鍋をつつきながら、二人で日本酒1升5合、ついでだからカラオケに3時間、そういうわけにはいかないじゃないか。

     (襲名したばかりの6世・竹本錣太夫)

 

 だから今年の1月は、大阪文楽を1月22日に設定したのである。1月22日では、もちろん羽田の門松はとっくに撤去され、おせち料理なんか「それって何ですか?」の世界。めでたさもすっかりションボリしぼんで、空港は中国からのコロナウィルス厳戒中。センター試験なんか、もう歴史の彼方に消滅してしまっていた。

 

 しかしそれでも大阪の国立文楽劇場にだけは、まだまだ正月のめでたさの尻尾が残っていたのである。昭和の名人・竹本津大夫の弟子として、長く「竹本津駒太夫」を名乗っていたオジサマが、めでたく6代目♡竹本錣太夫を襲名。初春公演は、錣太夫の襲名披露を兼ねている。

 

「錣」と書いて「シコロ」と発音する。武士のカブトの左右と後ろに下げて首をおおうヒダヒダの部分。革や鉄板を横に長く連ねて伸縮性を確保し、弓矢や鉄砲のタマを弾くものである。

 

 ワタクシは1978年8月、彼の師匠・竹本津大夫の勇姿を、東京の国立劇場で見たのである。「摂州合邦辻」であったが、そのあまりの豪快な迫力に感涙。あれ以来、延々40年以上も文楽と付き合っている。

(竹本津大夫が大活躍していた頃の狭苦しい銀座線・渋谷駅が懐かしい。とうとうこんなにピカピカ新しくなっちゃった)

 

 その津大夫が得意の1つとしたのが「土佐将監閑居(とさのしょうげんかんきょ)の段」。ワタクシの手許に、40年近く前に東京国立劇場で津大夫が語った「土佐将監」のカセットテープがある。おそらくNHKがラジオで放送したのを、当時の流行語で「エアチェック」したのである。テープが擦り切れるほど聞いた。

 

 新しい錣太夫が今回の襲名披露公演で語るのが、まさに師匠が得意とした「土佐将監閑居の段」。「新A組」収録を終えてすっかり気持ちも和んだ今井としては、師匠の得意の段を語る錣太夫の晴れ晴れとした心の内を察し、思わず涙腺の緩む思いであった。

(1936年開業。大阪天王寺、由緒正しい「明治屋」を訪問 1)

 

 何しろ開演が午前11時だから、終演はまだ15時半。今回も「恐竜時代からの友人」とともに4時間半の文楽を満喫したのであるが、平日の15時半では、さすがの大阪だってまだ飲み屋は開いていない。

 

「どうするかね?」と困っていたら、さすが大阪のヒトは臨機応変であって、「天王寺の明治屋に行ってみるか?」ということになった。東京で「明治屋」と言えば、高級食品マーケットであって、世界のジャムにワインにパスタにお菓子、京橋と六本木と広尾の店に東京中の高級マダムが集うのである。

 

 しかし大阪天王寺の明治屋は全く様子が違う。まず天王寺であるが、なかなかヤンチャなオジサマやオニーサマが多く闊歩する。大阪市立大学の医学部があって、ちょうど1ヶ月前の1221日、今井が2019年の仕事納めをしたのも大阪天王寺であった。

(1936年開業。大阪天王寺、由緒正しい「明治屋」を訪問 2)

 

 その一角で長く営業を続けるのが居酒屋「明治屋」であって、オープンは1936年。さすがの老舗は、226事件の年に営業を開始したのである。この年、第4回冬季オリンピックがドイツのガルミッシュ=パルテンキルヒェンで開催され、静岡の浜松一中(現・浜松北高校)では「大福餅による集団食中毒」が発生している。

 

 これほどの名店になれば、もちろん「バエ」なんかに夢中になった写真撮影は禁止。13時開店の由緒正しい店の中で、静かにホノボノをお酒を楽しむのであるが、今日はすでに長く書きすぎた。この続きはまた明日ということにしたい。

 

 なお、まだ「読み足りないよ♡」という猛者のために、過去7年にわたるお正月の大阪文楽関連記事を、以下に貼りつけておく。ぜひこれから朝までかかって、この7年分の正月文楽を満喫してくれたまえ。

 

Wed 131211 新年の大阪で旧交を温める 列車ホテル 文楽のお人形にお酒を注いでもらう

Thu 141211 羽田から白い富士 新年会②大阪版 人形浄瑠璃とラグビー ポンポン☞パンパン

Thu 151217 十日戎の大阪に文楽を見に行く ついでに大阪最古「生国魂神社」に初詣

Fri 151218 豊竹嶋大夫と福娘 ほえかご、ほえかご 大阪を飲み歩く カレーうどんで〆

Thu 161215 大阪の初春文楽公演/1月3日が初日の出/鏡開き/古い知人と遭遇

Fri 161216 和服率が高い/居眠り率も高い/豊竹呂大夫のこと/Mac君はフザケすぎだ

Tue 171212 お正月、早朝から大阪へ/文楽劇場の鏡開き/驚きの太巻きオジサマ

Wed 171213 師匠の深慮/弟子の熱演/18歳の感激を思い出す/中華料理で盛り上がる

Wed 190109 いやはやマコトにおめでたい/今年の初旅は大阪/文楽と鳥鹿・山三 3783回

 

1E(Cd) QueffélecRAVELPIANO WORKS 2/2

2E(Cd) MartinonIBERTESCALES

3E(Cd) Bruns & IshayFAURÉL’ŒUVRE POUR VIOLONCELLE

6D(Pl) 初春文楽公演:七福神宝入舩/竹本津駒太夫改メ 六代目竹本錣太夫襲名披露狂言/傾城反魂香(土佐将監閑居の段)/曲輪文章:国立文楽劇場

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