Fri 151218 豊竹嶋大夫と福娘 ほえかご、ほえかご 大阪を飲み歩く カレーうどんで〆 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 151218 豊竹嶋大夫と福娘 ほえかご、ほえかご 大阪を飲み歩く カレーうどんで〆

 こんなふうに日々ヒコーキでビュンビュン飛び回っていれば、驚くほどいろいろウルトラ有名人の姿を見かける。ついこの間はデヴィ夫人の斜め後ろの席だったし、11月には鈴木宗男どんとも出会った。モト横綱・北勝海の八角親方とも遭遇した。

 この10年を振り返れば、後の安倍晋三首相やら森喜朗どん、海部俊樹どんに野中広務どん、日本の政治の中枢を担ってきたヒトビトと同じ空気を呼吸しながら、日本の空を飛び回った。

 そういう有名人の中に、竹田圭吾氏がいた。あれは2年前だったか3年前だったか、札幌・新千歳空港に向かうヒコーキのプレミアムクラス。2列目の席で、分厚いサングラスをかけて新聞を熟読していらっしゃった。

 顔は覚えていても、お名前は思い出せなかった。「誰だっけ?」「誰だっけ?」「どこで見かけたんだっけ?」と自問自答を繰り返しながら、そのまま公開授業のステージに立った。「ああ、あの人だ!!」と思い当たったのは、その数週間後。民放のニュースショーで熱弁を奮っていらっしゃった。

 その竹田氏の訃報、51歳。ガンだったんだという。自らのガンを放送の中で告白し、その後もやせ細りながらコメンテーターを続けられた。訃報として、余りにも若い。若すぎる死の報に涙を禁じ得ない。ご冥福をお祈りする。

 さて、1月9日のクマ助は大阪・国立文楽劇場を訪れた。昨日の記事に書いた通り、すぐ近くの今宮神社は「十日ヱビス」の真っ最中。文楽公演の合間には、今宮神社「福娘」の5人が劇場を訪問して「福笹授与式」を行う予定になっている。
にらみ鯛1
(お正月の国立文楽劇場には、縁起物の「にらみ鯛」が飾られた)

 劇場には縁起物の「にらみ鯛」も据えられている。劇場入口にはホンモノのにらみ鯛。舞台正面には巨大な真紅のにらみ鯛。鯛ではあるが勇壮、おお、マコトにおめでたい。

 今月の出し物は、①新版歌祭文、②関取千両幟、③釣女。①に豊竹咲大夫、②に豊竹嶋大夫が出るが、人間国宝に指定されたばかりの豊竹嶋大夫は、2月限りの引退を決意。1月が大阪での引退公演、2月が東京での引退公演である。

 思えば、豊竹嶋大夫を初めて観たのは、今から30年以上も昔のことである。当時の嶋大夫は、まだ「中堅」といったところ。東西の横綱格に竹本越路大夫と竹本津大夫が頑張っていて、大関クラス・後の竹本住大夫は、まだ「竹本文字大夫」を名乗っていた。

 30年前には関脇・小結格もズラッと揃っていて、竹本伊達路大夫(後の伊達大夫)、竹本織大夫(後の綱大夫 ☞ 源大夫)、豊竹十九大夫、急逝した豊竹呂大夫、まさに多士済々、現在のトップ ☞ 咲大夫や、来月引退を控えた嶋大夫は、まだ「若手から中堅へ」な位置づけだった。
にらみ鯛2
(舞台の上からも、巨大なにらみ鯛がニラミをきかせた)

 当時の若きクマ助は嶋大夫のファン。かすれることなく粘り強く伸びる高音は、当時の大御所・津大夫や越路大夫にもマネの出来るものではなかった。

 確かに嶋大夫の語りは、クロート好みではなかったのかもしれない。あの頃の文楽ファンで「オレは嶋大夫のファンだ!!」と公言していたのは、このワタクシぐらいのものではなかっただろうか。

 身長150cmほどの小柄な肉体が、舞台に現れるとグッと大きく見える。女たちの深い嘆きを描き出すあの粘り強い高音は、存続の危機に瀕した文楽の世界の至宝だったのである。人間国宝に指定された直後なのに、何故こんなに急に引退を決意なさったのか、残念でならない。

 お正月らしくおめでたい演目が続く中、嶋大夫の引退挨拶に大喝采が沸き起こった。挨拶は、弟子の豊竹呂勢大夫。若手から中堅へ、今や文楽の屋台骨を背負って立つ呂勢大夫であるが、師匠・豊竹嶋大夫の半生を、超満員の観客の前で見事に語り尽くした。

 珍しい「三味線の曲弾き」もあった。若手のホープ・鶴沢貫太郎であるが、嶋大夫の勇退を華々しく彩るマコトに花やかな三味線。劇場に飾られた「にらみ鯛」でさえ、ますます大きくヒトミをひんむくほどであった。
福娘
(終演後、「福娘」の皆さんが劇場を訪れた)

 終幕後、お待ちかねの「福娘」が劇場にやってきた。おめでたい「福笹」を、文楽関係者に手渡ししようという趣向である。福娘に選ばれた女子諸君は、「福娘」として活躍したことをシューカツの履歴書に書いてもいいんだそうである。

 福笹を受け取るのは、まず引退を控えた豊竹嶋大夫。続いて、たった今「釣女」を演じたばかりの人形たち、①太郎冠者と、②「フグにも劣る醜女」の2体である。福娘の諸君と比べられると、さすがに「フグにも劣る醜女」を演じた人形は可哀そうだが、あくまでお人形さんなんだから致し方ない。

 劇場内には、何だかおめでたい掛け声がかかる。「ほえかご、ほえかご」「ほえかご、ほえかご」「ほえかご、ほえかご」と際限なく連呼するのであるが、「ほえかご」とは漢字で書けば「宝恵籠」。宝と恵みを山のように積み上げる、めでたい籠であるらしい。

 そう言えば、むかしどこかの予備校の同僚に「恵宝先生」という方がいらっしゃった。日本全国あらゆるコンビニで「恵方巻」の幟がはためく季節だが、彼は「恵方」ではなく「恵宝」。きっと十日戎の「宝恵籠」にちなんだ、ありがたく&おめでたいお名前なのだろう。
ロッヂ
(大阪・心斎橋「ロッヂ」。レトロな雰囲気が楽しかった)

 福娘の皆さんが帰られた後、今井君は恐竜時代から数百年つきあっている友人と2人、大阪の街に飲みに出かけた。ちょっと遅いが、新年会である。

 まだ16時、飲み屋もなかなか開いていないけれども、まあお正月の土曜日だ、1日中開けている店だって少なくない。入ったのは心斎橋、「大丸」向かいの「御堂筋 ロッヂ」。洋食の名門で、小皿料理とアルゼンチンの赤ワインに舌鼓を打った。

 しかし諸君、たとえ満腹になっても、この今井君を侮ってはならない。1軒目に飽きたから次、2軒目に飽きたから次、いやはや3軒目に飽きたから、また次。そういうことをやっているうちに、気がつけば5軒目に突入した。

 ワインもカラッポ、日本酒もたちまち5合。やがてカラオケを2時間ぶっつづけで熱唱。店の人もひっくりかえる豪快な歌いぶりで歌いまくり、行き着いた先は北新地の「つるとんたん」。六本木でも有名なうどん屋さんである。
カレーうどん
(〆は北新地「つるとんたん」でカツカレーうどん。たいへんおいしゅーございました)

「いつも難波なのに、何で今夜は北新地?」であるが、それは今日のクマ助の宿泊先のせいである。今夜は淀屋橋というか、堂島というか、東日本大震災の直後にもお世話になった「ANAクラウンプラザホテル」に泊まる。

 ホントはいつもの梅田インターコンチにしたいのだが、「ヒコーキもマイルで0円、ホテルもポイントで0円」、そういう節約旅行をやってるんだから、今回は致し方ない。ここからなら、やっぱり北新地が近いのだ。

 泥酔が1度はさめ、その後でまた泥酔し、しかしカラオケ10数曲で完全復活を果たし、また泥亀みたいにデロデロ。その状態ですすったのが「つるとんたん」のカツカレーうどんである。

「年甲斐もない」と叱られるところだが、たまにはこういう世界も悪くない。これから成人式に向かう諸君は、あんまりハメを外してはイカンけれども、オトナになったら(あくまで人に迷惑をかけない範囲で)1年に2度か3度、こうしてハメを外してみたまえ。一生ホカホカ生きてゆけるはずだ。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 2/4
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 3/4
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER 4/4
4E(Cd) Glenn Gould:BACH/GOLDBERG VARIATION
5E(Cd) Fischer & Budapest Festival:BRAHMS/HUNGARIAN DANCES
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