Tue 171212 お正月、早朝から大阪へ/文楽劇場の鏡開き/驚きの太巻きオジサマ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 171212 お正月、早朝から大阪へ/文楽劇場の鏡開き/驚きの太巻きオジサマ

 マトモな人が聞いたら、「何でそんなに無理すんの?」と目を白黒させて驚くかもしれないが、1月3日の今井君は「ただ単に文楽を観るためだけに」、朝早くから大阪に飛んだ。

 朝8時のヒコーキでなければ開演に間に合わないから、オウチを出るのは夜明け前の6時。すると逆算して起床は4時ということになる。ワタクシは「朝のお風呂」がこの20年の習慣であって、夜にお風呂に入るのはイヤなのだ。

 4時起き、4時15分お風呂、60分の長風呂をして、出てくるのが5時15分。すっかり汗が収まるのを待って、5時50分に着替えを済ませ、ニャゴロワを起こさないように細心の注意を払いながら、無事に6時にオウチを出た。

 1月3日の朝の電車は、まだまだ十分にお正月のおめでたさが残っている。「これから初詣」という人だっているに違いない。受験生のカップルが初詣に行くなら、むしろ1月3日ぐらいの方がマジメな雰囲気に酔えるんじゃないか。

 地下鉄千代田線を二重橋前で降りて、静まり返った丸ビルの中をつっきり、東京駅丸の内南口まで徒歩7〜8分。「駅探」みたいなサイトでは出てこない経路だけれども、ワタクシはこのルートが一番好きだ。京浜東北線で浜松町へ、モノレール空港快速に乗れば、羽田空港まで15分強の道のりだ。
富士山1
(1月3日、快晴の富士山。たいへんおめでたい 1)

 浜松町の段階で、1月3日のお日さまは水平線から丸いお顔を出している。西の空にはこれまたまん丸な「スーパームーン」。満月から1日経過しているらしいが、それでも相変わらず大っきなまん丸お月さまのままである。

 スーパームーンの真横には、雪をいただいた真っ白な富士山。おお、おめでたい&おめでたい。こんなにおめでたいものが「3役そろいぶみ」をやったんじゃ、あとは「2 ☞ タカ、3 ☞ ナスビ」。タカがビューンと飛び回り、空からナスの雨でも降るしかないが、まあなかなかそこまでは期待できない。

 2018年初のラウンジに入って、早速「お神酒」をいただく。ダイアモンドラウンジにはワインもお酒も焼酎もズラリと揃っているけれども、いつもの出張時はご法度だ。

 しかし今日はお正月。しかも文楽を観にいくだけである。日本酒をグラスにてっぺんまで注いで、「お神酒」と名付けて飲み干せば、そりゃ文句を言う人なんか誰もいない。いやはや、たいへんおめでたい。

 ヒコーキは、往復ともチャンとエコノミー。遊びに行くのにプレミアムシートやグリーン車などという贅沢をすると、何だか申し訳なくなってションボリ、遊びの楽しさにまで少しヘコミが入る気がするのである。

 しかも諸君、お正月なんかは、むしろエコノミー席の方が楽なのだ。観察するに、前方プレミアム席はギューづめの超満員。今井君が座った後方の37Kあたりは、ガラガラのガーラガラ、4時起きの睡眠不足を補っていくには、最高のシチュエーションなのである。

 ついでに言っておけば、ワタクシはヒコーキ代を0円に抑えた。貯まったマイルを使って、往復とも無料。遊びに行くには、0円に近ければ近いほど楽しい。宿泊するホテルも、貯まったポイントを使ってこれまた0円。やっぱり遊びは、こうでなくちゃいかん。
富士山2
(1月3日、快晴の富士山。たいへんおめでたい 2)

 まもなく右の窓から、富士山がキレイに見える。再び三たび「おめでたい&おめでたい」であって、諸君、こんなにめでたい1月3日が、他に考えられるだろうか。

 大阪・伊丹空港に到着、午前9時。この日は日本中ギュッと厳しく冷え込んで、北国ゆきのヒコーキは軒並み「雪のため着陸できない場合は、羽田に引き返す可能性があります」とアナウンスされていたが、大阪行きのヒコーキも、強風に何度も大きく揺れた。

 見下ろせば、奈良盆地のゴルフ場は白く霜が降りている。北陸から分厚い雪雲が次々と流れ込んで、京都あたりの空を見ると「こりゃ京都は雪だんべ」という空模様なのであった。伊丹でも雪がちらついていた。

 空港からは、バスで梅田へ。梅田のインターコンチネンタルに荷物を預けて、これでようやく国立文楽劇場に出かける準備が整った。梅田からタクシーで15分、御堂筋をまっすぐに南下して左折すると、劇場前にはすでに長い列が出来ていた。

 行列は、劇場を取り巻いてすでに一周の長さ。「鏡開き」を待っているのである。文楽は今日が初日。開場に先立ち、文楽関係者・太夫・人形遣いなどによる鏡開きが行われ、人々に桝酒が振舞われる。直後に舞台に立つお人形さんが2体、巧みにお酒を注いでくれるのだ。
織太夫挨拶
(襲名披露を行う6代目竹本織太夫が、劇場前で挨拶する)

 4〜5年前までは、ワタクシもこの列に並んだ。おめでたい鏡開きの桝酒だ、いただかなくちゃ、申し訳ないじゃないか。このブログでも、4〜5年前の1月3日の写真には、目の前のお人形さんがキレイに写っているはずだ。

 しかし一昨年あたりから、この列が言語道断に長くなってしまった。別に「民主党政権下は不景気だった」と言うのではないが、あの頃は、鏡開きの列もホンの数十メートル。10分も並べば、たちまちお酒を注いでもらう順番が来た。

 今や、列を目撃した途端にあきらめる。ホントに劇場をグルリと一周しているのである。お酒もなくなっちゃうだろうし、それでも意地で並んでいれば、並んでいるうちに肝腎の文楽が始まっちゃう。お神酒はガマンして、遠くから様子を眺めるだけにとどめた。

 文楽の世界も襲名ラッシュであって、お正月早々「6代目竹本織太夫」が誕生する。昨年1月も当時の豊竹英太夫の「豊竹呂太夫襲名」があったが、今回は豊竹咲甫太夫から竹本織太夫へ。新・織太夫も鏡開きに加わって、劇場前は華やかな雰囲気に包まれた。

 近くには大阪の誇る「黒門市場」がある。市場の理事長が先導して、おめでたく一対の「にらみ鯛」が運ばれてくる。これも新年の儀式のうちの1つであって、劇場入り口にまだ新鮮な鯛が飾られ、舞台の上にはお馴染みの大っきなにらみ鯛が並ぶ。これをブログ写真で紹介するのも、1月3日の恒例である。
にらみ鯛1
(にらみ鯛、2018年バージョン)

 さていよいよ開演である。10時、開演前の大阪に雪がちらついた。桝酒1杯をいただた後だから、観客の多くがたいへん上機嫌。会場から太夫に大きな声が盛んにかかって、このあたりも東京の文楽公演では見られない、大阪ならではの光景だ。

 女性客のお着物率も高い。開演前に場内を見回すと、引退した人間国宝・豊竹嶋太夫さんが、ワタクシの4列後方の席でニコヤカに笑っていらっしゃる。劇場前では、桐竹勘十郎さんがファンに囲まれ、握手に応じていらっしゃった。マコトに華やかな1日だ。

 午前中は、「花競四季寿」と「平家女護島」。「平家女護島」とは、平家物語で有名な俊寛僧都の悲劇を、文楽流にアレンジしたお話であるが、これを昨年のお正月の主役・豊竹呂太夫が見事に語りきる。観客席からは「大当たり!!」と、驚くほどの大きな声でがかかった。
にらみ鯛2
(黒門市場から運ばれたホンマモンのにらみ鯛)

 ここで30分の幕間。観客は一斉にロビーに出て、まだちらついている雪に歓声をあげつつ、用意してきたお昼ごはんを開く。大阪人の昼の健啖ぶりは、いつ見ても嬉しくなるほどである。

 ワタクシのすぐ目の前に座った70歳ぐらいのオジサマは、ものすごい太さの太巻きを、嬉しげにカバンから出したのである。直径10cm、厚さ3cmほど。中身もたっぷり詰まったその太巻きを、あっという間に(おそらく4分で)まず5つ平らげた、1個につき約45秒のスピードである。

 残るは、あと4個。「ぜんぶ行っちゃうのか?」と目を見張っていると、オジサマは太巻きを傍らに置き、カバンから缶チューハイを取り出した。これを早速カパッとやって、ジュビジュビ4〜5口で飲み干した。

 再び太巻きのパックを手に取り、1個まるまる1口でワシワシ。しかし残念なことに、どうやらそこで満腹なさったようである。ご飯茶碗にして6〜7杯、豪快に平らげて悠々とロビーを去った。劇場5列目ぐらいに座っていた上品なオジサマがこれである。

 目の前の家族連れも、なかなか豪胆であった。夫婦と、小学5年ぐらいの男子。息子は、大っきな柿の葉寿司を10個ほど。ママは助六寿司。お稲荷さん4個と、太巻き4個。パパも同じ助六。ただしパパは酒に酔ったらしく、延々と息子のダラしなさを叱り続けて、カラミ酒の癖のあるヒトらしかった。

 こうして諸君、人々はお腹をいっぱいにして午後の開演を待ったのであるが、それはまた明日の記事で。

1E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.2 & No.6
2E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.3, No.5 & No.8
3E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.9
6D(Pl) 初春文楽公演:平家女護島/6代目竹本織太夫襲名披露口上/摂州合邦辻:国立文楽劇場
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