Wed 131211 新年の大阪で旧交を温める 列車ホテル 文楽のお人形にお酒を注いでもらう | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 131211 新年の大阪で旧交を温める 列車ホテル 文楽のお人形にお酒を注いでもらう

 1月3日、お正月早々ではあるが、いやむしろお正月早々だからこそ、ちょっと大阪まで出かけて旧交を温めてこようと思う。今井君ももう相当な年齢だから、旧交ぐらいチャンと温めておかないと、いつの間にか人生が冷たく冷えきってしまう。
 しかしサト助どんは人生を怠けて生きてきたので、温めるべき旧交があまり多くない。今のところ東京と大阪に限定されていて、限定されているからこそ1年に4度も5度も「これでもか!!」と温めることになる。
 こんなに長く人生をやってきた以上、ホントなら札幌や福岡や広島や、ロンドンやパリやニューヨークや、温めるべき旧交が地球上のいたるところにゴロゴロ転がっているべきなのだ。
 お正月早々大いに反省するサト助であるが、ま、いいじゃないか、とりあえず数少ない旧交を温めるために、朝早くからオウチを出て、ヒコーキでビューンと伊丹空港まで飛んで行くことにした。
お人形1
(大阪・国立文楽劇場で、お人形さんにお酒をついでもらう 1)

 実はこの日は「危機一髪」というか、もしもヒコーキじゃなくて新幹線を選んでいたら、この大阪行きもオジャンになるところだった。報道によれば、1月3日午前6時30分ごろ、有楽町あたりの新幹線沿線で火災が発生。消火活動は6時間に及び、新幹線のダイヤは終日大幅に乱れた。
 朝6時半と言えば、今井君が山手線で品川に到着した時間帯である。品川から京急線に乗り換えて、羽田空港に着いたのが午前7時すぎ。この頃には火災の影響ですでに新幹線がストップし、山手線や京浜東北線も次々と運転見合わせに入っていたころである。
 うにゃにゃ、だからサト助は、やっぱりヒコーキ派。「神戸でも大阪でもヒコーキ、京都でさえヒコーキ」と発言しては、同僚の先生に「おかしいんじゃね?」と呆れられている。しかしヒコーキは鉄道に比べてマコトに安全な乗り物であって、昨年1年、ニューヨークやサンチャゴ・デ・コンポステラで鉄道は脱線転覆を繰り返したが、ヒコーキの大事故は報じられなかった。
のぼり
(快晴のお正月、風にノボリが翻る @大阪・国立文楽劇場)

 ついでに諸君、「列車ホテル」なんてのが登場すると、サト助は聞いただけで怒り心頭に発するのである。昨日も夜の新幹線の到着が大幅に遅れ、東京駅や博多駅から先の乗り継ぎができない乗客が多く発生した。すると、
「終電が終わっていて乗り継ぎできないお客様のために、ホームに新幹線車両を停車させ、『無料の列車ホテル』として提供した」
という、マコトに唖然とするような対応をJRがするのである。
 新幹線車両って、あの狭苦しいヤツだろ? 真夜中から朝がくるまで、4時間も5時間もあれにつっぱらかって座ってガマンしろって、そういうこと? うーん。サト助は、そういう立場に追い込まれたヒトビトの苦難を考えると、思わず目に涙が滲んでくるのだ。
 欧米人なら、帰れないヒト全員のために、断固ホテルを要求する。4年前、いきなり「欠航」が決まってロンドン・ヒースロー空港に取り残された時、ポルトガル行きのヒコーキの客は、全員で空港職員を取り囲み、団体交渉を開始。当然のことながら航空会社の負担で、ホテルの部屋と、ホテルまでバスチャーターを要求した。
 しかも、交渉はすぐに成功。大型バス3台に分乗した乗客は、ヒースロー空港近くのホテルで朝までゆっくり身体を休めることができた。列車ホテルだの、飛行機ホテルだの、そんなマヤカシは許さない。
枡
(劇場の前には、お酒を注ぐ枡が大量に積まれている)

 そんなことを考えながら、「いっそのこと、『列車ホテル』を常態化させたらどうだろう」というアイディアが浮かんだ。
 どんどん廃止されていくブルートレインの車両を2編成か3編成、キレイなままで保存して、普段は品川あたりの車庫に寝かせておく。いざ「列車ホテルが必要」となったら、すぐさま東京駅ホームに移動させて、乗り継ぎできなくなったお客さまは「憧れのブルートレイン」で休んでいただく。
 もちろんそんなことやってたら維持管理費がバカにならないから、この際、いっそのこと、普段からホテル営業すればいいのである。食堂車もつけ、バーラウンジ車両もつけて、A寝台にB寝台、個室車両にレトロ個室、いろいろ工夫を凝らして連日お客を呼ぶ。あるときは新宿駅、あるときは上野駅。ちょっとぐらいミステリー性を持たせれば、おお、なかなか人気が出そうである。
 以上のようなバカなことを考えつつ、クマ蔵は朝9時15分に伊丹空港に到着。今日のフライトは「まさにお正月」という御目出度さで、羽田を飛び立ってすぐに美しい富士の全景が見えた。朝の雲にポッカリ丸い穴が空き、円錐型の白い富士が麓までキレイに見下ろせたのである。
 富士ばかりではない。やがて南アルプス、続いて中央アルプス、御岳山の勇姿。名古屋港、木曽川に長良川、伊勢湾、紀伊半島の険しい山並み。深い山並みに点在する村々もハッキリと見えた。やがて穏やかな奈良盆地に入ると、「こんなにあって大丈夫?」と驚くほどたくさんの古墳群。美しい光景を眺めながらのお食事には、朝のフライトなのに、チャンとオセチ料理が出た。
鯛
(舞台の上にも2匹の鯛が踊って、大阪はマコトにおめでたい)

 ということは、このクマ蔵は大阪まで遊びに行くのにプレミアムシートに座っていったのである。おお、贅沢だ。おお、いい気になっている。おお、身のホド知らずのクマさんだ。そもそも、いくらお正月と言ったって、朝からヒコーキの中で赤ワインなんか痛飲したら、いかんぜよ。
 しかしもちろんクマどんは貯まったマイルで大阪に飛んだのだ。実質1円もかかっていない。ついでに言えば、大阪に1泊した宿泊代もゼロ。貯まったポイントで泊まったのだ。何しろクマどんは生き方上手。旧交を温めるのに、ムダな出費はしないのである。
 というわけで、朝9時にすでにホロ酔い加減のクマどんは、9時半、大阪・日本橋の国立文楽劇場前に立っていた。朝10時、人形浄瑠璃・文楽を観ながら旧交を温めようという企画なのである。
 いいかね諸君、中年のオヤジが「旧交を温める」と言う時、一般的なオヤジなら「飲む」「食う」「歌う」がいいところ。大学時代の先生や仲間たちをコキおろし、今の部下たちについて愚痴を言いあって、いつの間にか酔いつぶれている。小津安二郎の映画の世界と同じことである。
 しかし、それじゃあんまり寂しいじゃないか。大好きな小津映画については「マタパリ」最終回で語ることになる予定だが、今井君は寂しがりやのクマだから、「飲む」「食う」「歌う」で終わるのはどうしてもイヤ。歌舞伎なり文楽なり、シェイクスピアなりオペラなり、何らかの意味でアタマの旧交も温めたい。
お人形2
(大阪・国立文楽劇場で、お人形さんにお酒をついでもらう 2)

 アタマの旧交に文楽を選んだのは、1月3日大阪の文楽では「鏡わり」のお楽しみが追加されるからである。このお楽しみは、1月3日朝の大阪のみ。他の街ではムリだし、大阪でも1月3日以外には一切考えられない。
 朝10時、文楽劇場の周囲にはすでに長い列ができていた。劇場前に人間国宝・竹本住大夫が登場して、「今年も文楽をよろしゅー頼んます」と挨拶。すぐそばの「黒門市場」から大きな鯛が届けられて、雰囲気もたいへんおめでたい。
 お偉方の挨拶が済むと、いよいよお待ちかねの「鏡びらき」が始まる。大きな日本酒の樽が持ち込まれ、住大夫も加わって威勢よく鏡割り。1列に並んだ今日のお客に枡が配られ、樽の日本酒が振舞われる。
 何と言っても嬉しいのは、お酒を注いでくれるのが文楽のお人形さんたちだということである。この直後に舞台に上がる「二人禿」の可憐な2体の人形が、ヒシャクで枡にお酒を注いでくれる。
 「禿」とは? 諸君、それはグーグル先生に質問しておくれ。「かむろ」で質問しておくれ。いくらなんでも、ダメだよ「2人ハゲ」は。「禿」はハゲとも読めるけれども、お正月の文楽劇場に登場する娘の人形に「ハゲ」ってことはないだろ? 今年も、やっぱり何より大切なのは文脈の理解。今の文脈なら、2人カムロに決まってるじゃないか。

1E(Cd) Jochum & Bavarian RSO:MOZART/THE CORONATION MASS
2E(Cd) Solti & Wien:MOZART/GROßE MESSE
3E(Cd) Solti & Wien:MOZART/GROßE MESSE
4E(Cd) Solti & Wien:MOZART/GROßE MESSE
5E(Cd) Solti & Wien:MOZART/GROßE MESSE
total m55 y2235 d12430