Fri 161216 和服率が高い/居眠り率も高い/豊竹呂大夫のこと/Mac君はフザケすぎだ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 161216 和服率が高い/居眠り率も高い/豊竹呂大夫のこと/Mac君はフザケすぎだ

 こういうふうで(スミマセン、昨日の続きです)、
「3度のメシより文楽が好き」
「お雑煮より、カルタ取りより、人形浄瑠璃がいい」
「初詣は、文楽の後でかまわへん」
という人々が、大阪には数多く存在するのである。

 その辺が、東京での文楽公演と違うところ。東京の場合、文楽に大勢の観客が集まっても、何となく
「勉強しにきました」
「教養をつけるために来ました」
「たえず見聞を広げなきゃいけませんよね」
という堅苦しい雰囲気なのである。

「文楽の前に、へへへ、お酒を飲んじゃいまひょ」
「お人形さんに注いでもろたら、お酒もますますおいしくなるで」
みたいな、お正月らしく花やいだ空気は、やっぱり大阪ならではのものである。

 劇場内はほぼ満員、空席はほとんど見当たらない。「満員御礼」みたいな掲示はないが、舞台の上には2匹の「にらみ鯛」が厳しいニラミをきかせ、おそなえのお餅には大っきな海老さんがぶら下がって、雰囲気はマコトにおめでたい。
にらみ鯛
(舞台の上で「にらみ鯛」がニラミをきかせる)

 こういう手放しのおめでたさは、やっぱりいいですな。せっかくのお正月や、せっかくの初春文楽や、たっぷり楽しませてもらいまひょ。大御所 ☞ 引退された人間国宝・竹本住大夫も姿を見せ、華やかな雰囲気はいやが上にも盛り上がっていく。

 女性の和服率もきわめて高い。7割、いや8割を超えているかもしれない。お若いオネーサマから、人生経験マコトに豊富と思われるやんごとなきオバーサマまで、「せっかくお正月に文楽に行くんやから、着物は当たり前やんか」ということらしい。

 今井君のお隣のそのまたお隣の女子も、何だか高価そうなお着物を来ていらっしゃる。京都観光のレンタル着物とは、まさに一線も二線も三線も画す高級感が漲っている。

 それにしても京都のレンタル業者の皆様、あの「いかにもナイロン」「ピンクのラップでグルグル巻き」みたいな安っぽい着物で京都を埋め尽くすのは、そろそろ考え直したほうがいいんじゃあるまいか。

 せっかく外国人観光客が「キョートで着物を着てみよう」と張り切っているんだから、せめてもう少しホンモノ感があっていいと思うのだ。あんなペラペラした寒そうなのを着て、それをたくさん写真に残して、その写真をSNSで拡散する。うーん、あんまり京都のためにならない気がする。
黒門市場
(文楽劇場から徒歩5分、「黒門市場」から鯛が届けられる)

 もちろん今井君なんかは、人の服装を云々出来るようなクマ助ではない。この日の大阪でも、完全に普段着のままである。日曜日のヒマなオジサンが、ちょっとコンビニまでビールと酒とツマミを買いに出たみたいな、まさに超普段着のままヒコーキに乗ってきた。

 そのヒコーキもプレミアムクラス、今晩の宿泊もインターコンチというのだから恐れ入る。隣りの隣り、高級和服のオネーサマに迷惑がかかったらどうしよう。

 不覚にも居眠りして、ヨダレでも垂らして、そのヨダレが何かのハズミで隣りを通り越してその隣りまで長くたなびき、たなびいたそのヨダレが高級和服を汚しちゃったら、お正月早々恥ずかしいじゃないか。新春文楽は、以上のような複雑な思いの中で始まった。

 最初はやっぱりおめでたく「寿式三番叟」。しかしどんなにおめでたくても、眠くなるものはやっぱりどうしても眠くなる。ズラリと並んだ三味線も、その背後にズラリと並んだ太夫の皆さんも、その姿だけで「キレイだ」「美しい」と感激の声が漏れるほどだが、その感激は5分ももたない。
お供え
(劇場のおそなえ餅。大っきな海老がおめでたい)

 だって諸君、観客はみんな、今朝は5時か6時に起床したのだ。昨夜だってまだ正月2日、夜更かしもしただろう。4時間か3時間の睡眠で、5時起床、女子の場合はそれからじっくり着付けをして、お顔にもいろいろ塗らなきゃいけないだろうし、男子ならまたお酒も飲んだだろう。

 そして9時過ぎには文楽劇場にたどり着き、長蛇の列に並んだあげくに、大っきな枡に一杯の冷や酒をグイッと飲み干した。そこへ「三番叟」。うーん、今井君の周囲の居眠り率は、6割から7割に及んだか。

 居眠り率を計算しながら、ワタクシ自身は居眠りを免れ、隣りの隣りのオネーサマの和服も、クマのヨダレの被害を免れた。文楽には、時にこういう楽しみ方もある。

 御弁当の時間をはさんで、昼からは「奥州安達原」「本朝廿四孝」。前者は安倍貞任&宗任の豪快な立ち姿が何ともカッコ良かったし、後者では人形の桐竹勘十郎が、相変わらずの見事なケレンを見せつけてくれた。

 この辺になると、さすがに居眠り率は低くなって、ほぼゼロと言っていい。そして「さすが大阪!!」と唸らせられるのが、太夫や人形遣に対して盛んな拍手と声援が上がることである。
心斎橋
(終演後のお楽しみは、心斎橋の日本酒の店である)

 豊竹英太夫(ハナフサ大夫と発音する)として長く活躍してきた太夫が、この4月「豊竹呂太夫」を襲名する。6代目である。「ハナフサ太夫!!」「ハナフサ太夫!!」という盛んな声援に混じって、早くも「6代目!!」の声が混じった。

 実はワタクシは、先代の豊竹呂大夫のファンだった。20世紀の終盤、竹本越路大夫と竹本津大夫の二枚看板が引退してしまった後は、豊竹咲大夫と先代・呂大夫が支えていくものと、誰もが新・二枚看板に期待していたのである。

 先代・呂大夫は、新ジャンルにも積極的に挑戦を続けた。「ロックと文楽の融合」なんてのもやった。その辺はあんまり好きじゃなかったけれども、今から17年前、2000年の夏、「国言詢音頭」を語ったのを最後に、55歳で急逝した。ワタクシが文楽にあんまり行かなくなったのは、その頃からである。
二兎
(にらみ鯛ならぬ「にらみ兎」。心斎橋のお店には、こんな珍しいお酒も飲める)

 だから今回の6代目襲名は、たいへん嬉しい出来事である。しばらく行かなかった東京公演にも、今年ぐらいからは顔を出してみようかと考える。諸君もどうですか。あんまり「勉強」「教養」みたいに肩ヒジ張らずに、気軽に文楽を楽しみに以降じゃあーりませんか。

 そこで1つ、ボクチンはMac君を叱っておきたいのである。少しはマジメに変換に取り組んだ方がいいんじゃあーりませんか? せっかくシミジミ先代の呂大夫のことを思い出していたのに、「とよたけろだゆう」を「豊田ケロ太夫」と変換されたんじゃ、シミジミも何にもなくなっちゃうじゃあーりませんか。

 ついでに「奥州安達原」だって、Mac君、何ですか「応酬足立が腹」ってのは? 足立クンのお腹でもコチョコチョくすぐって、ギャグの応酬でもするんですかい?

「悪ふざけもいいかげんにしなさい」
「もうお正月は終わりなんですよ」。
さあ三学期が始まり、入試もいよいよ本番だ。いつまでもフザケているのは、Mac君と今井君に任せておいて、諸君はバシバシ2017年の目標をクリアしていってくれたまえ。

1E(Cd) John Coltrane:JUPITER VARIATION
2E(Cd) John Coltrane:AFRICA/BRASS
3E(Cd) Miles Davis:THE COMPLETE BIRTH OF THE COOL
4E(Cd) Candy Dulfer:LIVE IN AMSTERDAM
5E(Cd) Hungarian Quartet:BRAHMS/CLARINET QUARTET・PIANO QUINTET
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