Sun 180408  浪人生の焦りが分かる/ポーの町でポーっとする(フランスすみずみ17) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 180408  浪人生の焦りが分かる/ポーの町でポーっとする(フランスすみずみ17)

 長いように思えた大型連休だけれども、いやはやマコトにあっけない。朝日新聞の天声人語に「今日から後半」とか書かれると、5月のカレンダー3日4日5日6日、4連休の赤い文字の行列が、かえって暑苦しいのである。

 

 サラリーマンのお父さんは、5日の午後ぐらいからきっと機嫌が悪くなる。それが最終日の6日日曜日、「ちびまる子ちゃん」とか「サザエさん」とかが始まってしまうと、もう泣きそうだ。「笑点」もいけません。「これで週末が終わる」だけでも悲しいのに、大型連休が終わっちゃうのだ。

 

 受験生はどうだろう。むかしむかしの大昔から、連休には必ずその年度最初の大型模擬試験が実施されることになっていて、「マーク模試」「センター模試」、そういうたいへんドライな模試が、3日か4日に組まれていたはずである。

19943 お菓子

(ポーの町の有名なお菓子屋にて 1)

 

 呑気な現役生なら、あまり成績が振るわなくても、そんなに気に病む人は多くないだろう。「まだまだ」であり「慌てるな」であり「そのうち何とかなる」であって、「実は何とかなったりしない」という現実を感じるのは、夏休みの終わりか、文化祭の最終日か、まあそんなところである。

 

 ところが諸君、浪人生となると話が違う。「センター試験まで残り9ヶ月」。現役の時の失敗をよく覚えているから、その焦りはたいへんなものである。

 

 第1志望に入学を拒絶されてから、すでに2ヶ月が経過した。この2ヶ月、自分は何をやっていたんだろう。「卒業式」なんてのもあって、予備校選びにも時間をかけた。講師の自己紹介と自慢話ばかりの春期講習も受けたけれども、ちっとも実力が伸びた実感がない。

 

 というより、むしろこの2ヶ月、実力はすっかり下降気味なんじゃないか。「合格まであと一歩」というところまで迫っていた2月の鬼気せまる迫力はどこかに消え失せ、力は錆つき、気力は萎え、やる気も何だかブヨブヨふやけて、「おやおや、ホントに5月病」という世界だ。

19944 お菓子店

(ポーの町の有名なお菓子屋にて 2)

 

 浪人生諸君、今すぐ立ち直りたまえ。キミはいったい何をやってんだ? 直ちに音読を再開したまえ。浪人主体の予備校が悪いのだ。3月には何にもしてくれず、4月になっても「まだ早い、慌てるな」と授業開始を引き延ばし、4月20日近くになってやっと始まった授業は、講師の自己紹介と学習法うんぬんばかりだったじゃないか。

 

 連休は、おそらく「カレンダー通り」。5月7日になって久しぶりに教室に戻ると、教務の人々が「夏期講習の事前申し込みについて」、延々と語るホームルームないしチュートリアル。講師は相変わらず人気稼ぎの楽しいオハナシを続けて、ファン育成に余念がない。

 

 世の中は春まっ盛りというか、「夏が来た!!」とみんなが絶叫してもおかしくない陽気だ。群馬の館林、埼玉の熊谷、岐阜の多治見、軒並み30℃を超えてポカポカ&蒸し蒸し&じーりじり、もう勉強なんかに身の入る季節ではなくなってしまった。

19945 ポー

(ポーの町。ポー川の向こうの山を越えればもうスペインだ)

 

 桜はとっくに終わってしまい、フジの花も終わりに近い。ツツジが咲きほこり、大っきなボタンの花も咲き出した。「立てばシャクヤク、座ればボタン、眠くなったらバタンキュー」。浪人生の近未来がマコトに心配だ。

 

 だってそうじゃないか。浪人を決意したのが3月初旬、あれからもう2ヶ月が過ぎて、3月4月はほとんど無為に過ぎていった。3月4月が無為に過ぎたのに、7月8月はギュッと濃密に有意義に過ごせるという保証がどこにあるんだ?

 

 それなのに予備校サイドは、「夏休みが勝負」の1点ばり。ならばうかがいますが、5月6月の本科授業は、何のためにあるんざんすか? 諸君、いかんいかん。2ヶ月放置していた音読を、いま直ちに再開したまえ。連休が終わるまでに、数学の薄い基礎問題集ぐらい、一気に解いてしまいたまえ。

 

 ホントは理社科だって、今すぐホンキにならなきゃいかん。つい2〜3ヶ月前には合格ラインに迫っていた理科&社会、何で「秋まで放置」で平気なの?

19946 マリア様

(ポーの教会のマリア様も、やっぱりスミレ色の帯だった)

 

 以下、今から9年前に書いた浪人生を叱咤激励するためのブログ記事を列挙しておく。昭和の文学全集並みに段落分けのない長文であるが、浪人生諸君、いや現役生諸君やその周囲にいるオトナも含めて、ぜひ熟読してみてくれたまえ。

 

Tue 090421 浪人を決めたヒトビトの3月と4月 予備校の授業にもう失望したヒトへ

Wed 090422 「オレについてくれば大丈夫」「テキストさえやっていれば大丈夫」について

Thu 090423 再び「テキストだけやっていれば大丈夫だ」について 0.8の累乗の恐ろしさ

Fri 090424 若手情熱派講師の予備校ライフと奇妙な授業 中堅不人気講師の予備校ライフ

Sat 090425 「もう連休に入るのに、授業は全然進んでくれない、ムカつく」人への処方箋

Sun 090426 失望した受験生への処方箋1 得意科目は現状維持で 苦手科目を肉食獣的に

 

19947 藤

(フランス全土、藤の花が盛りだった)

 

 さて4月16日、18日間にわたる「フランスすみずみ」の旅の6日目、今井君はホントにすみずみ、スペイン国境の町ポーを訪ねていた。「そんな所に何しに行ったんだ?」と尋ねる功利主義のカタマリのようなオカタには、もちろんサトイモ君は「ポーっとしに行きました♡」と応じるしかない。

 

 そもそも、旅にいちいち目標や目的を設定する方がおかしいのである。目的も目標もないからこそ、「旅」の名に値するのであって、目標なり数字なりの達成を目指し、脂ぎった顔で空港や駅をウロウロするのは、それは「出張」「出稼ぎ」の類いである。

 

「ポーには、ポーっとしに行きました」と平然と応じられることこそ、今井サトイモ太郎のプライドなのだ。別にポーばかりではない。ルルドにもアルビにも全てポーっとしに行ったのであって、「ポーっとしてちゃ意味がない」みたいな意識高い系の旅行は大キライである。

19948 ピザ

(ポーでもピザを食らう)

 

 だから「ポー城」をポーっと探検し、ポーというよりフランス全体でも有名なお菓子屋さんで、超有名なピンクのお菓子を買ってポーっとし、「ピンク + ポー」と言えば、やっぱり1978年ピンクレディーのヒット曲「わたしピンクのサウスポー」を口ずさまずにはいられない。

 

 阿久悠作詞、都倉俊一作曲。40年前、王貞治という人物はまだ「背番号1のすごい奴」だった。「ヤツ」ではなくて「奴」と表現されているところが、やっぱりさすがに昭和である。

 

「胸の鼓動はドキドキ 目元はクラクラ 負けそう、負けそう」「キリキリ舞いよ キリキリ舞いよ 魔球は魔球は ハリケーン」。いやはや、何ともすげー驚くべき時代だった。

 

 そうして諸君、スペイン国境の雨の中、そんな歌を口ずさみつつ、サトイモ君はどんどん機嫌がよくなってきた。ワタクシは、うすら寒いのが好き、雨降りも好き、藤の花も大好き。賑やかで花やかな街より、200年も昔にピークを迎えて、もう3世代にも4世代にもわたって下降線を描いてきた町が好きなのだ。

19949 ワイン

(ポーでも、サンテミリオンの赤ワインをぐびぐびやる)

 

 アンリ4世のポー城の周囲に、侘しい飲食店が10軒ほど肩を寄せ合っている。月曜日を定休にしている店が多くて、冷たい雨の中、店を開けているのは、ホンの3〜4軒にすぎない。

 

 13時、その中の1軒に入って、ピザと赤ワイン1本を注文してみる。相変わらず、どんなにフランス語で頑張ろうとしても英語で返されるので、その点マコトにムカつくのであるが、さすがにポーまでくると、その英語もずいぶん鄙びてくる。

 

 完全に地元のヒトビトの店であって、中にはいかにも気難しそうな中高年男性も混じっている。下手をするとギュッと絡んでこられそうなので、クアトロ・フォルマッジョとサンテミリオンの赤ワインに集中。地元の人々との仲がこじれないように気をつけつつ、月曜の昼がポーっと過ぎていった。

 

1E(Cd) S.François& Cluytens & Sociétédes Concerts du Conservatoire:ラヴェル/ピアノ協奏曲

2E(Cd) Paco de Lucia:ANTOLOGIA

3E(Cd) 寺井尚子:THINKING OF YOU

4E(Cd) Ono Risa:BOSSA CARIOCA

5E(Cd) 村治佳織・山下一史&新日本フィル:アランフェス交響曲

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