謎解きと駆け引きのバランス~ただの犯人当てゲームではない話~ | マーダーミステリー・オンラインセッション!

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 最近流行り始めている『マーダーミステリー』をDiscordを使ってオンラインで遊ぶやり方などについて紹介しています。
「マーダーミステリーってなに?」「Discordってなに?」「イケメンさんすてき抱いて!」などの疑問にお答えできるようがんばります

 

 おひさしぶりですげんきですか!!!

 こんにちはこんばんはイケメンだようッ! いやぁーびっくりするほど間が空きましたね!! 書きたい内容は溜まってるし、書きたい内容も分かってるんだけど、実際に書いてみると伝えるのが難しくて。書いちゃ消し書いちゃ消しの繰り返しですよ。たまに下書き読み返すと、自分で読んでわかんなくなることあるしね!w

 

 さて、ひさびさの更新は「シリーズ:マーダーミステリー作るのって難しいよね」の第四弾って感じでお届けですよ。

 初めてここを見に来てくれた子猫ちゃんたち、「マーダーミステリーってなんだろう?」って興味を持ってやってきた子猫ちゃんたちには、ちょいとディープに過ぎる内容です。ここよりもまずはこのへん↓から読んでみてね!

 

 マーダーミステリーはだいたいわかるけど、オンラインで遊ぶにはどうすりゃいいの? って子猫ちゃんはこのへん↓から!

 

 で、こっから先はディープな話。いつも通り長いので興味ある人だけ読んでねッ!

 今回のテーマは『"謎解き"と"駆け引き"のバランス取り』について。大前提として「マーダーミステリーってただの犯人当てゲームじゃないんだ」っていう認識が必要になる話だよ! 準備はいいかなッ!?
 チェッケラー!

 

まず需要の話の整理から

 この「シリーズ:マーダーミステリー作るのって難しいよね」、つまりはマーダーミステリーのシナリオを作る立場でぶつかった壁や問題点について、ああでもないこうでもないと考えた結果を言語化してまとめておこうという試みだ。「こうすれば作れるよ」などと口当たりの良い事は死んでも言えないし(言えるなら言わずに作ってる)、「こうじゃなきゃいけない」と定義する気も全くない。言わば愚痴と怨嗟のメモ帳であるw とは言え、同じ壁に当たった同士には参考になれるかも知れないし、作る気は全く無くともプレイ時に覚えた満足感や違和感に対して「なるほどなー」と思えるかも知れない、という思いでしたためている。

 

 さてこの「シリーズ:マーダーミステリー作るのって難しいよね」で一番最初にpostした記事にこういうのがある。もし未読だったら、目を通しておいた方が、この先の話が分かりやすいかも知れない。

 上記の中で、少なくとも現状のマーダーミステリーのプレイヤーの需要について、四つに分類した。「謎解き追求型」「お芝居ごっこ追求型」「駆け引き追求型」「物語追求型」の四種だ。

 この四つの需要は、更に大きく二種に分類される。「頭を使いたいタイプ」と「頭を使いたくないタイプ」とに。

 どんな種類のゲームであれ、その需要にはこの「頭を使いたくないタイプ」を常に内包する。「なんか難しいこと考えず、ただ今この場が楽しいために」遊びたい、という需要だ。そして、この点が実はアマチュア作家とは非常に相性が悪い。シナリオを作る側は頭を使わずに作れないからである。


  念の為断っておくが、「頭を使いたくないタイプの需要」を否定する気は一切無い。むしろ、どの需要も軽視すべきではないというのが僕の考えだ。

 さて、今回は「頭を使いたくないタイプ」の需要への応え方は一旦置いておき、「頭を使いたいタイプ」の需要の満たし方について考えよう。最初に分類した四種のうち、「謎解き追求型」と「駆け引き追求型」の二種がこれに当たる。ここまでは良いだろうか。

 

 えー、さて。

 ごく個人的な範囲で、多くのマーダーミステリーのシナリオ作家たちと話してきて思うに、シナリオ作家にはミステリ好きが多いという実感がある。

 一方で、GMとして非常に多くのマーダーミステリープレイヤーと接してきた実感で言えば、マーダーミステリーのプレイヤーのミステリ好きは少数派である。体感、ミステリに特に興味のないプレイヤーは七割を超える。

 これは現実として飲み込んでおかないと、需要と供給のミスマッチが起こる。

※ミステリに「興味がない」だけであって、積極的に「嫌い」というタイプはほとんどいない。だからミステリの本来の面白さを、それと知らず享受しているタイプのプレイヤーも含まれている。

 

 そして、ミステリに興味のないプレイヤーも、逆にミステリ好きのプレイヤーも、ある種の誤解を持ってマーダーミステリーというゲームを訪れることになる。それは「マーダーミステリーとは犯人当てゲームである」という誤解だ。僕はこの点については明確に否定しているが、実際に「犯人当てゲーム」を期待して集まるプレイヤーの需要は無視してはならないとも考えている。(その上で、ただの犯人当てゲームでは味わえない面白さを提供せねばならない、とも)

 このあたりの話については、昔まとめているので、違和感を持ったなら一読してもらいたい。

 時間がない人や読み取れない人のためにまとめると、マーダーミステリーがただの犯人当てゲームではないと断じる理由は二点で、

・投票で意思決定するから

・犯人をプレイヤーに含む可能性があるから

 である。

 自分だけ犯人がわかっても仕方がない。「犯人はあなたですね」と指摘して「ぎゃふん」と言ってくれる犯人はいない。だから、自分が犯人だと考える人物に票を集めなければならない、のがマーダーミステリーというゲームの本質部分である。逆に言えば、投票という要素があるから議論が生まれるのであり、議論の部分がマーダーミステリーのプレイの本質である以上、投票は外しようがないのだ。この話は下記でまとめている。

 つまり、マーダーミステリーとはその基本的な構成の中で、「謎解き」と「駆け引き」の要素を同時に含んでいるのだ。駆け引きのないマーダーミステリーは存在できない。たとえ探している犯人が分かっても、それだけでは充分ではなく、周囲の票を犯人に集める努力が必要になるからである。「ただの」犯人当てゲームではない、と主張するのはこういうことだ。

 反面、「謎解き」要素が全く介在しないマーダーミステリーもまた存在できない。駆け引きの主眼と目的、手段は投票になるわけだが、そもそも「誰を最多票にするのが正解か」というプロセスを必ず踏むからである。なぜならマーダーミステリーは正体隠匿型ゲームだからだ。駆け引きをする上で最も重要な「誰が味方で誰が敵か」という部分を紐解いていくのは、そのまま「謎解き」要素にあたるからである。「ただの」犯人当てゲームではないだけで「犯人当てゲーム」の一種であることは否定していない。

 

 以前、頭を使いたいタイプの需要として、「謎解き追求型」と「駆け引き追求型」を挙げた。

 

このうち「謎解き追求型」はシンプルに言えば「犯人当てゲームを楽しみたい」という需要に近い。逆に「駆け引き追求型」は、投票にまつわる駆け引き部分で騙したり騙されたり、嘘をついたり暴いたり暴かれたり、という対人戦の部分に重点を置いている。

 犯人当てゲーム「だけ」を楽しませたいのであれば、そもそもマーダーミステリーというゲームの形がそれに向いていない、という事は自戒したほうが良い。しかし駆け引き「だけ」を楽しませたいと思っても、その過程で必ず謎解きの要素は生じてくる。

 マーダーミステリーにおいて「謎解き」と「駆け引き」の要素は外すことが出来ない。だから「ただの」犯人当てゲームではない。

 口説いようだが、ここまでをコンセンサスとして、話を先に進めたい。

 

 今日考えたいのは、その両者のバランス取りについてだ。

 

謎解きと駆け引きは分離できない

 作者ごとに好みというものがある。この「謎解き」と「駆け引き」のバランスにおいてもだ。どちらを重点的に楽しんでもらいたいのか。これは作者によっても異なるし、シナリオによっても異なる。しかし、ここにある種の原則は存在する

 マーダーミステリーでは謎解きが先にあり、駆け引きが後に来る

 これは非常に明確な"原則"である。ごく一般的なマーダーミステリーの構成で考えてみよう。

 

 プレイヤーが複数おり、その中の一名が犯人「かも知れない」。

 プレイヤーたちは情報を交換し、或いは捜査で入手し、すり合わせを行いながら、それぞれ誰が犯人であるのかを"推理"する。

 議論や捜査を終え、プレイヤー全員が「投票」を行う。自分が犯人だと考える人物に対し票を投じる。結果として、真犯人が最多票だったら、犯人を探すプレイヤーの勝ち。そうでなければ、犯人やそれに類するプレイヤーの勝ち。

 これがごくシンプルなマーダーミステリーの構成だ。この上それぞれに個人ミッションが課されており、また犯人サイドは情報の共有や整理を阻害して真相解明を阻む、という構図が加わって、ゲームとして完成している。

 ざっくり構成を考えたらまあ、こういう事で良いだろう。これに異を唱えるなら、それは理屈の話ではなく、好き嫌いの次元の話なので、ここでは取り合わない。

 

 話をシンプルにするために「犯人を最多票にする」という目標、目的、ミッションの前提で話を続けよう。

 もし君が「犯人を最多票にする」ミッションを成功させたいのなら、プレイヤーとしてすべきことは二つある。犯人を特定することと、その犯人に最多票を集めることだ。そして言うまでもなく前半部分が謎解きの、後半部分が駆け引きの要素になる。何度も言うが、一人だけ犯人が分かっても「意味がない」からだ。

 

 と、こうして考えると、順番が固定されているのは分かるだろうか。
 謎解きを頑張る=犯人を特定する、から初めて、票を集めるべき所に集める=駆け引きを頑張る、という要素が生まれる。必ず謎解きが先に来て、駆け引きが後に来る

※これ、「犯人を~」みたいな言い方だから誤解が生じている可能性に今気付いた。正体隠匿系ゲームなので、探さなければならないのは本来「敵」と「味方」だ。って言ったほうが分かりやすかったかも知れない。いや分かりづらいか…

 

 何度も言うように、謎解き「だけ」を楽しみたいプレイヤーも、駆け引きの要素からは逃げられない。一人の一票では決められないからだ。

 反面、駆け引き「だけ」を楽しみたいプレイヤーも、謎解きの要素からは逃げられない。そもそも誰に票を集めなければいけないのかが分からないからだ。

 よって、どちらのタイプのプレイヤーも、両方頑張らねばならないことになる。

 これがマーダーミステリーの基本的な構成の上で成り立っている話だ。

 

 そして実は「両方頑張る」ために共通の解法がある。謎解きが先に来て駆け引きが後に来る、ということは、謎を早く解けるほど駆け引きで優位に立てるということに他ならない。

 駆け引きとはつまり交渉であり、交渉とはつまり根回しであり、ということは早く始められれば早く始めるほどに優位に立てる(立ちやすい)、のである。これは、「犯人を当てたい」者も、「特定の人物を最多票にしたい」者も、共通して同じ攻略法のはずだ。

 結局、マーダーミステリーとは、全プレイヤーが「いち早く謎を解いて」「駆け引きで優位に立つ」事を目指すゲームなのである。

 

 だから、ここで考えるべきなのは。

 自分の作るマーダーミステリーは、「謎解き」「駆け引き」のどちらの要素をより楽しませたいのか、という点になる。

 言葉を変えれば、「いつまで謎解きの方を楽しませたいのか」「どこから駆け引きを楽しませたいのか」という考え方だ。

 僕はこれを「閾値(しきいち/いきち)」という言葉で考えている。

 

謎解きと駆け引きの「閾値」

 マーダーミステリーのプレイングにおいて、まず先に謎解きがあり、その後駆け引きが必要となる。この原則は上記で述べた通りだ。

 では、作者として、シナリオを提供する側として、「謎解き」と「駆け引き」どちらを重点的に楽しんで欲しいのか、という設計について考えてみよう。

 これは主にプレイ時間で考えられると思う。

「いつまで謎で悩んで欲しいのか」「どこから駆け引きにシフトして欲しいのか」の割合を、作者がどの程度認識して作っているか、という話になる。

 もう少し言い方を変えると。マーダーミステリーというゲームのクライマックスである「投票」の時間にどちらで悩んでいて欲しいのか、という命題でもある。

 

 この「いつまで」と「どこから」の境目。この境界線のことを僕は「謎解きと駆け引きの閾値」と呼んでいる。

 

 まずいちばん大事なこととして言うが、この閾値は明確なポイントとして実感されるものとは限らない。プレイ感としては境目が曖昧な事のほうが多いのではないかと思う。もちろん、「わかった! ここからは駆け引きの時間だ!」と明確に認識される場合もあり、これはプレイヤーのプレイングとシナリオの構成の双方に関わってくる。このポイント自体がシナリオの最大の謎であることもある。

 

 そしてもうひとつ大切なことは、この閾値はプレイヤー各自のプレイングで変動する幅を持っていなければならない、という点だ。

 仮にこの閾値を固定したシナリオがあるとしよう。プレイすると、「ここまでで謎解きは終了です、ここからは駆け引きを頑張ってね」という瞬間が明示される(ねば固定にならない)。と、謎解きを終了ということはつまり謎が解けた状態を固定しなければいけなくなるので、謎解きに全く意味がない。謎にも意味がないし、謎に立ち向かっていた時間も意味を失う。端的に言ってデリカシーがない

 

 この閾値を「作る」のはあくまでプレイヤー(たち)でなければならず、それはプレイヤー(たち)の努力の結果でなければ、意味がない。そして更に気を付けねばならない点として、プレイヤーには愚かな行動や選択をする権利がある。小謎を解いた先にある何かを楽しませたい、と作者が考えていても、プレイヤーにはその小謎を解けない権利があるのだ、という事を忘れてはならない。

 

 幅をもたせた上でどちらに寄せるか、寄せたいのか、というのが「謎解き」と「駆け引き」とのバランス取りである。もうお分かりだろうからあっさり書くが、閾値の設定をプレイの前半に持っていけば駆け引き寄り、後半に持っていけば謎解き寄りのバランスのシナリオになる。

 議論時間をどのように利用し、どのように浪費してほしいか。どんな時間帯でどんな事を話して欲しいのか。といった議論のデザインは、この閾値の設定から始まる。

 

 プレイ時間を、議論時間をプレイヤーにどう過ごして欲しいのか。
 その中でプレイヤーにはどんな楽しみを提供できるのか。提示できるのか。

 マーダーミステリーをゲームとして真剣に捉えるなら、こういった考え方は必須となる。どれだけ具体的にプレイ内容とその楽しみをイメージできるのか。自分で味の想像がつかない料理は客に出すべきではないという話だ。

 以前話した「少なくとも作る側の立場ではマーダーミステリーをゲームとして捉えなければならない」という話は、具体的にはこういったことに繋がる。未読ならこちらにも目を通して欲しい。

 

「謎解き」を楽しんでほしい部分と「駆け引き」を楽しんで欲しい部分を分け、その境界線を「謎解きと駆け引きの閾値」と呼称した場合。

 この閾値を前半か後半かどちらにスライドするかによって、プレイヤーが楽しめる部分の配分が決まる。この考え方自体が「議論のデザイン」の取っ掛かりになる。

 少なくとも、楽しんで欲しい部分と実際に楽しまれる部分がちぐはぐになってしまうような設計は避けたいものだ。

 

「謎解き」寄りのバランスの難しさ

 ここからは閾値の設定をどちらかに寄せた場合のことを考えていこう。まずは、謎解き寄りに舵を切った場合だ。

 閾値が後半に寄るわけだから、プレイの後半、それもクライマックスである投票の時間に、プレイヤーが「うわぁ~結局犯人は誰なんだあああ」と頭を抱えている状況。というのが設計上の理想になるだろう。逆に言えば、そうならなかった場合に満足感を与えることは難しい

 

 いわゆる「犯人当てゲームの楽しさ」を主軸に置くわけであるから、犯人があっさりわかってしまっては楽しくならない。

 この設計で難しい最大のポイントは、犯人側と犯人を探す側との満足度を平滑にしづらい、という点にある。殊に、犯人側のプレイヤーの満足度の担保が難しい。

 犯人当てが主軸になる、つまりクイズのようなプレイ感を求めているわけなので、まず第一に犯人プレイヤーはそのクイズに参加できない立ち位置になるからだ。

 それでも犯人が勝てば、つまり犯人だとバレなければ、犯人のプレイヤーの満足度はある程度担保できるだろう、と考えるかも知れない。が、実際のところそうはならない。「犯人が何もしなくても捕まらない」ように出来ていたら(少なくとも犯人のプレイヤーがそう感じていたら)、犯人の「楽しかった」は出て来ない。

 一方で、フェアネスに固執し、明確な証拠が揃って犯人が一人に絞られる場合。これまた犯人のプレイヤーは絶対に楽しくならない。証拠が揃う以上、絶対に犯人は捕まる、ようにゲーム上で設計されていると感じられるからだ。

 

 この点の回避策として、犯人もクイズに参加させるというのがある。他の人が犯人当てをしている間に、別の謎を(それと知らせずに)解かせる、という考え方だ。ただし、全く別の事件の謎を解かせようというのは、実に短絡的で、解決にならない解決策である。(アマチュア作家の作品でよく見られる)

 犯人が参加するべきクイズ、解くべき謎というのは、どうすれば犯人だとバレないか、だ。

 当然だ、と思う人もいるかも知れない。が、この意識を常に持っておかないと、作る側としてはとても難しい。謎解きの満足度を上げようとした結果、犯人をシナリオで保護してしまう形になっているケースは珍しくない。いや、むしろ逆のパターンのほうが多いが。

 この点がきちんと作れていないと、犯人のプレイヤーにとっては、自分が何をしても/しなくてもこの結末だった、というプレイ感になってしまう。いてもいなくても同じだったと言われて満足できる者がいるだろうか? 犯人にとってそのシナリオは、「向こうの席に座るのが人間か猿かを問われるだけの運ゲー」になる。それも一度しか体験できないゲームにおいてだ。

 言うまでもなく、特に犯人プレイヤーのプレイングには、駆け引きが強く求められる。作者が謎解きの楽しみをメインに据えて考える時、犯人を蚊帳の外に置くことがあってはならない。

 

 では、NPCを犯人にすれば良いじゃないか。プレイヤー外に犯人を作れば良い。これならかわいそうなプレイヤーは出ない。万事解決!

 これは実は正解の一つではある。間違いなく「犯人探し」を楽しみの主軸に置きやすい。正解の一つではあるが、しかし、お勧めはしがたい。

 それは何故か。プレイヤーキャラクターが犯人じゃないシナリオは、満足度が上がりづらいのだ。端的に言って評判が悪い
 事故、自殺、被害者以外のNPCが犯人。こういったシナリオはあるが、決して多数派ではない。納得度が上がらない、というより、シンプルに好かれない。実際問題、好き嫌いの話ではあると思う。中には「マーダーミステリーとはプレイヤーの中に犯人がいるゲームであり、それ以外は許されない」なんて真顔で主張する者すらいる。まあ主張はともかく、これは「犯人当て」を主軸に置くゲームにおいて、結局致命傷になってしまうのだ。

 

 では、何故「嫌われる」のか。これは想像になってしまうが、「あなた達の中に犯人はいる!(かも知れない)」という最初の謳い文句に、それなり以上の期待感が寄せられているからではないだろうか、と思う。その期待が裏切られたと感じるから嫌。プレイヤーの誰かが犯人だと思って考え続けた自分の努力が否定された気がするから嫌。……あるいは、単にその可能性に思い当たらなかった自身の愚かさを肯定したくないから嫌、という感じだろうか。

 少なくともGM視点、事故/自殺の真相のシナリオは、プレイヤーが犯人であるシナリオに比べ説明や解説に気を使う。この不満感を解消する、または上回る満足度を与えねばならないから。もちろん作る側もそこに気を使う必要性が出てくる。

 

 だったら最初から提示すればいいじゃないか。「犯人はNPCのいずれかです。あなた達の中に犯人はいません」。

 こうなると、そもそも何に対して議論をさせるのか、というゲーム上の設定が必要になる。いわゆる本格ミステリだったり、ミステリゲームだったりを、複数人で遊ぶ、というスタイルのゲームになる。ここにどんな駆け引き要素を加えるか次第では多人数ゲームとしての面白みが担保できるようになると思う……が、「これはマーダーミステリーだろうか?」という疑問は発生するだろう。それがやりたいなら複数人プレイの謎解きゲームを遊んだ方が良いし、出来の良いゲームが既に無数に供給されている。戦うべきはそちらだろう。

 

 謎解き要素を主軸に置く場合、さまざまな難しさが発生する。これには「謎解き」そのものを作る難しさも内包される。マーダーミステリーならではの難しさもある。明確な解決法はない。

 が、投票の時間まで「一体犯人は誰なんだあああ」と頭を抱えるプレイ感は得難いものであるし、「マーダーミステリー」というゲームの説明を聞いて真っ先に思いつくプレイ感でもある。挑戦を続ける価値はあるだろう。

 

「駆け引き」寄りのバランスの難しさ

 筆者はどちらかというと駆け引き寄りのゲームを好む。ので、自分で作るシナリオもそうなりがちであると思う。中でも明確に駆け引き重視を事前情報で謳ったシナリオがあり、ありがたいことにご高評頂いている。

PRの機会は逃さない。もし未プレイなら是非!

 

 で、こんなシナリオを作ったもんだから、プレイされた方から「こういうシナリオが作りたい」とご相談頂くことがそれなりにある。また、GMMM杯というイベント向けのシナリオの案を持ち寄って頂くこともあり、駆け引き重視のフェアな殴り合いシナリオとして案を聞く。

 そのアイディアを聞くと、だいたいこういう感じである。

『プレイヤー全員が対等な条件で殴り合い、勝敗がハッキリするシナリオ』

 実は、このアイディアの時点で、既にかなり難しい。が、それを自覚されている事は少ない。

 

 よく聞くパターンはこうだ。

「①プレイヤーにはそれぞれ最多票にしたい者がいる(犯人ではなく)」「②全員がそれぞれ最多票にせねばならない相手を探す」「③全員がその相手を見付けた場合、得票は各一票になる」(②がなく、HOに書いてある前提のこともある)

 これを楽しいゲームとして成立させるのは、恐らく想像している以上に難しい。

 

 まず第一に、事件が不要になる。もちろん、この状況を成立するための事件の存在、と置くことは出来る。が、プレイヤーがあたるべき謎が②の部分にしかなく、それぞれ別であるため、共通の話題が無い。共通の目的意識がないからだ。それが例え建前であろうと、共通の話題は必ず必要だし、その共通の話題について語る中でそれぞれの知りたい真相を探っていくという設計にしなければならない。(そして、マーダーミステリーとはもともとそういうゲームである)

 何よりの問題は③の状況だ。自分はAを最多票にしたい。ならば自分の投票先はAでしかあり得ず、変更する理由、つまり目標を捨てる理由が何も無い。何も無いので絶対に各一票の票割れになる。この状況は、そこに葛藤が生まれる仕組みにしなければ意味がないのだ。

 更に、各一票の票割れの状況がシナリオ的に正解なのか不正解なのかでも大きく異なる。正解だとすれば、「全員が最多票にしたい相手を見つけるのが正解」という謎解きゲームとなり、ここに駆け引き要素は薄くなる。不正解の場合、それこそ努力させた部分を否定することになり、じゃあなんでこの目標なんだよって話になってしまう。

 大体において、前述の謎解き重視パターンの「犯人は一体誰なんだー」の犯人の部分が「最多票にしたい相手」に置き換わるだけなので、そもそも駆け引き要素が薄い。例えばこれを駆け引き重視ゲームとしてお出しすると、反発を招きかねない。

 

 標準的なマーダーミステリーにおける「駆け引き要素」とは、つまり「投票」という要素によって形作られる。だから、駆け引き要素を楽しんでほしいなら、真っ先に投票先のパターンを考えておく必要がある。

 その上で、解かれるべき謎が解かれた時とそうでない時。「誰が/どこまで」謎を解けていたか、それぞれのパターンの投票先と得票数を、すべて把握して制作されねばならない。

 言うまでもなく、プレイヤー人数が多くなればなるほどにこのパターンは増えていく。少人数での投票パターンについては昔まとめたので参考にされたい。

 

 そして実は、前述の例において何より難しいのは『対等な条件』という部分だ。

 このバランス取りは非常に難しく、制作者の意図通りに運ぶことはほとんど無い。そしてバランスの取り方に正解すら無いのだ。

 更に。

 仮に、バランスが綺麗に取れたとしよう。このような意図で制作されたシナリオが遊ばれた際、シンプルに「弱い者に票が集まる」ゲームになる。競技性と言えばそれまでだが、結果的に「弱かったゆえに最多票になり敗れた」プレイヤーの満足度は、決して高くはならない。

 この事実に制作者としてどう向き合うべきか。駆け引き重視シナリオを作る上での、この点が最大の課題である。

 

謎解きと駆け引きのバランス

 このように、どちらを重視しようとしても、それぞれに難しい点がある。無論、両方重視できるのが望ましいのは言うまでもない。いずれもマーダーミステリーというゲームの楽しみとして重要な要素であるからだ。謎解きと駆け引きのどちらを重視しようとも、もう一方を軽視できるものでは決してない。

 

 では、一般的なマーダーミステリーにおいて、謎解きと駆け引きのバランスはどの程度に設定されているだろうか? 筆者の体感、7:3~8:2くらいが中央値ではないかと考えている。

 とは言え、この境目、筆者の言う閾値は、シナリオ制作側の意図とは別に、常に変動する。変動させるのはもちろんプレイヤーだ。

 

 プレイヤーが謎を解くのが早ければ早いほど、駆け引きの要素は大きくなる。つまり閾値が前に寄る。逆に謎が解けなければ後ろに寄り、謎解き要素の方が強かったというプレイ感になる。

 この閾値、つまり「謎解きと駆け引きが切り替わる瞬間」を制作側が固定しようとすると、作品にデリカシーを失う。展開によらず「こんな謎が解けました。ここまではわかって当然ですよね?」と提示される感じを想像してもらえば良いだろうか。謎が解けていたなら達成感を否定されるし、解けていなかったら前提すら理解できず放り出されることになる。この点については前述の通り。

 謎解きと駆け引きのバランス取りに正解はない。制作者であるあなたがどんなバランスで楽しんでほしいのかで決定して良い。ただし、どんなバランスを欲していようと、最終的なバランスはプレイヤーのプレイによって変動する。マーダーミステリーのシナリオは、プレイヤーによるプレイがあって初めて完成するのだ。

 マーダーミステリーというゲームを作ろうとすると、とかく独りよがりになりやすい。謎解き要素についても、駆け引き要素についても、そしてそのバランスについてもだ。

 だからマーダーミステリーを作るのは難しい。せめて、その独りよがりな部分を、プレイした者を楽しませるためにこそ貫き通したいものだ。

 

ま、ゆーてますけどね、

 やー今回も長くなった! これ最後までちゃんと読んでくれた子猫ちゃんズはいるのかな?

「なんか小難しそうなことエラソーにだらだら述べてるにゃー」って思った子猫ちゃん! 正解だよ!!

 でも、このバランスや閾値を意識して自分のプレイを振り返ってみたら、また新しい発見があるかも知れないよね! 「謎解き」から「駆け引き」に切り替わったポイントがプレイ中に明確に見えたりしたら、脳汁ブワーかも知れないよ!

 そんなん考えなくてもマーダーミステリーは楽しいんだけどね!

 まあ、もし読んでオモローと思ってくれた子猫ちゃんは、このシリーズ「マーダーミステリー作るのって難しいよね」の他の記事も読んでみてよね!

 

 いや小難しい事考えなくていいよ! それより早く遊ばせろ!! と思った子猫ちゃんたち?

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 そして今夜から一緒にさけぼう!!

レッツ・マーダー!!!!

 イケメンでしたッ!

 

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