スタッフのHです。
今回はHLA半合致移植とHLA適合非血縁者間移植におけるドナー年齢の影響について、Blood AdvancesにCenter for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)データセットを用いた観察研究が出ていましたので紹介させていただきます。
Haploidentical vs matched unrelated donors for patients with ALL: donor age matters more than donor type
RS Mehta et al, Blood Adv 2023, doi: 10.1182/bloodadvances.2022009240
【背景】
移植後シクロホスファミドによる移植片対宿主病予防を併用した同種造血細胞移植(haploidentical群)では、従来のHLA一致非血縁ドナー(MUD群)によるHCTと同程度の全生存期間(OS)が近年得られるようになってきている。本研究では急性リンパ芽急性白血病(ALL)患者においてドナーの年齢とドナーのタイプが全生存期間に予後に及ぼす影響を調査した。
【方法】
2013年から2017年までの期間で18歳以上の完全寛解に至ったhaploidentical(PTCY使用)もしくはMUD(conventional prophylaxis使用)を用いた移植を行ったALL患者を抽出し、ドナー年齢を35歳未満をyounger、35歳以上をolderとカテゴライズした。一次評価項目をOS、二次評価項目をgrade 2-4のaGVHD、grade 3-4のaGVHD、cGVHD、非再発死亡(NRM)、再発、PFSとした。OS、PFSはKM曲線を用いて推定し、NRMの競合リスクは再発、再発の競合リスクはNRMとして積算発生率を推定した。COX比例ハザードモデルによる単変量解析ではレシピエントの年齢(40歳未満・以下)、性別、性別のミスマッチ、前処置強度、移植片ソース、疾患ステータス、細胞遺伝学的タイプ、免疫が他、フィラデルフィア染色体の有無、HCT-CI、KPS、血清CMV型、診断からの期間を用い、多変量解析ではbackward stepwiseで変数選択を行った。
【結果】
主解析の前に、ドナー年齢(younger vs older)とドナータイプ(haploidentical vs MUD)で全コホートを用いて解析を行い、ドナータイプはOSに関連がなく、ドナー年齢のolder群でOSが悪化した。主解析ではyounger donorを用いたhaploidentical HCT群(232人)とolder donorを用いたMUD HCT(187人)の2コホートを直接比較した。多変量解析でolder donor群がOS、PFS、NRMを悪化させ慢性GVHDが多かった。一方でyounger donor群は再発が多かった。
【結果】
本研究ではHLA半合致移植とHLA適合非血縁者間移植というドナータイプは予後に大きな影響を与えず、再発は多いものの若年ドナー・PTCYを用いたHLA半合致移植が全般的臨床アウトカムを改善させる可能性が示唆された。
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近年PTCY関連の臨床研究が多く取り上げられていますが、同予防を用いたハプロ移植はHLA合致移植と遜色ない成績を上げるようになってきており、以前よりだいぶ敷居が下がってきているようです。少子化で血縁候補が少なくなってきているという社会的問題はあるものの、バンクドナーよりも迅速性に勝り、状況にもよりますが非常に有用性が高いと感じます。予防薬の影響も考慮されますが、本研究の事前解析でそこで差は出ませんでした。ハプロ移植内のドナー年齢、例えば両親からの移植と兄弟姉妹からのハプロ移植ではどう違うのかなど科内で議論となりましたが、そこについては本研究では触れられていませんでした。確かに若年レシピエントであればドナー選択において重要な要素です。
おまけ
また紫陽花の写真ですが、今度は購入して生けてみました。花瓶は一目ぼれして購入したものです。