【お知らせ】
当科ではスタッフ医師を募集しています。募集要項はこちらです。当科の紹介記事はこちらから。メールでのお問い合わせはhematology@aih-net.comまでお願いいたします。

 

こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はNew England Journal of Medicineから、慢性リンパ性白血病に対する新規ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤であるpirtobrutinibの第Ⅰ/Ⅱ相試験をご紹介いたします。

 

Pirtobrutinib after a Covalent BTK Inhibitor in Chronic Lymphocytic Leukemia

Mato AR et al, N Engl J Med 2023, doi: 10.1056/NEJMoa2300696

 

【背景】

慢性リンパ性白血病(CLL)もしくは小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者は、共有結合性のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤の治療失敗後の予後は不良であり、新たな治療選択肢が必要とされている。Pirtobrutinibは高選択性の非共有結合(可逆性)BTK阻害剤で、BTK阻害を元に戻すよう設計された。

 

【方法】

再発難治性B細胞性悪性腫瘍患者がpirtobrutinibの投与を受ける第Ⅰ-Ⅱ相試験を実施した。この論文では、以前にBTK阻害剤での治療歴のあるCLLもしくはSLL患者での有効性、およびCLLもしくはSLL患者全てでの安全性を報告する。主要評価項目は、独立した評価委員会により評価された全奏効(部分寛解以上)である。副次評価項目には無増悪生存期間と安全性が含まれた。

 

【結果】

合計で317人のCLLまたはSLL患者がpirtobrutinibの投与を受け、そのうち247人はBTK阻害剤での治療歴があった。これら247人の患者のうちでは、前治療ライン数中央値は3(範囲 1-11)で、100人(40.5%)はベネトクラックスなどのBCL2阻害剤の投与歴もあった。Pirtobrutinibの全奏効患者割合は73.3%(95% CI 67.3-78.7)で、リンパ球増加を伴う部分寛解を含めると82.2%(95% CI 76.8-86.7)であった。無増悪生存期間中央値は19.6カ月(95% CI 16.9-22.1)であった。Pirtobrutinib投与を受けたCLLもしくはSLL全患者の317人において、最も頻度の高い有害事象は感染症(71.0%)、出血(42.6%)、好中球減少症(32.5%)であった。治療期間中央値16.5カ月時点で(範囲 0.2-39.9)、典型的なBTK阻害剤関連の有害事象の一部は頻度が低く、その中には高血圧(患者の14.2%)、心房細動・粗動(3.8%)重篤な出血(2.2%)が含まれた。317人のうちで、治療関連有害事象のためにpirtobrutinibを中断した患者はわずか9人(2.8%)であった。

 

【結論】

本試験において、pirtobrutinibは共有結合性のBTK阻害剤を含む濃厚な前治療歴のあるCLLもしくはSLL患者に有効性を示した。最も頻度の高い有害事象は感染症、出血、好中球減少症であった。


-----

 

Pirtobrutinibは新規の非共有結合性BTK阻害剤で、従来の共有結合性BTK阻害剤に耐性を示す遺伝子変異が入った症例でも治療反応が期待できます。既に再発難治性マントル細胞リンパ腫に対してFDAの承認が下りていますが、今回はCLL/SLLに対する第Ⅰ/Ⅱ相試験となります。CLL/SLLはベネトクラックスなどの新薬も登場していますが、BTK阻害剤の効果が乏しくなると、その後の治療選択肢が一気に難しくなります。今回の薬剤が早く再発難治性患者さんの元に届くといいなと思います。

 

おまけ

 

 

赤紫蘇漬けを投入したその後になります。すっかり真っ赤になって、梅干しらしくなってきました!朝夕に天地を返しているのですが、爽やかな梅の香りが漂って日々の癒やしです。