【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBloodからで、CAR-T細胞療法後の下痢に対するルキソリチニブについてのケースシリーズです。

 

Ruxolitinib for ciltacabtagene autoleucel–associated refractory diarrhea

Blumenberg V, Birocchi F, Shih A et al, Blood 2026, doi: 10.1182/blood.2025032347

 

【要旨】

遷延する重症下痢は、B-cell maturation antigen(BCMA)を標的とした多発性骨髄腫に対するキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法後の合併症として近年報告されており、死亡率は36~50%とされている。最適な臨床マネージメントは不明である。本研究では、BCMA CAR-T細胞療法後に重篤な下痢を来した5人の患者を報告する。

同種移植後のGVHDやその他の免疫介在性下痢において治療効果が示されていることに基づき、ヤヌスキナーゼ阻害薬であるルキソリチニブが有効かもしれないと仮説を立てた。3人の患者にルキソリチニブが投与され、全例で速やかな臨床的改善を認めた。対応する治療前後の生検が実施された2人の患者では、いずれも病理組織学的な改善を示し、1人ではCAR-T細胞関連のインドレントな消化管T細胞リンパ増殖性疾患を認めた。

 

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短いケースシリーズで、確定的な事までは言えないのですが、CAR-T細胞後の遷延する重症下痢にルキソリチニブが有効な可能性を示唆する報告です。抄録にもあるとおり、ルキソリチニブは腸管GVHDでの有効性が確立されており、CAR-T細胞療法後の下痢にも効果があるのでは?という仮説に基づいています。

 

少数例ではありますが、投与された全例において下痢の改善を認めました。高カロリー輸液が離脱出来たりなどの良い効果が得られている一方で再発している症例もあり、感染性合併症も含めて慎重な経過観察が必要と考えられます。また、一部の症例でCAR-T細胞療法に関連したT細胞のクローナルな増殖を認めました。以前にブログでもCAR-T細胞由来のT細胞性リンパ腫の記事をご紹介したこともありますが、詳細な機序は不明ながらCAR-T細胞後の下痢の一部にはこれらのリンパ増殖性疾患が関与している可能性もあり、今後の検討が望まれます。

 

 

おまけ

 

 

最後に加えた出汁以外は無水で作った、厚揚げ・白菜・トマトの煮物です。出汁とトマトって意外に合います。

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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回は珍しくHematologicaからで、日本発の第Ⅲ相試験があったので、ご紹介したいと思います。R-CHOP類似化学療法を実施した患者層に対し、骨粗しょう症予防にデノスマブもしくはアレンドロネートで介入した試験です。

 

Optimizing bone health in lymphoma survivors: denosumab superiority to alendronate for R-CHOP-like therapy (the DENOSULY phase III randomized controlled trial)

Kikuchi S et al, Hematologica 2026, doi: 10.3324/haematol.2026.300564

 

【要旨】

糖質コルチコイド誘発性骨粗しょう症(GIOP)は、リンパ腫サバイバーにおける重要な長期合併症であり、R-CHOP類似化学療法に伴って累積する。既存のGIOPガイドラインの多くは慢性低用量ステロイド使用に基づいており、リンパ腫治療関連GIOP(LTR-GIOP)による急性で高リスクな毒性の管理には不十分である。

本研究は前向き多施設共同第III相ランダム化比較試験であり(n = 100;年齢中央値74歳)、R-CHOP類似化学療法を受けた新規診断リンパ腫患者を対象に、デノスマブとアレンドロネートの有効性と安全性を比較した。患者は、6カ月ごとにデノスマブを2回皮下投与する群、または経口アレンドロネートを週1回、12カ月投与する群にランダム化された。主要評価項目は、12カ月後の腰椎(LS)骨密度(BMD)の変化率である。

デノスマブは、LS(L1-L4)のBMD変化率に関して、アレンドロネートより有意に優れていた(デノスマブ:+2.8%±4.4% vs. アレンドロネート:−1.3%±5.6%;p = 0.0010)。重要なことに、デノスマブは大腿骨頚部でも同様に優越性を示した(デノスマブ:+2.8%±5.8% vs. アレンドロネート:−3.6%±10.3%;p = 0.0020)。大腿骨頚部は、非LTR-GIOPを対象とした比較では、デノスマブの優越性が示されることが多くない部位である。デノスマブは骨吸収マーカーであるTRACP-5bのより強い抑制も達成した(p = 0.0003)。

デノスマブがアレンドロネートと比較して腰椎と大腿骨頚部の双方で有意な優越性を示したことから、デノスマブはLTR-GIOPに対する有力な選択肢となる可能性がある。R-CHOPを受ける患者は非常に高リスクな患者群であることが認識されるべきであり、本研究の結果は、LTR-GIOPを予防し、長期サバイバーシップと生活の質を改善するために、デノスマブによる早期かつ強力な予防介入の必要性を示している。

 

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DLBCLをはじめとした悪性リンパ腫は、化学療法で治癒も十分狙える疾患であり、このような疾患では化学療法の効果だけでなく、治癒後の長期サバイバーシップにも目を向ける必要があります。サバイバーシップの課題には、身体的なものから心理的、社会的なものまでさまざまありますが、今回はその中でも骨健康に焦点を当てた論文になります。このような分野はなかなか光が当たりにくいため、貴重な報告だと思います。

本研究では、悪性リンパ腫に対してR-CHOP類似化学療法を受ける高齢者を対象に、12カ月間のデノスマブまたはアレンドロネート投与を行い、12カ月後の骨密度変化を比較しています。結果としては、デノスマブの方が骨密度低下抑制の点で良好な成績を示しました。

一方で、なお気になるのは、この良好な反応が実際の患者さんの骨折予防につながったかどうかまでは示されていない点です。骨折イベント抑制効果まで示すには、より大規模かつ長期間の観察が必要であり、この試験だけでそこまで求めるのは難しいと思いますが、もしそこまで示されれば日常臨床を大きく変える可能性があります。今後の発展に期待したいところです。

 

おまけ

 

 

骨の健康にも良いとされる、豚ヒレ肉と野菜の蒸し焼きです。

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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBloodからで、ホジキンリンパ腫における循環腫瘍DNAに関する論文をご紹介します。

 

MRD-2 in the GHSG HD21 trial assessed by a validated circulating tumor DNA sequencing assay

Heger JM et al, Blood 2026, doi: 10.1182/blood.2025031089

 

【要旨】

ホジキンリンパ腫(HL)患者における主要な目標は、治癒にとどまらず、患者ごとの再発リスクに応じた個別化治療により、急性毒性および晩期毒性を減らすことである。それにより、早期に新規薬剤による治療強化が必要な患者を同定でき、世界的にも実施可能な治療戦略につながる。

循環腫瘍DNA(ctDNA)シークエンスによる微小残存病変(MRD)評価は、これらの目標を達成するための有望な戦略として登場した。しかし、既報ではサンプル採取時期、測定系の検証、MRD陰性の定義がそれぞれ異なっている。

本研究では、ケース・コホートデザインを用い、German Hodgkin Study Group(GHSG)HD21試験において、2サイクル治療後(MRD-2)に得られたサンプルに対し、リンパ腫における遺伝子型解析およびMRDモニタリングで検証済みのctDNAシークエンス測定系であるLymphoVistaを適用した。

MRD-2陽性患者は、MRD-2陰性患者と比較して、再発、疾患進行、死亡のリスクが高かった(4年無増悪生存率[PFS] 36.7% vs 82.2%;ハザード比 5.3;95% CI 2.0-13.8;P = 0.0008)。フル解析セットにおけるイベント数を考慮した逆確率重みづけ後、MRD-2陽性患者と陰性患者の4年PFSは72.2%と95.3%だった。MRD-2をBrECADD/eBEACOPP 2サイクル終了後のPET(PET-2)と組み合わせることで、再発、疾患進行、死亡のリスクが非常に低い患者群と非常に高い患者群を同定することができた。

結論として、LymphoVistaを用いたMRD-2評価は、HL患者の早期アウトカム予測を可能にし、それ単独でも、あるいはPET-2との組み合わせでも、治療方針決定を改善しうるツールとなる可能性がある。

 

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循環腫瘍DNA(ctDNA)は、個人的にも最近よく見かけるテーマです。今回の研究は、ホジキンリンパ腫において、治療早期にctDNAを測定することで予後予測にどこまで役立つかを解析した論文になります。ctDNAは研究ごとに測定系やサンプル採取のタイミング、MRD陰性の基準が異なるのが問題ですが、今回はLymphoVistaという検証済みの測定系を用い、GHSG HD21試験に参加した患者群において、同一タイミングで採取されたサンプルを用いている点が強みでした。

結果として、MRD-2陽性患者ではPFSが不良でした。興味深いのは、この結果がPET-2陽性群とPET-2陰性群のいずれでも認められた点です。MRD-2陽性かつPET-2陽性の患者群では最もPFSが不良であり、これらの患者群では現在の標準的な免疫化学療法のみでは治療が不十分である可能性が示唆されます。将来的には、新規の分子標的薬などを組み合わせた治療が望ましいのかもしれません。一方、MRD-2とPET-2の両方が陰性の患者ではPFSが非常に良好であり、逆にこうした患者群では、晩期毒性を抑えるための治療低減を検討できる可能性があります。

実臨床で用いられるのはまだ先のことと思いますが、ホジキンリンパ腫の治療最適化において有望な技術だと感じました。

 

おまけ

 

 

大牟田にある、宮原坑跡に行ってきました。主に排水に用いられたという第二竪坑と煉瓦造の巻揚機室を見学しましたが、明治期の産業革命の正負の歴史が偲ばれ、見どころの多い遺構でした。