こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はLancet Infectious Diseaseからで、移植後患者に対するマリバビルのリアルワールド解析結果です。
Paviglianiti A et al, Lancet Infect Dis 2026, doi: 10.1016/S1473-3099(26)00144-1
【背景】
マリバビルは、固形臓器移植または造血細胞移植(HCT)後の成人患者における治療不応/抵抗性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対し、2022年にEuropean Medicines Agencyに承認された薬剤である。しかし、HCT患者でのリアルワールドデータは乏しい。本研究は、HCTのセッティングにおけるマリバビル使用の臨床経験について報告することを目的とした。
【方法】
マリバビル承認後、欧州15カ国、37カ所のEBMTセンターにおいて、臨床的に意義のあるCMV感染(治療を要するCMV感染またはCMV disease)に対してマリバビルが投与された成人および小児HCT患者を対象とした、多施設共同後方視的レジストリ研究を実施した。少なくとも12週間追跡できた患者を適格とした。主要評価項目は、12週時点でのマリバビル治療への反応で、CMVの消失および治療失敗を含めて評価された。副次的評価項目には、治療中断の理由、12週時点での全生存および非再発死亡が含まれた。
【結果】
2021年3月30日から2024年10月9日の間に移植が実施され、2022年12月16日から2025年1月17日の間にマリバビル投与を受けた患者が組み入れられた。118人の患者における126の治療コースが解析された(109人が18歳を超える成人患者、9人が18歳以下の小児)。126コースのうち109コース(87%)は先制治療で、17コース(13%)はCMV diseaseに対して投与された。
126コースのうち64コース(51%)において、治療不応/抵抗性のCMV感染またはCMV diseaseに対してマリバビルが投与され、主なものは治療不応性CMV感染に対する使用が46コース(37%)だった。次いで、毒性によるものが62コース(49%)で、主には好中球減少が31コース(25%)だった。セカンドラインまたはサードラインでの治療が126コース中101コース(80%)でほとんどを占めた。
CMV消失は、先制治療109コースのうち88コース(81%)で認められ、CMV diseaseに対する17コースのうち12コース(71%)で達成された。有害事象によるマリバビル中断の頻度は高くなかった(126コース中2コース[2%])。109コースの先制治療のうち、5コース(5%)でCMV diseaseを発症した。12週時点で、全生存率は82%(95% CI 75-89)、非再発死亡率は15%(95% CI 9-22)だった。
【解釈】
今回の大規模リアルワールド研究の結果から、マリバビルはHCT患者のCMV感染およびCMV diseaseに対する、有効かつ忍容性の高い治療選択肢であることが確認された。
-----
マリバビルは、日本でも固形臓器または造血幹細胞移植後で、既存の治療に抵抗性のCMV感染症に対して承認を得ている薬剤です。マリバビルの第Ⅲ相試験では、既存のセカンドライン治療と比較して良好なウイルスの除去や症状改善効果を認めていますが、リアルワールドデータが乏しい状態でした。
今回の論文は、欧州のEBMT参加施設でマリバビルが使用された118人、126治療コースのリアルワールドデータが解析対象となりました。18歳以下の小児も9人(8%)含まれており、エビデンスの特に乏しい小児領域では貴重なデータだと思います。36%がハプロ移植、ATG使用は16%、53%でレテルモビルによる予防が行われていました。ファーストラインでの先制治療での使用は19%(適応外ですが)で、セカンドライン先制治療での使用が中心でした(48%)。CMV diseaseに対する治療は13%でした。6割強の患者で急性GVHDを併発していました。多剤で難治性、不耐容を示した厳しい患者群が多い印象です。
そのような中ですが、先制治療では81%の治療コースで、CMV diseaseに対しても71%の治療コースでCMV感染・疾患の消失を認めており、リアルワールドでもマリバビルの高い奏効が観察されました。一方でリバウンド症例や無効例も認めており、その一部でマリバビルに耐性を示すUL97遺伝子変異が観察されました。ただし、検査数が少なく、全体の病状の影響もあるかと思いますが、リアルワールドでの検査アクセスの問題は欧州にも存在するのだなと感じました。この点に関しては、今後のエビデンス蓄積が望まれます。安全性については、後方視的研究で詳細に検証された訳ではありませんが、マリバビルに起因した直接的な有害事象での中断は少なく、毒性は大きく高くはないことが推測できます。
全体として、リアルワールドでも高い奏効率と良好な忍容性が示されており、耐性ウイルスの出現には注意が必要ですが、移植後CMV感染症に頼りになる薬剤であることを再認識しました。
おまけ
黒川温泉で食べたものなのですが、記憶がなく…何かの小鉢です。



