こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はBlood Cancer Journalからで、ありそうであまりなかった、多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法前後のPET/CT所見と臨床的特徴との相関を解析した論文です。
Lesion-level PET/CT analysis to identify predictors of progression after BCMA CAR T-cell therapy in multiple myeloma
Dreyfuss AD et al, Blood Cancer J 2026, doi: 10.1038/s41408-026-01607-7
【要旨】
B-cell maturation antigen(BCMA)指向性のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)において高い奏効率と持続する寛解をもたらす一方で、ほとんどの患者は再発する。CAR-T療法後の疾患進行を予測する因子は十分に分かっていない。髄外病変(EMD)および傍髄外病変(PMD)は予後不良因子として知られているが、既報はEMD/PMDのある・なしを予後因子として扱っており、個々の病変がどのように治療に反応したかを考慮していない。本研究ではRRMMに対してciltacabtagene autoleucel(cilta-cel)で治療を受けた患者において、FDG PET/CTを用いて患者および病変レベルでの縦断的な代謝イメージング解析を行った。
Memorial Sloan Kettering Cancer Centerにおいて、2018年から2024年の間にトリプルクラスに曝露したRRMMで、cilta-celによる治療を受けた102人の連続した患者を後方視的にレビューした。アフェレーシス前、リンパ球除去療法(LDC)前(LDC前の直近の撮影)、輸注後day 30(±7日)、最初の原疾患進行(POD)の4時点で、一連のFDG PET/CTが解析された。
患者は多数の前治療歴(前治療ライン数中央値5)があり、38%の患者がアフェレーシス時点でEMD/PMDを有していた。ブリッジング治療が81%で行われた。アフェレーシス前で80人(78%)、LDC前で98人(96%)、day 30で100人(98%)、原疾患進行時で102人(100%)のPET/CTが使用可能だった。
追跡期間中央値19カ月時点で、102人中40人で原疾患進行を認めた。これらのうち、再発が画像所見を伴うものが90%(36/40)で、生化学と画像所見によるものが63%、画像所見のみによるものが28%だった。生化学所見のみによるものは10%だけであった。画像所見による再発のうち、78%が以前から存在していた部位を含み、36%は既存病変部位のみで再発していた。病変分布はベースラインから再発時で著明に変化し、EMD/PMDが38%から72%に増加した。
コホート全体でのPFS中央値は22カ月、OS中央値は51カ月だった。LDC前の病変数と分布がアウトカムに相関し、LDC前の病変数が増加するに従いPFSが悪化した。病変数が4カ所以上の患者群はOSも不良だった(p = 0.018)。病変分布はさらにアウトカムを層別化し、LDC前にEM/PMがある患者と、骨病変のみの患者またはPET陽性病変がない患者では24カ月PFSが5.5%と66%(p < 0.001)、24カ月OSが47%と88%だった(p < 0.001)。この違いはアフェレーシス前よりも大きかった。
多変量解析では、機能的高リスク疾患、前治療ライン数5以上と並んで、LDC前のPMDおよびEMDが独立したPFS不良因子であった。PMDとEMDはOSの独立した予後不良因子でもあった。ベースライン時、EMとPM病変は骨病変より代謝的に活動性が高かった。最初のPODで進行を認めたLDC前の病変は、解剖学的カテゴリーによって割合が大きく異なり、EMが41%、PMが31%、骨が11%だった。day 30時点でCRの病変はほとんど進行を認めず(2.1%)、対してPRの病変は27%、SDの病変は40%が進行を認めた。day 30でのCRは、患者レベルでのPFSが良好だったが、OSの有意差はなかった。day 30での反応が不良なEM/PM病変は、骨病変と比較して高率に進行した。
BCMA CAR-T療法後のRRMM再発は均一ではなく、明らかな進行前からPET/CTで同定可能なEM/PM病変に集中するなど、解剖学的に区画化されていた。LDC前の画像上の腫瘍量とEM/PM病変の存在に、day 30での持続する代謝活性を組み合わせることにより、高リスク患者と高リスク病変を同定でき、細胞療法の効果持続期間を改善するためのリスクに応じた戦略が支持される。
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MMの日常診療で、どの程度PET/CTを組み込むかは、地域や施設によっても違いはあるかと思います。ガイドライン上はPET/CTでの評価も推奨されてはいますが、医療保険の関係もあるので、どのモダリティで評価するかは悩ましいところです。
今回の論文は、単施設の後方視的研究なので、確定的とまでは言えませんが、CAR-T療法でのリンパ球除去化学療法前の髄外・傍髄外病変が、多発性骨髄腫の独立した予後不良因子となる可能性が示唆されました。また、day 30での治療反応もその後の病変進行に関連し、特に髄外・傍髄外病変で反応が不十分な場合は進行リスクが高い可能性が示されました。髄外病変を有するような超ハイリスク症例で、CAR-T療法を含む積極的治療を検討する患者群においては、方針決定においてPET/CTでの評価が有用かもしれません。日本の日常診療で実装するのは困難なことも多いかもしれませんが、興味深い結果です。
おまけ
写真のネタ切れが続いていますので、以前載せた秋月の武家屋敷の写真を別アングルからお届けします。