こんにちは。卒業生Tです。

 

予防接種の記事がよく読まれる季節がやってきました。外来でもインフルエンザワクチン接種の受診が増えています。

今まで「化学療法と予防接種」「リツキシマブと予防接種」について書いてきましたが、今回は今話題の「免疫チェックポイント阻害薬とインフルエンザワクチン」について書きたいと思います。

 

結論から書くと、「免疫チェックポイント阻害薬使用中の患者さんにインフルエンザワクチンを推奨すべきなのかどうかは、現在のところわからない」です。

 

理屈としては、免疫反応を活発化させるお薬なので、インフルエンザワクチンに対する副反応が多く出たり、薬の副作用が強く出る可能性があります。

 

一方、免疫チェックポイント阻害薬を使用するようながん患者さんではインフルエンザによる死亡や、インフルエンザによる治療の中断を避けるためにインフルエンザワクチン接種が推奨されています。どっちのリスクを取ればよいのかまだ報告が少なく、非常に悩ましいところです。

 

論文を2つ紹介しましょう。

Influenza vaccination of cancer patients during PD-1 blockade induces serological protection but may raise the risk for immune-related adverse events.

H. Laubli et al. J Immunother cancer, 6(1)(2018), p.40

 

PD-1/PD-L1抗体治療を受けている23人の患者さんと、11人の健康な人にインフルエンザワクチンを投与した。

・患者群でもインフルエンザの抗体価は上がった(効果がありそうだった)。

・しかしながらワクチン投与後3ヶ月ほどで52%の人にirAE(免疫的な副作用)が起こった。23人中6人(23%)が重篤なirAEであった。

 

という論文です。52%はやはり高い数字なので、これを見ると「やっぱりインフルエンザワクチン接種は控えた方が良いかも?」て思ってしまいます。しかしながら、PD-1/PD-L1抗体そのものでも一定のirAEが出るので、どのくらいワクチンが+αとして働いているかはわからない論文です。

 

2つめの論文はこちら。

Influenza vaccination in patients with lung cancer receiving anti-programmed death receptor 1 immunotherapy does not induce immune-related adverse events.

Wijn DH. et al. Eur J Cancer. 2018 Oct 24; 104:182-187.

 

・ニボルマブ投与中の肺がん患者さん127人が参加。そのうち42人にインフルエンザワクチン接種を行い、85人にワクチン接種を行わなかった。

・irAE(免疫学的な副作用)が出たのがワクチン接種群で26%、非接種群で22%だった。重篤なirAEに限ると7% vs 4%だった。

 

この論文を見ると、ワクチン接種に関わらず一定のirAEが出るのがわかります。若干ワクチン接種群の方が頻度が高い感じもしますが、統計的にはあまり差がないとして、筆者らはワクチンを避けなくても良いのではないかと締めています。

 

私自身はびびりなので、今の段階では患者さん個人ではなく、患者さんのご家族にワクチン接種していただくのが一番ベターなのかな、と思ったりもしますが・・・

「もうワクチン接種しちゃった!どうしよう」と悩む患者さんがいらっしゃったら「そんなに悩まなくても良いですよ」ということはできるのかなと思いました。

 

おまけの写真は博多駅のハローキティカフェで飲んだイチゴソーダ的なものです(うろ覚え)。金平糖が可愛いですね。

 

 

こんにちは。スタッフのYです。

 

今回、第8回若手臨床血液学セミナーに参加してきました。

 

毎年1回東京で行われているセミナーです。以前から興味はあったのですが、春先に上級医の先生が「病棟は僕がカバーするから行っておいで!」と言って下さってので応募してみました。実はこれ抽選なのですが、なんと・・・当たりました!

 

というわけで行ってきました。

 

週末の朝から始まり、ひたすら講義を受けてきました。もう10年以上も前になりますが、予備校時代を思い出しました。流石に朝から晩までひたすら講義を2日間は疲れましたが、どの講義も本当に分かりやすくまとめて下さっていて、とても頭の中が整理されました。白血病の遺伝学的な話から今の臨床の現場での治療の選択まで、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫、そして血栓止血学まで、まさに血液内科全般についての講義がありました。しかも検鏡実習まであり、かなり手厚いセミナーでした。

 

若手の血液内科の先生や血液内科を志す先生達は来年以降もあると思うので、是非参加を検討されてみて下さい。

 

とても勉強になるなと思いながら講義を受講していましたが、講義を聴いていると・・・「そういえばこれ、教わったような・・・」と思うことが多々ありました・・・。振り返ってみると・・・日々、自分の上級医の先生に教えてもらっていることだ!と気づきました(もっとちゃんと覚えとけよという話ですが・・・汗)。

 

日頃忙しい業務の中でもきちんと上級医の先生は自分に指導して下さっているのだな・・・と改めて感じました。また明日からも業務を頑張るとともに、教えて下さる上級医の先生に感謝を忘れず、血液学の勉強ももっと頑張ろうと思います。

 

さて、東京に来たぞ!と思いましたが、みっちり講義があったので観光どころではありませんでしたが、1日目の夜は東京の旧友と食事ができて、昔を懐かしむこともでき充実した2日間でした。

 

 

おまけ:旧友との食事の写真を撮ればよかったのですが忘れてしまったので、2日目の講義が終わって飛行機に乗る前に食べた夕食のうどんを撮影してきました。東京のうどんもおいしかったですが、福岡の細麺もやっぱりいいですね。

AAとTETとメチレーション

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こんにちは。卒業生Tです。

 

アスコルビン酸(いわゆるビタミンC。以後AAと表記)といえばお肌に良いことで有名な栄養素です。最近血液内科分野でもAAに関する論文をたまに見かけるので、今回はそのうちのひとつをご紹介したいと思います。

 

Upregulation of TET activity with ascorbic acid induces wpigenetic modulation of lymphoma cells.

N Shenoy et al. blood cancer journal 7, e587(2017)

 

TETという酵素は、突然変異が起こってうまく働かなくなると、DNAの過剰なメチル化を引き起こします。この突然変異はリンパ腫で見られるので、TETがうまく働くようにすると良い効果が得られるのではないかと研究されています。また、AAは、TETの補酵素なので、TETの働きを助けるとされています。

それらの背景を踏まえ筆者らは、

 

・試験管内でリンパ腫cell lineにAAを加えることで、TET活性が上がり、DNA脱メチル化がすすむこと。

・AA処理により、メチル化によって抑制されてしまう腫瘍抑制因子SMAD1の発現が増え、リンパ腫cell lineの化学療法感受性が増加すること。

・リンパ腫の患者さんで、特に腫瘍量が多い人では血中のAA濃度が下がっていること(結果なのか原因なのかはわかりません)

 

を示しました。もちろん完全に試験管内の話なので、AAが生体内でどんな動きをするかはわかりません(臨床試験ではっきりした結果が出ているわけではない)。しかしながらAAとメチル化の関連はあまり考えた事がなかったので、そういう意味で面白い論文だと思いました。

 

おまけの写真は、この前台湾に行ったときに食べた火鍋です。鍋の形がベンツっぽいのでベンツ鍋と呼ばれていると後で知りました。美味しかったです。