コアなタイトル記事、3つ目にお付き合いくださってありがとうございます。
3記事目ですからもう前置きは不要ですよね。
前記事に目を通されていない方はそちらからお読みくださいね。
さて、お話を書きたい!という衝動が働いているとしたら、それは自分の中にアイディアが浮かんだ時に他ならないかと思います。
けれど、文字で全てを伝えなければならない執筆作業というのは存外面倒で、実際にそこから先に進む人はほんの一握りと見受けます。
それはなんて勿体ないことでしょう。苦労が多いほどやり遂げた時の達成感は半端ないものなのに。
私としては是非その快感を味わっていただきたい…ということで、その一歩を躊躇っているあなたの背中を押せたらな…という思いを込めて、執筆術3をお届け致します。
3記事目となります今回は、一葉流一本の短編が出来るまで…を、実際にお届けしたSS「テイクアウト」 を題材に語ってまいります。
これからお話を書こうと思っている方の
または既に執筆しているけれど更に上を目指したいと思っている方の、参考になれば幸いです。
1・思いついたエピソードを活かす方法その1
初回、執筆術1の中で私は、思いついたエピソードを活かせるようにお話を構成すればいい…と、至極当たり前のことをお伝えしましたが、では具体的に一葉はどうしているのか。そのやり方を披露いたします。
主体となるエピソードを思いついてから、一本のお話を仕上げるまでの作業の流れは執筆者それぞれだと思いますが、一葉に関しては以下のような流れを組んでいます。ちなみにこれは長編でも同じです。
1・エピソードを思いつく
2・どんな話にするか決める
3・誰視点で書くかを決める
4・構成を考える
5・執筆する
6・推敲する
7・タイトルを決める
一葉の場合、SSに限ってはお話を思いつくと同時に上記手順の1~4がほぼ決まった状態です。従いまして、妄想が浮かんだ瞬間にメモる内容はだいたい執筆内容に相違ないのですが、そう言ってしまうと何の参考にもなりませんので、一つ一つの項目を紐解いていこうと思います。
1・エピソードを思いつく
これは先日、奥さんがおうち居酒屋をしてくれて嬉しくなった、というSNS投稿をした夫さんの話をTVで取り上げていて、私はたまたまその番組を視聴して知った訳ですが、小耳に挟んだその瞬間にとても心温まるお話だなぁ…とほんわかした気分になれたので、読者様にも同じ気分を味わってほしいなと思い、自分が感じたそのままをお届けすることにしました。
ここがスタート地点というわけですね。
2・どんな話にするか決める
これは執筆術1及び2の中で繰り返したこと。つまりラストを決めるということです。
世の中には『終わり良ければ総て良し』という言葉があります。結果が良ければ動機や途中の過程などは問題にならず、物事の終わりが全てだという意味です。
これ、全ての文章および物語に対して言えることだと私は思っているのですが、ただし物語ですから、動機や途中の過程もないがしろにしてはダメなのですよ。
ラストを決めておく・・・という事案に対しては、とても良い参考案件があります。
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」という映画をご存知でしょうか。
これはタイトル通り、夫が家に帰ると妻が必ず死んだふりをしているという、実際の夫婦のお話を映画化したものなのですが、なぜ妻が死んだふりを続けるのか…という、誰もが抱くだろう疑問の答えが映画の中で明かされることはありませんでした。
当然、鑑賞者の感想に「面白かった」の言葉はなく…。
そりゃそうですよ。タイトル通りの中身が披露されているだけの映画に2時間も費やす価値がどこにありますでしょう?そもそも映画制作関係者はなぜその状態で良しとしたのでしょう。
繰り返しますが、通常お話は『 始まり 』があって『 何かが起こり 』、『 その結果が現れる 』ことで終了するものです。
友人の話を聞いて、最後にその動機を訊ねたら「内緒」と言われたのならそこで止まってしまうのは良くある話ですが、小説やマンガ、映画などの物語という形において、疑問点が解消されないお話ほど面白くないものはありません。つまり、始まりがあって何かが起こったそこで物語が終わってはダメなのです。
オチは必要不可欠な要素です。
従いまして、お話を書き始める前に必ずラストを決めておくことは極めて重要なことなのです。
では、エピソードを思いついたものの、肝心のラストが思いつかない時はどうしましょう?
出るまでしつこく考える…なんて声が聞こえてきそうですが、そんな必要はないですよ。そんなことをしていたらあっという間に執筆作業が嫌になってしまいます。
そういう時は、「どんな雰囲気のお話にするかを決める」 といいです。
題材として取り上げた「テイクアウト」は、読後にほんわか気分になれるようにと心がけ、そうなるように仕上げたつもりですが、目指す雰囲気を決めることで、大まかですがラストが見えるようになります。
例えば、とても分かりやすくいきましょう。
おうち居酒屋というエピソードを使って、ホラーに仕上げることにしましょう。そうなれば当然、雰囲気が違う訳ですから、必然的にラストも違う形になる…と想像がつきますよね。
自分が描きたいと思うお話のムードを決めてしまえば、その物語のラストが見えてくることがあります。
そうなればあとは読者様にそれを感じ取ってもらえるラストを捻り出せばいいだけです。
さぁ、思いついたエピソードのラストを考えましょう!決まったら次に進んでくださいね。
2・思いついたエピソードを活かす方法その2
1・エピソードを思いつく
2・どんな話にするか決める
3・誰視点で書くかを決める
4・構成を考える
5・執筆する
6・推敲する
7・タイトルを考える
さて、次に決めなければならないのは誰視点で書くかです。
その前に整理しておきましょう。
一人称、二人称、三人称…という言葉を聞いたことがあるかと思います。
文法で、言語主体が話し手か聞き手か、またはそれ以外の第三者であるかの区別のことをこう言うのですが、具体的には以下のように分けられています。
一人称…自称のこと。
話し手(書き手)自身、または話し手自身を含む仲間全体をさす場合のこと。「僕、私、俺、われ、我々」で表します。
二人称…話し手(書き手)に対して、聞き手(読み手)のこと。
「あなた、あなた方、君、なんじ」などのこと。
三人称…話し手(書き手)、聞き手(読み手)以外の人、または物に関することを示すもの。
「これ、それ、あれ、彼、彼女」などの他称のこと。
上記3つのうち、文章においては一人称か、三人称のどちらかを選ぶことになります。
余談ですが、私は三人称のことを神視点と呼んでいます。
それは言葉通り、三人称で執筆するメリットに通じるからです。
三人称は地上を見下ろす神の如く、あらゆる出来事をお話に盛り込むことが可能です。それゆえ、登場人物一人一人の心情表現が客観的になりやすいという特徴があります。
一方、一人称のメリットは登場人物の内面や心情を細かく描きやすいという特徴があります。反面、語り手が居ない場面の出来事をお話に組むことが難しいという難点も同居しています。
でも私は自然に入れることが出来ますけどね。それ、腕の差なのでw…とさりげなく自慢。
さて一葉の場合、特にSSを執筆する際はそのほとんどにおいて一人称を採用しているのですが、それは一人の視点から物語を綴る方が、よりリアルな共感を得てもらいやすいから…というのが最大の理由です。
しかし、場合によっては三人称を採用している作品もあります。
例えば、「藤道奨物語シリーズ」 は、キョーコside以外の全話を神視点で執筆しています。
何故かと言うと、その方が藤道氏の独特な個性を生かせると考えたから。
一人称は内面や心情が描きやすいため、読者様の共感を強く得ることが可能なのですが、特異な個性であるMでGでHな藤道さんのそれに共感できる人は恐らくごく少数なはず。
ならば一人称で描くより、神視点で面白おかしく執筆したほうがより楽しんでもらえるのでは…と考え、このシリーズは神視点を採用したのです。
また、「草原の海」 や「闇色のイバラ」 なども神視点で執筆しています。
パラレルはその世界観を読者様に説明しなければならないという点と、メインキャラたちが別々に行動する場合、一人の視点に絞ってしまうと別地で起こっているそれらを読者様に説明することが難しくなってしまいます。
特に異世界設定となると細かい説明がつきものとなるため、無駄なく端的に読者様に伝えるには神視点の方が有用だろうと考えたのが理由です。
ところで、前述したお話以外にも、まだ神視点で執筆している作品があります。たとえば「破壊神がやってきた」 や、「トリの雄たけび」 などがそれです。
さて、この視点の考え方。上記に挙げたタイトルから、一定の法則があることに気付けますでしょうか。もし気付けたとしたらあなたはかなりの上級者。更なる上を目指せる人です。
気づけなかった人は、そうなれるようにここで頭に叩き入れてしまいましょう。
小説の場合、一般的に短編やシリアス系のお話は一人称の方が、長編やコミカルなお話は三人称の方が向いています。
もちろん、プロの中には短編だろうと長編だろうとシリアスだろうとコミカルだろうと一人称オンリーで、あるいは三人称オンリーで執筆する方もいらっしゃいます。
しかしながら私が執筆スタイルを固定化しないのは、より読者様に楽しんで頂ける方法があるのならそれを採用しない手はない、と考えているからです。
そんな訳で、前述したように短編は一人称が向いています。とはいえ、一人称というのは独特で、書きにくいという方もいらっしゃるはず。従いまして最初は無理をせず、自分が書きやすいスタイルを選んで短編に挑むほうが挫折は少ないと思います。
また、文体自体は三人称でも、物語を一人の視点に絞って進めることで一人称っぽくすることは可能です。
けれど、いいですか?今回はこの人でいいや~なんて、適当な決め方をしてはダメですよ。
誰の視点にするかで読者様の共感度はまったく違うものになってしまいます。それによって思いついたエピソードが全く活かせなくなることだってあり得ますし、誰の視点にするかで読後の印象が大きく変わってしまうこともあるのです。
物語を一人称で書くときは、自分が目指すお話の雰囲気に沿った内容に出来る人物を選択するよう、常に心掛けなければなりません。
3・思いついたエピソードを活かす方法その3
1・エピソードを思いつく
2・どんな話にするか決める
3・誰視点で書くかを決める
4・構成を考える
5・執筆する
6・推敲する
7・タイトルを決める
さて、ここでは構成から執筆・推敲まで一気に説明してしまいます。
とは言え、メインエピソードが出来、ラストが決まった時点でSSなら構成したも同じです。
後は書き出すだけ。唯一注意点を挙げるとすれば、それらが自然な流れになるようにセリフや出来事を配置しなければならないということ。
では、実際にお届けした「テイクアウト」を使って説明していきます。
このお話のメインエピソードは「おうち居酒屋」。
時事作でもありますので状況説明はもちろん必要となりますし、おうち居酒屋に至る理由も必要です。それらを踏まえ、大まかな流れは以下のように組んで執筆しました。
「蓮くんが仕事帰りに飲みに行こうとする」※なぜそうしようとしたのか説明を入れる
↓
「ことを連絡したらキョーコに怒られ断念」
↓
「帰宅したらおうち居酒屋になっていて蓮くん感激」
上記の流れは3段構成の「何が」⇒「どうして」⇒「どうなった」に合致している事が判りますか?ついでに言うと、これはテレビで聞いたほぼそのままの流れでもあります。
その方が、自分が感じたままを読者様にも感じてもらうことが出来るだろうと踏んだからです。
実際の執筆では、キョーコにメールを入れる前に、どうしてそういう事になったのかを簡潔に説明し、上記の構成に沿って物語を進めて行って、「…本当にありがとう、キョーコ」、と蓮くんが呟いたところでエンドを結びました。
さて、執筆は完了です。この後は必ず推敲作業に移行します。今度は読者として作品に目を通すわけです。
…で、実際に読破すると何かが足りない感ありあり。
そこで急遽加筆したのが、『蓮くんがキョーコちゃんをテイクアウト』までの5行でした。
つまりこの「テイクアウト」は、3段構成で執筆したあと、物足りなさを感じて4段構成に組み直した数少ない作品の一つという事。
これを書き上げたとき、執筆術での例文に使えるなぁ…なんてことをすぐに考えちゃった一葉。ちゃっかりです。
さて、推敲での手直しの説明の前に、テイクアウトを蓮くんsideにした理由をお教えします。
答えは簡単、その方が効果的に書けると思ったから。
何度も繰り返しますが、お話は「始まり」があって「何かが起こり」、「その結果が現れる」ことで終了するものです。加えてこの流れに波があった方がより読者様を引き込みやすくなると同時に、そこが楽しんでもらえるポイントにもなります。
解説しますと
「 蓮くんが仕事帰りに飲みに行こうとする」⇒「ことを連絡したらキョーコに怒られ断念」⇒「帰宅したらおうち居酒屋になっていて感動」の流れの中に
「キョーコに怒られてしまった」⇒「不機嫌になっているかもと不安になる」⇒「実際にはプロに徹した仲居姿だったことが判ってホッとする」
・・・という、緊張感から安堵感に移行する感情表現を盛り込んだお話に出来ると考えた上での蓮くんsideだったのです。
これならお話の雰囲気である「ほんわか気分」を蓮くんの立場になって味わってもらえますからね。
以上が蓮くんsideにした理由です。
では推敲作業に戻りましょう。
いざ読者様目線でお話を読むと何かが足りないと思える。これは問題です。
では何が足りないのでしょう?
それは、執筆術2で説明したように、3段構成で出たオチがあまりにも当たり前すぎたのだと思われます。そうなるとやはり目新しさがなく、一味足りない感じが拭えなかったのです。
例えば、1+1=と聞かれて、2が答えなのって面白味がありませんよね。当たり前すぎて。誰でも知ってて。
でも、1+1=の答えが、田・・・だったらどうですか?あれ、確かに!って手を打つと同時に、面白いって思えませんか?
お話オチもこれと一緒です。強引に、あるいは当たり前に結んだ結果は面白味がないのです。少しだけ捻りを加えて、いい意味で読者様を裏切ることが、結果として読者様を楽しませることに繋がります。
さて、一味足りない要因に、アンバランスさがあるのでは、と私は気づきました。
上記の流れの中で読者様が見ているのは、蓮くんの目から見たキョーコちゃんの姿そのものです。
その出来事を通してキョーコちゃんからの愛情はビシビシ感じることが出来るのに、蓮くんのアクションが明らかに少ないため、蓮くんからキョーコちゃんに向ける愛情の少なさが物足りなさに繋がったのかな、と私は分析しました。
実際、読後に「してもらって終わりかよ!」という感じがありましたし(笑)
そこで、お話の着地点に捻りを加えた4段落目を急遽追加。
2~3段落目はキョーコちゃんの蓮くんに対する愛情が満ちていましたから、4段落目では逆に蓮くんのキョーコちゃんに対する想いを盛り込んだわけです。
これによって、「お互いに愛し合ってるなぁ」と感じてもらえると同時に、ほんわか気分が更に追加されたのでは、と私は思っております。
さて、以上が実際の推敲時の話なのですが、このお話に限らず推敲はとても大切な作業です。
けれど、自分が執筆したお話って、客観的に見るのが難しいのですよね。執筆作業に慣れていない人ほどそうだと思います。
そういう人の場合は執筆後に数日置いて、細かい内容を忘れた状態でお話を一読してみるといいと思います。
一番いいのはまったく忘れた状態で読む事なのですけどね。
ちなみに20代の頃、私はこれをやりまくりました。あ、今でも時々やっていますが。
長くお付き合いくださっている方なら判るかと思いますが、ブログ運営を開始した当初は執筆自体がとにかく久しぶりで、だから本当に自信が無くて、とにかくこれを繰り返していたのです。
メモしたSSを発掘していたのはまさにこれが目的でした。
3ヶ月以上放置した作品は、まっさらな読者の立場で読むことが出来ますから。
読後、自分が感じたそのままをきっと読者様も感じ取ってくれるはず。そう考えて、読後に思う所があればそれを解消できるよう、お話を足したり引いたりして、試行錯誤を繰り返しながら私はお話を完成させていたのです。
ちなみに今はだいぶ成長したので(笑)、執筆直後でも読者様気分で読むことが出来ます。出来ない時はもちろん放置。
連載物の更新間隔があいてしまう理由には、そういう事情も実は含まれているのです。
お待たせするのは申し訳ないと思うのですが、こればっかりはもう本当に、こうする以外にしようがないことなのです。
さて、長くなってしまいましたので今回はここまでと致します。
次回の執筆術◇4 はこの続き、7番目の「タイトルを決める」他についてお話したいと思います。ご興味がある方は是非お付き合いくださいね。
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