SS トリの雄たけび◇前編 | 有限実践組-skipbeat-

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 さて、本日お届けいたしますのは先日お知らせいたしました有限実践組500記事記念でお与かり致しましたマリモ様からのリクエストです。


 本日は奇しくもマリモ様のバースディ。しかしながら間に合うかどうかが未知の領域でしたのでご本人様にも全くお知らせせず、ゲリラ的にお届けです。


 ……うん。前編なんだけどね。


■ トリの雄たけび ◇前編 ■





 大輪の紅バラを見るたびに思い出す。



 敦賀さんと出会って初めてのバレンタイン。



 ずっと

 ずっと考えていたの。




 大好きなあの人へ渡すバレンタインの贈り物は、決してあの人に迷惑がかからないものにしたいと。




「 京子ちゃ~ん 」


「 はいっ 」


「 いつもの様に迎えに行ってぇ。坊のプチコーナーのゲストさん 」


「 はい、行きますね。今日は特番だから前半と後半で違うゲストの方なのですよね 」


「 そ。ゲストとかさ、今はスタッフにさえ内緒にするのが面白いっていうか、楽しいよね。仕事をしている間にこういうのがあると張り合いが出ていいよ 」


「 あはは。確かに、そうですね 」



 前半に登場して下さったゲストさんは、結婚を控えた女優さんだった。

 ゲストさんが大好きだという白百合の花束を抱えて迎えに行った私は、ゲストさんがその方だと判った途端、着ぐるみの中で一人はしゃいだ。



 坊の仕事をしていて良かった…と思えるのは、色々な人と出会えること。


 ……もっとも、ゲスト様の誰一人として坊の中身が私であることを知らない訳だから、出逢えた数に入らないのは仕方のないこと。

 けれど、だからこそ気兼ねなく対応することが出来るのだ。


 坊に変身した私にスタッフさんが花束を手向けてくれた。



「 坊。この紅バラで良いの? 」


「 あ、そうです。ありがとうございます 」


「 白百合の花束の次は紅バラの花束か。また次のゲストも女性なのかね 」


「 そうですね。きっと華やかな方なのでしょうね。じゃ、行って来ます!! 」



 次のゲストさんは誰なのだろう。

 私はウキウキしながらプキュプキュ歩いた。



 LME事務所の先輩であるブリッジロックのお三方が司会を務める『やっぱ気まぐれロック』のゲスト様控室には、いつもだったら名前がある場所にシークレットゲスト様と書かれている。


 シークレットなので当然ゲストを迎える所から番組は始まるのだけど、これは本日限りのレアケースな割り振りだった。



「 坊。じゃ、ノックするところから撮るから 」


 鶏姿の私はコクリと頷いた。


 ノック音は3回。

 坊の手はもちろん羽でバサバサだから、持っている会話ボードを扉にぶつける。



「 はーい 」


 中から返事が聞こえて来て、聞き慣れた声のようなそれに私は身を引き締めた。

 間を置かずに開かれた扉から顔を出してくれたのは自分が想像した通りのマネージャーさんで、その眼鏡をかけた人物は坊を見て柔らかく笑顔を浮かべ、そして目をキョトンとさせた。



「 やあ。君が気まぐれロックのお迎え?……あ……あれ? 」


「 どうしたんですか、社さん? 」


「 いや、迎えに来てくれたマスコットキャラクターがちょっと俺の想定外で… 」


「 想定外?って、誰なんです? 」



 社さんを見つめながら私は着ぐるみの中でワナワナと震えていた。



 まさか……

 まさか嘘でしょ?誰か嘘だと言って!!!!


 この紅バラの花束を受け取るべきシークレットゲスト様って……



「 あれ?君、この番組のニワトリ君だったんだ。初めて知った 」



 見目麗しきお姿の敦賀さんは、黒色の開襟シャツで私の前に現れ、爽やかに笑った。


 いえ!!!!坊にですけどっ!!!



「 コ ……コケコッコォォォォォォォォオオオオオオ……!!!!! 」



 なんてこと!?

 この恰好で出逢ってはいけないお方ナンバーワン。


 史上最高にバレてはいけない相手が今日のシークレットゲスト様だなんて!!!








「 今日のゲストは敦賀さんやで~!!! 」



 ショータローの時とは比べ物にならないほどの黄色い声がスタジオを埋め尽くしている。


 私の憂いなんてなんのその。

 番組はつつがなく進行していた。



「 や、敦賀さん、テレビで見ない日は無いお方だけど、こうして実際にお会いすると迫力が違いますよね 」


「 ホンマ!自分と同じ事務所いうのが恥ずかしいくらいカッコええですわ、敦賀さん 」


「 うんうん。背ぇ高いし、めっちゃ顔ええし、才能バリバリだし。なんで神様は敦賀さんにそんな幾つも与えたのかねっちゅうぐらい。な、リーダー 」


「 うん。正直超うらやましい…… 」


「 そうですか?それはありがとうございます 」



 スポットライトの外れに位置するステージの隅の方で、私は展開される会話をニワトリ耳で聞いていた。



 嗚呼…なんなの。一体これは何の罰ゲームなのでしょうか。


 よりにもよって敦賀さんがゲストとか。

 神様はまさかどれだけ私の心臓が強いのかをお試しになりたかったのでしょうか。



「 それぐらいカッコええと物凄いモテて困るでしょう?ちなみに彼女っていまいらっしゃるんですか? 」


「 いえ、いないんです。俺、振られてばかりなんですよ 」


「 嘘だ!いまついてはいけない嘘をつきましたね?!嘘はあきませんよ 」


「 いえ、本当なんですけどね。信じられませんか? 」



 ええ、信じません。

 私も信じませんよ、敦賀さん。


 あなたの様に素敵な人とお付き合い出来たとしたら、女性は絶対、スッポンのようにしがみついて離れないと思いますから。


 それが判っているからアナタはどなたとも付き合っていないのでは?




 スタジオの隅で小さく顔を横に振った私はそれから人知れず溜息をついた。



 ――――――― ふぅぅぅ…


 え?私?

 私はほら、付き合うとかそういうレベルではありませんから。


 ええ、何しろ私

 いまニワトリですから。



「 坊!! 」


 番組が順調に進行する中、もうすぐCMになろうという直前に声がかかった。

 何だろうと視線を向けると声の主はこの番組のプロデューサーさんで、彼は眉間にこれでもかとしわを寄せたしぶーい顔で、私を懸命に手招きしていた。


 坊の姿での会話は許されていないので、CMに入ったと同時になんですか、と首を傾げて近づいた。


「 お前、さっきシークレットゲストを迎えに行って控室の廊下で物凄い雄たけびを上げたんだって?驚かせるつもりだったのか?え? 」



 お…雄たけびって!!



 私は、ゲストが敦賀さんと知って、驚きのあまり叫んだだけですよ!

 それだって坊の鳴き声に徹したんですからむしろ褒めて頂きたいぐらいですよ!!


 もちろん言葉にすることは出来ないので懸命にジェスチャーで訴えたけれど、このプロデューサーさんに私の言い分が届いた事はほぼ無く、私の意見は容赦なくカットされた。



「 い・い・か?お前、ぜっっっっっったいに粗相をするなよ!? 」



 粗相。ああ、はいそうですね。

 過去、ショータローにちょっかいだしてみたり飛鷹くんを怒らせてみたりしたことがまだ尾を引いているということですね。


 あまつさえ私が、若手実力派ナンバーワンと謳われている敦賀さんにまで何かするんじゃないか、と疑っていらっしゃる訳ですね。


 する訳ないのに!



「 坊!!聞いてるのか? 」


 ブン、ブン、ブン、と勢いよく3回首を縦に振った。

 するとプロデューサーさんはフン…と鼻息を荒くしてから声を潜めてこう言った。



「 ……だよな。いくらお前でも自分の所属事務所、同セクションの先輩が持つ冠番組の中で、別セクションとはいえ自分と同じ事務所の人間がゲストだってことは理解出来ているよな。

 まさか番組に迷惑をかけるようなこと、絶対にする訳ないと思っているが!!いいか!?本当に絶対するなよ?! 」



 相当信用ないんだな、とは思ったけど、これに限ってはもう全面的に信じて欲しかったのでとにかく何度も頭を縦に振った。



 ええ、本当に!

 信じて下さい。


 だって私、絶対に敦賀さんにも社さんにも正体がばれる訳にはいかないのだから!!




 でもこの時、私は気付いていなかったのだ。

 坊の視界は極端に狭いから、すぐ近くに社さんがいたことなど全く気付いていなかったのだ。



 そして他ならぬ社さんが、最初からこの会話を聞いていたことにも、私はまったく気付いてなかった。






 ⇒後編に続きます


実は細かいディテール指示を頂いていたにも関わらず一切、採用しておりません…。すみません。しかもこんなタイトルで本当にすみません。


挙句、バースディに間に合うように頑張ったつもりなのですが、結局一話で収まりませんでした。


そんな訳で、後編もお付き合い頂けたら嬉しいです。

コケコッコォォォォ♡(〃∇〃)



⇒トリの雄たけび◇前編・拍手

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