一葉でっす!いつも本当にありがとうございますо(ж>▽<)y ☆
弊宅500記事を記念してりかちゃん様からお与かり致しました記念リクをお届けいたします。
予想以上に長くなって、てんてこ舞い(笑)
お付き合い頂けたら嬉しいです。
前話こちらです↓
■ 天使の落とし物 ◇11 ■
最上さんが記憶を取り戻すより先に、俺達が知ることになったあの日の出来事。
「 まさか、君は知っているのか?あの日なにがあったのかを…。それを話してくれないか? 」
「 ……いいですよ。あの本を返してくれるなら 」
固唾を飲み込みながら視線を交わした俺たちは、落ち着いて話が聞きたいと願い出て了承をもらい、俺の車へと場所を移した。
俺自身は初対面である彼には助手席に座ってもらい、俺は運転席に、そして社さんを後部座席に配して男三人で雁首を揃える。
いざ彼から話を聞こうとしたとき、本当にこれでいいのかと俺は最初身構えていた。
あの子は何一つ思い出していないのに、果たして彼の言葉だけを信じていいのだろうか…と混じり気の無い疑念が沸いた。
何より俺は、彼が言ったそれが信じられないと思っていた。
――――――― あの子が持って行った雑誌です。あれ、オレの妹の本なんです!
そんな事があるはずない。
なぜならあの子は他人の物を黙って持っていくような子じゃないんだ。
それを信じていながら。
だけど俺はあの日なにがあったのか、ただそれを知りたくて。
淡々と語られる彼の話に耳を傾け、すべてを聞き終えた時にようやく、彼の言葉が真実であることも、あの子の行動の意味も、全部、全部理解出来た気がした。
「 ……そう。亡くなった妹さんへ向けて… 」
「 それでも、いつもは毎月本を買ったあと仏壇に供えて、一ヶ月ぐらい経ったら捨てる…ってことをしていたんですけど 」
彼の話は実にリアルで、俺の心にも迫るものがあった。
物心がついた頃には彼は父親と二人暮らし。
片親である事に不満は持っていなかったけれど、どこか寂しい思いはあったと思う…と彼は語った。
「 ところが、オレが高校に進学したとき、父親が突然再婚するって言い出したんだ。相手の女性には子供がいて、それが妹だった 」
結婚に反対する気持ちはなくて、彼はただ嬉しいって、そう思ったという。
今まで父親に守られていただけの自分に初めて出来た家族の輪。
自分より弱い存在の妹を守るべき立場になれたことが何より嬉しかったと。
「 オレの妹、オレより4歳年下で、すっごい可愛いんだよ。初めて会った日なんて、こんなにカッコいいお兄ちゃんが出来て嬉しいってすごく喜んでくれて…。
だからオレ、少しでもカッコいい兄貴でいようって。オレも単純だから、勉強とか、頑張ったりして… 」
そしてその数年後、俺がデビューをしたらしい。
テレビで俺を見た妹さんは大はしゃぎ。
「 ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん!! 」
「 なんだよ、どうした? 」
「 観て!!この人、敦賀蓮さんって言うんだって!この人、お兄ちゃんに似てない?! 」
「 ……似てないと思う 」
「 うっそ、似てるよ!!決めた!あたし、この人を応援する! 」
それから妹さんは俺のファンになってくれて
「 お兄ちゃん。敦賀さんって本当にカッコいいよね! 」
「 そうか? 」
「 えー?もう、この魅力が判らないの?お兄ちゃん、損してると思う。だってこんなに敦賀さんに似てるのにぃ 」
俺を褒めるついでに、血のつながらない兄のこともさりげなく持ち上げていたらしい。
「 似てるって言われるたびにそれが嬉しくて…。だからオレ、意識的に敦賀さんの仕草とか髪型とかを真似るようになった。そうするとまた妹が喜ぶからつい調子に乗って… 」
「 …えっと、別に、悪い事じゃないと思うし、俺自身も嬉しいよ。同性に真似てもらえるなんて光栄なことだと思う 」
「 ……そう? 」
俺がそう言うと、彼は寂しそうにクスリと笑った。
妹さんと血のつながりは無かったけれど、彼は本当の妹以上に彼女のことを可愛がり、そして妹さんも、彼のことを本当の兄貴以上に慕ってくれていたと思う…と彼は言った。
「 それで、妹さんはどうして… 」
「 病気。骨肉腫だったんだ 」
「 骨肉腫? 」
「 そう。それが判ったのは、妹がオレをかばって交通事故に遭った時だった。バカだからアイツ、こっちは掠り傷だけで済んだのに自分は足を骨折とか…。オレが妹を守るべきなのに立つ瀬ないよ。
そう文句言ったら何でそういうこと言うのって逆に怒って…。オレを守れたから後悔してないって笑ってさ。
だからオレはオレで、本当に良かった死ななくてって…。骨折だけで済んで良かったって、そう思おうって考えた矢先に… 」
骨折の際の検査で彼女の病気が見つかったのだという。
「 敦賀さん。確認したいんですけど、雑誌を持って行ったのって、京子…さんですよね? 」
「 え?…あ、ああ、うん。そう 」
「 やっぱり。…っていっても後で気付いたんだけど。
本を持ったまま逃げて行ったあの子を追いかけて行って、彼女が立てかけてある木材に突っ込んだ時は本当に驚いた。そこに敦賀さんがいたことも。
二人に何かあったらオレのせいだって、思ったらさすがに近寄ることが出来なかった 」
「 ……そう 」
「 そのときは諦めようと思った。けど、あの撮影所でケガをした人の大半がこの病院に来ることを思い出した。代わりの本を買っておいて、運よく病院で彼女を見つけられたら謝罪しようって決めて。
見つけられた時はやった!…って思った。買った本と交換してもらうつもりで声をかけようとしたとき、松葉杖を持っていたのを見て心臓が止まるほどドキッとした 」
「 ……妹さんの事を思い出して? 」
「 判る?実際、オレの妹とほぼ同い年だと思うんだ。だからその時は本のことより思わず先に聞いた。骨折ですかって。
全治5週間ですって答えが返って来た時は本当にホッとしたよ 」
骨肉腫は原発性の骨悪性腫瘍中では最も頻繁に発生する腫瘍で、全国で年間約200人の新患が病院を訪れると言われている。
患者の半数は10代の男性だと言われていて、3分の2の患者は5~24歳までに発症。
好発部位は膝や関節、肩関節に近い部位。
1980年以降は診断がついた時点でなるべく早く、腕や足の切断が行われていたが、切断後に肺転移が現れるケースがあり、その場合の5年生存率は10~15%程度。
その後、化学療法の発達により生存率は著しく改善。
現在では3分の2の患者が治ると言われているが、すべての患者に等しく化学療法が効果をもたらす訳ではなかった。
彼の妹さんは、回復しなかったのだ。
「 お兄ちゃ…あたしが死んだらあたしの代わりに毎月、敦賀さんが載っている雑誌を買って。応援、したいの…。天国から… 」
「 約束する!約束するけど……死ぬなっ!! 」
願いは届かず。
大切に守りたいと思っていた妹さんを亡くした哀しみは深く、それだけに、彼女が自分へと託した最後のお願いを彼は叶えてやりたいと思った。
そして妹さんが亡くなってちょうど一年が経ったある日。
彼は夢を見たのだという。
――――――― お兄ちゃん。あたしが世界で一番大好きな人を幸せにしてあげたいの。どうかあたしのお願いを聞いて。
夢枕にたった妹さんは、これが本当に最後のお願いだから…と、かつての兄に頭を下げた。
「 それが、本を燃やして欲しいって内容だったんだ。敦賀さんが載っているすべての雑誌を自分の所に送って欲しいって。
正直、それがなんだって思いはあった。けど、これが最後のお願いだからってそう言われたら… 」
「 それで、バーベキュー場で本を? 」
「 うちはマンション住まいで、まさかベランダで火をたく訳にはいかないし、他に火を使っていい場所が思いつかなくて…。
平日の午前中なら人なんて居ないだろうから平気だろうって考えて… 」
「 ああ…。キョーコちゃん、思い込み激しい所があるから。
自分が神と崇める蓮が載っている雑誌を燃やしている現場なんて見ちゃったら、そりゃあ我慢できないかもな 」
「 あ、それ。本人が言ってました。敦賀さんは自分にとって神にも等しい人だって。だからこんな扱い許せないって罵倒された 」
「 ……全くあの子は… 」
そのときはつい、俺は頭を抱えてしまったけれど、同時に心が温かくなるのを感じていた。
そうだったのか、と思った。
「 敦賀さん! 」
「 はい 」
「 本!返して欲しいんです!結局オレは交換できなかったその雑誌を代わりに燃やしてみたけどやっぱり駄目だったんです。それでは妹の所に届かない気がした。
諦められなくて…また声をかけてみたけど彼女は何も思い出さないから。仕方なくまた同じ雑誌を燃やしたけど、何度やっても妹には届かない気がするんだ。
どうか、返して下さい!妹の最後の頼みをちゃんと聞き届けてやりたい。アイツの為に最初に買った本じゃなきゃダメなんだ!! 」
――――――― そいつ、お前と似ていたんだよ。
…俺に?でも、声も背丈も違ったんでしょう?
そうだけど。なんていうか…
最初に会った時のお前に雰囲気が似てるって感じ……。
社さんから話を聞いたとき、理解に苦しむと思っていたけど。
彼から話を聞くうちにそういう事か、と思った。
大切な人を亡くしたことに対する、深い、深い悲しみが、社さんの目にそう映ったのかも知れない。
あの時の俺はまだ、リックを失ったショックと、己がしでかしたことに対する大きな後悔にどっぷりと身を浸していた。
ましてや彼は意識的に俺を真似ていたのだ。似ていると、社さんがそう思ったとしても決しておかしくはないのかも…。
「 判った。あの本は君に返すよ。あの子が退院する日に。その代わりに協力して欲しい。
彼女がケガを負った原因は君にもある。でもその責任を問うつもりはないから、代わりに協力してくれるね? 」
「 ……なん…ですか? 」
「 彼女の退院を祝う花絨毯を…… 」
俺と一緒に作って欲しい、と彼には言った。
話を聞いた限り、あの子が記憶を取り戻したくない理由が俺には判らなかった。
だから、もしかしたら逆なのではと考えた。
思い出したくないのではなくて、思い出す為のピースが足りないだけなのでは、と。
賭けてみよう。
この一連の出来事が、もし本当に
天へ召された彼の妹さんの仕業だとしたら…
あの日を再現するように
俺と彼、そして最上さんと社さんが一堂に揃えば
もしかしたら最上さんの記憶は戻るのかも知れない。
そう信じて……。
「 最上さん、いいんだ。平気だから! 」
「 何がですか!私、たったいま思い出したんです!あの人はっ 」
その言葉を聞いた瞬間、背筋がブルリと震えた。
同時に俺の腕の中にいたこの子の震えが俺に伝わる。
思い出した。
本当に最上さんは思い出してくれた…。
――――――― だからって腫れ物のように最上くんを扱った所で満足な結果が生まれるのか、蓮。
本当に小憎らしい。
悔しいけどその通りだった。
「 敦賀さん、重いです!放して下さい 」
「 ……放してもいいけど、落ち着くって約束するね? 最上さん、彼は俺に危害を加えようとした訳じゃないんだ 」
「 っっ!!敦賀さんが何を知っているって言うんですか!私はそれを目撃したんですよ! 」
最上さん。君が記憶を取り戻してくれたら、君に伝えたいと思ったことがあるんだ。
俺、いまの君に告白したいことがある。
ね。笑ってくれてもいいよ?
俺はね、君が負傷したことで
突然舞い込んで来た5週間というささやかな同居生活を、最後まで味わうつもりでいた。
味わうだけ味わって、それで終わりにしようとしていたんだ。
俺はね、君に向かうこの想いを君にぶつける気も伝える気も微塵も無かった。
彼から話を聞くまでは……。
…――――――― どうして……
どうして人は、都合よく物を忘れてしまうのだろうか。
愛しいと思う人が
大切だと思える人が
そばで微笑んでくれることの奇跡を
俺はどうして忘れていたんだ。
リックを失ったとき、俺はそれを深く後悔したじゃないか。
「 最上さん 」
抱きしめていた腕を緩め、細い肩に俺の両手を添えたまま、俺は彼女の前で跪いた。
足元に散らした絨毯が華やかに乱れ、戸惑い気味に瞳を揺らした彼女のそれに俺だけが映る。
「 ……敦賀さん? 」
彼の妹は天へと昇り、神の御使いとなって落としてくれた愛の種。
それに気付いてしまったが最後、無視することは出来ない。
「 最上さん。このまま…取り敢えず俺の話を聞いて? 」
そして俺は
その種を芽吹かせる道を歩むことに決めたのだ。
自分が誰よりも愛しいと思っている、君と二人で。
⇒天使の落とし物◇12へ続く
この連載、二ヶ月で終わる予定でいたのですが、もう足掛け4か月目に入っている事に先日気付いてびっくり。
∑(-x-;) ビックリ∑(゚Д゚) ビックリ∑( ̄□ ̄;) びっくり♡
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