天使の落とし物 ◇8 | 有限実践組-skipbeat-

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 前話こちらです↓

 天使の落とし物【1


■ 天使の落とし物 ◇8 ■






 …――――――― どこを探してもあの子がいない……




 正直、俺は焦っていた。



「 蓮、だめだ。やっぱりどこにもいない 」


「 ……っっっ……!! 」



 撮影が済んだとほぼ同時に戻って来た社さんからの報告を聞いて、俺は楽屋のイスに腰かけテーブルに肘をついて頭を抱えた。



 あれからもう5日も過ぎてしまっているのになぜあの子はどこにも居ないんだ。



 俺たちはいまだ最上さんの影も形も捉えることが出来ずにいた。



「 本当に、一体どこに行っちゃったんだ、キョーコちゃん… 」


「 ……っっっ!!! 」




 そんなに…

 そんなにあのキスが嫌だったのだろうかと思う一方で、もう絶対そうじゃない気もしていた。



 俺達の範疇を軽く超えて、どうにも知り得ない場所であの子に何かが起こったとしか思えない。



「 なぁ、蓮…… 」


「 社さん。病院にいて居なくなったっていうのに、本当に誰も見ていないなんてことが起こり得るのでしょうか 」


「 けど実際そうなっているじゃないか。だいたい、俺だってお前に電話する前に散々聞いて回ったんだ。

 こうなると、いつも人がまばらな時間に診察を受けていたのが仇になったって感じだな。人目があるほど目撃者もまた多くなるって言うのに… 」



 そう言って社さんは俺の隣にドカンと座り、やはり右手で頭を抱えた。




 あの日、社さんはロビーに最上さんの姿が見えない事を訝しみ、通りがかった看護婦さんに声をかけたのだという。



「 松葉杖をついた17歳ぐらいの女の子?さぁ… 」


 返って来た言葉に不安を覚え、その時そこに居たすべての病院関係者に声をかけたらしいのだが、そもそも診察室を出たあの子の姿すら記憶している人がいなかった。



 そんなことがある訳ない。

 そう信じれば信じるほど迫る現実に人は戸惑う。


 結果、社さんは普段では考えられないほどテンパった精神状態に至り、そこで俺に電話をしたらしいのだ。




「 蓮~~~~っ!!大変だ!キョーコちゃんがどこにもいないんだよぉぉぉ~~~~!!! 」


「 ……は? 」


「 ど、ど、ど…どうしよぉぉぉ~~~~!! 」


「 とにかく落ち着いて下さい、社さん。らしくないですよ!取り敢えず会計を済ませて、一度こちらに戻って来て貰えませんか?思い当る節とかないんですよね? 」




 それでも、この時の俺たちはまだこれほど深刻な事態になることを想定していなかったと思う。


 戻って来た社さんは少し平静を取り戻していたのだろう。小休憩を取っていた俺のそばに佇むと、敏腕マネージャーは仁王立ちで腕を組み、鋭い目線を送りつつ俺に向かって口を開いた。



「 蓮。まさか病院に行く前にキョーコちゃんに何かしたとかじゃないよな? 」


「 ……っ…なぜそう思うんですか 」


「 いま一瞬、ギョクリとしただろう? 」


「 していませんよ。気のせいです 」


「 いや。絶対なにかしたはずだ!俺、思い出したんだ、キョーコちゃんが言っていたこと。

 お前が、何かあるとすぐ四の五の言うなら…って、凄く破廉恥なことを言うってキョーコちゃん、ブツブツ言っていた。一体どういう意味なんだ?このセリフのどこが破廉恥なんだよ? 」


「 それ、いま疑問視することじゃないです 」


「 じゃあいつならOK?だいたい、やましい事が無いなら正直に言えばいいし、やましい事があるならいま赤裸々に告白した方がお前の身のためだと思うぞ? 」


「 ……っ!!何もありませんよっ!! 」



 きっとすぐに見つかる。俺たちはたぶん、お互いにそう考えていて、心のどこかに余裕があったんだ。


 翌日、あの子とお祝いをするつもりでいた一日間のオフを使い、俺たちは最上さんを探した。

 予想に反し彼女の痕跡はどこにもなく。



 あの子の携帯は一切通じず

 だるまやに連絡を入れても戻っている気配がなく、もちろん学校にも行っていない。


 致し方なくもう一度病院に足を運び、再度目撃者を探してみたが情報を得ることは叶わず。



 それでも万が一を考え入院患者の問い合わせもしてみたが、やはり最上さんの名前を見つけることは出来なかった。



 余裕だったはずの心がひっ迫してゆく。


 一日が過ぎ、半日が過ぎ

 一時間が過ぎ、一秒が過ぎるごとに不安ばかりが募ってゆく。



 探しに行きたくても俺が自由にできる時間には限度があった。

 自分意思で動くことさえ満足に出来ない俺の代わりに翌日以降は社さんが奔走してくれていたが、やはり限界はあったのだ。



「 本当に、どこに行ったんだ、あの子は!! 」


 なぜ何の音沙汰もないのか。


 俺に連絡を入れることさえ躊躇しているのだろうか。

 それとも、連絡できない状況下にいるのか。



 リハビリの開始が遅れることで後遺症が残る可能性だってあるっていうのに。せっかく順調だったのに……っ!!



 やるせない思いを持て余し、抱えていた頭を自由にした右手でテーブルを叩いた。強い衝撃音が心に響く。

 驚いて顔を上げた社さんはこの時きっと俺と同じことを考えていたに違いない。


 観念したように深い溜息を吐き出すと、社さんは素早く腰を上げた。



「 もうこれ以上は無理だ。蓮、行くぞ。仕方ない。もう俺達では無理なんだ 」


「 ……そう、ですね。まだLMEに居ますかね 」


「 いるだろ、多分。いてくれなきゃ困る 」



 出来れば俺達だけで解決したかったけれど、社さんも言ったようにもう仕方が無いと思った。

 どうあがいてみた所でこれ以上良い結果は出ない。


 早々に楽屋を引き揚げ、俺たちはLMEへ向かった。






「 ……なに? 蓮と社が? 」


「 はい。火急で相談したいことがあると仰っております 」


「 ふん。あれから5日か。…どうだ?最上くんの方は 」


「 順調にリハビリをこなしております。担当医の話では予定通り退院できるそうで、またあのお二人に連絡をしていないことは確認済みです 」


「 はぁ~ん。それは感心、感心 」


「 それで、どうなさいますか? 」


「 まぁ、妥当なセンだろ。いいぞ、通せ 」


「 かしこまりました 」





「「 失礼します 」」


 通された社長室で深々と頭を下げ、姿勢を正した俺達を見た社長は左手を腰にあてがうとまるで悪徳ブローカーのようにニヤリと歪んだ笑いを浮かべた。


「 よ~う、蓮、社 」


「「 お忙しいところ申し訳ありません。折り入ってお願いがあります 」」


 打ち合わせなど一切していなかったのにまるで練習したかのように俺と社さんの口から同じ言葉が滑り落ちた。

 それが面白かったのか社長は楽しそうに鼻を鳴らした。



「 くっ…。お願いねぇ 」


「 早速ですが社長… 」


「 言うな。お前たちの要件なんぞ聞かなくとも判っとる 」


「 はい? 」


「 最上くんのことだろう。診察後になぜか忽然と姿を消したあの子を、お前たちは見つけることが出来なかった 」


「 ……っっ??!! 」


「 どうだ?少しぐらい反省したか? 」


「 反省? まさか…社長が?!! 」


「 お前たちがな、あの子より少し大人びた視点と思考で世の中を鑑み、あの子のために良かれと思ってやったことだということを俺は理解しているつもりだ。

 だがな、甘ぇんだよ。そもそもお前たちに出来ることなど高が知れとる。しかも結局お前たちはてめーの手に負えなくなったら俺を頼らざるを得ない。今が正にそうだろが? 」


「 まさか、初めから社長が一枚噛んでいたんですか!? 」


「 初めからってのはどこからを指してんだ。まさかお前たちの反省を促すために俺が最上くんにケガを負わせたとでも言いてぇのか?バカも休み休み言え。

 俺が噛んだのは最近だ。リハビリに移る前に最上くんが居なくなった。これだけが俺が仕組んだことだ。お前らに思い知らせてやろうと考えてな 」


「 なっ…なんでですか!! 」


「 バカか、蓮。自分達がしでかした事をもっと真剣に考えろ!

 今回は俺が犯人だったからいい。だが、もし違ったとしたらお前たちはどう責任を取るつもりでいやがった。まさか、何も考えていなかった訳か?それが大人のすることか!今回の件で充分肝は冷えたはずだ 」


「 ……っ… 」


「 いいか?人を預かるってのはな、んな簡単なことじゃねぇんだ。

 女優としてのあの子の未来や、現場担当者や、責任者を守ろうとしたそれが悪かったとは言わん。だが、何か行動を起こす時は常に自分の責任の及ぶ範囲で本当に済むのかどうかを深く真剣に考えろ!常に最悪の事態を想定し、その上で最善策を取る。

 ……それが責任ある大人の行動だ。判るな?社 」


「 ……はい 」


「 自分達を過大評価するな。どんなに頭が良くってもな、お前たちはただの俳優とマネージャーだ。出来る事には限度がある。それを既に思い知ったはずだ。

 そもそもな、そこまで考える頭があるならなぜ最初から俺に腹を割って話さんのだ。聞いて納得できりゃ俺だって口を閉じておくぐらいのことはしてやる。それとも、お前らは俺を見くびってんのか? 」


「 そんなことはありません。みくびっていたのならこうして頼って来ません 」


「 だな。それに免じて今回のことは大目に見てやる。

 いいか? 最上くんにも言ったがな、こういうことは今回限りにしろ。判ったな? 」


「 はい、申し訳ありませんでした 」



 俺の隣で深々と頭を下げた社さんを見て二度頷いた社長は、おもむろに視線を移すと俺を見据えた。

 指先を揃えた右手の甲を俺へと伸ばし、俺の右頬を軽く叩く。



「 どうした、蓮。お前は反省しとらんのか 」


「 反省はしています。すみませんでした。ですがっ… 」


「 ですがじゃねぇよ。反論するなんざ反省してねぇ証拠だ。

 どうやら最上くん、事故前後の記憶があやふやなようだがな、だからって腫れ物のように最上くんを扱った所で満足な結果が生まれるのか、蓮 」


「 そんな事まで知って…。まさかあの子に事故のことを聞いたんですか?余計なことを… 」


「 ざけんな。お前らから報告を受けていなかったからこそ聞いたまでだ。

 とは言え、矛盾点を指摘したら吐きそうになっていたのを見た時はギョッとしたがな 」


「 ……っ!! 」


「 しかしな、お前ら、あの子をもう少し信用してやったらどうだ。最上くんの根性は半端ないぞ。あの子ならきっと自分の力で記憶を取り戻すと俺は思うんだが 」


「 だからって、それがもし痛い記憶だったらあの子はどうしたらいいんですか!最上さんはいまどこにいるんです? 」


「 入院させた。あの病院のリハビリ病棟に 」


「 そんなはず…。見舞い窓口に問い合わせても最上キョーコという入院患者はいないって… 」


「 だろうな。病室の名札を出さんように願い出たからな。それでもお前らがリハビリ患者用の入院病棟を歩きゃ一発で見つけられたはずだが、お前はそれをしないと思った 」


「 …なぜですか 」


「 事故の件を広めたいとは思っていないはずだからだ。お前が歩くのは目立つからな 」


「 !!!! 」



 つまり、何もかもお見通しって訳か。

 確かにその通りだけどっ!!!



「 蓮。聞くところによるとそのドラマの撮影、明日までなんだってな。トラブル前と同じスケジュールに戻すとは頑張ったじゃねぇか 」


「 別に…。それは仕事ですから 」


「 良く言う。あわよくばもう一度あの子を探しに行こうとしていたんだろう。なぁ、社?そうだろう 」


「 …っ…そ、れは… 」


「 判りました!とにかく今回の件、報告が遅れて申し訳ありませんでした。反省しますっ! 」


「 おい、蓮。どこへ行く?言っておくが最上くんの所に行くのは許さねぇぞ 」


「 ……どうしてです?もしかしたら泣いているかも知れないあの子を放っておけと? 」


「 お前たちには最上くんが忽然と姿を消すことで事の重大性を認識させると同時に反省を促した。それとは別の意味であの子にも反省をしてもらおうとしばらく一人で頑張れと言ってある。

 最上くんがお前たちに一切の連絡をしなかったのは俺の言葉を実行しているからだ。あの子の努力を無駄にするな。判ったな?蓮 」




 ――――――― こ…のっ……コ・ン・チ・ク・ショウ!!



「 ……っっ!!!判りましたよ!!!失礼しますっっ!! 」



 本当に厭味ったらしいほど完璧すぎると思った。それが俺には心底、悔しかったのだ。

 自分が未熟だとは少しも思っていなかっただけに。



 社さんを一人残し、俺は我慢が利かず先に社長室を退いた。




「 ……ふ。アイツは最上くんのことになるとすぐ熱くなるな。

 それはそうと、社 」


「 はいっ?! 」


「 そんなかしこまるな。だが、お前が一番反省しろ。お前が最もしっかりしなきゃいかん立場だろうが 」


「 ……はい、申し訳ありませんでした 」


「 もういい。それから3日後だ。蓮のスケジュールを調整してやれ。アイツには内緒でな 」


「 はい? 」


「 最上くんの退院日。あの子には迎えに行くと言ってある。誰が…とは伝えておらんが 」


「 …っ……了解しました!! 」






 翌日の夕方。

 ドラマはクランクアップを迎え、予定より早く自由時間を得た俺は、社さんと一緒に最上さんが入院している病院へ向かった。



「 あの子には会いません。ただ、あの子がいる場所を見ておきたいんです 」


「 ああ、そうだな。キョーコちゃん、一人で頑張っているんだもんな 」



 このとき社さんは、迎えの予行になると考えて俺を止めなかったのだと、後でそう教えてくれた。



 リハビリ棟に面した病院の中庭で、その棟のどこにいるのかも定かではないあの子を思う。


 最上さんの行方が知れない間はとにかく気が気じゃなかったけれど、それでもリハビリを受けていてくれたことだけは本当に良かったと思った。




 ……最上さん。あのドラマの撮影は終わったんだ。

 あとは君のケガが無事完治してくれれば俺はもうそれだけでいい。


 思い出したくなければ思い出す必要なんてないんだ。

 俺がそばに居られない場所で、どうか無理をしないで欲しい……。



 ふと見上げていた窓の向こうにあの子の姿を見つけて、俺の胸が熱く揺らいだ。



 君に嫌われた訳じゃないって、俺は信じてもいいだろうか。

 もう勝手にキスしたりもしないから、どうかもう一度俺に笑顔を見せて欲しい。




「 社さん、誰にも見つからないうちに帰りましょう 」


「 そうだな。……あ? 」


「 え? 」


 二人で踵を返したとき、一人の男が俺たちの前に立ちはだかった。

 走って来たのか彼は肩で息をしていた。


 社さんの目が眼鏡の奥で大きく見開かれた。



「 いつかの彼… 」


「 え? 社さんの知り合いですか? 」


「 違うって。前に言っただろ。

 待ち合いロビーでキョーコちゃんと話をしていた… 」


「 ああ、この人が… 」



 社さん曰く、以前の俺に少し似ているっていう例の?


 ……似てるか?

 自分ではさっぱりわからないな。



「 あああ、あのっ、敦賀蓮さん…で間違いないですよねっ?! 」


「 そう…ですけど 」


「 良かった、まさかこんな所で本人に会えるなんて… 」


「 はい? 」


「 本!!知ってますよね?あの子が持って行った雑誌です。敦賀蓮さんが表紙を飾った、少し焼けた所のある雑誌。あれを返して欲しいんです!!あれ、オレの妹の本なんです! 」


「「 えっ?! 」」


「 あの日、逃げて行ったあの子をかばったのはあなたですよね?!あの子、何も覚えていないみたいで何度顔を合わせてもダメで…。どうか返して下さい!! 」


「 ちょっ…ちょっと待って 」



 余りに突然の申し出に驚いて、気付けば俺は彼の両肩を両手でグッと掴んでいた。



「 まさか、君は知っているのか?あの日なにがあったのかを…。それを話してくれないか? 」


「 ……いいですよ。あの本を返してくれるなら 」



 社さんと視線を交わして思わず固唾を飲み込んだ。




 このあと俺たちは知ることになる。

 あの日、あの子の身に何があったのか。




 その真相に迫るべく、俺たちは躊躇なくそれに手を伸ばした。






 ⇒ 天使の落とし物◇9へ続く


もう少しで終わりです、よ♡



⇒天使の落とし物◇8・拍手

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