叱ってもダメ。褒めてもダメ。 | 技術士を目指す人の会

技術士を目指す人の会

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

●岸見一郎さんの書籍

岸見一郎さんの『アドラーに学ぶよく生きるために働くということ』を読みました。

岸見一郎さんと言えば、『嫌われる勇気』が有名です。これは良書でしたね。

それから、僕の名前と一文字違いなので、勝手に親近感を持っています。

 

 

 

この本は、タイトルにもある通り、心理学者のアドラーの教え、作者の経験に基づいて、働くことについて見識を書籍化したものです。

目次は、以下の通りです。


第1章 なぜ働くのか
第2章 あなたの価値は「生産性」にあるのではない
第3章 職場の対人関係を改善するために
第4章 幸せに生きるためのこれからの働き方

 

作者は、第3章の中で、叱ってもダメだし、褒めてもダメだと言及しています。

この内容が、とても良かったので、紹介したいと思います。

 

 

●叱ってもダメ

「相手を怒るのはまずいが、相手を叱るのは必要なことだ」 研修等でこんな言葉を聞いたことがあります。

ブチ切れて怒ると、相手のことを恐れさせてしまいます。深く傷付けてしまいますので良くないです。

それに、ブチ切れたら、当然、怒った側もしんどいです。ムカムカが続くことになるので良くないです。

ただ、言うべきはちゃんと言うべきだという考え方もあります。

だから、感情的になって怒るのはダメだが、冷静に叱るのは良いことだ、という展開です。

 

ところが、作者は叱るのダメだと言っています。

なぜか?

 

怒ることと叱ることは、理屈の上では、別の行為のように見えます。

しかしながら、人間は、怒らないで𠮟ることができるほど器用ではないのだそうです。

だから、𠮟るときには、怒りの感情を伴っているわけです。

なるほどですね。

相手の失態を見て、ムカッとするから、叱ることになるわけですから、怒らないで叱るのは難しいですね。

 

だったら、どうすればいいのか?

 

作者は、次のように説明しています。

部下が失敗したとき、基本的に本人がその責任をとる必要があります。

しかしながら、その部下には当然上司がいます。

部下だけではなく上司にも責任があります。

なぜなら、上司の指導が適切なら、その部下は失敗しなかったかもしれないからです。

上司は、このことを失念して、自らの立場が悪くなることを不快に思い、部下を叱ることになります。

つまり、叱らないようにするためには、まずは、自分にも責任があることを認識する必要があるというわけです。

ただし、部下の失敗を自分の責任だと思う上司は、失敗を回避するために、部下の仕事を自分でやるようになったりします。

これはこれで、良くないです。

 

怒ってもダメ。叱ってもダメ。自分でやってもダメ。

では、どうすればいいのでしょうか?

 

作者はこう言っています。

上司は、部下が力を伸ばす援助をするべき。

 

つまり、失敗をしたら、その原因を調べるよう指示を出し、再発防止策について検討をさせるわけです。

そして、その内容を聞いて良否を判断します。

良ければ納得したことを示し、否であれば再考させるなり、助言をします。

なるほどですね。

 

●褒めてもダメ

「褒めて伸ばす」ことについて書かれている本はたくさんあると思います。

しかしながら、この作者は、褒めることも否定しています。

 

例えば、小学1年生にお使いを頼んで、ちゃんと買ってきてくれたら、その子を褒めます。

でも、同僚が一人にお使いを頼んで、ちゃんと買ってきてくれても、その同僚を褒めません。

なぜ、同じことをしても、小学1年生の方だけを褒めるのか。

これは、自分は一人で買い物ができるけど、小学1年生は一人で買い物ができない存在とみなしているからです。

褒めるという行為は、自分よりも下の立場の人に対するものです。

つまり、褒めるということは、一見すると相手を称えている行為ですが、実は僕は君よりも能力が上なんだよ、と言っていることになるわけです。


僕は、タイミングよく人を褒めることを失念しがちで、よく後悔することがあります。

相手は褒めることで喜びを得ます。喜びを得たら、嬉しい気持ちになり、やる気もでます。

ところがです。

作者曰く、

「褒める上司は、部下を支配下におきたいだけだ。

褒められるために頑張る部下は、自立できない。」

これは、厳しい言葉です。

でも、刺さりますね。

 

褒めたらダメ。だったら、どうすればいいのでしょうか?

 

作者はこう言っています。

「部下の貢献に注目をするべきだ。」

 

具体的には、「助かった」とか「ありがとう」という言葉を使えばいいのだそうです。

もう少し、言葉を足して、

「頼んでおいた作業だけど、期日までに終えてくれて助かったよ。」

「難しい仕事だったかもしれないけど、ちゃんと仕上げてくれたね。ありがとう。」

という言葉をかければいいわけです。

相手を褒めるのではなく、組織の役に立っていることを教えれば、相手は自分に価値があると思うようになるのだそうです。

なるほどですね。

 

●技術士として学ぶこと

「技術士に求められる資質能力」というものがあります。

日本技術士会が提言したもので、7つの項目が示されています。

具体的には、

❶専門的学識

➋問題解決

❸マネジメント

❹評価

❺コミュニケーション

❻リーダーシップ

❼技術者倫理

です。

 

資質能力の1つに、リーダーシップがあります。

この技術士のリーダーシップは、多様な関係者の利害等を調整して、意見を取りまとめることを意味します。
今回ご紹介した「叱ってもダメ 褒めてもダメ」という観点も、私たちがリーダーシップを発揮する際、重要な観点になると思いましたね。

 

ちなみに、「技術士に求められる資質能力」の詳細を知りたい方は、以下をクリックしてみてください。

解説・技術士に求められる資質能力(コンピテンシー) | 新見一郎 (ameblo.jp)

 

 

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