●岸見一郎さんの書籍
岸見一郎さんの『アドラーに学ぶよく生きるために働くということ』を読みました。
岸見一郎さんと言えば、『嫌われる勇気』が有名です。これは良書でしたね。
それから、僕の名前と一文字違いなので、勝手に親近感を持っています。
この本は、タイトルにもある通り、心理学者のアドラーの教え、作者の経験に基づいて、働くことについて見識を書籍化したものです。
目次は、以下の通りです。
第1章 なぜ働くのか
第2章 あなたの価値は「生産性」にあるのではない
第3章 職場の対人関係を改善するために
第4章 幸せに生きるためのこれからの働き方
作者は、第3章の中で、叱ってもダメだし、褒めてもダメだと言及しています。
この内容が、とても良かったので、紹介したいと思います。
●叱ってもダメ
「相手を怒るのはまずいが、相手を叱るのは必要なことだ」 研修等でこんな言葉を聞いたことがあります。
ブチ切れて怒ると、相手のことを恐れさせてしまいます。深く傷付けてしまいますので良くないです。
それに、ブチ切れたら、当然、怒った側もしんどいです。ムカムカが続くことになるので良くないです。
ただ、言うべきはちゃんと言うべきだという考え方もあります。
だから、感情的になって怒るのはダメだが、冷静に叱るのは良いことだ、という展開です。
ところが、作者は叱るのダメだと言っています。
なぜか?
怒ることと叱ることは、理屈の上では、別の行為のように見えます。
しかしながら、人間は、怒らないで𠮟ることができるほど器用ではないのだそうです。
だから、𠮟るときには、怒りの感情を伴っているわけです。
なるほどですね。
相手の失態を見て、ムカッとするから、叱ることになるわけですから、怒らないで叱るのは難しいですね。
だったら、どうすればいいのか?
作者は、次のように説明しています。
部下が失敗したとき、基本的に本人がその責任をとる必要があります。
しかしながら、その部下には当然上司がいます。
部下だけではなく上司にも責任があります。
なぜなら、上司の指導が適切なら、その部下は失敗しなかったかもしれないからです。
上司は、このことを失念して、自らの立場が悪くなることを不快に思い、部下を叱ることになります。
つまり、叱らないようにするためには、まずは、自分にも責任があることを認識する必要があるというわけです。
ただし、部下の失敗を自分の責任だと思う上司は、失敗を回避するために、部下の仕事を自分でやるようになったりします。
これはこれで、良くないです。
怒ってもダメ。叱ってもダメ。自分でやってもダメ。
では、どうすればいいのでしょうか?
作者はこう言っています。
上司は、部下が力を伸ばす援助をするべき。
つまり、失敗をしたら、その原因を調べるよう指示を出し、再発防止策について検討をさせるわけです。
そして、その内容を聞いて良否を判断します。
良ければ納得したことを示し、否であれば再考させるなり、助言をします。
なるほどですね。
●褒めてもダメ
「褒めて伸ばす」ことについて書かれている本はたくさんあると思います。
しかしながら、この作者は、褒めることも否定しています。
例えば、小学1年生にお使いを頼んで、ちゃんと買ってきてくれたら、その子を褒めます。
でも、同僚が一人にお使いを頼んで、ちゃんと買ってきてくれても、その同僚を褒めません。
なぜ、同じことをしても、小学1年生の方だけを褒めるのか。
これは、自分は一人で買い物ができるけど、小学1年生は一人で買い物ができない存在とみなしているからです。
褒めるという行為は、自分よりも下の立場の人に対するものです。
つまり、褒めるということは、一見すると相手を称えている行為ですが、実は僕は君よりも能力が上なんだよ、と言っていることになるわけです。
僕は、タイミングよく人を褒めることを失念しがちで、よく後悔することがあります。
相手は褒めることで喜びを得ます。喜びを得たら、嬉しい気持ちになり、やる気もでます。
ところがです。
作者曰く、
「褒める上司は、部下を支配下におきたいだけだ。
褒められるために頑張る部下は、自立できない。」
これは、厳しい言葉です。
でも、刺さりますね。
褒めたらダメ。だったら、どうすればいいのでしょうか?
作者はこう言っています。
「部下の貢献に注目をするべきだ。」
具体的には、「助かった」とか「ありがとう」という言葉を使えばいいのだそうです。
もう少し、言葉を足して、
「頼んでおいた作業だけど、期日までに終えてくれて助かったよ。」
「難しい仕事だったかもしれないけど、ちゃんと仕上げてくれたね。ありがとう。」
という言葉をかければいいわけです。
相手を褒めるのではなく、組織の役に立っていることを教えれば、相手は自分に価値があると思うようになるのだそうです。
なるほどですね。
●技術士として学ぶこと
「技術士に求められる資質能力」というものがあります。
日本技術士会が提言したもので、7つの項目が示されています。
具体的には、
❶専門的学識
➋問題解決
❸マネジメント
❹評価
❺コミュニケーション
❻リーダーシップ
❼技術者倫理
です。
資質能力の1つに、リーダーシップがあります。
この技術士のリーダーシップは、多様な関係者の利害等を調整して、意見を取りまとめることを意味します。
今回ご紹介した「叱ってもダメ 褒めてもダメ」という観点も、私たちがリーダーシップを発揮する際、重要な観点になると思いましたね。
ちなみに、「技術士に求められる資質能力」の詳細を知りたい方は、以下をクリックしてみてください。
解説・技術士に求められる資質能力(コンピテンシー) | 新見一郎 (ameblo.jp)
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