(一部修正)R3技術士試験の解答例 [選択Ⅱ-2-1 水道施設台帳] | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

【問題】-2-1

水道施設の適切な管理のために、水道施設台帳を作成して保管するとともに、水道施設の計画的な更新を行い、その事業の収支の見通しを公表するよう努めることが求められている。あなたが、この水道施設台帳を新たに整備する業務を進めるに当たり、以下の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。 .

(2)留意すべき点、工夫を要する点を含めて業務を進める手順について述べよ。

(3)水道施設台帳の運用も含め、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

 

 

【解答例】

1 水道施設台帳の整備に関する調査・検討内容

 水道施設台帳(以降「台帳」という)を整備するため、以下の事項について調査・検討を行う。

(1)基本情報の調査

 台帳は、調書と図面で構成される。調書には、管路と施設の諸元を記し、図面は、一般図と施設平面図で構成され、一般図には水道施設の全体像を記し、施設平面図には水道施設の設置場所や諸元を記す。

 調書を作成するため、管路については、用途区分、設置年度、口径、材質、継手毎の管路延長、土被り等を調査する。施設については、名称、用途区分、設置年度、数量、構造、形式、能力等を調査する。

一般図を作成するため、市町区町村や給水区域の境界線、管路、施設の位置等を調査する。施設平面図を作成するため、管路情報(位置、口径、材質等)、弁栓類情報(位置、種類等)、施設情報(位置、名称、敷地境界等)、給水装置情報(止水栓の位置等)、その他情報(道路、河川、鉄道等の情報と水道施設との位置関係性等)を調査する。

(2)台帳の整備方法の検討

 台帳の整備方法としては、①電子システム、②市販の表計算ソフト等、③紙媒体があり、いずれかの方法を選択する。紙媒体、表計算ソフトを採用している場合も、ICT活用による資産管理の効率化の観点から、電子システムへの移行を検討する。具体的には、管路に関するマッピングシステムに施設の情報等も入力し、調書と図面も含め、全ての情報を一元で管理する。

 

2 業務の手順と留意点・工夫点

 業務は上述の(1)〜(2)の手順で、調書と図面の作成を行う。

基本情報の調査は、工事完成図等により情報を収集することが基本になるが、不足する情報については、現地調査や過去の工事記録等により補完する。

 台帳の整備方法の検討において、給水装置に関する情報を扱う場合、個人情報保護に留意する。電子システムを採用する場合は、セキュリティ対策を万全にし、自然災害等により被災した場合でも、台帳を利用できるよう、台帳の分散保管やバックアップを確保する。台帳の情報を最新のものに更新し、正確性を維持するため、台帳の管理部署を明確にし、適切に管理する体制を整える必要がある。

また、台帳と固定資産台帳、点検結果、修繕履歴等の情報とリンクさせることにより、水道施設の更新時期や更新費用の概算額を見極め、効率的にアセットマネジメントを実施するべきである。

 

3 関係者との調整方策

 関係者間での対面協議に加え、メール審議やリモート会議を実施する。成果物への要求事項、追加・削減するべき作業等について明確かつ効果的な意思疎通を行い、関係者の利害を調整しながら業務を進める。

 

【解答例作成者の感想】

水道施設台帳の作成方法については、設計指針や維持管理指針に説明文がないです。これらの指針が、法改正よりも前のものだからです。というわけで、「水道法の一部改正に伴う水道施設台帳の整備について」には、水道施設台帳の記載内容と整備方法が示されています。この内容を述べることが、解答を作成する際のポイントになります。

 

ちなみに、全国簡易水道教会が、『簡易水道等小規模水道における水道施設台帳作成の手引き』が発刊しています。僕も含めて、大半の方は所有していないと思うので、こちらを参考にすることはできません。

ということは、「水道法の一部改正に伴う水道施設台帳の整備について」の内容を踏まえて、自分でそれらしい解答を作り出すしかありません。

この内容をチェックしていた人は、合格点を取れると思いますが、チェックしていない人には厳しい問題でした。

 

なお、令和元年の水道法改正により、水道事業者等は水道施設台帳を作成し、これを保管することが義務付けられました。

同年、厚生労働省が通知した「水道法の一部改正に伴う水道施設台帳の整備について」により、水道事業者等は令和4年9月末までに台帳の整備を完了することを求められています。

それから、改正水道法の水道法施行規則第17の3に、水道施設台帳に記載するべき内容が定めれています。

以下の【参考】をご覧になってください。

 

【参考】

●水道法 第二十二条の三

1 水道事業者は、水道施設の台帳を作成し、これを保管しなければならない。

2 前項の台帳の記載事項その他その作成及び保管に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

●水道法施行規則 第十七条の三

1 法第二十二条の三第一項に規定する水道施設の台帳は、調書及び図面をもつて組成するものとする。

2 調書には、少なくとも次に掲げる事項を記載するものとする。

一 導水管きよ、送水管及び配水管(次号及び次項において「管路等」という。)にあつては、その区分、設置年度、口径、材質及び継手形式(以下この号において「区分等」という。)並びに区分等ごとの延長

二 水道施設(管路等を除く。)にあつては、その名称、設置年度、数量、構造又は形式及び能力

3 図面は、一般図及び施設平面図を作成するほか、必要に応じ、その他の図面を作成するものとし、水道施設につき、少なくとも次に掲げるところにより記載するものとする。

一 一般図は、次に掲げる事項を記載した地形図とすること。

イ 市町村名及びその境界線

ロ 給水区域の境界線

ハ 主要な水道施設の位置及び名称

ニ 主要な管路等の位置

ホ 方位、縮尺、凡例及び作成の年月日

二 施設平面図は、次に掲げる事項を記載したものとすること。

イ 前号(ロを除く。)に掲げる事項

ロ 管路等の位置、口径及び材質

ハ 制水弁、空気弁、消火栓、減圧弁及び排水設備の位置及び種類

ニ 管路等以外の施設の名称、位置及び敷地の境界線

ホ 付近の道路、河川、鉄道等の位置

三 一般図、施設平面図又はその他の図面のいずれかにおいて、次に掲げる事項を記載すること。

イ 管路等の設置年度、継手形式及び土かぶり

ロ 制水弁、空気弁、消火栓、減圧弁及び排水設備の形式及び口径

ハ 止水栓の位置

ニ 道路、河川、鉄道等を架空横断する管路等の構造形式、条数及び延長

4 調書及び図面の記載事項に変更があつたときは、速やかに、これを訂正しなければならない。

 

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