【R2技術士予想問題と解答例】水循環 | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

【問題16

水循環について水質的・水量的な健全性が損なわれている現状を踏まえ、①多面的な観点から上下水道共通の技術的課題を抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ,それに対する複数の解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策、④業務遂行において必要な要件を技術者倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

 

 

【解答例】

1 上下水道における水循環に関する技術的課題

水循環の水質的・水量的な健全性が損なわれている。上下水道は水循環の一部であり、以下の課題について取組を進める必要がある。

(1)洪水・浸水対策(水量的課題)

気候変動の影響で梅雨時期において線状降水帯が発生する事例が多発しており、豪雨に伴う河川の増水、氾濫により甚大な被害が発生している。このため、洪水・浸水対策が必要である。

(2)渇水対策(水量的課題)

気候変動の影響により、長期間に渡って少雨傾向が続き、河川水量が著しく低下する地域が存在する。このため、渇水対策、水源対策等が必要である。

(3)地下水の確保(水量的課題)

過疎化等により森林や農地の手入れが行われず、山林の水源涵養機能が損なわれ、地下水や河川の水量が減少している地域が存在する。また、道路舗装面積の増大に起因する浸透水の減少等により、地下水が枯渇する地域が存在する。このため、地下水に関する対策が必要である。

(4)閉鎖性水域の水質保全(水質的課題)

下水道の普及等により公共用水域の水質は改善しているものの、いまだに湖沼等の閉鎖的水域は改善されておらず、水道水の安全性が損なわれている。また、雨天時における合流式下水道からの河川放流が水質悪化に繋がる。このため、下水道は汚水処理の普及促進と高度化等、水道は浄水処理の強化が必要である。

(5)水インフラの老朽化(水量的・水質的課題)

上下水道施設は水循環の一部であり、施設の老朽化は水循環の悪化に繋がる。河川上流域の下水道施設から、汚水が流出すれば、公共用水域の水質汚染が発生する。さらに、河川下流域の水道施設がこれを取水すれば、水道水質の悪化を招く。こうしたことから、老朽化した水インフラの更新が必要である。

 

2 最重要課題とその解決策(浸水対策)

近年、浸水被害が甚大化しており、リスクを回避することは喫緊の課題であることから、浸水対策を最重要課題と位置付け、以下に解決策を示す。

(1)下水道の取組

 ・管渠の増径、雨水ポンプの増強等による雨水排除機能の強化。

・雨水貯留管、雨水貯留施設、校庭貯留施設の整備による雨水貯留機能の強化

・河川改修等による洪水対策

(2)上水道の取組

 ・河川増水に伴うゴミ等の流出に備えて、取水口への除塵設備の設置

 ・水源の濁度上昇に備えて、原水調整池の整備、高塩基度パックの採用

(3)上下水道共通の減災対策

・集中豪雨の発生を考慮した洪水想定シミュレーションに基づく浸水区域の調査

・浄水場、ポンプ所等の高台移設や高床構造の採用

・下水処理施設、取水場、ポンプ所等への防水壁、防水扉等の設置

・相互連絡管の整備等によるバックアップ体制の確保

・施設の複数化や分散配置によるリスク分散

・被災時における応急給水や仮設トイレの設置

・被災施設に関する応急復旧資機材の確保

・BCPの策定と組織体制の確保

・防災訓練の実施、マニュアルの整備

 

3 解決策に共通して新たに生じうるリスクと対策

水循環に係る対策は、相反する要求事項が含まれている。必要性、経済性を優先して脆弱な施設を整備すれば機能性、安全性が損なれる。リスクの隠ぺい、偽装により、二次災害が発生する可能性がある。また、設計段階では適切な技術であっても、新たな調査、知見により、地球環境、人体への影響が発覚する場合もある。

こうしたリスクを踏まえ、複数の選択肢を検討し、最適な解決策を提案する。さらに、PDCAサイクルにより改善する。技術者が公共の福祉の確保、法令遵守、継続研鑽を実践できるよう、指導・教育体制を確保する。

また、水循環に関する取組は、上下水道だけの実施するのは限界がある。このため、流域全体で協同して、水循環に関する取組を実施することが重要である。さらに、官民連携を推進し、合理的な対応策を講じることが重要である。

 

4 業務遂行において必要な要件

分析・評価、計画、設計、施工、維持管理等、業務遂行における全工程において、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮する必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努める必要がある。

 

 

最後に

試験まであと10日。

せっかくですから、あともう少し。

最後まで頑張って下さい。



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