5 情報の整理
5.3 出題頻度と話題性の把握
(1)出題頻度の把握
出題頻度は過去問を整理すれば把握することができます。
10〜15年くらい遡って整理するのがいいでしょう。
例えば、上下水道部門の水道科目について、H23~R2年度までの10年間の過去問を集計して、出題頻度が高いテーマを調査しました。
以下のとおりです。
①設備 9回
②水質管理(全体) 7回
③管路(設計) 7回
④管路(維持管理) 7回
⑤高度浄水処理 6回
出題頻度が高いということは、重要であることを意味するわけですから、これらテーマは勉強する必要があります。
設備は9回出題されています。
ほぼ毎年出題されていると言ってもいいです。
技術士試験は、機械部門、電気部門が存在しますが、上下水道部門においても設備に関する出題が多く見られます。
ただし、設備はポンプ等の機械と発電機等の電気があるので、これらを分けると機械は5回、電気は4回の出題に留まります。
そう考えると水質管理(全体)の出題率が高いです。
R1年度の制度改正前は、専門科目は上水道及び工業用水道、下水道、水環境の3科目ありました。
制度改正に伴い水環境は上水道及び工業用水道、下水道に統合されました。
水環境と関係が深い水質管理(全体)に関する問題は、引き続き、出題される可能性が高いです。
次に、管路ですが、管路(設計)が7回、管路(維持管理)が7回の出題となっており、管路全体では14回の出題です。
水道施設を資産化した場合、7~8割が管路と言われています。
このため、数あるテーマの中でも管路は、出題率が高くなっています。
高度浄水処理は、6回出題されています。
これまでに示したテーマは、施設全体を対象とした抽象的なものでしたが、高度浄水処理は、個別的具体的なテーマです。
そうであるにも関わらず出題頻度が高いです。
しかも、この3年間出題されていませんので、今年は要チェックです。
また、更新に関する問題も毎年のように出題されています。
今後も引き続き、更新についてクローズアップされる可能性が高く、施設の機能診断、再編、アセットマネジメント等について出題される可能性があります。
(2)話題性の把握
話題性の高いテーマは今日的なテーマです。
過去問を集計・整理しただけでは、話題性の高いテーマをクローズアップできません。
では、どうやって話題性の高いテーマを抽出するのでしょうか。
話題性について調査する方法ですが、一般には新聞、雑誌、ネット等を使います。
例えば、日本水道新聞、水道産業新聞、水道技術ジャーナル、水道公論等の媒体により調査する方法があると思います。これらには最新の技術が掲載されていますので、こうした媒体から情報収集することも重要です。
でも、もっと確実な方法があります。
そもそもですが、技術士は国家資格です。
国が威厳と責任をもって試験を行うわけですから、研究段階、普及途上の最新技術ではなく、国が認定した最新技術を取り扱うことが前提になります。
つまり、話題性の高いテーマとは、技術士の専門分野に係る国家組織が通知・報告したことを見れば、自ずと見えてきます。
水道分野については、当然、厚生労働省水道課の通知・報告が重要になります。
これまでに10年以上、試験問題の出題傾向を研究してきましたが、厚生労働省水道課のホームページの「通知・事務連絡」と「トピックス」で取り扱われたテーマから出題されたケースが多いです。
これらが重要であることは間違いありません。
このため、厚生労働省水道課のホームページ(以下のアドレス)をチェックして、「通知・事務連絡」と「トピックス」の内容を確認しておくべきです。
R2年以降、「通知・事務連絡」、「トピックス」で取り上げられたテーマとしては、以下のようなものがありました。
話題(情報源:通知・事務連絡) |
関連テーマ |
【R3年3月29日】ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)の検査方法に関する質疑応答集について |
水質管理 (全体) |
【R3年3月17日】令和2年度改訂テロ対策マニュアル等策定指針の送付について |
事故災害対策 (危機管理) |
【R3年2月2日】水道における「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の実施について |
事故災害対策
|
【R2年12月23日】 水道事業における広域化の更なる推進について |
管理(広域化) |
【R2年12月16日】風水害対策マニュアル策定指針及び管路事故・給水装置凍結対策マニュアル策定指針の送付について |
事故災害対策 |
【R2年11月5日】 「脱炭素水道システム構築へ向けた調査等一式 報告書」について |
設備(電気) |
【R2年8月6日】 「危機管理マニュアル策定指針」の改訂について |
事故災害対策 (危機管理) |
【R2年1月31日】新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受けた出勤者7割削減を実現するための在宅勤務等の推進について |
事故災害対策 (危機管理) |
【R2年3月31日】 アセットマネジメント「簡易支援ツール」 の改良 について |
施設全体 (更新) |
【R2年3月30日】 水質基準に関する省令の一部改正等について(施行通知) |
水質管理 (全体) |
【R2年1月31日】 新型コロナウイルス感染症に対する対応について |
事故災害対策 (危機管理) |
話題(情報源:トピックス等) |
関連テーマ |
【R3年3月17日 トピックス】 水道施設の点検を含む維持・修繕 |
施設全体 (維持管理) |
【R3年1月29日 トピックス】 平成30年7月豪雨水道施設被害状況調査報告書 |
事故災害対策 |
【R2年12月4日 トピックス】 水道事業に係る施策概要として「CPS/IoTの活用」 |
設備(電気) |
【R2年12月1日 トピックス】令和元年度人口減少地域における多様な給水方法の検討に関する調査報告書 |
施設全体 (計画) |
【R2年5月28日 トピックス】 水道事業官民連携等基盤強化支援 |
管理 (官民連携) |
【R2年1月27日 トピックス】 平成30年北海道胆振東部地震水道施設被害等調査報告書 |
事故災害対策 |
これをまとめると、以下のようになります。
つまり、これがR3年度の試験で話題性の高いテーマになるわけです。
①事故災害対策
②水質管理(全体)
③設備(電気)
④管理(広域化・官民連携)
⑤施設全体(更新・維持管理)
R2年度は新型コロナが流行しました。事故災害対策(危機管理)は要チャックです。
それから、R2年以前にはなりますが、水道法が改正されました。これに伴い、R1年9月30日付けで多くの事柄が通知されましたので、これらは必読です。
(3)極めて重要なテーマの決定
水道の筆記試験の出題テーマについて、出題頻度と話題性によりマトリックスを作ると下図のようになります。
出題頻度と話題性の両方が高い「極めて重要」なテーマは、マトリックスの右上欄のテーマです。
R3年度は、設備、水質管理(全体)が該当します。
この2つのテーマは確実に勉強をしておいてください。
厚生労働省水道課の通知・事務連絡を確認することはもちろんですが、設計指針、過去問を理解して、予想問題を2~4問くらい作って、しっかり解答を作成しておくべきです。
出題頻度、話題性のいずれかが高い「重要」なテーマは、マトリックスの左上欄と右下欄のテーマです。
R3年度は、管路(設計)、管路(維持管理)、高度浄水処理と事故災害対策、管理(広域化・官民系)、施設全体(維持管理)が該当します。
これらについても勉強をしておくべきです。
予想問題を1~2問くらい作って、解答を作成しておけば良いでしょう。
マトリックスでは左下の部分は「重要ではない」です。
極めて重要、重要について勉強した後、時間があれば、解答を作ればいいでしょう。
(4)必須科目のテーマ
必須は、上下水道共通です。つまり、水道にも下水道にも共通するテーマが出題されます
つまり、出題されるテーマは限定されるわけです。
過去に出題さらテーマは概ね次の5つです。
①水循環健全化
②地球環境
③事故災害対策
④事業のあり方
⑤アセットマネジメント
必須は2問出題されるため、今後、多くの問いを出題する必要があります。
この5つだけでは足りないので、当然、これらテーマ以外からの出題もあります。
しかしながら、共通テーマが限定されるわけですから、かなりの高い確率でこれら5つのテーマから1問出題されるはずです。
このため、これら5つのテーマは絶対に勉強するべきです。
必須については、これらを勉強することで、試験に対応することができます。
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●過去問と解答例
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