技術士に求められる資質能力(②問題解決)(トレードオフ) | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

問題解決

これは、文科省技術士分科会が提唱した「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の一つです。

「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」にご覧になりたい方は、こちら をクリックしてください。

 

 

もそも、技術士とは何でしょうか?

 

技術士法の第一条と第二条を見てみましょう。

 
第一条  この法律は、技術士等の資格を定め、その業務の適正を図り、もつて科学技術の向上と国民経済の発展に資することを目的とする。

第二条  この法律において「技術士」とは、第三十二条第一項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。

 

この2つの条文をまとめると、次のようになります。

 

「科学技術の向上と国民経済の発展という目的を達成するため、高等の専門的応用能力を要する事柄について、①計画、②研究、③設計、④分析、⑤試験、⑥評価を適正に実施又は指導する者を輩出する」

 

 

この資格に合格した人が技術士です。

技術士の英訳、現在はプロフェショナルエンジニアですが、従前はコンサルティングエンジニアでした。

要するに、技術士を一言で言い現わすと、技術コンサルタントなんです。

顧客の問題を解決することがコンサルタントの仕事です。

だから、技術士に求められる資質能力に問題解決能力が掲げられるわけです。

 

問題解決とは何でしょうか?

 

「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」では、「問題解決」について以下のように説明されています。

 

(1)業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。

(2)複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。

 

(1)を見てみましょう。

問題解決には4つのステップがあることを示しています。

以下のとおりです。

 ①問題の明確化

 ②調査

 ③原因等の抽出

 ④分析

まずは、問題の明確化です。

何が問題なのかわかっていない状況です。

ここからスタートなんです。

 

例えば、「車のエンジンが急に止まった」という事象について考えてみます。

 

まず、問題の明確化。

問題の明確化は、「急に」 エンジンが止まったことです。

次に、調査。

運転者にどういう状況で止まったか聴き取りします。

エンジン、ギア等の状況を確認します。

次に、原因の抽出。

エンジンが止まった原因として、偶発的なエンスト、プラグ等の劣化等があります。システム上の欠陥の可能性もあります。

このように、原因を抽出することは、問題解決において不可欠です。

故障した場所が特定されれば、修理をします。

 

シンプルな問題を解決するために技術士は必要ないんです。

しかしです。

こうしたトラブルを未然に防止するのがエンジニアです。

そこで、分析が必要になります。

いかにして偶発的なエンストを無くすか

いかにして劣化しにくいプラグを開発するか

いかにして不良品をなくすか

いかにしてシステム上のエラーをなくすか

こうした検討を行うためには、分析が必要になるわけです。

つまり、技術士の出番になるわけです。

 

 

次に(2)について説明します。

(2)では、4つのキーワードが出てきます。

 ①相反する要求事項

 ②影響の重要度

 ③選択肢

 ④解決策

 

まずは、①相反する要求事項。

これは、トレードオフです。x一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ないという事項があるので、検討する必要があるという意味です。

 

(2)の文書では、具体的に、必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性が列記されています。

これらについて、少し、解説します。

 

必要性が高まると、大量生産が必要になり、質より量が重視され、機能性が犠牲になります。

機能性を高めると、作ることが難しくなります。技術的実現性が低くなるわけです。

安全性を高めると、コストがかかります。経済性が損なわれるわけです。

これらは、相反する要求事項になっているわけです。

 

世の中の難解な課題は、複合的な問題が絡み合っていて、しかも、相反する要求事項を含んでいます。

技術士は、顧客の課題を解決する技術コンサルタントです。

 

つまり、技術士は、相反する要求事項を技術力で解決する必要があるわけです。

技術士試験において「トレードオフ」は重要なキーワードになります。

 

そして、それぞれの要求事項について、②影響の重要度を評価する必要があります。何を優先するのか、決定する必要があります。

 

それから、選択肢ですが、何かを検討するとき、いくつかのプランを提示する必要があります。

プランが1つだけだと、それは、YESかNOです。つまり、押し付けです。

プランが2つあると、どっちが良いか悪いか選択することが可能になります。

プランが3つ以上になると、順番をつけることができます。

 

そして、解決策です。

選択肢を用意した後は、どれがベストプランなのか提示する必要があります。これが解決策です。

解決策を決定するためには、各プランを比較する必要があります。

いろいな角度から眺め、各プランのメリット、デメリットを整理します。現在だけではなく、将来も考慮する必要があります。

そして、各プランを総合的に評価して、最善策を決定する必要があります。

 

つまり、技術士は、

多種多様な要素が複雑に絡み合った問題の調査・分析を行い、その解決策を提案するにあたっては、相反する要求事項と影響の重要度を考慮して、複数のプランを示す必要があるわけです。

 

 

 

※ 技術士に求められる資質能力(①専門学識)を見たい人は、こちら をクリックしてください。

 

※ 技術士合格法の平成31年度のテキスト、最初から見たい人は、こちら をクリックしてください。

※ 平成31年度の技術士二試験の予想問題と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。

 

※ 平成30年度の試験問題(上水道及び工業用水道)と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。

※ 平成30年度の技術士二試験の予想問題と解答例を見たい人は、こちら をクリックしてください。