<ドラマ チェジュンウォン済衆院>
第2章 3節 近代-② 江華島条約と甲申政変と民衆抗争
1873年の大院君失脚と閔氏政権の開国政策により朝鮮は資本主義国際秩序の中に放り込まれ、日本を中心とした資本主義諸国と自主独立改革勢力とのせめぎ合いが起こります。
正に激動の時代が始まりました。
先鞭を付けたのは日本です。
朝鮮政府の変化をいち早く読み取りアメリカのペリーのやり方を真似て1875年雲揚号事件を引き起こし、翌年7隻の軍艦にて武力威嚇しつつ不平等条約「江華島条約」を結びます。
<軍艦 雲揚号>
全権代表の申憲(シンホン신헌)は日本の無理な要求には断固拒否し毅然とした態度で挑みました。
しかし日本は国際情報に疎い朝鮮政府の無知を利用し、自分達がアメリカに強要された以上の不平等条約を結んだのです。
朝鮮政府が不平等条約と悟ったのは後になっての事でした。
↓江華島条約についてはコチラ↓
それに対して1882年軍人と漢城民衆による蜂起、壬午軍人暴動(イモ임오군인폭동)が起こりますが、出兵要請を受けた清の軍隊に鎮圧されます。
<ドラマ客主>
この顛末(てんまつ)はドラマ『客主ケクチュ』に詳しく描かれていて、発生原因から鎮圧までドラマをご覧頂ければ擬似体験が可能なので、機会があれば是非。
↓事件に関してはコチラ↓
支配層内部からも改革を目指して1884年金玉均(キムオッキュン김 옥균)ら開花派による甲申政変(カプシン갑신정변)が起こりますが約束した日本に裏切られ、同じく清の軍隊に鎮圧され3日天下に終わりました。共和国では初のブルジョワ改革と位置付けて居ます。
↓事件に関してはコチラ↓
『甲申政変(갑신정변)』については以前『燦爛たる黎明찬란한 여명』にて詳しく描かれましたが、その後取り上げるドラマが不在でした。
<ドラマ朝鮮ガンマン>
最近のイ・ジュンギ主演ドラマ『朝鮮ガンマン』で描かれてはいるものの、かなり脚色されたドラマなので、視聴には注意が必要です。
↓ドラマのレビュー記事はコチラ↓
<金玉均>
そして1894年全琫準(チョンボンジュン전봉준)を指導者に朝鮮最大の民衆蜂起である甲午(東学)農民戦争(カボ갑오농민전쟁)が起こります。
そしてその鎮圧を口実として発生した日清戦争(청일전쟁)と各者の思惑が絡んだ甲午改革(カボ갑오개혁)が断行されます。
<チョンボンジュン全琫準>
こうした1894年の動きは武力を背景とした日本によって成果を全て摘み取られ、朝鮮は半植民地に転がり落ちて行きました。
その後日本への露,仏,独の三国干渉が起こるや日本への反感からロシアに擦り寄ろうとする閔氏勢力、殊に中心である王妃明成王后(ミョンソンワンフ명성왕후)閔氏を亡き者にしようと仕組んだのが「乙未事変(ウルミ을미사변)」で有り、
一国の王妃が他国の公使と大陸浪人に惨殺されると言う世界史的にも類を見ない惨たらしい事件となりました。
韓国では政府が絡んで居たと見る向きも有りますが真相は不明です。
そしてこの事件を引き金に衛正斥邪論(위정척사론)者による第一次義兵運動が起こります。
<初期 義兵>
前述の事件は国王高宗に果て知れぬ恐怖を与え、翌年国王がロシア大使館に駆け込むと言う「俄館播遷(アグァンパチョン아관파천)」と言う形で日本の優位はひとまず終わり日本とロシアが角逐を競う時代へと向かいます。
ちなみに俄館播遷と呼ぶのは当時ロシアを俄羅斯(아라사アラサ)と呼んだ為です。
↓↓各国の漢字の書き方はコチラ↓↓↓
<ロシア(俄羅斯)公使館>
朝鮮近代史で残念なのは民衆の闘争と支配層の独立改革の動きが一致せず足の引っ張り合いになってしまった点です。
それにより日本に漁夫の利を与えた面が否めない点が惜しいです。
最後に我が国の独立自強はあり得たでしょうか?
金玉均の「甲申政変」は中国,康有為の「戊戌の変法」に近く、革命では有りません。
専制君主が立憲君主に自ら転化した例は無く、李王朝を打倒せずには真の独立自強が有り得なかった事は後の万民共同会運動に於ける高宗の立憲君主制ヘの妨害を見ても明らかです。
<国王 高宗>
しかし大韓帝国が滅びるまでついぞや李王家打倒、王制打倒のスローガンは出されませんでした。
中国では異民族王朝である清を打倒すべくブルジョワ革命で有る1911年辛亥革命が起こり共和国となりましたが、我が国では前王高宗の死をキッカケに3.1人民蜂起が起こった程王への畏敬心が有りました。
儒教性理学と中央集権の影響と言えそうですが、植民地になる以前に孫文の様な人物が排出されて居たらどうなっていたか知りたくもあります。
末尾にはなりましたが、この頃を描いたドラマを幾つか紹介します。
ドラマ チェジュンウォン(済衆院)は開花期に誕生した西洋式医院「済衆院」を舞台にソグンゲ(のちのファンジョン)が初の西洋医学の外科医として成長する姿を通じて、医学に掛ける真摯な若者の姿を描いていますが、人物描写が丁寧だと好評でした。
ここで国王高宗は知的でも列強の脅威に怯える
二面的な王として史実に近い姿で描かれています。
<韓国で人気を博したドラマ緑豆の花>
ケーブルテレビで放送された「緑豆の花」は
甲午(東学)農民戦争を背景に敵味方に分かれて戦う兄弟の哀しい運命を描いています。
韓国で話題を呼び、日本でもケーブルテレビでの放映が終了しました。
BS放送もされ、DVDもレンタルリリース中ですので、ご興味のある方は是非一度ご覧下さい。
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大韓帝国時代と義兵運動を描いたドラマとして
韓国で大ヒットしたイビョンホン主演の
「ミスターサンシャイン」はこの頃を理解するのに有効です。
<ドラマ ミスターサンシャイン>
特に今迄描かれて無かった開花期から旧韓末には掛けての姿を大掛かりなオープンセットと映像美で描き新鮮でした。
ヒロインで有るキムテリの好演も光って居ます。
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このドラマでは高宗が英邁な君主として描かれ過ぎていると言うキライが有ります。
日本の幕末維新の時代と違い朝鮮は開港期・開化期・旧韓末の後、日本の植民地になってしまったと言う厳然たる事実が存在する為、この時代を描いたドラマはそう多くは有りません。
視聴率的にも振るわないので需要も少ないと言えます。
そのジンクスをミスターサンシャインが破りました。
和洋折衷ならぬ韓洋折衷のドラマオープンセットが話題を呼びましたが、テーマパーク化されると聞きます。今後この時期のドラマが多数作られるかも知れません。
過度な反日は控え史実に沿った重厚な作りを期待します。
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<参考文献>
황현 매천야록(梅泉野録)
山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史2
山川出版社 朝鮮現代史
キネマ旬報社 金両基
ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史
朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史
新潮社 角田房子 明妃暗殺
イサベラビショップ 朝鮮紀行
東洋文庫 F・Aマッケンジー 朝鮮の悲劇