前回読んだ畑野作品「消えない月」は、ストーカーがテーマの、あまりにも怖い作品で、究極的なところまで行ってしまった・・・・

 

これを越えるような怖いのはもう書けないだろうと思っていましたが、今回の「神さまを待っている」は、また別の意味で怖い作品だったのです。

 

文房具メーカーで真面目に働いていたのに、派遣切りであっという間にホームレスへ転落した26歳の水越愛。 漫画喫茶に寝泊まりし、町を彷徨ううちに「楽な稼ぎ方」を教わるが―― 

 

こうなったのは自分が悪いのだから誰にも「助けて」と言えない。 私はどこで間違ったのだろうか? 貧困女子を描く圧倒的リアル小説。 (文庫裏紹介文)

 

普通に勉強して、普通に大学を卒業し、普通に就職活動し、派遣社員として就職。 しかし3年後、派遣切りにあって再就職もままならず、失業保険で食いつなぐも家賃が払えなくなってホームレスへ。

 

主人公の水越愛は、能力が低いわけでも、怠けていたわけでもないのですが、普通にしていてホームレスまで転落してしまう。 怖いです。

 

日雇い仕事をやりながら漫画喫茶に寝泊まりしている愛ですが、そこで出会ったマユによって”出会い喫茶”という場所を教えてもらいます。 男性にお小遣いをもらうという安易な道。 お茶を付き合うなら三千円、ホテルに行くなら一万五千円・・・

 

タイトルの「神さまをまっている」は、行き場所のない女の子を泊めてくれる男性のことを神と呼び、家出した女の子が「神待ち」とSNSに書き込むことから来ています。

 

主人公の愛にとっての本当の神とは? というのがわかるラストは温かいのです。

 

しかし私には、貧困女子の実態、生活保護制度の問題点、差別意識、派遣切り、奨学金地獄などなど、これはノンフィクション?と思うほどの描写が衝撃でした。