芸術探偵・神泉寺瞬一郎が活躍するシリーズはこれまで、『ジークフリードの剣』『エコール・ド・パリ殺人事件』『ストラディヴァリウスを上手に盗む方法』『虚像のアラベスク』と読んできて、どれも非常に面白かったです。

 

本作も同シリーズであり、シューマンの歌曲集「詩人の恋」をテーマにしたミステリなんですが・・・私の手に余る作品でした(^^;)

 

「お宅の旦那はあの歌曲集の中で一つ、やってはいけないことをした」。 シューマンの妻・クララのもとにある日偽名による脅迫状が届く。 シューマンの作品の評価を貶める決定的な証拠を入手したというのだ。

 

夫婦の友人・ブラームスは、ハイネの詩をもとに創られた連作歌曲集「詩人の恋」にこめられた謎を追い、ベルリンに向かうが……。 一方、180年の時を経た現代では、恋に悩む高校生、大学生指揮者、ベルリンを訪れた大学教員が「詩人の恋」をめぐって不可解な出来事に遭遇していた……。 (出版社紹介文)

 

第1部 杜塞道夫(デュッセルドルフ)1856年秋
第2部 伝記的事実
第3部 奇蹟のように美しい五月に
第4部 手紙
第5部 薔薇に百合 鳩に太陽
第6部 伯林(ベルリン)
第7部 君たちに解るかい この棺桶がどうしてこんなに巨大で重いのか

 

という7部構成の作品でした。

 

第1部は19世紀の話で、シューマンの妻・クララのもとに脅迫状が届きます。 クララからその話を聞いた友人・ブラームスは脅迫者に会おうとする・・・というクラシックファンにとってはワクワクする展開です。

 

第2部で語られる史実の補強も、ブラームスのピアノ協奏曲第1番や、シューマンのヴァイオリン協奏曲のエピソードもあって興味深い。

 

第3部と第5部は、現代の若者の恋愛エピソード。 間に入る第4部は謎の手紙です。

 

第6部は現代のベルリン。 古書店で見つかった謎の手紙の解読。

 

第7部はシューマンの歌曲集「詩人の恋」をテノール歌手・藤枝和行が歌い、神泉寺瞬一郎がピアノ伴奏をしつつ歌に秘められた真相をが解き明かしていくのです。

 

場面も時代もそれぞれ異なる7つの話は、シューマンの歌曲集「詩人の恋」という共通項によって整えられていました。

 

それぞれのエピソードは面白いし、「詩人の恋」の秘められた真相は作者・深水黎一郎さんの新解釈とも言うべきもので、巻末の引用文献の多さからもかなり力の入ったものとうかがえます。

 

しかし、しかし、クラシック音楽好きとはいえ歌曲集「詩人の恋」を一度も聴き通したことのない私には、クライマックスの第7部で100ページにわたる楽曲分析&演奏解釈はきつかったですね。

 

音楽&歴史ミステリとして素晴らしい作品だと思いつつも、取り上げられた作品が歌曲集ではなく交響曲か協奏曲だったら良かったのに・・・と思ってしまいました。