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チェンジマネジメントのツールとしてのストーリーマップ(5)

これまで、ストーリーマップがチェンジマネジメントにとって有効であることを説明してきましたが、チェンジマネジメントに精通していることがなぜグローバルタレントの育成と関連しているのかを説明してチェンジマネジメントの話題を終了したいと思います。

ビジネスの世界では実に様々な変化が毎日起こっています。このことは以前にもご紹介したとおりです。また、通常は人々が変化に対して抵抗を示すものだと言うこともご理解いただけたのではないでしょうか?

組織と言うのは生き物と全く同じような反応を示します。つまり長い間に小さな変化が連続すると小さな変化に慣れてしまって、大きな流れに気がつかなくなってしまいます。よく、このことは「ゆで蛙」にたとえて説明されます。それはこういう話です。

「蛙を熱いお湯の中に入れると、熱いので容器から飛び出してしまうけれども、お水の中に入れて少しずつ暖めてゆくと、蛙は快適さに浸ってしまい、そのままゆで蛙になって死んでしまう」。

これを組織にたとえると、快適な状態に長くいると組織の活性度が下がり、環境の変化に対応できなくなって、会社はビジネスをおこなっていけなくなる、ということですね。

実際過去において、危機を乗り越えた素晴らしい企業が、数年経つと、その成功体験に浸ってしまい、気がついたら組織の中の活性度が落ちていた、と言う話はよく耳にします。グローバルで生き残る企業、組織になるためには、こういったチェンジマネジメントの必要性をよく理解しておくことが不可欠になります。

最後にチェンジマネジメントを考える際に、人々の自然な行動について、「ローラーコースターモデル」というのをご紹介しておきましょう。


(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ-ローラーコースター


この図が表しているのは、人は変化が起こるときには、最初少し期待があり、その後、「こんなはずではなかった」と落ち込み、その後「でもここでやるしかない」という新たな目標に向かって歩み始める、という行動を一般的に取るものだということです。変化が必要なときには、こういった人々の反応を理解したうえでチェンジマネジメントに取り組むことが重要です。

チェンジマネジメントのツールとしてのストーリーマップ(4)


(株)ヒューマン・エッジ代表取締役社長・斧出吉隆のブログ-ストーリーマップ

前回まで、ストーリーマップがあればいろいろな変化に対応できるための体力ができやすいという話をしましたが、上に実際のストーリーマップの例を掲載しましたのでご覧ください。それでは実際どのようにしてストーリーマップを作成するのかを説明しましょう。

このストーリーマップを作成するためには、勿論、専門家によるコンサルティングが必要になってきますし、具体的に1枚の「マップ」に落とし込む「製作者」が必要になります。

残念ながら、私たち素人には「マップ」を描いてゆく技術はありません。しかしながら、私たちは「マップ」の中に何を描いてもらいたいのか?それがなぜ重要なのかを、製作者に説明し、製作者の創造性を掻き立てるような説明を求められます。

また、マップの中にはできるだけ、「事実」や「具体的なデータ」を盛り込むようにします。そこでまず、私たちが描きたいと思うマップの中にどういった情報を入れ込みたいのか?という点をすべて書き出すようにします。

次のプロセスは、いったん書き出してもらった情報を、本当に伝えたい情報に整理していきます。1枚のマップにすべてを書き込むのは無理がありますし、すべてを伝えようとすると、今度は受けて側が混乱することになります。たとえば、人事の役割が変化する、ということを伝えたいならば、人事の役割が変化することによって、何が、どう変わるのか?を強調できるような「キーワード」を選びます。

次に「キーワード」の流れに沿ってストーリーを考えます。これまではどうだったのか、なぜ新しい取り組みが必要になったのか、そしてどのような結果を得ようとしているのか?といったことをストーリーに落とし込んでゆきます。この段階には必ず製作者も参加して、具体的なマップをイメージしてもらいます。そして後はドラフトの絵ができるのを待って、詳細を決定して完成となります。

チェンジマネジメントのツールとしてのストーリーマップ(3)

さて、前回は、企業が成長してゆくためには「継続的な変化」が必要であると説明しました。そしてその変化に対して、社員のモチベーションの低下や生産性の低下を極力抑える、様々な取り組みがチェンジマネジメントである、ということはご理解いただけたのではないでしょうか?

ストーリーマップはそういった意味でのチェンジマネジメントの効果的なツールとして存在します。なぜストーリーマップが効果的なのか?このことを説明するために少し具体的な例をご紹介します。

私は以前、ある農薬の外資系メーカーに人事部長として勤めていました。その会社は、2つの大手外資系製薬メーカーの農薬部門が本体からスピンオフして対等合併した会社でした。海外ではこの2社の合併だったのですが、日本では新たに営業部隊を持つ必要性から、日本の販売会社もいっしょに合併したのです。つまり、3つの異なる企業文化を持つ会社が、一つの新しいグローバル企業としてスタートしたのです。

人事部長として私がやらなければならなかったことは多岐に亘りました。採用制度の整備、人事制度の統一、業績評価の制度(実はこの制度はグローバルの移行に沿ったもので毎年変更になった、新しい給与制度の導入、グローバルのトレーニング等々でした。

わずか2年ほどの間にこれだけの変化が次々と起こるわけですから、人事の担当である私にとっても大変な変化の連続でしたし、人事の専門家ではない社員にとっては、「何でまた変えるのか?もういい加減にしてくれ~」というのが偽らざる気持ちだったのではないでしょうか?

勿論人事部長としての私には、なぜこういう変化が必要なのか、これからどういう変化が起こるのか?などについて社員に説明する義務がありました。このときには、まだストーリーマップの事は知りませんでしたから、できるだけその都度その都度に説明はしましたが、十分に理解を得られるとは思えませんでした。また、同じ説明するにしても私が説明する内容と、人事の部員が説明するときには微妙に内容がぶれることもあり、後で、再度私が説明をするといった、非生産的なこともありました。

ストーリーマップは一目で変化の全体像がわかるため、社員にとってはあらかじめ変化を予想でき、起こりうる事態に対して対応できるよう気持ちの準備ができるのです。