『逆転裁判456 王泥喜セレクション』今回は『6』の第三話の感想を書きたいと思います。

ネタバレ全開であり、シリーズ過去作についてのネタバレも含みます。

また、今回は『6』の第三話後の話に出てくる「設定」のネタバレも若干含みますのでご了承ください。

では参ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第三話:逆転の儀式】

 

 

①お決まりの展開と驚愕の展開

 

クライン王国にて遂に真宵ちゃんとの再会です。

『3』より後には直接出ていない(『検事』の背景での登場は除く)ため、※12年ぶりの登場です。

 ※『3』は2004年発売、『6』は2016年発売

この登場だけで涙腺が緩んだファンも多いことでしょう。

28歳になり大人になった部分と昔のままの部分を併せ持つキャラとなりました。

「真宵ちゃん」というより「真宵さん」という感じです。

 

で、案の定逮捕されます(笑)

これで3回目です。「お決まり」の名がふさわしいでしょう。

 

一方で、今までにない展開も待っています。

 

まず、今回の探偵パートのお供はレイファ様です。

レイファ様は本作のヒロインといっても申し分ないキャラなのですが、クライン王国ではナルホド君と対立する立場です。そんな対立する相手と調査するという何とも新鮮な展開です。

威厳ある態度を取ろうとして強気な様子なのですが、世の中知らずな面をどんどんのぞかせるのが面白かったです爆  笑

 

そして、裁判パートの展開。

何と今回敗北(有罪判決)します!

しかし、直後にもう一つの殺人事件が起きていたことが判明。本件は連続殺人事件として第二審へと繋がります。

事態は好転したのかさらに悪化したのか何とも言えないこの驚愕の展開は「まだこんな展開できるんだ!」と非常に舌を巻いた記憶があります。

 

 

②霊媒

 

今作の舞台クライン王国の真骨頂というべきか、本話は霊媒がふんだんに出て来ます。

裁判はおろか、真犯人の工作にまで利用されます。

『逆転裁判3』の最終話を思い出します。

最後の最後、大ピンチになったナルホド君は真宵ちゃんの霊媒に賭けますが(それもまた真犯人の罠なのですが)、このシーンは真宵ちゃんの成長を見せるシーンでもあり効果的であったと思います。

 

 

③ナユタ検事の主張を整理

 

第一審終盤でのナユタ検事の主張について。

彼は「真宵(検察側の主張する犯人)は短刀を逆手に持っていた」と言い出します。

このとき「御霊の託宣の映像はどう見ても逆手に持っていない。この矛盾をプレイヤーが指摘できないのはおかしい」と考えたくなります。

しかし、ナユタ検事の最終的な主張を考えてみると上記の矛盾はクリアーされているのです。

そのため、この時点でナルホド君が上記矛盾を指摘したとしても、ナユタ検事は前倒しで「最終的な主張」を披露するだけだったように思えます。

彼の最終的な主張は…

 

・被害者は彫像に掛けた鳥姫様の衣装に接近しただけ(右手に持っているかのような刃物には刺されていない)

・死因は背後から接近した真宵(被告人)に逆手に持った短刀で腹部を刺されたこと

・このような殺害方法を仕組んだのは御霊の託宣を欺くため(存在しない第三者の犯行だと誤認させるため)

 

です。

この主張、かなり無理があるようですが実は本事件の真相と多くの部分で合致しているのです。

 

・鳥姫様の衣装を彫像に掛けた・・・〇

・聖域に第三者は存在しなかった・・・〇

・御霊の託宣を欺くための行動・・・〇

 

ナユタ検事は時折飛躍した推理をぶち込んでくるのですが、一部は真実なので中々厄介です(まあ、そのおかげで真相にたどり着けるという部分もありますが)。

 

 

④真犯人について ~善人と悪人の狭間で~

 

祭祀:マルメル・アータムを殺した真犯人は祭祀自身、つまり自殺でした。

全ては秘密警察の刺客オガム(フォン)を殺めてしまった妻:サーラを守るための偽装でした。

「オガムの死を偽装するために自身も死亡。2人の殺害の犯人として真宵ちゃんを逮捕させる」

というのが祭祀の計画でした。

「2年間も家族同然に過ごした真宵ちゃんに罪を着せるなんて酷い(徳の高い僧侶にはとても思えない)」

という考えもあります。そのため、善人と悪人の評価が分かれやすいキャラと言えるでしょう。

私はどうかというと…

 

やったことは真宵ちゃんから見れば許されないことだ。

一方で独裁体制のクライン王国、ましてや革命派にとってみればそうせざるを得ない側面もあった。

真宵と過ごした僧侶としての自分と革命派としての自分、そして最愛の妻を守りたい自分という入り混じった精神状態の中で板挟みにあった人であり、その中で究極の選択を迫られた挙句、真宵に罪を着せるという覚悟をしてしまった人(『ジョジョの奇妙な冒険』で例えると「漆黒の意志」に近い?)である。

 

…という感想です。「善悪」というよりは「悲しい・愚か」という側面が強いかもしれません。

(若干、同情的な側にいるかもしれません)

過去作で言うと御剣信に近い印象があります。彼も霊媒されてからの発言は善悪の判断が分かれると思うのですが、祭祀のキャラは「御剣信の更に漆黒なバージョン」という印象です。

 

真宵ちゃんとは2年間家族同然で過ごしたと書きましたが、極論すれば「家族同然」と「家族」には決定的な差があると言えます。

妻を救うために真宵ちゃんを犠牲にするという選択は当然非情であり悪魔の選択ですが、究極の選択を迫られた状況では理解できなくもありません。

 

次にクライン王国の現状ですが、

思想の自由が認められているとはいえ、事実上の独裁体制です。

ゲーム中では、祭祀の犯行計画の理由として「弁護罪があるから」という点が強調されていますが、私が感じたのは「そもそも正当な裁判は受けられない」ということでした。

秘密警察は極秘裏に国民に刃を突き付けている、革命派をでっちあげの重罪で次々逮捕している、という状況ですから政府側の都合の良いような裁判しかされないでしょう。

 

祭祀の計画は、

 

・第一優先順位:妻の行為を隠す

・第二優先順位:夫婦が革命派であることを隠す

 

ということだったと思います。

そのために計画も二段構えでした。

 

①聖域で自身が殺害されたように偽装し、のちにオガムの遺体が発見。2つの罪を真宵ちゃんになすりつける

②もし、自分が革命派であることがバレても、妻の行為は隠し通す。

 

※革命派であることはできるだけバレたくないという側面はあったと思います、当初の予定では革命派のアジトはバレずに事件は完結する予定でしたから。ひょっとしたら、革命派の次の行動までの時間稼ぎという側面もあったかもしれません。

 

※2024/04/02補足

夫婦が革命派であることを隠したかっただけでなく、革命派アジトの存在も隠したかったと思います。ただ、隠蔽の優先順位は「妻が革命派>夫(自分)が革命派>アジトの存在」だと思います。

 

単に「妻をかばって自分が自首する」だけだと御霊の託宣で犯行場所(革命派の隠れアジト)がバレる可能性がありますし、死亡推定時刻を調べればその時間帯に祭祀様の犯行は不可能であることもバレてしまいます(だから死亡推定時刻をズラす工作をした)。

また、オガムの遺体を消息不明にするアイデアもあったと思いますが、それだと秘密警察工作員の行方不明ということで秘密警察が踏み込んでくる恐れもありますし、念のため御霊の託宣をやってみたら死亡していることがバレる可能性もあります。

つまり「オガムの死体を発見させたうえで早期に犯人が逮捕されて事件が幕引きされる」ように仕向けなければならなかったわけです。

仮にバレたとしても続行できる計画、自分が霊媒される場合の状況まで読んでいる計画という点で祭祀の計画は相当な計画であったと言えるでしょう。

 

また、クライン王国では「親も罪は子の罪」という思想が強いということですから、生まれてくる赤ちゃんのためにもバレないようにしたかった面もあるでしょう。

 

 

⑤サーラは「見守っていた」

 

妻:サーラ・アータムは最後の最後になってようやく真相を打ち明けます。

ここまで、ほぼ無言を貫いてきたので彼女も夫の計画を知っていて真宵ちゃんに罪を擦り付けようとしていた(共犯者)とも考えられますが、私はそうではないと思います。

※偽装については妻を巻き込ませまいと祭祀が一人で行ったことであり、妻にはこの後何が起こっても(=自分が死ぬ)見届けるように祭祀がお願いしていたのではないかと思うのです。

 

※2024/04/02補足

再チェックしたのですが、事件後の様子を見ると、サーラ(夫の計画の全容を知らない)は今の状況が夫の計画の通りに進んでいる状態なのか、あるいは予期せぬ外部要因でさらにねじれた状態になっているのか判断しかねて困惑していたのではないでしょうか?

そもそも、夫が自殺するなんて計画は止めたでしょうし、かといって夫が真宵ちゃんに罪を擦り付ける計画を本当に立てたのかも信じられなかったでしょう。当然秘密警察がオガム一人であるはずもありませんから、自分の知らない第三者がこの状況を作ったのではないか?と考えてもおかしくありません。

彼女自身、裁判を傍聴することで何が起こったのかを理解していったのではないかと思います。

 

クライン王国・クライン教には霊媒があり、霊の存在は認められています。霊とは非常に尊い存在なのです。

また、「生者とのことよりも死者(霊)の想いの方が優先されるべき」という考え方は最終話でも見受けられます。

このことから、サーラは死者となった夫の意向を無視することはできず、最終局面まで動向をうかがっていただけなのではないかと思います。

 

 

 

長々と書きましたが、この第三話は色々あって凄いエピソードなのでした。

上記の文章ではイメージできないほどに霊媒された祭祀様のギャグ・キャラぶりが衝撃でした(笑)