音楽偏遊 -31ページ目

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

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「Grateful Girls vol.42」@渋谷gee-ge
出演:chay杉恵ゆりか木下直子斉藤利菜アルコリカ高田梢枝斉藤麻里
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鉄平さん企画Grateful Girlsもはや42回目とはすごいねえ。本日もいいブッキングなので、渋谷gee-geへ素直に向かう。

1組目はchay。アコギ弾き語り。

初めて見たが、ハーフのモデルのような可愛い顔立ち。声も、初々しさと強さを併せ持っていて、ロックテイストの曲が似合いそう。実際、2曲目の「But」ではアコギにエフェクターかまして、音を歪ませ、ギンギンのロック。なかなか格好良い。

音譜全力でぶつかっていけ、砕け散っても、But don't feel like it音譜なんてハードな歌詞もいい。

そのルックス、アッパーな曲が似合うところなど、「getaway」や「Goin' My Way」など歌ってたころのマリアに似てる。3年ぐらい前のマリアはこんな感じだったかもな、と想像して楽しい。ただ、マリアの方が鋭く、プロ意識が高い。マリアがここに至るまでに抱えた悲喜こもごもの想いの強さと経験、そこからくる覚悟が違うのは一目瞭然。彼女の体から、そうした諸々がオーラとなって発散されている。僕が好きな彼女の曲は「終われない夏」などのバラードなんだけどね。

逆にchayの場合、ここまで素直に育ってきたのかなあ、と思わせる優しさやワガママさを感じて面白い。アッパーな曲で高い音階を歌うときに声がキンキン響き過ぎるきらいがあるのが気になるが。

1)Together
2)But
3)初めての気持ち
4)?
5)Again

でも、間違いなくこれから伸びそうな素材。ステージングとか磨けば、会場全体を沸かせるようなライブもできるようになるだろう。経験を積めば、オーラも出てくるかも。きっとボイトレの先生とかから「もっと感情表現を丁寧に」とか指摘されていて、上手く歌わなければという意識が強すぎるんだろうなあ。曲を自分のものにして、さらにその先で自らの個性をガツンとぶつけられるようになると、心を捉えられるようになるかも。

すでに、1曲目の「Together」は洋服の青山のCMソングになるなど、Top Coatという佐々木希や杏などが所属する事務所のプッシュを受けているというし、これからの活躍は楽しみだね。ちなみに、その青山のCMは佐々木希が出てるやつ。なるほど、だね。


2組目は、身長144cmと小さくても、最近とみに存在感と大人っぽさを増している杉恵ゆりか

今夜は最初と最後の曲を1人でピアノ弾き語り、2-4はベースにイケメン西塚真吾君を加えて演奏。最近、女の子からイケメンってちやほやされて天狗になってる、と釘を刺されていたが、二人は二十歳の同級生。という。その2人で、しっとりした曲中心の大人の杉恵バージョン。最近、これが沁みる。

最近のしっとりバージョンライブでは、衣装が昭和のお嬢様風ってのも結構似合っていていい感じ。NHKの朝の連ドラに出てきそうだよ。

とにかく曲がいい。歌詞がいい。一つひとつの言葉がすっと頭の中に響いてくるのだ。ああ、こんな切なさ、昔感じたなあと、しみじみ思う。特に「空中メトロ」の音譜ガタゴトオと音をたてて~音譜ってところや、「冬のうた」の音譜冬の風を身にまとい、君のもとへ、君のもとへ音譜というくだりのメロディラインと、それを歌う彼女の儚くも甘く強い声にぐっとくる。素晴らしいソングライターなのだ。

1)いつでも帰っておいで
2)空中メトロ
3)冬のうた
4)Cause I Love You
5)ユメに、キミに

アルバム音源に関しては、ポップな「幸せであるように」以来リリースが途絶えており、今日のセットリストの中では5)ぐらいしか収用されてない。newアルバムが切望されるところだ。

それに関しては、来年初めのレコ発目指して準備中とのこと。それまでは、これを聞いてねとこの日、DEMO音源を用意してきた。「花びらのラブレター」と「ユメに、キミに」の2曲入りで、かつてレコーディングしたことがあるもの。

どちらもいい曲だが、「空中メトロ」や「あなたは私に嘘をつく」など、早く欲しいな。彼女の曲はライブでなくても、聴きたいと思わせる力がある。


次の斉藤利菜の前に、来店していた木下直子が、1曲だけの飛び入りアクト。「生きとし生けるもの」を熱唱した。11月9日のワンマン@gee-geの告知のためだ。

それにしても、彼女はさすが。たった1曲だが、歌い出した途端にその世界観に引き込まれる。スケールの大きさに、歌詞の深さに、そして慈愛に満ちた安定感ある声に、心がじわっと温かくなり涙腺がゆるむ。ワンマン、仕事あって行けないんだよなあ。本当に残念だ。

ここで、ちょっと所用のため、斉藤利菜アルコリカを見られず。紺屋は、この2組も楽しみにしてたのに、残念。聞けず申し訳ない、利菜さん、戸城佳南江ちゃん、ムラタ君。

5組目の高田梢枝は最初から聞けた。感動的!

前に一度、ちょっとだけ聞いたことがあったが、その時は注目してなかったので、実質的には今夜初めて彼女の歌と向き合った。そして、その素朴でしみじみとした歌声と楽曲にちょっとはまった。

鉄平さんが、彼女はメジャーだったと語っていたが、調べてみると2004年8月に「渋滞ぬけみちなし」でソニーミュージックからデビューしてた。そしてセカンドシングルが、今夜1曲目に歌った「秘密基地」。アニメのテーマソングに選ばれたためか、youtube見るとすごい数の「歌ってみた」やカバー映像が上がっている。なるほど。今は一人でライブを続けているとのこと。

1)秘密基地
2)非常階段
3)5年3組
4)グッピー
5)星の降るまち

でも、個人的には「非常階段」と「5年3組」に結構感動したな。特に「非常階段」は、アルバムを聞くと、すごくしっかりした音を作りこんであって劇的過ぎるくらいにドラムやギターが響いているが、今夜はギター一本の弾き語り。素朴にトツトツと彼女が歌う声から、込められて強い想いがびしびし伝わってきた。

音譜裏切られ傷ついて その先は闇で~誰にも負けたくなかった 一番になりたかったんだ それでも私はこの顔をこの体を好きになれずに ふざけるな って咆えていた音譜 こういう歌詞を、こういう風に歌えるアーティストって好きなのだなあ。この曲はこう続く音譜みんなに認めて欲しいから みんなを認めてしまうんだ~あきらめちゃいけない 誰かに負けてもしまっても 1番になれなくたって それでも私はちっぽけなこの私を好きになりたい ふざけるなって生きていく音譜(「非常階段」から)

歌詞が無茶苦茶いいんだよね。もっとずっと若いころに聞いていたら、一人部屋にこもって高田梢枝で泣いてたんじゃないかな。青春の苛立ちや無力感を、ストレートな歌詞で本当に上手く表現している。また機会があったら、ぜひ聞きたいアーティストと一人出会えたなあ。


さあ、そしてオオトリは最近またまたパワーアップして絶好調な斉藤麻里だ。

どんなアーティストでも波はあるし、新しいアルバム製作に合わせて大量に新曲を作り、そうした曲を演奏しはじめるとライブの雰囲気がガラッと変わることも多い。斉藤麻里にもそうした波はあるのだろうが、なんか最近の彼女はいい感じだ。先日の赤坂graffitiのライブでも、先輩たちをさしおいて着席のお客さんを総立ちにさせてしまったとか、ちょっとしたライブでもコール&レスポンスで全員に大声で歌わせたりとか。ライブハウスの空気を完全に自分のものにしてしまう勢いがある。それは、今夜も例外ではなかったよ。

まず最初は軽いジャブ「夕焼けセンチメンタル」で、もうお客さんの心は弾み始める。メリハリの利いたギターの演奏と、勢いのある彼女の歌が、ぐいぐいと引っ張っていく。聞いていて、本当に楽しいんだよね。

「魔法のバンドエイド」の優しさで、ぐいっと心をとらえ、久しぶりのバラード「うそつき」でしんみりさせ、そこからは一気にテンションを上げて、会場は大盛り上がり。「Melody」の間奏では、定番の学園天国ばりの音譜ヘイヘイヘイヘーイヘイ音譜の掛け合いで客席を煽り、同じ曲の最後には今度は「ラララララ」と会場中を歌わせる。

そして最後はアッパーに「ハレルヤ」で、内容かなり充実だった今夜のライブをしっかり締めくくった。トリに不足なし。彼女のステージは本当に、お客さんと一体となって突き進むから楽しい。

1)夕焼けセンチメンタル
2)魔法のバンドエイド
3)うそつき
4)Melody
5)ハレルヤ

ああ、楽しい夜だった。最近のベストブッキングと話しているお客さんもいたが、それも納得。興奮の一夜でした。アルコリカ聞けてれば、なお良かったのだが、それは今度のお楽しみに。
またまた、Avaivartika@eggmanを見てきたぜ!最近、アバティカライブは皆勤賞かも。

仕方ないんだ、Avaivartikaには、はまるんだよ! その圧倒的な演奏力と、プログレッシブでスケールのでかい楽曲、踊れるグルーヴ、力強く艶のある愛ちゃんのvocalと扇情的なステージング、ギター生本君、ベース榎ちゃん、キーボードUj、ドラムRuy君らキャラのたった5人のメンバーのキラメキ……。その魅力を数えていったらキリがない。

エレクトロやラップなど様々な音楽を取り込みながら、ロックの新しい地平線を切り拓いていくチャレンジ精神。それを、高い完成度で聞かせる老練で卓越した演奏。不協和音や雑音がなく、心地好いが圧倒的な音圧。頭が真っ白になって、解放される。ガキっぽいガレージロックとは中身が違う、大人を虜にするロックバンドなのだ。

最近のライブでは、「止まない拍手のRaining」の前奏オケが鳴り響く中、ステージに現れ、オケが途切れた瞬間、迫力ある生音がはじけ、気付けばアドレナリンが体内を駆け巡りリズムに合わせ踊り出してしまう。そのまま、一気にAvaivartika の世界へダイブしてしまう。

ところが今夜はセッティングが終わっても退かずステージに残ってる。そして、おもむろに演奏スタート。いつもと違うぞ、とファンの中で視線が行き交う。いきなり知らないメロディが。新曲だ。(タイトルは11月30日のAvaivartika企画イベントで公表するんだって)

続いて「イブリース」。なんかこれまでと違う感じ。どこがどう違うのか分からないが、音圧が前よりすごい。生ちゃんのエレキが炸裂するのは同じなのだが、他の音が前より響いてくる。榎ちゃんのベースが、Ujのキーボードが、それぞれしっかり目立っているのだ。

そこに、愛ちゃんがボーカルエフェクターをかまして、ところどころでリバーブなのかエコーなのか、とにかくその声がより大きく、より輻輳的に響いて、全く負けてない。イブリースは聞く度に変化している気がするが、作った生ちゃんが目立ちまくった初披露時に比べ、徐々にAvaivartika全体のものとして完成度を高めてきたのだろう。間違いなく、今回の方が圧倒される。

1)新曲
2)イブリース
3)グラデーション
4)星フル
5)NS
6)止まない拍手のRaining

3曲目以降はおなじみの曲たち。グラデーションもしっかり定着してきたね。そして、久しぶりの「星フル」。今日はどちらかというと、大人しめの曲が中心。いろいろなテイストの曲をしっかりライブで作りこんでいこうというのだろう。演奏陣の音がすごく際立つ曲の多いAvaivartikaだが、バラードな星フルは、愛ちゃんの歌唱が前面に出ていて、これもいいよね。最後は派手に盛り上がった。

星フルがyoutubeにあがってないかな、と探したら何故かアニメ映像のBGMに使われていた。ワロタ。似合わねー。大人のAvaivartikaの音源とオタアニメがあまりに不協和音。リアル愛ちゃんの格好よさを知ってるだけに。でも、これやってる方はきっと古いファン。愛ちゃんとUjがAvaivartikaの前に昨年11月までやってたユニットは「Blue Blue」といったが、さらにその前にやってたバンド「I's Cube」時代の音源×アニメというMAD作ってるようだしね。

ちなみにBlue BlueがAvaivartikaへと発展的解消する場となったのは、昨年11月29日の歴史的ワンマン「ケミカルジャンパー」@渋谷O-Crestだ。その前日には木下直子もここでワンマンをやっており、仲良しの二組の2day公演を連夜見にいったなあ。そのライブのプロモ映像がやはりyoutubeにあがっていたのでぜひ。そこに、今夜歌ったNSと星フルがBGMで使われてるよ。


そして、そのワンマンからちょうど1年後の11月30日、Avaivartikaは初の自主企画ライブ「Music Planets vol.1」を渋谷eggmanで開催する。このイベント、対バンも超魅力的。カムロバウンス / ALLaNHiLLZ / Hiroco という顔ぶれだ。18:30スタート。彼らがエッグマンを宇宙船にしてしまうらしい。これは行くべし!すごくレベルの高いロックな異空間を体験できるはず。楽しみだ。





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「Moon Romantic」@南青山・月見る君想フ
出演:矢野絢子 →保刈あかね →佐伯ユウスケ →SHUUBI
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今夜は、4人が4人ともレベルの高い弾き語りシンガーばかり。すごく楽しませてくれるだろうと思っていた。しかし、いやはや、ライブは恐いね。そして、記録に残らない、たった一度きりの出来事をその場で目撃できるのも、ライブの醍醐味。その一回、一回で勝負しなければならないミュージシャンは大変だ、と最後に思った夜だった。

そのことは後述するとして、今夜は僕が鍵盤弾き語りアーティストにはまった原因のNo.1とNo.2が揃い踏みするという豪華な顔ぶれ。他はうっちゃっても、ここに来たかった。SHUUBIと矢野絢子だ。

彼女たちが上にいると思うからこそ、他にも才能溢れる鍵盤弾きがいるはずだ、と色々なライブを見に行く気になる。そして、ヒグチアイ、いいくぼさおり、ヒナタカコ、木下直子、戸城佳南江、坂本麗衣、小林未郁、吉村かおり、廻田彩夏、などなど素敵な鍵盤ガールとの無数の出会いがあったのだと思う。

そんなレスペクトする極上アーティストであっても、時にライブの魔物に捕らわれてしまう。今夜のライブは、その点が衝撃だった。それが、モヤッとした気分として後をひいた。


今夜の一番手は、矢野絢子。

矢野さんは高知在住だが、頻繁に東京でライブしている。だから、もっと聞きに行ってても良さそうなものだが、実はかなり久し振り。何故か日程が合わない。というか、彼女がすでに揺るぎない存在だから、半年でも1年でもライブ行けなくても大丈夫と、安心してしまってるのだ。

そんな期待にたがわず、今夜もいいライブを聞かせてくれた。

彼女ほどの大物がトップで歌うのも珍しい。ここ月見るでも何年も前から、定期的にワンマンを開いており、常に成功させてきた実績もある。ただ、今夜のうちに三重へ移動しなければならず、すぐに旅立たつとのこと。本当に出演後すぐ物販の撤収を始めており、去り際にギリギリ彼女の新しいアルバム「いちばん小さな海」をゲットできた。良かった。

ライブは一番手だからか、あのとてつもなく深く激しい情念を飛散させるスタイルは押さえ目。それほどの切迫感ななく、彼女にしては随分軽やかな感じだが、それでもインパクト十分。フォーク(いやブルース?)の真髄と、それと同じぐらいの分量で他ジャンルの音楽も取り込んだ遊び心を混ぜ合わせ、とてもとてもドラマチックなピアノ弾き語りを聞かせてくれた。

最近聞いてないから、ちょっと曲名分からないんだよね。でも、どの曲も、彼女の深い恨を感じる声で歌われる歌詞が、強烈に印象に残る。この唄力は半端ない。

1)? (♪君が好きだ、これは本当♪)
2)? (♪シュッポ、シュッポ、シュッポ、シュッポ♪ 光の列車かな?)
3)Baby
4)? (♪黒い雨に打たれて、私たちは生きてゆくだけ♪)
5)ろくでなしって呼んでください
6)唄の舟

しかし、2)や3)は母ならではの曲たちだ。人間としての彼女の奥行きの深さに、ひたすら感銘を覚える。そして後半の3曲では打ちのめされた。ああ、やはり矢野絢子は健在だ。

でも本人はちょこっとしていて、目力はとても強いがかわいらしい。見た目で才能を判断してはいけない。僕は、これほど魂ののった楽曲を歌える女性アーティスト、僕はそう知らない。


2番手は保刈あかね。カホンとキーボードのサポートと共に、ブルージーにギター弾き語り。言わずとしれた横浜のSSWの星。よく横浜のライブハウスでやっているが、何故か僕が彼女を見るのは、3回連続で「月見る」だ。

そのやさぐれる一歩手前で力強く踏ん張っているような姿勢が、凛として格好よい。ステージは、穏やかで、とても率直な愛のことばが光る。こびず、カッコつけず、こんなにまっすぐラブソングを歌える女性シンガーって珍しいかも。

カッコつけるのは、悪いことではない。今夜のトリのSHUUBIは、まさに格好いいの最北端?それがおしゃれで魅力的なスタイルになっている。一方で、その歌を聴いたら保刈のことを嫌いになる奴いないんじゃないか、とその真っ直ぐさにも惹かれる。ものすごく好感。まず、最初の「ラブレター」にしてやられた。

音譜愛してる その言葉が心を突き刺す 嬉しすぎて 愛してる この想いが 心からあなたに届け音譜

暗くなることなく、情感たっぷりに歌う彼女のストレートな声に、やられた。

1)ラブレター
2)つながってたい
3)迷子の犬
4)朝焼けセンチメンタル
5)君の声

そして、とりわけ、最後の「君の声」が良かった。歌いだした途端にステージがぐぐっと広がりをみせ、大空いっぱいの青空の下にその思いがたゆたうよう。この曲、とても気に入った。

11月8日で26歳だそうで、おめでとうございます。


3番手は佐伯ユウスケ。

先に判った分のセットリストあげとこう。
1)?
2)君って(西野カナcover)
3)マザコン
4)つながってる親へ
5)Steppin to Stage

え、西野カナなんかカバーしているのー?と驚くだろうけど、なーんとあの曲を書いた張本人が彼、佐伯ユウスケ。そのセルフカバーを聞けたという意味では貴重……かな?でも、あんまり好きじゃなかった。

というか、そもそも誰が歌おうと、西野カナの曲を個人的には好きじゃないという事を再確認した感じ。佐伯ユウスケの曲って、軽ーいポップなんだけど、そういうの得意じゃないんだよな。いや、ポップスとしては、よくまとまっているし、演奏技術も高いのはよく判った。彼を見に来た女の子のファンも多く、盛り上がっていて、彼の出番が終わると潮が引くように消えていった。

さらに、♪ただのお母さんじゃないんだぞ、いつでも僕の見方だ♪なんて小学生のガキみたいなことをマジに歌う「マザコン」、♪お父さん、お母さん、ありがとう♪と歌う「つながってる親へ」の連続技には、もう降参。やめてくれー、と心で悲鳴を上げてしまった。ごめん、本当にマジでタイプじゃない。いや本当に申し訳ないのだが。


さあそして、オオトリは、待ってましたのSHUUBI。ファンも、初めて聞く人も、彼女のポップで繊細でおしゃれな楽曲をライブで聴いたら、心が弾まずにはいられないはず……なのだ。いつもなら。

今夜のSHUUBIは、何かの歯車が狂ったかのよう。原因など分かりようもないが、ライブのはじめの定番の音譜私の声がきこえているかい~ようこそ、ようこそ、ようこそ~音譜から、どうも惹きつけない。いつもなら、あのキラキラしたピアノの前奏が鳴り始めるだけで、それまでざわついていたお客さんも、すっと彼女に集中するのだが。

それは1曲目のアッパーな「マイシーズン」でも続く。この曲、彼女のグルーヴたっぷりの歌唱に、踊り出したくなるような曲なのだが、今夜はどこかバランスが悪くグルーヴがない。ドラムの音が強過ぎる。いや、いつもはこの強いドラムに負けずに、SHUUBIが弾み始めるのだが、今日はサポートのドラマー野口薫が空回り。彼も彼女をのせようと、力一杯叩いたのかと思うが何か絡まり合わない。どうしたんだろ。

3曲目の「宝物」。SHUUBIのライブを何度か見たことある人なら、彼女が情感たっぷりに歌うこのバラードに涙が出そうになる事を知っている。それだけ、彼女はドラマを作れるシンガーなのだ。だが、動揺しているのか、途中でピアノがついてこなくて演奏を中断。彼女がそんな事をするのを初めて見た。やり直して、歌い続けたが…。

そして多分、今夜の話題となるはずだった「雲よ月を覆ってしまえ」(だったと思う)を、野口さんがアコギを演奏し、SHUUBIがハンドマイクでステージ中央に出て歌った。個人的にはライブでこの曲を多分初めて聴けたので、嬉しかった。野口さんのアコギも初めて見たが、すごい上手い!さすがだね。

ただ、「月見る」の大きな月がステージの後ろに燦燦と輝いている前で、「覆ってしまえ」がいけなかったのか?お月様に見放された感じが、この後も続く。

この曲で少し暗く、おどろおどろしい感じにしたのを払拭するように、5曲目には明るくアップテンポな「Miss&Mr.Baby」をもってきたのだが…。途中で再び指がついてこない。イライラしている感じで、一度止めて、少し前からやり直す。しかし、またミス。「最初からやっていい?」と聞いて冒頭から弾き直すが、途中で弾き進められなくなってしまう。

「こんなことデビューしてから初めて」と泣きそう。いっそ、違う曲にしようと野口さんと相談し、別のアッパーな曲「Rider★」に。ただ、いつもは余裕たっぷりにお客さんを楽しませてくれるSHUUBIが真剣そのものの表情。

本当ならここで終わりだったのだが、「すいません。これじゃ申し訳なさ過ぎる。もう1曲いいですか」とPAに許可をもらって、これも想定外の「Dear」を歌うことに。

このバラードの終盤、お客さんと「ラーララーララララー」と声を合わせて歌うところがある。みんな、一緒に歌った。多分、普段歌わない人も歌ってくれたのではないだろうか。がんばれって心で唱えながら。SHUUBI自身も一緒にラララと歌いながら、ようやく落ち着いてきたのだろう。ラララの後の、本当に最後の最後のところだけは、いつも通りの素晴らしいSHUUBIの歌が戻ってきた。

最後は心を込めて、音譜輝く笑顔はいつも その涙の中にある~ラーラララー音譜と、これぞSHUUBIという魅力たっぷりに聞かせてくれた。

1)マイーズン
2)2つの星
3)宝物 (途中でやり直す)
4)雲よ月を覆ってしまえ (ハンドマイク、gt.
5)Miss&Mr.Baby (ミスする度に止めてやり直すが、それでも続かず断念)
 →代わりに「Rider★」
6)Dear

物販で声をかけたが、なんか全くまともに話できなかった。力になれなかったなあ。

ほろ苦い夜。