「平成30年7月豪雨」と其の被害の事 | Kunstmarkt von Heinrich Gustav  

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ドイツの首都Berlin、Brandenburg州及び比叡山延暦寺、徳島県鳴門市の公認の芸術家(画家) Heinrich Gustav(奥山実秋)の書き記した論文、随筆、格言集。

                

            

大阪北部地震の後、兎に角此れ以上大惨事が起きない事を祈る思いでいると、今度は同年7月1日以来、台風が変化した低気圧と活発な前線の影響で、大気の状態が不安定になり、4日の夜より大量の雨が降り始めた近畿地方では、5日になると局地的に非常に激しい雨が降り、西日本から東日本にかけて6日も大雨が続き、各地で観測史上最大の雨量を記録した。
5日、気象庁は午後2時から臨時の記者会見を行い、梅雨前線が暫く停滞する為、西日本と東日本では大雨が降る状態が今月8日頃まで続き、記録的な大雨になる恐れがあるとして、厳重な警戒が必要であると発表した。
翌日6日、気象庁は数十年に1度の大雨と見て、福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取の6県、更に兵庫県、京都府にも、そして7日午前中には岐阜県にも重要な危険が差し迫った異常事態として「大雨特別警報」を発令した。
7日昼までの雨量は多い所では、四国と東海で300mmから400mm、九州南部・奄美と九州北部、近畿、北陸、関東、甲信で200mmから300mmと予想されている。
気象庁は土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水・氾濫に対する厳重な警戒が必要だとして、今後の気象情報や自治体が発表する避難情報に注意すると共に、特に地震の影響で地盤が緩んでいる地域の様に危険度が高くなっている地域では、少しでも安全な場所へ早めに避難する様に呼びかけている。
震度6弱の地震の被害を受けた大阪府・高槻市では大雨洪水警報が出ているし、隣接する茨木市では土砂災害発生の前兆現象が確認されたので、枚方市、豊中市、等でも約1万6000人に避難指示が出ている。
其の他、京都市・右京区、其の他複数の区では1時間の降水量が58mmとなる程、広い範囲で激しい雨が降っており、桂川や鴨川等の河川の氾濫が懸念される故、約15万人に避難指示、約50万8000人に避難勧告が出されている。
兵庫県でも神戸市を中心に約14万7千人に避難勧告が出ており、同市灘区の神戸大学では、敷地の一部が崩れる等の被害も出ている。
6日午後9時の時点で近畿、中部、中国、九州の4地方の2府22県で約115万人に避難指示、約265万人に避難勧告が出ている。

目下の処、警察や消防、自衛隊は約5万4000人を動員して安否不明者の捜索や救助活動を進めている。
是までの全国の自治体、警察と消防の報告によると、(7月20日時点で)死者222人まで数えられている。
其の内訳は、広島県107人、岡山県61人、愛媛県26人、京都府5人、福岡県4人、山口県、高知県で各3人、岐阜県、兵庫県、佐賀県、鹿児島県で各2人、そして滋賀県、奈良県、大阪府、鳥取県、宮崎県で各1人となっている。
総務省・消防庁によると、豪雨災害によって短期間に死者が100人を超えた事例は、1983年7月に梅雨前線の影響で島根県を中心に112人が死亡して以来と言う事である。
人的被害以外の西日本を中心とする豪雨の主な被災の統計は以下の通りである。
(7月20日までの最高数)
・避難者数:7085人
・家屋被害:3万9067棟
・断水:23万5千戸
・土砂災害:519件
・鉄道の運休 11事業者26路線(JR貨物含む)
更に農林水産省が22日に発表した西日本豪雨に伴う農林水産関係の被害額は1197億9000万円までになった。
再度、犠牲者の方々には御悔みを、被害者の方々には御見舞を申したい!

ここで注目すべき事として、今回の大雨に依る死者の約半数近くを広島県民が占めている事と、被災地も4年前に起こった豪雨被害の被災地、安佐北・南区の山麓の場所と重なっている事である。
地質学上の調査によると、広島県の面積の約半分は花崗岩によって成り立つ地質であるらしい。
花崗岩に亀裂が入って風化して生成される「真砂土」(まさど)と謂う砂と「コアストーン」(核石)と謂う大型の岩石が、硬い岩盤の上に蓄積して出来た土地が多い。
即ち土砂崩れの起き易い山を削って住宅地を開発したのである。
(此れはまるで諺の「砂上の楼閣」に該当する様な宅地開発ではないか!)
同県には土砂災害の恐れがある「土砂災害警戒区域」が全国最多の約4万9500カ所もあると推定されている。
此の様な場所では大雨の時、大規模な地滑りや土石流が発生する危険性が高いので、これ等の区の山麓は、住宅地としては地理的に安全性の低い不適切な場所であると指摘しざるを得ない。
地元で甚大な被害の出ている広島カープは被災地に配慮して、9日から予定されていたマツダスタジアムでの前半戦最後の3連戦の中止を発表した。
余も此れは正しい決断であったと思うし、カープ球団は被災地復興の為の募金活動をしてくれているし、更には被災者達を元気付ける為に、是非とも優勝を目指して健闘して行ってもらいたい!

更に7日午後8時23分頃、千葉県東方沖を震源に関東地方で最大震度5弱の地震が起こった。 (幸い此の地震による深刻な被害は報告されなかった。)
日本で本来7月7日とは「七夕」と云う「牽牛」と「織姫」が夜に会合する伝説に基づき、此の日に短冊に願い事を書いて笹の葉に飾る、Fantasie (幻想)やRomantik(浪漫)を感じさせる祭りが催される日である。
にも拘らず此の様な甚大な自然災害が起きてしまい、西日本では広範囲で未曾有の被害が出てしまった事には寧ろ「悲愴」を感じさせられるのである。
被災地では是からも不慣れ且つ不便な状況の中で大変かも知れないが、とにかく被災者の方々が其の健康を出来るだけ維持して、粘り強く復興の為に引き続き精進され、再び平和な日常生活を取り戻される事を願って止まない!

以前に書いた以下の記事も参照されたし。
「東日本大震災の御見舞い、御悔み、そして助言」

「大震災被災者の為のストレス診断表」

「熊本地震への御見舞い、御悔み、そして助言」

気象庁のアメダス(地域気象観測システム)を含む全国に約1300カ所ある観測所の統計(多くが1970年代後半に開始)によると、今回の豪雨で「48時間降水量」が史上1位となった地点が123カ所、全観測所の1割近くを占めたのであった。
都道府県別で見ると、広島県内で23カ所、岡山県内で19カ所が史上1位となり、即ち県内の観測所の約7割で記録が更新されている。
他にも岐阜県、京都府、兵庫県、愛媛県のそれぞれ10地点以上でも史上1位の降水量を記録した。
19世紀末以来100年以上に亘る観測データと照合しても、今回の豪雨による「日降水量」が史上10位内に入った地点は全部で12箇所で、九州北部から岐阜県まで11府県に及んだ。
此れは数十年に1度の降雨量になると予想される「大雨特別警報」が出た地域とほぼ重なる。
従って、過去100年以上と云う長期間で見ても、今回の豪雨が如何に広範囲で史上稀に見る多くの降水量であったかが分かる。

ここ近年のおびただしい気候の変動、異常気象、そして地震、等の世界規模での自然災害を目の当たりにして、地球上の自然環境の劣化が如何に進行しているかが、如実に感じ取れるのである。
本来ならば人間も他の地球上のあらゆる生物と同様に自然と調和し、共存して行かなければならないのである。
しかし、人類は自分達の利益や欲望を満たす為に、余りにも多くの自然環境や他の数多くの生物を犠牲にして来た。
此の様な現状にまで至っては、もう此れ以上は絶対に許されない事なのである!
余が芸術家として、そして我が地元Berlinの友人で前都議会議員で文化局長であったR.Sauter氏の所属する”Grüne Partei”(緑の党)、其の他の自然学者、環境保護団体、等が”Zusammenleben zwischen Natur und Menschen”(自然と人間の共存)を永遠の主題として提唱している。
とは言え、少数派の(智恵ある)人間がどんなに真剣に提唱しても、多数派の愚か者や利己主義者が支持、賛同、協力をしないのならば、実行、実現は不可能なのである。
余の格言>Die Mehrheit ist nicht immer richtig sein.<(多数派が常に正しいとは限らない。)又は「インド独立の父」と呼ばれるM.K.Gandhi師の格言「良心に関しては、多数決の法則は当てはまらない。」が正に此の状況を象徴していると言える。
そして余の芸大時代の恩師C.Weidensdorfer先生の言葉>Die Menschen kann nicht die Natur überwinden.<(人間が自然に打ち勝つ事は出来ない。)を、人間は大規模な自然災害を経験した時、改めて思い知らされるのである。

追伸:
ニュースで読んだ事であるが、今回の自然災害の被災者の窮状に付け込んで、家を修理するだの、エネルギー設備を修理するだのと言って法外な料金を請求する悪質業者や、無人、無施錠になった民家や、店舗に侵入して盗みを働く、所謂「被災地泥棒」等の卑劣な犯罪には警戒が必要である。
(これ等の犯罪は以前の「阪神大震災」(1995年)や「東北大震災」(2011年)の時にも起きている。)
其の他、暇つぶしに被災地を見物に行って、写真を撮ると云った「野次馬」連中までいる。
同じ日本国民の災難や不幸に同情出来ない「人格障害者」の如き輩は全く軽蔑に価するである。
更に呆れるのは、7月6日に気象庁が6日~7日にかけて、西日本の大半に「大雨特別警報」を発令しているにも拘らず、翌日に複数の自民党の大臣、国会議員が「自民赤坂亭」と称して議員会館で「懇親会」(宴会)を開いていた事である。
同様に野党・立憲民主党の衆院議員も同日の夜パーティーを開いていたと云うのである。
西日本で生活する同じ多くの日本国民が生命や財産を失う程の窮地、危険に脅かされる時に、国家の行政を司る立場の人間が此の様な呑気、楽観視では国民はたまった物では無い!
流石にこれ等に関してはウェブ上でも多数の国民から、批判の声が寄せられている。

余の個人的な経験、意見を述べると、様々な業種の友人、知人達からも、最近国内で起きる事件や出来事を見聞して「どうも最近の日本社会の劣化や一部の人(特に貧困層)の心に「闇」の様なおぞましい物を感じる。」と云う意見をよく聞く。
法律や道徳は簡単に変わる事は無いのだが、其の一方で経済的な格差は開くばかりである。
かつての「封建制」や「身分制」のあった時代では下層庶民はたとえ貧しくとも、己の身の程をわきまえていたし、当時の道徳教育は今より優れていたし、刑罰も遥かに厳しかった故、社会に不満をぶつけて凶悪犯罪を働く者も左程いなかった様である。
ところが現代社会では、昔に比べ「身分制」が廃止され、道徳教育が廃れ、刑罰も軽くなっているので、身の程をわきまえず、平気で他人や社会に迷惑や害を及ぼす悪質な輩が随分と増えている。
経済や機械文明ばかりが発達して、Tugend(道徳)やHumanität(人徳)から成り立つ「精神文化」の廃れた現代社会が生み出した「利己主義」と云う大きな弊害を感じずにはいられないのである。

此の様な世情の中で、自分の利益を度外視して「災害救済ボランティア」として被災地に赴く人達、そして義援金ないしは支援物資を寄付出来る人達は何と人道的で立派であるかと思えるのである!
此度の豪雨被害は天が人間に下した大変厳しい「試練」ではあるが、こんな時にこそ人間は「平穏無事な生活への感謝」、「節度ある生活」、「利己主義に対する戒め」、そして「他人への慈悲」を改めて認識しなければならない!
真夏の炎天下、作業は大変な苦労かも知れないが、「災害救済ボランティア」の方々には、被災者達の意見、需要、要望を良く聞いて、其れに適った救済活動に励んでくれる事を願うばかりである。

追伸:
内閣府は12月14日、7月の西日本豪雨による住宅や交通インフラなどの直接的な被害が、11府県の8月末までの合計で9千億~1兆7千億円に上るとの推計を発表した。
過去の水害と比べて被災地が広範囲に及び、近年では最大規模の被害だったと見られる。

更に2019年2月2日、農林水産省の統計によると、此の自然災害による農林水産分野の被害総額が5661億円に上り、東日本大震災が起きた2011年後では最大になった事が判明した。

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