大震災被災者の為のストレス診断表 | Kunstmarkt von Heinrich Gustav  

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ドイツの首都Berlin、Brandenburg州及び比叡山延暦寺、徳島県鳴門市の公認の芸術家(画家) Heinrich Gustav(奥山実秋)の書き記した論文、随筆、格言集。

           

           

本日で「東日本大震災」発生から丁度2年目を迎える。
3月現時点で死者:15831人、行方不明者:2668人までが確認されている。
其の上、所謂「震災関連死者」の数が2012年9月末の時点で2303人にも上っているという事実がある。
痛ましき事ではあるが、1995年の「阪神大震災」の折の「震災関連死者」の数ですら919人であった事、被災地は高齢者の占める割合が多い事、そして復興事業も思う様に進展していない故、彼らの日常生活を取り戻せる時がいつになるのか見通しさえ立たない事からこの「震災関連死者」の数が増加する事が懸念されてならない。
其の上、最近の保険庁、各自治体、マスコミ等の調査によると、震災から1年目より今年2年目になって被災者の心理的状況を調査した所、「焦燥感」「疲労感」「失望感」と言った所謂「負の感情」を抱く人達の割合が増加傾向にある事が大変気懸かりである。

余は復興事業にこそ何ら協力すら出来ないが、心理学を学んだ者として被災者の方々の是れからの心身の健康保持に役立てる事が何か書けないかと思い此の記事を認めるに至った。
人間は其の日常生活において無意識の内にStress(ストレス)を心と体に蓄積している。
しかしながら一般人には日常生活に於いて、自分や家族にどれだけストレスが貯まったかを正確に把握する事は容易ではない。
此のストレスが如何程蓄積されたかを数値で知る事が出来、又どれ程蓄積されると心身の健康を損ねるのかが判ると、健康管理及び維持に非常に有益ではなかろうか。
以下のストレス診断表はアメリカのSeattle市のWashington大学の精神分析科の教授だったThomas Holmes博士によって作成され、1971年に発表された物である。

・家族の死:100p(ポイント)
・離婚:73p
・夫婦の別居:63p
・懲役:63p
・怪我、病気:53p
・結婚:50p
・失業:47p
・家族との不和:45p
・定年退職:45p
・家族の病気:44p
・妊娠:40p
・性的不一致:39p
・家族の増加:39p
・経済状態の変化:38p
・親友の死:37p
・職場の配置転換:36p
・配偶者との口論の増加:35p
・昇進、降格29p
・子供との別居:29p
・親戚との争い:29p
・著しい業績、名声:28p
・配偶者の退職、復職:26p
・入学、卒業:26p
・生活習慣の改変:24p
・上司との悶着:23p
・就業時間、条件の変化:20p
・転居、転校:20p
・趣味の変化:19p
・交際相手の変化:18p
・1万ドル(約100万円以下)の抵当、借金:17p
・睡眠時間の変化:16p
・家族が一緒に過ごす時間の増減:15p
・食事週間の変化:15p
・休暇日数の増減:13p
・軽微な法律違反:11p

当然の事ながら、ストレスに対する感受性は人種や社会階層、又は個人の性格、価値観によって多少の差があるので、上記の診断表のストレスポイントはあくまで目安である。
更に付け加えると、以上の項目の中には表記されていないが、被災者の方々は「自然災害」もストレスポイント(約50~60p)として計算する必要がある。
しかしながらHolmes博士の調査によると、これ等のストレスポイントが1年間に300点以上蓄積した人の約80%がノイローゼ、鬱病、心臓病等の心身の病気になっていたと言うのである。
昔の諺に「風邪は万病の元」とあるが、現代社会では「ストレスは万病の元」と云った方が妥当ではなかろうか。
とは言え人間は其の生活の中でストレスを全く蓄積させずに生きる事は到底出来ない。
其れどころかストレスを殆ど貯めない人は脳への刺激が激減し、遂には痴呆症になったり、挙句の果てには自殺までしていると言う事例も少なくない。
つまりストレスとは蓄積し過ぎてもいけないし、全く無くてもいけないのである。
故に人間はストレスを上手に調整して行く事が健康管理に於いて重要なのである。

人間が過度のストレスを受けると、脳の視床下部に反応して下垂体と副腎からのホルモン分泌が促進され、此れに依って心拍数の増加、血圧の上昇、食欲の低下、等が生じる。
又、過度のストレスは、感情や本能を抑制している前頭前野の機能を弱め、思考力、判断力、理解力、記憶力、理性の働き、等を著しく低下させるので、普段では起こり得ない様な失敗や間違いをする事もあり得るので、十分に注意が必要である。
大震災で家族、親族、友人が亡くなったり、家や其の他の財産を失ったり、自分自身が命を脅かされる様な経験をした人は、所謂PTSD(Post-traumatic Stress Disorder=心的外傷後ストレス障害)を患う可能性がある。
此の精神疾患の症状として、震災の悪夢(Flashback)、疎外感、無関心、情緒の鈍麻、不眠、憂鬱、不安、激怒、ストレス耐性の低下、過度の驚愕反応、依存症、等が挙げられる。
治療法としてSSRI等の「抗鬱剤」を投与する事もあるのだが、此のSSRIは過剰投与すると、Aggressivity(攻撃性)を助長すると云う副作用があるので、余は個人的にはお薦め出来ない。
寧ろストレスが過度に蓄積している時には、十分な心身の休養、静養を採るとか、親しい人との会話、趣味、等のRecreation(気晴らし、娯楽)をする事によって、ストレスを解消する事である。
又、恐ろしい体験から来るTrauma(心の傷)や不快な記憶を少しでも癒す為に、被災地を暫くの間離れて、どこか観光地にでも旅行するのも良い。
最近話題になっている"LOHAS"(Lifestyles of Health and Sustainability健康と維持能力による生活様式)と言う標語に象徴される様に、現代社会に生きる人は皆、健康についてただ単に医薬品や医療機関に依存するだけでなく、自分自身でも入念に管理していく必要が有るのである。

被災地では是からも不慣れ且つ不便な状況の中で大変かも知れないが、とにかく被災者の方々が其の健康を出来るだけ維持して、粘り強く復興の為に引き続き精進され、再び平和な日常生活を取り戻される事を願って止まない!

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