こうした傾向はアーティストの側だけを「パクリ、ものまね」と責めていいものではない。むしろ、こういった同人的作品を求めるリスナー側の質の変化がとても興味深いのである。
一昔前、B'zにとても良く似た男二人(声の高いボーカルとギタリスト)のデュオでSurfaceというのがあったが、そのときはあからさまに「B'zのパクリじゃん」ということで一般リスナーからは拒絶され、その後の彼らはB'zではない独自の個性を持った方向に舵を取らざるを得なかった。つまり、人気のあるアーティストの同人的作品にそれほど需要がなかったのである。ところが、現代は違った反応を見せており、RADWIMPSはむしろ好意的に受け止められている。
RADWIMPS作品にあるメッセージ性は、Bump of chickenとほぼ同一ということになるが、リスナーはそれを「よし」として受け入れている。これは裏を返せば、現代のリスナーがアーティストRADWIMPSのもつ「作家性、オリジナリティ、メッセージ性」というものに驚くほど無頓着であり、かわりにオリジナルであるBump of chickenの表層的な設定、断片たちを好んで消費するようになっていると言えるだろう。
このリスナーの変容が実に恐ろしい点は、同人的音楽が世に氾濫すればするほど、だれのどれが原作になって、どこが二次創作なのかという区別が非常にあいまいになることだ。既に、RADWIMPSが紅白に出場してBump of chickenの売り上げも抜くのでは、という予想も出ているほどであるから、薄い本が分厚い本を凌駕する状況は生まれつつあるのである。
それにしても、こうした背景をもつRADWIMPSが「きみの名は」という映画の音楽を作るとはなんという皮肉だったことか。彼らの名は、一体何と呼べばいいんだろうね。