ところで、こうした身体的な快楽優先主義と非常に親和性が高い思考パターンが「とにかく売れたら勝ち。売れることだけが結果であり全て」という音楽資本主義、音楽集客第一主義の思想であったため、この状況は問題視されるどころかウェルカムと言わんばかりに受け入れられ、あっというまに広まり、現在に至っている。
この快楽優先主義と音楽資本主義はよく混同されがちだが、実は原因が異なる別のものだ。前者はいままで述べてきたとおり、「日本の音楽シーンが独自に歩んだ多様化の歴史と、時代の要請、必然的な帰結」であるのに対し、後者は単なる「金だけ今だけ自分だけ」という現代の社会を反映する悪魔的キーワードに過ぎない。
にもかかわらず、我々はいままで、AKBなどの事例を指さしては、この「金だけ」音楽資本主義だけが諸悪の根源であり、音楽業界の停滞の直接的な要因であると勘違いしつづけてきたのではなかろうか?自分も含めてそうであるから、反省しなければいけない。しかしながら、実はこういった時代の流れと必然性…人間と現代思想の歴史を考慮しなければ、音楽衰退の本当の原因と今後の展望を描くことすらできないのだ、ということが今回わかっていただけたと思う。
そう、恥ずかしながらそのことに最近気づいたのだった。
おしまい