RADWIMPSはバンド界の同人誌である 1 | ほぼうさのブログ

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先日、映画「君の名は」関連で売れに売れているRADWIMPSというのをはじめて聴いたが、それはもう衝撃的だった。その高い完成度にとても驚いた。

 

そう、あれだけ完成度の高い模造品を聴いたのは、初めてだった。

 

RADWIMPSを聴いたとき、本当にBump of chickenに似ていると思った。まず、声が異常に似ている。曲のもつ世界観や、リスナーに語りかける口調で綴る歌詞も尋常じゃないくらい似ている。バンドの演奏はバンプより正直お上手で、あまり似ていない。おおまかなアレンジも似ているのではあるが、「これがオレたちの個性だ!」的な不自然なモノを必死に盛り込んだと思われる箇所が随所に見受けられ、そういう意味では似てなかった。
こんなことが許されるとは、この世界はもうおかしな方向にいってしまったんじゃないか…そういう失望が大きかった。が、すぐに考え方を改めた。これは複写やコピーとは呼ぶべきじゃない。同人誌やアンソロジーと呼ばれるものだ。


同人誌とは、一般にオリジナルのストーリーから派生した、もうひとつの物語作品を指す。ここで注意したいのは、それはたとえばゴッホの絵の完全な模写を作って売りさばくという行為とは全く違うということだ。
同人誌において重要なのは、自らがゴッホになった体(てい)で、もしゴッホが生きていたら次にこんな絵を描いたに違いない…そうした想像力とともに作品を作る姿勢である。それは、オリジナルの世界観に従い、なおかつ整合性を保ったままで、いずれのオリジナルのコピーでもない新しい物語を創造すること、と言い換えられる。


RADWIMPSの圧倒的に優れた点は、単なるフレーズの切り貼りや引用、コピーペーストにならなかったことにある。たとえばスラムダンクの主題歌「君が好きだと叫びたい」では完全にヴァンヘイレンのパナマをパクった痕跡が見て取れるが、これはコピペであり、厳密には違法行為である。しかしRADWIMPSはBump of chickenの世界観をリスペクトし、整合性のとれた形で再構成している。曲のどの部分にもあからさまなコピペ、引用がない。よって、「CDを出すペースもライブをするペースも遅い藤原モトヲさんが、もしバックの演奏の上手なバンドで、いつもと違う刺激的なアレンジで、…そういう設定の並行世界でいますぐ歌ってくれたらどうなるんだろうワクワク」というリスナーの欲望を満たすアナザーストーリーを創作することに成功している。
つづく