★★★★*(4.5点:個人的な感想)
2015.9.15 講談社
【あらすじ】
離婚し一人暮らしをしている吉永は、仕事もプライベートも順調だった。
ある日、離れて暮らしている中学生の息子が
殺人事件を起こしたとの連絡が。
殺人を犯した息子との向き合い方に苦悩する吉永。
そして、事件の真相は。
【感想】
このお話は、以前テレビのドラマスペシャルで観ています。
しばらく後で別の配信でも観ています。
(それほど、役者さんの演技が素晴らしかったんです)
その感想をここにも書いたことがあって、
その時に何気なく、原作を読んでみたいと書いてしまって、
なので、読んでみました。
ドラマで観ているので、ストーリーは分かっていました。
それでも、とても満足しました。
何も知らない状態で読んでいたら、もっと感動したと思います。
この物語は、少年犯罪という思いテーマですが、
ミステリー要素もあって、
その点では、純粋に読者を楽しませてくれます。
このあと少しネタバレあります。
ここには、犯人と被害者の二人の父親が、
とても見事に描かれています。
私は女性なので、父親の気持ちや立場は、
本当には理解できないかもしれないけれど、
きっとこうなんだろうな、こうあってほしいと思いながら読んでいました。
被害者の父親、主人公の吉永は、
最初は息子とどう接していいのかわかりません。
それでも懸命に向き合おうとします。
「お前は悪くない」と息子に言い、自分は味方だと、愛していると、
理解している、理解したいんだと、伝えます。それは、真実なんです。
そしてやがて、父親として、加害者の親として、
息子の罪と向き合う覚悟が固まっていきます。
それがね、痛いほどつらく苦しいのだけれど、読み応えがあります。
一方、被害者の父親の藤井は、
人間として、とても立派な人物のように感じました。
自分が被害者なら、
そんなふうに事件を受け止めていけるのかと思うほど。
彼が描かれる場面は2か所あるのですが、
そこは何度も読み返しました。
重いテーマですが、ミステリー小説として完成されていて、
ただ重く深く考えさせられるだけで終わらず、
また、ただの作り話として読み流してしまうだけで終わらせず、
心に残るものをくれました。
読んで良かったです。
