これ、いいな♪ -6ページ目

これ、いいな♪

縁があってわたしが出会ったものたちを書いています。最近は、自分の忘備録にしています。

2016年8月2日 講談社 409ページ

2015年10月号~2016年1月号小説現代連載

「最果ての碑」を大幅加筆修正

 

★★*☆☆ (2.5点:個人的な感想)

 

【あらすじ】

グリコ・森永事件をモチーフにしたミステリーです。

 

テーラーを営む曽根は、

母親に頼まれたものを探していて、

古い手帳とカセットテープを見つける。

テープを再生すると、幼い頃の自分の声が入っていた。

その内容は、過去の大きな脅迫事件に使われたものだった。

 

一方、過去の事件を取り上げることになった記者の阿久津は、

取材を行い、事件の真相へとせまる。

 

【感想】

作者は、たくさん取材をされたのだと思います。

参考文献も多い。

だから、なのでしょうか。

ドキュメンタリーを読んでいるような、

取材内容を物語仕立てにしたものを、読んでいるような、

そんな印象でした。

 

現実の事件をモチーフにした、フィクションのはずなんです。

けれど、取材内容を書きたかったのでしょうか、

それを書き並べられてて、それがずっと続いていました。

文章がたいくつでした。ショボーン

 

ココからは、内容に触れた感想です。

 

物語としても、

まず主人公の曽根の行動がヘンです。

自分の声が過去の大きな犯罪に使われた、

自分の父親(もしくは親族)が犯人かもしれない、

自分には守らなくてはいけない家族や生活がある、

というのに、

話を聞きに行くのに、初対面の相手達に、

テープの事、自分の声であることなどを話して回るんです。何度も。

 

そして、時効後の事件だとはいえ、

取材先の人たちの口の軽いこと。

犯人の一人も、訪ねてきた記者の阿久津の質問に、

親切にも次々に答えてあげるのです。

 

作者は、事件への思い入れが強すぎるんじゃないのかな、

なんて感じてしまいました。

子供を巻き込んだ犯人たちへの、作者の怒りが、

小説の中の子供を不幸にすることで、伝えているような・・・

自分なりに考察し、事件の真相を想像して物語にした、みたいです。

 

もっと、物語としておもしろくしていただきたかったです。

そもそも、事件に子供が関わっているということから、

小説にされたようですから、

関わった3人の子供を中心にした物語に仕立てる、とかね。

 

 

ごめんなさい。全く個人的な感想です。

ノンフィクションなら面白かったでしょうけど、

小説としてはたいくつでした。

 

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

2015年10月31日 小学館 319ページ

2012~2013「誘拐時効」を改題、全面改稿

★★★☆☆ (3点:個人的な感想)

 

【あらすじ】

殺人事件とみられる、男の死体が発見される。

被害者は、41年前に息子を誘拐殺人事件で亡くしていた。

その誘拐事件は、時効1年前に特殊捜査班により再捜査されたが、

その後時効を迎えている。

 

新たな事件をきっかけに、

過去の誘拐殺人事件の捜査、そして時効前の再捜査が語られる。

 

そして、事件の真相は・・・。

 

 

【感想】

ミステリーとしては、ちょっと弱い。

警察物としたら、捜査員の捜査の物語が面白い、という作品でした。

 

場面がよく変わるので、読んでいて頭の切替が忙しい感じでした。

 

 

このあとネタバレ感想です。

 

誘拐事件の被害者男児の死因がわかった段階で、

大きな違和感を感じました。

・・・誘拐殺人で、その死因?

過去の捜査員が、その違和感を感じなかったはずはないだろうし、

なぜ真相にたどり着けなかったのか、不自然に感じました。

 

例えば、男児が絞殺されていたのなら、もっと納得できたかも。

絞殺なら、誘拐事件の死因としてはありそうだし、

殺してしまったのなら、隠そうとする行動も、理解しやすい。

 

でも、あれは事故死だよね?

あんな大がかりな工作をしなくてはいけないほどだったのか?

 

そして、今回の殺人事件も、ナイフを持参するなんて・・?

あの人の性別や年齢で、

そんな考えになるのに違和感を感じます。

 

組み立てや流れはおもしろかったのですが、

事件自体が、ちょっと安易な感じがしてしまいました。

 

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

★★★☆☆(3.0点:個人的な感想)

講談社文庫2013年10月16日

2010年9月3日刊行された単行本に書き下ろし短編「綿毛」を追加。

ファンタジー

 

この物語は、

ⅠⅡ 当初発表された物語

ⅢⅣ 続きが描かれ、完結

Ⅴ  外伝

の構成です。

 

【あらすじ】

獣の奏者シリーズの外伝。

 

エリンの母の短編「綿毛」

エリンとイアルの中編「刹那」

エサルの中編「秘め事」

エリンの短編「初めての・・・」

 

【感想】

本編とは違う、物語の世界で生きている彼らの姿や生活が、

いきいきと描かれていました。

 

エリンのお母さんにも、エリンにも、

あのまま命を閉じてしまうのではなく、

もっと生きてほしかったと思いました。

何かを守って、自分が責任を引き受けて命を終えるのは、

ある意味潔いかもしれませんが、

キレイじゃなくていいから、懸命に生きていく人たちの物語を読みたいなぁと思います。

 

ただ、恋愛小説になっていますね。

この世界での恋愛や、その中での女性の生き方などが描かれていて、

特にエサル師は、かっこいい女性をイメージしていただけに、

なんだか普通の女の部分に、ちょっとがっかりもしたのでした。

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

★★★*☆(3.5点:個人的な感想)

講談社文庫2012年8月10日

2009年8月単行本刊行

ファンタジー

 

この物語は、

ⅠⅡ 当初発表された物語

ⅢⅣ 続きが描かれ、完結

Ⅴ  外伝

の構成です。

 

【あらすじ】

王獣を増やし、その部隊を作る命令を受け入れる。

その先に大きな災いを予感しながら、

エリンは進み続ける。

 

【感想】

ネタバレ感想です。

 

・・・やっぱりそうなるよなー、という結末でした。

全てを引き受け、責任を持って終わらせる、というのは、

これまで読んできたエリンの行動として、とても自然で、

一本道ではないかというほど、予想通りでした。

 

ただ、あの戦いの渦中、あの行動の前に、

リランの耳を塞ぐ、ということはできたのではないかと思えます。

 

生きたいと望みながら、自分の手で終わらせることを選んだ結果なのでしょうね。

けれど、生きていく姿を読みたかったです。

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

★★★★☆(4.0点:個人的な感想)

講談社文庫2012年8月10日

2009年8月単行本刊行

ファンタジー

 

この物語は、

ⅠⅡ 当初発表された物語

ⅢⅣ 続きが描かれ、完結

Ⅴ  外伝

の構成です。

 

【あらすじ】

10年。エリンは大公からの依頼で、大量死した闘蛇を調べていた。

王獣を育て、闘蛇を調べ、

エリンはその生態の秘密を知りたいと思っていた。

王獣も闘蛇も扱えるエリンは、本人の望まぬまま、

国同士の争いの中に、引きこまれていく。

 

【感想】

前の2巻までで、この物語は一度閉じていました。

個人的には、それで終わっても満足できる物語でした。

その続編ということですが、

サブタイトルの「探究編」の通り、闘蛇の大量死の謎や、

王獣の野生種との違いなど、単純な仕組みではなく、

背景に色々な謎が隠されていました。

 

そして、大人になったエリンは、

やはり・・そう。やはり、彼女の知識や王獣との関係は、

軍事的なことに利用されていきます。悲しいけれど。

 

想像を超える王獣たちの生態と、

想像した通りのエリンが向かう、過酷な道。

心が苦しくなりますが、続きがとても楽しみです。

 

エリンはきっと、死んでしまうような気がします。

夫や家族や、自分の大切なものを守るために。

そんな悲しい道を想像してしまいます。

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

講談社文庫2009年8月12日

2006年11月単行本刊行

ファンタジー

 

この物語は、

ⅠⅡ 当初発表された物語

ⅢⅣ 続きが描かれ、完結

Ⅴ  外伝

の構成です。

 

【あらすじ】

父も母も亡くして、獣ノ医術師の学校の寄宿舎へ入舎したエリン。

ケガをした王獣を世話するうちに、心を通わせる術を見つけてしまう。

それはやがて周りや王の知るところとなり、

大きな力を持つ王獣を操れるとして、

エリンは大きな戦いに巻き込まれていく。

 

【感想】

掟や信仰など縛られることの多い世界で、

自分の思うように生きようとするエリンを、

見守っていたい気持ちで読み進めました。

 

この物語は、作者も書いていますが、

子供向きに書かれたものではありません。

自分のいる不自由な世界での生活を、

つい当てはめて、気持ちがリンクする場面もありました。

王の護衛「堅き盾」イアルは、気にかかる人物でした。

 

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

講談社文庫2009年8月12日

2006年11月単行本刊行

ファンタジー

 

この物語は、

ⅠⅡ 当初発表された物語

ⅢⅣ 続きが描かれ、完結

Ⅴ  外伝

の構成です。

 

【あらすじ】

巨大な獣の医術師をしている他民族出身の母親と暮らす少女エリン

ある日、その獣の死の責任を負わされ処刑されることになった。

エリンは母を助けようとするが、母と離れ離れになってしまう。

 

助けられた先で養父に育てられ、

その後、養父とも別れ獣ノ医術師の学校の寄宿舎へ、エリンは入舎する。

 

【感想】

以前、少しだけ読んだ記憶があります。

この巻はまだまだ物語の序章にすぎません。

掟や古い慣習や規則のある国の物語なので、

その中で、縛られたくない気性の、好奇心旺盛なエリンが、

どう生きていくのかとても興味深いし、

巨大な獣と人間の関わり方も、楽しみです。

 

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

2013年5月10日 集英社

★★★*☆ (3.5点:個人的な感想)

 

【あらすじ】

同期入社で同じ寮に住む同僚が、

過去の残忍な少年犯罪の犯人かもしれない。

それに気付いたとき、それでも友達と思えるのか。

 

【感想】

現実にあった事件を思い出させました。

残忍で、加害者少年の心に何かあったのではと思わせるような事件。

 

友達になろうとしている人がその犯人だったら・・

主人公の益田の反応も行動も、すんなり納得できるようなものです。

周りの反応も。

 

他の登場人物も、誰かの死に対して贖罪の気持ちを持っていて、

それに真摯に向き合っているようなエピソードが、

作者は、よく考えて物語を綴っていかれたんだろうなと、想像させます。

 

このあとネタバレ含みます。

ずっと違和感を感じながら読んでいたのは、

過去の少年犯罪の犯人である鈴木の、行動です。

自分の犯してしまった犯罪をものすごく後悔していたり、

自分自身をとても嫌悪していたり、

何度も自殺未遂をしていたり、毎晩うなされていたり、

そんな行動がちょっと理解しにくかったです。

 

施設などで、いわゆる「更生」をした、ということなのでしょうか。

 

2回も犯行を行って、声明文も出しているわけだし、

犯罪に駆り立てた考えや強い気持ちがあったのですよね。

そこから、

あれだけ苦しむほどの後悔は、どうやって生じたのだろうと、

疑問に思いました。

 

鈴木がどういう過程で、どう心境の変化があったのか、

描かれていない分、違和感を感じてしまいます。

描かれていないからこそ、

益田が不安になる気持ちが、より伝わるのかもしれませんが。

 

適切な表現かはわかりませんが、

難しいテーマを、とてもまじめに、誠実に向き合って考えられているという感想を持ちました。

 

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

★★★☆☆ (3.0点:個人的な感想)

2012年10月25日 文藝春秋

単行本化にあたり、全面改稿、書き下ろし追加

 

【あらすじ】

D県警の三上は、現在は広報室に勤務しているが、

刑事課にいたこともある。

昭和最後の年に起きた、少女誘拐殺人事件通称「64ロクヨン」。

14年前の事件が、再び動きを見せる。

 

【感想】

結構な長編です。

警察内の人間ドラマがメインになっています。

 

ただ、64という誘拐事件を中心に考えると、

伏線の回収などが見事で、おもしろかったです。

 

個人的な感想としては、

長々と繰り広げられる、警察対マスコミ、

警察内部での組織内の対立、

そうした人間同士の関係が、めんどくさって思ってしまいました。

そして、三上が考えることがあれこれ書かれていて、

それも相当な量なので、そろそろいいかなって気持ちにもなりました。

 

長編なのはいいんですよ。むしろ、長編は好きです。

けどね、人間同士の対立の部分が長い。とにかく長い。照れ汗

何度も書いていますが、

私は読書には娯楽を求めているので、

作り話で、面倒な人間関係を読みたいとは思いません。

それは現実世界だけで、十分です。

 

だから、64ロクヨンの事件を中心に、

もう少し削ぎ落して、すっきりとした物語だったらよかったなと思いました。

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ

★★★★☆(4.0点:個人的な感想)

2011年6月30日 講談社

 

【あらすじ】

法務官だった夏目信人は、

10年前に警察官に転職して刑事をしている。

彼には、幼い娘が理不尽な事件に巻き込まれるという過去がある。

彼の携わった事件の短編集。

 

【感想】

全部で7編の短編集です。

最後の1編は書き下ろしです。

夏目刑事が捜査した事件の中で、

単純ではない事件のお話です。

 

意外な真相や悲しい事件が描かれています。

 

事件が起きているので、それは辛かったり、

悲しい真相だったりするのですが、

すべては、夏目刑事の人柄でしょうね、

後味がそれほど悪くない物語に仕上がっています。

 

書き下ろしでタイトルにもなっている「刑事のまなざし」では、

夏目の娘の事件の真相が描かれています。

 

物語とはいえ、人の悪意はむなしいです。

夏目刑事の、凛とした生き様は、心に響くものがありました。

 

読みやすい作品です。  

 

うさぎ   うさぎ   うさぎ           うさぎ   うさぎ   うさぎ