●余命6ヵ月

 

 


商売柄、占い師は死をテーマとした問題を扱う事が多い。

 

 


しかし、死は、悲しみであり、怒りであり、受け入れがたい事実である。

 

 

「なんで、私の母親が・・・・」

 

「なんで、こんなに早く・・・」

 

「なんで、こんなに良い人が・・・」

 

 

そこには、その人には、許せない早すぎる愛する人との別れがある時がある。

 


そんな相談に直面した時、

 

 

たまに、私の方が相談者の方から責められてしまう事さえある。

 

 

 

 

 

ある時、若い女性から、こんな相談をされました。

 

 

 

彼女の母親が、末期ガンで余命6ヵ月を宣告されてしまったというのです。

 

 

お母さまは、まだ45歳の若さだといいます。

 

 

しかし、ご存じの様に、占い師は神様でも無く、医者でも無いので、

 

 

余命を変えられる事は出来ません。

 

 

せめて、神様やご先祖様にお願いする事しかアドバイス出来ませんでした。

 

 

彼女は、必死でご先祖様や神様にお願いしたそうです。

 

 

 


「どうか、お母さんを連れて行かないで下さい。

 

 

 何でもしますから、お母さんを私から奪わないで下さい。お願いします。」

 

 

 


彼女の母親は、実際とても立派な方だった様です。

 

 

地域のボランティアを始め、老人ホームや恵まれない子供達への世話をする為に、

 

 

各地へ出かけ、自分の物はほとんど買わなかったといいます。

 

 

 

 

 


しかし、彼女の懸命な祈りも虚しく、

 

 

 

お母さまは、余命宣告よりは20日ほど長く生きたものの、

 

 

亡くなったそうです。

 

 

 

 

 

彼女いわく、

 

 

「世の中には、悪い人も沢山いるのに、

 

 なんで、母の様に良い人が、こんなに早く逝ってしまうのか、

 

 不公平です。

 

 

 絶対、不公平です。」

 

 


「神様のバカヤロー!」

 

 

 

 

 

 


私は、そんな彼女に、言葉をかけましたが、

 

 

彼女の心には、届かなかった様でした。

 

 

 

 

 

 


それ以来、彼女は私の所に連絡してくる事はありませんでした。 

 

 

ある出来事に出会うまでは・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それから6ヶ月ほど経った時、

 

 

 

 

 

 

彼女の親友の父親が亡くなったのでした

 

 

それは交通事故で、即死だったそうです。

 

 

 

親友のお父様は、家族に一言の別れも言えずに旅立ったのでした。

 

 

 

突然父親を失って泣いている友人の家族を見て、

 

 

 

 

その時、彼女は気がついたそうです。

 

 

 


その時、初めて私が彼女に言った言葉の意味が少しだけ分かった様な気がしたそうです。

 

 

 

 


私が彼女に、あの時言った言葉。

 

 

 

それは、

 

 

 

 


「貴方のお母様は、とても素晴らしい方だったのですね。

 

 

 こんな良い人が、なぜこんなに早くと、

 

 

 神様やご先祖霊を責めたい気持ちもあるでしょう。

 

 

 

 でもね、

 

 

 別れはいつか来ます。

 

 

 貴方のお母様は、素晴らしい方でした。

 

 

 だから、きっと神様は、

 

 

 貴方のお母様に、

 

 

 6ヵ月も皆と別れを言う時間をお与えになってくれた。

 

 のだと思いますよ。」


 

 

 

 


彼女いわく、

 

 

そう言えば、母の入院中、

 

 

それまで仲良かった友人や知人達が、大勢お見舞いに来ていたといいます。

 

 

そして、彼女自身も、最後の6ヵ月は、

 

 

今までには無かった様な、濃密な母親との時間を過ごし、お別れ出来たといいます。

 

 

 


だから今では、神様を怨むという事は無くなったそうです。

 

 

 

 


ただ、

 

 


だからと言って、即死が悪いという事ではありません。

 

 

即死にも、即死なりの愛のメッセージが込められている事があるからです。

 

 

例えば、

 

■貴方もくれぐれも交通事故に気を付けなさいよ。

 

身をもって最後に警告をしてくれている事もあるし、

 

■貴方は、私との長い悲しい別れに耐えられない子です。だからもし、

 

私が余命を告げられて、何ヶ月もそんな状態が続くと、きっと貴方は耐えられないでしょう。

 

だから、母さんは先に黙って行きますね。

 

■貴方の結婚や就職や優勝を見届けて、そんな貴方の負担にならない様に、

 

即死を選ぶ魂もあるでしょう。

 

 

 

いずれ、別れは必ず来ます。

 

 

それなら、その別れを有効に、少しで貴方の為に使いたいと思う魂はあるのです。

 

 

 

 

 

中には、愛する彼が、貴方と子供を残して旅立つ事もあるでしょう。

 

しかし、例えそんな場合にも、きっと何か、きっと何か、 その死には、

 

貴方や子供へ、愛のメッセージが込められているものです。

 

 

 

 


END

 

 

 

 

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●浅田真央さんに捧げる (母親の死)
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