HDD鑑賞
人類のエゴを描いた「痛い作品」
監督:ルパート・ワイアット
脚本:リック・ジャッファ/アマンダ・シルヴァー
ビジュアル・エフェクト・スーパーバイザー:ジョー・レッテリ/ダン・レモン
出演:ジェームズ・フランコ/フリーダ・ピント/ジョン・リスゴー/ブライアン・コックス/トム・フェルトン/アンディ・サーキス
製薬会社の研究者ウィル(ジェームズ・フランコ)の開発した新薬により、チンパンジーの脳が異常に発達するが、突然暴れ出して死亡。残されたチンパンジーの子を連れ帰り、アルツハイマー病の父(ジョン・リスゴー)と共に暮らし始める。シーザー(アンディ・サーキス)と名付けたチンパンジーは母と同様、すぐれた知能を発揮し出す。
金曜ロードショー版を鑑賞。公開時は劇場鑑賞。感想、書いてなかったので改めて。
「猿の惑星 サーガ」と呼ばれる60~70年代の作品、特に1作目は名作の誉れ高い。宇宙飛行士が漂着した猿が支配する星は実は地球だった、というあまりに有名で、衝撃的なラスト。本作はその3作目以降を改変、補完、リメイクしたカタチ。
フランコの役は、本件のカギを握る科学者。猿の惑星の誕生と人類の滅亡。実はこれ、イコールではない。ウィルの開発した新薬はそのトリガーではある。猿にもたらしたモノと、人類に与えた影響。その違いが、ふたつの種のその後を左右する。テレビ版だと、このくだりが落ちていたので、テレビ版が初見の方のために補足。
ウィルの新薬は猿に劇的な進化をもたらす。一方、同じ薬を投与した父は、一時的な回復をみるが、体内に生まれた抗体によって再発。さらに強い薬を上司と共に開発するが、謝って吸引した研究員が謎の高熱を発症。ウィルの隣人に彼の血液が付着して感染。その隣人が国際線のパイロットだったことから、世界中に感染が広まり、人類滅亡が始まる顛末。テレビ版、「隣人に付着」以降が放置されていたので…。
人類のエゴと動物愛護を柱に展開される本作。やっぱ「人間ってヒドイ」「猿が可哀そう」に落ち着く。主人公であるウィルにさえ、責任の一端がある。人類にとって「痛い作品」。類人猿の方々に鑑賞いただければ、ヒーローの物語になる。ちょっとひねくれた、新シリーズの始動だ。よいひねり具合。
新作「猿の惑星 新世紀<ライジング>」が公開中。登場類人猿のおさらいを含め、いいタイミングで前作を観させていただいた。新作の方は、各ブロガーさんの反応もなかなかな模様。どう話を広げ、どう収拾するのか…と本稿を書いてる最中に実は観てきた。書くのが遅いhiroゆえ、しばしお待ちを。
フランコのほか、獣医で理解者のキャロラインに「スラムドック$ミリオネア」のフリーダ・ピント、猿を虐待する飼育員に「ハリー・ポッター
」シリーズのトム・フェルトンら、若い才能が顔をそろえているのも特徴。
そして何より、最先端で緻密なモーション・キャプチャーで驚愕の世界を再現したVFXが注目。アンディ・サーキスの名前は記憶に留めておこう。 説明するまでもなく、「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムである。顔や体に設置した無数のポイントを拾ってCG合成を行うことで、動きも表情もリアルなゴラムなり、シーザーなりが完成する。「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
」でも、主要キャラのCG元を演じ、現在公開中の「GODZILLA
」でも、ノークレジットで我らがゴジラを演じているらしい。
人類のエゴに警鐘を鳴らす問題作であるととともに、映像技術の新たな一歩として、「アバター
」と並ぶ記念碑的な作品になることは間違いない。
hiroでした。