F9の雑記帳 -46ページ目

『滅ぼす 下』


 ミシェル・ウエルベック『滅ぼす 下』野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳、河出書房新社)を読みました。
 最初からこんな事を書いてしまい誠に恐縮ですが、僕個人としては“漸く”読み終えたといった感じがしてなりません。
 この小説の主人公であるポール・レゾンが大臣執務室のスタッフである以上、(上巻から続く)2027年のフランス大統領選挙の行方に関する描写が中心になるのは当然だとは思いましたが、小説も終盤に差し掛かった時点でポール・レゾンが喉頭癌を患う展開が待っているとは思いもせず驚きました。
 ああ、あの投票所でポール・レゾンが初めて経験したあの(些細と言えば些細な)出来事の描写が重要なヒントだったんですね…。
 また、ポール・レゾンの父親に関する出来事に端を発した文化財局員のオーレリアンが自殺に至る過程等、読んでいて人生や人間の在り方を考えてしまう描写の箇所も多かったですが、個人的にはポール・レゾンと彼の妻プリュダンスとの関係が修復されていき、最終的には固い絆で結ばれる事になる様子はとても印象に残りました。
 あと、この作者及び小説の性格上ある程度は仕方ないのでしょうが、性描写が多いのにはウンザリさせられました…。。

『滅ぼす 上』


 ミシェル・ウエルベック『滅ぼす 上』野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳、河出書房新社)を読みました。
 序盤からネット上に現れた陰惨な画像や事件の描写が登場し、途中でこの小説の主人公が登場したり等の若干戸惑う部分もありましたが、いざ読み出すと(数日読書を中断していたとしても)一息つくのが難しいなと思う事が多かったです。
 また、読み進めるにつれて、2027年のフランス大統領選挙の行方や信仰に関する問題よりも、物語の主人公的立場であり大臣執務室のスタッフであるポール・レゾンと彼の妻プリュダンスとの関係がどのように修復されていくのか(終盤になって一つの方向性が明らかになりますが)、ポール・レゾンの年の離れた弟で文化財局員のオーレリアンと彼の妻でポール・レゾンの母の遺した彫刻に関して一悶着起こすインディーが無事に離婚できるのか等の下世話な事柄が僕の関心の大部分である事に気づき、些か恥ずかしくなりました。
 なお、ポール・レゾンの妹セシルと彼女の夫エルヴェの将来について気にならないわけではありません(念のために書いておきました。)。
 個人的には物語の最後で円満解決を希望するのですが、この本の内容及び展開では無理なのでしょうね…。
 あと、この作者の小説には良くある事だと分かっていた(つもりだったのです)が、性的描写が頻繁に出てきて、その部分を読むたびにゲンナリした気分になりました。

「その音は泡の音」



 平沢逸「その音は泡の音」(『群像』2023年9月号所収)を読みました。
 恐らく、連続して読む気にならず何日か読むのを放棄したからだと思うのですが、過去にあった(登場人物がそれなりの人数の)大学のお笑いサークルの旅行の話を読まされるのは嫌だなあと途中まで何度となく思ったにもかかわらず、全9章に別れているうちの5章の辺りから俄然面白くなり驚きました。
 しかし、小説の終盤にあたる8章と9章における(これまでの章とは明らかに違う、ある意味陰惨な描写も含んだ)この小説の内容を根底から覆しかねない展開には驚きはしたものの納得できず、読み終えた後に消化不良な感じが残りました。
 登場人物や一日一日のイベント(1日に1つはあるドッキリ)等について中盤まで色々細かく書いておきながら、終盤であの(8章における主たる登場人物の一人である朝倉の悪夢のような光景を伴う独白、9章における過去が分からなくなってしまった人物(と言うか存在)の独白という)唐突な展開は、この小説にはちょっと相応しくないのではないでしょうか。
 ただ、個人的には何人かの登場人物のその後がチラリと書いてあるのが少し嬉しかったです…。