『滅ぼす 上』 | F9の雑記帳

『滅ぼす 上』


 ミシェル・ウエルベック『滅ぼす 上』野崎歓/齋藤可津子/木内尭訳、河出書房新社)を読みました。
 序盤からネット上に現れた陰惨な画像や事件の描写が登場し、途中でこの小説の主人公が登場したり等の若干戸惑う部分もありましたが、いざ読み出すと(数日読書を中断していたとしても)一息つくのが難しいなと思う事が多かったです。
 また、読み進めるにつれて、2027年のフランス大統領選挙の行方や信仰に関する問題よりも、物語の主人公的立場であり大臣執務室のスタッフであるポール・レゾンと彼の妻プリュダンスとの関係がどのように修復されていくのか(終盤になって一つの方向性が明らかになりますが)、ポール・レゾンの年の離れた弟で文化財局員のオーレリアンと彼の妻でポール・レゾンの母の遺した彫刻に関して一悶着起こすインディーが無事に離婚できるのか等の下世話な事柄が僕の関心の大部分である事に気づき、些か恥ずかしくなりました。
 なお、ポール・レゾンの妹セシルと彼女の夫エルヴェの将来について気にならないわけではありません(念のために書いておきました。)。
 個人的には物語の最後で円満解決を希望するのですが、この本の内容及び展開では無理なのでしょうね…。
 あと、この作者の小説には良くある事だと分かっていた(つもりだったのです)が、性的描写が頻繁に出てきて、その部分を読むたびにゲンナリした気分になりました。