「池の中の」/「風雨」
「琥珀の家の掌」

主人公であるみかげが、従姉妹で作家のいずみの「掌の記憶喪失」と題された個展の会場に向かい、作品を鑑賞するうちに「十歳の肌寒い夏」(127頁)に従姉妹達と一緒に過ごした記憶が彼女の中で蘇り、過去を振り返っていく展開のこの小説は、個人的には途中までイメージが掴みにくかったです。
ですが、主人公達に(昨日見た)夢語りを強いる祖母やひたすら静かな透子叔母の言動の描写等を繰り返し読むうち、色彩が鮮やかではないものの詩的な表現が割に多いからでしょうか、学校からの帰宅途中に姿を消したさやか叔母に関する謎が解決されない事も含めて、映像を感じさせる力が強い小説だなと思うに至りました。
しかし、小説の展開上仕方がないとは言え、琥珀細工を作る事で琥珀片が掌に刺さり、透子叔母の両掌が「余すところなく琥珀片に埋め尽くされ、触れるとつるつると滑らかに固まってしまった」(140頁)上、(この小説の現在から)2年前に透子叔母は「人の顔を見分けることができなくなってしまった」(140頁)と言う描写の部分を読んだ時は少し寂しくなりました…。
「宇宙塵」


小野正嗣「宇宙塵」(『群像』2023年10月号所収)を読みました。
まず、お洒落な格好をして十数年ぶりにあっても見た目が変わらない(けれど認知症が進んでいる)水野教授が冒頭から登場し、若干不穏な空気が流れているなと思いました。
ですが、主人公の安田周作がかつて話をした事があり知らない訳では無いかつて大学に留学していたアレックスについて登場人物達の口から語られるようになると雰囲気が穏やかになったようでややホッとしました。
そして、タイトル(宇宙からやって来る微細な塵…。)や未来は必ずやって来ると確信させる結末と言い、読み終えて「この小説はSF小説と言ってしまっていいのか?」と思ってしまいました。
まあ、アレックスと主人公の会話の内容や(とある事件が起きた後の)主人公の娘の玖美が主人公に対して取った態度の描写等から、そう思っても良いのかなとは思うのですが…。
あと、個人的な事ですが、水野教授が「退職して十年以上経っているのに、いまだに自分が現役の大学教授だと信じて大学までやって来る」(118頁)人間だと分かる描写が強く印象に残りました。




