Distance~時を超え距離を超えた二人の物語 -24ページ目

第6話〜告白

二人で過ごす時間は冬から春へ、
そして夏から秋へとあっという間に過ぎていった。
何の進展もないまま‥‥

寒い秋の夜、
ひろは今夜こそ、今夜こそみきへ思いを告白しようと思っていた。
いつものようにみきを家の前までクルマを着けた。

緊張するひろは思いきってみきへ自分の気持ちを伝えた。

「オレと付き合ってくれないか」

少しだけ時間をおいてみきは答えた。

「うん、私でよかったら」

お互いに精一杯のセリフだった。
その返事にひろは天にも昇るような気持ちになった。
気持ちが一瞬にして高ぶるのを感じた。


ひろはみきを引き寄せた。
そして二人は初めてのキスをした。

「それじゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」

再会してから10か月が過ぎた夜だった。



第5話〜迎え

仕事を終え電車で帰って来るみきをひろが迎えに行くことが
1週間に数日だったのがほぼ日課になっていった。

時に遠くの海沿いの街までクルマを走らせ
時に夜景が見える高台まで向かい、
二人で過ごす時間が日増しに増えていった。

ひろは親から「毎日夜にどこへ行ってんの」
みきも同時に「毎日遅いけどなにしているの」
そんなふうに聞かれるようになった。

でも明確な答えを言えるはずもなかった。

みきは勤務のシフト表をひろに渡した。
遅番と早番によって帰って来る時間が違うので、
当然駅へ向かう時間に合わせなくてはならなかった。
ひろは都合のつく限りみきを迎えに行った。

みきの持って来たHi-Fi SETのカセットテープを
ふたりはいつもクルマの中で聴いていた。
これらの曲は今でも思い出の中で流れている。

この時のふたりはまだ友だちの域を超えることはなかった。
幼なじみの延長みたいな‥‥

ひろはみきへ「オレと付き合って欲しい」と言うべきか悩んでいた。
みきがクラス会の夜に言った「束縛されるのが嫌だから、彼氏は作らない」という
そんなセリフがいつも頭のどこかにあったからだった。

もしかしたら、こうしてふたりでいることが
みきのことを束縛しているのかもいれない
みきの自由な時間を奪っているのかもしれないと思っていた。

もう少し時間が過ぎてからにしようと、ひろは思っていた。








第4話〜最初のドライブ

雪が静かに降る道を、ひろはみきが降り立つ駅へ向かった。
心臓が張り裂けそうなくらいに緊張していた。

電車が到着する時間よりも早く着いた。
もう8時を過ぎていた。
やがて玄関からたくさんの人が吐き出されるように出て来た。
ひろは目を凝らしみきの姿を探した。
雪を払うワイパーの存在が邪魔に思えた。

会ったら、顔を見たらなんて話しかけようか‥‥
しかし何の気の利いた言葉も見つからなかった。

みきの姿が目に入った瞬間、ひろはクルマを降りた。

「こんばんは」最初にみきが言った。
「迎えに来ちまった」ひろはそう言うのが精一杯だった。

みきがクルマに乗り込むと香水の香りが広がった。
ひろは静かにその香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「本当に迎えに来てくれたんだね」
『うん、メシは食ってないんだろ?』
「うん、まだ食べてない」
『それじゃ、どこかへ食べに行こう』
「そうね」

クルマを走らせた。
どこへ行こうかも考えていなかったが、海が見える方向にクルマを向かわせた。
そして、海沿いのドライブインへ入った。
窓の外は降り出した雪で白く見えた。

二人はとりとめのない会話をした。
クラス会の夜に話したこと聞いたこと
同じことの繰り返しだった。

ひろはみきと話すうちにだんだんとまた、
みきの魅力に惹かれていった。

あまり夜遅くに帰っては行けないと言うみきの言葉に
ひろはもっと時間がゆっくりと流れるといいのにと思いながら
みきを家に送り届けた。

『今夜は楽しかった』
「うん、また電話くれよ」
『うん、そうするね』
「それじゃ、おやすみ」
『おやすみ』

今度はいつ会えるのだろうと思いつつみきと別れた。











第3話〜電話

二人とも翌日は
それぞれ職場で昨夜のクラス会の話をしていた。

みきは電話をしようかどうしようかとみんなに相談していた。

「どうしようかなと思っているの」
「その人のこと嫌いじゃなければ電話してみたら?」
「うーん」

ひろは電話がかかってくるかどうかと盛り上がっていた。

「かかってくるかなあ」
「オマエのことが気になってりゃくるさ」
「みんなで賭けようぜ」

その日みきはあまり考えず仕事をこなしていった。
ひろは電話がくるのかどうか気になっていた。
そして仕事を終え、急いで家に帰った。

しかし、その夜は電話がこなかった。
ひろはみきの電話番号を聞けばよかったかと、少しだけ後悔していた。

「そりゃそうだよな、簡単に男の家にかけてくるわけがないさ」

布団に入りひろはみきの顔が浮かんで来た。
その夜はなかなか眠れなかった。

「昨日は電話がきたか?」
『いや、こなかった』

「ほらな、オレたちの勝ち」
「くそー、どうして掛けてこないんだよ」

それはオレのセリフだよ!とひろは思った。
こいつら、オレのショックをまったく分かってねーやと、少しがっかりした。

諦めかけていたその夜、
ひろのそばで電話が鳴った。お袋が出て丁寧に話している。

「ほら、あんたに電話だよ」
『誰から?』
「女の子から」
『えっ』

みきからだった。
明るい声に溶けそうになる自分がいた。

今から電車に乗って帰ってくると聞いた。
時間に合わせて迎えに行くと切り出した。
ひろは車庫へ一直線で走り、クルマの中を片付けはじめた。

そして緊張して駅に向かった。




第2話〜会話

店の外に出ると寒い雪が降っていた。

コートやジャンパーの衿を立て肩をすぼめ、背中を丸くして
繁華街への道をみんなで歩きはじめた。

「ディスコへ行こうぜ」
「どこかへ飲みに行こうよ」

集団は2つに分かれはじめた。

どこでも良かったみきは友だちに誘われるがままに
ディスコへ行くチームを歩き出した。
ひろはディスコは好きではないし、かと言ってこのままみきと離れるのが嫌だった。

ひろは思いきってみきに「オレたちと飲みに行こうよ」と誘った。
みきはすんなりひろたちの集団に加わった。

狭いスナックにみんなで入った。
誰かが「男女交互に座ろうぜ」と言った。
みきはひろから少し向こうのカウンターの席に座っていた。

またその場はどんどんと盛り上がっていく。
会話で盛り上がる連中、そのそばでカラオケを歌うやつもいる。
ひろは店に入った時からみきのことが気になっていた。
みきはポツンと一人で飲んでいるように見えた。

ひろはどうにかしてみきの隣に座りたいと思っていた。
しかしそうすることができないまま店に入っていた。

「このままじゃ絶対後悔する」

立ち上がり、みきの隣に座っていた仲の良い友だちに席を変わってもらった。
自分のグラスを手にやっとみきの隣に座ることができた。
でも、なにを話して良いのか分からなかった。

まだあの家に暮らしているのか
どんな仕事をしているのか
もうすでに知っていることをまた尋ねたりするだけだった。

ひろはだんだんとみきのことが好きになっていった。

思いきってひろは、みきに唐突な質問をした。

「いま誰か、付き合っているひとはいるの?」
『ううん、今は誰もいないわ』
『なんか束縛されるのが嫌だから、彼氏とかつくらないでいるの』
「ふーん」
『あなたは?』
「オレ?いないよ」
『そうなんだ』
「うん」

そんな会話も途切れがちになり、とうとう2次会はお開きとなった。

ひろは慌ててグラスの乗っていた濡れたコースターの裏に
自分の家の電話番号を書いてみきに渡した。
また会いたい、話がしたいと思った。

「気が向いたら電話をくれよ」
『うん』

そうして二人は別れた。