Distance~時を超え距離を超えた二人の物語 -22ページ目

第16話〜小旅行

ふたりで函館の街まで旅行に出かけたことがあった。
それも親には友だちと行くと、ウソをついてだった。
でももしかしたら、バレバレだったかもしれないけれど。

どこへ行こうか
どこへ泊まろうか
何を食べようか‥‥

ガイドブックを買って来てふたりは旅行のプランを練ったりした。

1泊目は温泉街の小さな旅館を予約して、
2泊目はなにも決めないで走り出した。

ふたりの住む街から片道約260キロ。
ふたりとも道中の景色は初めてみるものばかりだった。
好きなテープを聴きながらの道のりは楽しかった。

素晴らしい夜景の見える山に上がった。
ふたりは腕を組んだまま夜景を見ていた。

「うわー、きれいな夜景ね」
『うん、きれいだな~』
「ねっ、わたしとこの夜景のどっちがきれい?」
『えっ?そりゃ、みきに決まってるさ』
「ほんと~?」

翌日、教会を見て回ったり、
港の見えるおしゃれなレストランで食事をしたりした。
どこかの雑誌の取材も受けた。

あとから発行された雑誌のその記事を読んで

「見てみて!ふたりの写真が載ってるよ」
『あっ、ほんとだ』
「もうすこし可愛く撮って欲しかったな」
『オレ、こんなこと話したかなあ』
「ふたりがこの街へやってきたってバレたりして」
『あはは』

あっという間の楽しい旅行だった。
今でもみきは、あの雑誌を持っているのだろうか‥‥
そして思い出が写っている写真を。



このクルマに翼があれば
どこか遠くへ飛んでいきたい
そしてふたりで時を越えたい



第15話〜暮らしの終焉

ふたりで暮らして2か月が経った。

だんだんと生活をして行くことが難しくなっていった。
というのも、クルマの大好きなひろは、安月給の上にクルマの大きなローンを抱えていた。
みきも安月給だったので、ふたりで合わせても家賃を払うのが精一杯。
貯金は家財道具の調達で消えていた。

これ以上、生活を維持して行くのはふたりにとって難しく、
仮に続けたとしても食べて行けるレベルではなかった。

「親に頭を下げて、家に帰ろうか」
「そうだね」

ふたりはそれぞれに家に戻り事情を話した。
責められることもなく、すんなりと受け入れてもらえることができた。

若いふたりの無計画な行動。

今となっては良い思い出。
この2か月は何ものにも代えることのできない貴重な日々だった。

「またいつか、ふたりで暮らそう」
「そうだね」
「きっと、そんな日が来るさ」
「うん」

もう雪が散らつく頃だった。


きらめく星 ふたりのために
愛の舞台 時を止めてこのまま‥‥



第14話〜ふたり暮らし

友だちの力を借りて引っ越しが終わった。

「いつも中が良くて羨ましいよ」

みんな口々に言った。

新しい生活がスタートした。
いつもふたりで過ごせることが何よりも嬉しかった。
毎日が幸せな日々だった。

みきが仕事で遅くなるとき、ひろは職場まで歩いて迎えに行った。
雨が降ればお互いに傘を持って迎えに歩いた。
アパートの坂にある銭湯にもよく行った。

それはまるで、フォークソング「神田川」の一節と同じだった。

みきが夜遅く、職場の人たちと飲んで帰ってくることもあった。
窓の下からみんなでひろの名前を叫んでは困らせたり、
誰かを泊まらせるわけには行かないので、クルマで1時間かけて同僚を送ったこともあった。

給料が入るとたまに、近所のお寿司屋さんで食事をしたり、
思い立ったように遠くの街へ日帰りで旅行をしたりもした。

そんな毎日が本当に幸せだった。

しかし、そんな日々はそう長くは続くわけもなかった。





第13話〜部屋さがし

幸いにして、ふたりの交際を禁じられるということは免れた。

数日後ひさしぶりにふたりはあった。
少しだけ謹慎しているという態度をみせてはどうか?
ひろが提案したことだった。

たった2、3日逢っていなかったのに、
随分と長い時間逢っていなかったように思えた。
逢いたかった。

みきはひろにこう言った。

「わたし、家を出てひとりで暮らす」
『えっ?本気で言っているのか?』
「うん、本気』

みきはどちらかというと、思いきった行動に出ることがあった。
でもそれはどこかひろの行動パターンに似ていた。
だからひろには、みきの気持ちが理解できた。

「んじゃ、オレも家を出て、みきと一緒に住む」
『えっ?ほんと?』
「うん、そうする。決めた!」
『嬉しい!』

それから、どこに住もうか、家財道具はどうするか、
家賃とかはどうするか、ふたりであれこれ考えた。
それはとても楽しく、充実している時間だった。

毎日、ずっと一緒にいられる‥‥

そして、長い坂道の途中にある小さなアパートに決めた。



生まれる前から 決まっていたの
めぐり会えたの二人
愛を確かめ合う日が来ることは
輝く星空が ふたりをつつむ
待ち続けてきたの
どんな寂しい夜も あなたを‥‥

アパートへの思い出の坂道

第12話〜引き金

ひろが家に着く前にすでに、みきの父はやってきていた。
帰るとすでに姿はなかった。
みきの父から色々と抗議されたと母親は言った。

「うちにも娘がいるから、相手の親の気持ちは良くわかるのよ」
「あんたはどうして、まったく、親に恥をかかせるんだか‥‥」

ひろの母親はそう呟いた。
返す言葉もなかった。
それよりひろはみきのことが心配だった。

みきが家に入ると父は待っていた。

「どうしてなんなことをしたんだ」
「お前は大切な我が家の娘なんだぞ!」

みきはさんざん、両親から叱られているうちに
だんだんと切なさがこみ上げて来た。

そして、それは家を出る引き金となった。