新聞各紙の政治欄に必ず掲載され
ている短信記事には政局や政権の
内実を読み取れヒントが隠されて
いる。毎日なら「首相日々」、朝
日は「首相動静」……。首相が誰
と会ってどう過ごしたかを知らす
だけの記述だが、直近3連休の岸
田文雄首相の行動には、内外の情
勢にあきれるくらい危機感のなさ
が表れていた。国会の質疑が集中
しそうな旧統一教会との接点への
疑惑が高まる細田博之衆院議長、
止まらぬ円安、唐突に長男を首相
秘書官にした「親バカ人事」など
への批判にどう対応するのか。ど
こか投げやり気で、頭を引っ込め
時間だけが過ぎゆくのを待ってい
るだけの印象が際立つ。
3連休の行動で最も驚かされたの
は朝10時過ぎ、新幹線に乗って名
古屋経由で鈴鹿で開かれているF
1「日本グランプリ」に出席した
ことである。オープニングセレモ
ニーで数分間あいさつしただけで
、夕方トンボ帰りをいていた。途
中、静岡の豪雨災害の被災地を見
舞う気遣いもなかった。丸1日か
けて、一国の宰相がわざわざスピ
ーチしなければならない行事とは
とても思えない。オンライン画像
のスピーチで良かったはずだ。に
よる随行スタッフ、警備当局らの
費用がどれだけかかったのか明ら
かにしてもらいたいほどだ。
先週末は、細田議長が公表した紙
切れが世論の強い反発を招き、新
聞・TVの論調は、同じ「三権の
長」を、自分が何もしない口実に
している岸田首相の責任を問い始
め始めた。自民党内部から「首に
鈴を付けるのは首相しかない」と
いう声が出始めたという。ただで
さえ、茂木敏充幹事長が公表した
点検がずさんで、一部の議員を隠
していた内容が次々発覚している。
教団のイベントに出席した細田議
長が、教会を賛美し「安倍元首相
に様子を伝える」と言った映像が
連日、報道されていた。
そんな翌日の各紙の動静欄には「
来客なく、公邸で過ごす。午後神
田で散髪、夕方公邸」とあった。
休むのは結構だが、三重の「F1
」と併せ、緊迫感がまったく伝わ
ってこない。細田議長に「どう首
に鈴を付けるか」思案しているの
なら、連休明けに少しは気配が伝
わるはずだが、何もない。もしか
したら、本人に進退を任せるだけ
か。
安倍政権べったりのコメントを連
発し「スシロ-」と呼ばれた田﨑
史郎氏でさえ、先日の情報番組で
「これまでに見た最低の議長。早
く辞めるべきと思っていた」と評
していたくらいだ。こんな「御用
記者」に引導を渡されては、もう
お終いだろう。岸田首相がリーダ
ーシップを発揮して、送り出した
安倍派の幹部を説得して、辞任を
納得させれば、少しは支持率は回
復するだろうが、そんな気概も垣
間見えない。
野党は来週以降の衆参両院の予算
委員会でよほどの覚悟と戦略がな
ければ、国難に呆然と立ち尽くす
だけの岸田政権を追い詰めること
はできない。各社の内閣支持率は
依然急落している。どちらかとい
う高めに出る共同通信でも9月か
ら5・2ポイントダウンの35%に
なった。不支持率は半数に近い48
・3%に増えた。細田議長の対応
には何と87%が十分でないと答え
ていた。9割の人が反発している
という。
こんな時期に岸田首相はわずか31
歳の長男を首相秘書官に抜擢した
。選挙地盤を継承させたい個人的
な思惑だけが伝わり、批判が殺到
している。自分の早稲田大学時代
、父親の選挙を手伝った経験を同
じように積ませたいという世襲議
員ならでは発想だろう。難局の空
気も読めず。自ら恥じる気配もな
い。「親バカにつける薬あらず」
か。危急の時のトップの思慮なき
振る舞いがこれでは、国の行く末
を憂いたくなる。
【2022・10・12】