安倍晋三元首相が「旧統一教会票
」を自民党に差配していた重要な
証言が飛び出した。伊達忠一前参
院議長が旧統一教会の組織票の割
り振りを安倍元首相に頼んだ」と
テレビ朝日の取材に証言した。茂
木敏充自民党幹事長が「党が組織
的に関与したことはない」と否定
したが、まったく虚偽だったこと
が早くも判明してしまった。伊達
元議長は安倍元首相が首相秘書官
だった井上義行参院議員に組織票
を回したことも認めた。一連の経
過は、安倍政権下で認証された教
団の名称変更は「モリ・カケ・サ
クラ」と同じ「国政私物化」のせ
いではなかったかとの疑念を一段
と募らせる。党のトップが長く培
養し続けた腐敗の全容解明なしに
国政の浄化は進まない。
安倍元首相の銃撃事件と教団との
関係について、今回ばかりはTB
S、テレビ朝日の報道が健闘して
いる。連日、安倍元首相や現職閣
僚の教団との癒着を動かぬ証拠の
映像で流し続け、関与議員は否定
出来なくなって、「頼まれただけ
」「支援者は区別できない」など
の言い訳を弱々しく述べるばかり
である。教団の集会に登壇して韓
鶴子総裁を礼賛し、媚びる姿は見
苦しい。TBSの「報道特集」は
教団が霊感商法によって被害者ら
からかき集めた金額は1000億
円を超えているという内部文書を
報じた。その大半が韓国に還流し
、教団幹部が「戦前の植民地支配
の報復」という証言が伝えられた
。さらに一部が北朝鮮に流れてい
た疑惑まで浮上している。こうし
た一連の報道について、普段から
韓国を敵視する「嫌韓」派の自民
党議員らはどう受け取っているの
か。日本人の「生き血」を吸い取
るような教団の所業はけっして容
認できないはずだ。それなのに、
なぜか党内から教団批判の声は上
がらない。不思議で仕方ない。教
団に媚びることは、彼らが最も嫌
う「売国的行為」ではないのか。
党全体が教団がもたらす「宗教利
権」にどっぷり浸っているからで
はないのか。
野党が次の国会で本気で国政浄化
を掲げ闘うなら、ターゲットは2
015年の下村博文元文科相が認
めた教団の世界統一家庭連合への
名称変更だろう。90年代後半から
全国で多発していた霊感商法によ
る被害が拡大、文化庁は97年の教
団の名称変更申請をずっと認めな
かった。下村元文科相は「最終的
に決裁したのは文化庁の部長だっ
た」と関与を否定した。しかし、
前川喜平元文科事務次官は「当時
事務方ナンバー2の文化審議官だ
った自分は宗務課長に『認めるべ
きでない』と伝えていた」と30日
付け毎日新聞で述べている。
前川元次官は「何らかの政治的判
断が働いていなければ、前例を1
80度変えるような方針転換は起
きない。下村氏の『部長だけで判
断した』という説明には無理があ
る。『だめだ』と言ったが認めら
れてしまったのは下村氏の指示が
あったとしか考えられない」と話
している。
どこか既視感のあるやりとりでは
ないか。現場の官僚の判断を覆し
、政権幹部が横車をおしたのは「
加計学園」事件と同じではないか
。官邸官僚が「総理のご意向」と
前川元次官を呼びつけて獣医学部
開設を求めたことが発覚した。こ
れと同じ構図にみえる。文鮮明教
団教祖は祖父の岸信介元首相と親
密な関係を築いてきた。当時首相
だった安倍氏に教団とトップが名
称変更の認可を依頼していたとし
ても不思議ではない。下村が意向
を察して認めたと見る方が自然だ
。最終決裁者の下村氏が自らの判
断根拠をつまびらかにする責任が
ある。
安倍元首相が残した「負の遺産」
はまだ精算が終わっていない。
国会は政界浄化のために反社会
的な教団活動の存続を止める責
任がある。次回国会は、一連の
癒着の全容解明の場にしなけれ
ばならない。
【2022・8・1】