「腐食の構造」、浮かび上がった | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

安倍晋三元首相を銃撃した山上徹

也容疑者がなぜあれほど強烈な殺

意を抱き続けたのか。事件の背景

にある旧統一教会と自民党政権の

癒着についてまだ多くの新聞・テ

レビの及び腰の報道姿勢が目立つ

。それでも、週刊誌、夕刊紙など

の記事によって、政治献金、パー

ティー券購入、高額講演料……な

どの旧統一教会の「宗教利権」に

どっぷりはまった自民党の元閣僚

らの姿が判明し始めた。双方の政

治的思惑が一致して築いた「腐食

の構造」とも言えよう。山上容疑

者は安倍元首相をこの利権構造の

広告塔同然の存在とみなし、一段

と恨みを募らせたように見える。

岸田文雄首相が十分な議論もなく

唐突に決めた安倍元首相の「国葬

」について、「国家の意思で追悼

の思いを個人に強制する」という

批判が強まり始めた。各種世論調

査でも約4割の人が納得していな

い。根拠になる法律もないまま、

もし強行されたら、この国はさら

に法治国家とは言えなくなる。

国葬に反対する多くの人に共通す

るのは、「安倍元首相に哀悼の思

いは持つが、その功績については

評価が定まっていない」という気

持ちだろう。国家あげての催しに

しなければならないという正当性

に欠けるのは確かだ。事件を機に

新たに歴代自民党幹部や現職の同

党議員と旧統一教会幹部との親密

な関わりが次々明らかになってい

る。

昨日発売の週刊文春によると「安

倍側近」として知られた下村博文

元文科相が旧統一教会系の団体か

ら繰り返し政治献金を受けたり、

数十回にわたってパーティ券を購

入をしてもらっていたことが分か

った。下村元文科相についての最

大の疑惑は「統一教会の世界平和

統一連合への名称変更」にあたっ

て、当時の許認可権限のあった下

村元文科相が便宜を図ったのでは

という癒着である。ずっと認めら

れなかった名称変更が認められた

時期と文科相在任中と重なってい

たため、詳しい経過説明が求めら

れ、それを避けたたままなら疑惑

はさらに募る。遅まきながら立憲

、共産が被害者対策チームをスタ

ートさせたが、早急に調査報告を

出して、臨時国会の開催要求を急

ぐべきである。野党にとって格好

の政権与党追及のテーマであり、

自らの低落傾向に歯止めをかけら

れるどうかの正念場でもある。

同誌によれば、安倍元首相と親密

だった高村正彦前自民党副総裁は

旧統一教会の訴訟を引き受け、高

級車まで提供を受けていた。80年

代以降長く霊感商法を批判されて

きた団体から多額に相当する恩恵

を受けてきた無節操ぶりにあきれ

返るばかりだ。高村氏は高級車提

供について「不適切ですね。だか

らマズかった、と。それで教会と

関係を断ち切りました」と反省し

て見せたが、今さら白々しい。
高村氏は違憲の安保法制を強行採

決を推進させた中心人物でもある。


こんな薄汚れた顔を持つ人物らを

重用し続けた安倍元首相自身も旧

統一教会系の団体に礼賛メッセー

ジを送っていた。一連の政界工作

をめぐる経緯は山上容疑者が元首

相を攻撃対象にした動機と密接に

つながっているのではないか。

社会学者の宮台真司氏は今回の事

件をこう見立てた。「独特の世界

感と過度な資金集めを特徴とする

宗教団体が、長い時間をかけて自

民党などの政界に浸透しているよ

うに映ります。現代日本政治のタ

ブーが図らずも浮かび上がった形

になりました」(7月19日朝日朝

刊)

同じ思いを抱くが、メディアや野

党が同じようにタブー視してこの

社会にはびこる病理に立ちすくん

ではならない。

ある中国の古典の言葉を思い起こ

す。

「善悪の報いは影の形に随(した

が)うが若し」

「善事や悪事に対する報いは、影

が形に従うようにように、確実に

現れる」という意味で、今も不正

を自覚しない為政者に、警句とし

て投げかけたい。


    【2022・7・22】