平野幸夫のブログ -6ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

形骸化もここまできたか。立憲の

細田衆院議長と岸田内閣への不信

任案が予想通り簡単に否決され、

両トップの逃げ切りを許してしま

った。自ら調査もせずアドバルー

ンばかりをあげ「やったふり」を

演出しただけ。野党ばかりでなく

、メディアも同じように使命感を

忘れたかのようだ。身内にセクハ

ラ被害者が複数いると報じられて

いるのに、告発もしない無力感が

漂う。週刊誌報道で細田議長や岸

田派議員にさらなる罪状が発覚し

ても、見て見ぬふり。国政はただ

ただ漂流、「軍拡ムード」ばかり

が強まる。この先の行き着く先も

想像すると、空恐ろしくなる。

衆院本会議で細田議長の不信任案

について自民の丹羽秀樹議員が「

人格高潔として温厚といわれる細

田議長」と擁護し、不信任案が議

会を停滞に陥れる行為は言語道断

」と演説したのには、しばらく空

いた口が塞がらなかった。歳費が

たった月100万円」と嘆いて議

長としての資質を問われたことに

続くセクハラ発言のどこが「人格

高潔」と言えるのか。新聞の政治

欄はこんな倫理観の欠片も見えな

い与党議員に批判もしなかった。

この直前には、細田議長の新たな

疑惑が同じ「文春砲」によって発

覚してた。昨年の衆院選で、選挙

運動に関わった地元市議にポスタ

ー貼りの謝礼を支払っていたとい

い、地元議員は受け取りを認めた

。公選法の買収行為に相当するの

は明白だ。金を受け取った側が認

めているのだから、検察はすぐに

捜査を始めるべきである。広島の

河井元法相の事件のように、検察

当局が及び腰の捜査を展開、立件

できなかった、また検察審査会で

不起訴不当と判断されるのではな

いか。今からそんな不正がまかり

通り、政治浄化ができないことま

で想像したくなり、情けなくなる


ジャーナリズム精神を失った政治

部出身の記者が主流をしめるメデ

ィアも政治への無力感を醸成させ

ている。先日、政府寄りの読売新

聞新聞本社に、岸田文雄首相と側

近が訪ね、渡辺恒雄主筆らと食事

を共にした。歴代の政権幹部によ

る「ナベツネ詣で」だが、安倍政

権以来、特に頻度が高まっている

。一見「ご意見拝聴」との体を装

っているが、実体は「政権へのメ

ディアの隷属」でもある。、作家

辺見庸が喝破した「糞にたかるハ

エ」の景色だ。お互いの利権をむ

さぼり合うための儀式に見える。

細田議長の女性記者へのセクハラ

行為は複数件あったと報じられて

いる。それぞれのメディアが女性

記者のプライバシーを保護しなが

ら内部調査すれば、何があったの

か細田議長の行為の中身が浮かび

上がるはずだ。事実ならそれを根

拠に糾弾の論陣を張るべきではな

いか。このまま見過ごせば、社会

のセクハラ行為は減らないどころ

か、罪が問われなくなってますま

すはびこってしまう恐れもある。

今回の不信任案提出にあたって、

立憲の戦略性のなさばかりを政治

記者らは強調して報じた。それも

当たっているのは確かだが、もっ

と焦点を当てるべきは国民、維新

の役割放棄であり、実質与党化で

あろう。両党とも細田議長不信任

案の採決に棄権し、内閣府不信任

案には反対した。今なお「パンテ

ィ泥棒」の疑惑を払拭できない自

民の高木毅国会対策委員長から「

一部野党も私どもと同じ思いを持

っていただいた」と歓迎された。
野党の使命である政権監視の役割

を放棄したと同然だ。もう両党は

実質与党入りしたとみるべきだろ

う。未練がましく立憲が協力を呼

びかけても攪乱されるだけだ。

既に松井一郎維新代表は立憲に牙

を向け始めた。安倍元首相が提唱

した「核共有論」に賛成、憲法9

条改正を参院選の公約に掲げた。

「極右・維新」の本性を露骨に現

し始めた。立憲が野党第1党の立

場を維新に奪われると、この国は

一挙に「翼賛政治」に変わり「戦

争をする国」になる。


     【2022・6・12】

「真理を知らない者はただの馬鹿

者です。だが、真理を知ってそれ

を虚偽という者は犯罪人だ」

ナチスに迫害されたドイツの劇作

家、ブレヒトのこの言葉をカジノ

を日本維新の会の松井一郎、吉村

 

洋文両代表に投げかけたい。大阪

府と大阪市が進めるカジノ誘致の

是非を問う住民投票を求める署名

が21万筆集まった。署名した大多

数の人はきっと同じ思いになり、

怒りを募らせているのではないか


維新、公明が多数を占める府議会

で可決される可能性は少ないが、

間近に迫った参院選で維新の勢い

をストップさせる起爆剤になるか

もしれない。

安倍政権が推進した「カジノ法案

」は「バクチイメージ」を払拭し

たい思惑から、有権者の目をくら

まそうと「統合型リゾート(IR)

と名前を変え、メディアも「カジ

ノ法案」とも使わなくなった。「

バクチは人間をスポイルさせる」

という古今東西の真理を見えなく

させる負の効果をもたらしたが、

自分は「IR]という意味不明の

言葉は使わない。「IR」は原発

事故による「汚染水」を政府が「

処理水」と言い換えさせたのと同

じ詐術による語句である。

今回の署名を集めた市民団体の事

務局長は「府民の強い意志やエネ

ルギーを感じた」と話し、今後の

「反カジノ」運動の広がりを期待

させる。参院選前の燭光にも見え

る。

維新の「カジノ狂乱」ぶりは誰が

見てもあまりに度を超している。

その象徴的な政治判断は建設予定

地である人工島・夢洲の土壌汚染

対策に約800億円も投じること

である。「バクチの胴元」に選ん

だMGM・オリックス連合から「

液状化の可能性がある」と指摘さ

れ、土地保有者の大阪市の松井市

長は「地盤改良や土壌汚染対策は

市の責任としてやっていく」と述

べた。米日の一企業連合のためこ

んな巨額の公費投入など聞いたこ

とがない。


このほか万博跡地整備費788億

円も計上、土地整備関連だけで1

578億円にふくれ上がった。さ

らにアクセス道路整備750億円

も見積もられていた。すべて併せ

ると、実に2482億円の巨費が

投じられることになる。

この企業連合が真に進出したいな

ら、自ら負担するのが筋ではない

か。府市は起債を使うと言いなが

ら、実体は自治体の借金に紛れも

ない。昔なら「バクチ場建設に税

金が使われるなどあってはならな

いこと」と議題にものぼらなかっ

たはずだ。それが維新と公明が多

数を占める府市の議会で堂々とま

かり通る。

一方、吉村知事の「野戦病院を作

る」というかけ声の下、78億円
をかけて建てられた「大阪コロナ

大規模医療・療養センター」が利

用率たった0・3%にとどまった

ままついに閉鎖された。軽症が多

いオミクロン株の実体を見誤った

せいだ。当初テレビに出演してい

た吉村洋文知事だが、人口10万

人当たりの死亡者は全国平均の2

倍以上の571人だ。「やったふ

り感」を振りまいた維新政治の結

末は悲惨であり、松井、吉村両氏
平然と嘘を繰り返す。ブレヒトの

いう「犯罪人」に相当しそうだ。

参院選を前に、国政でも維新議員

の女性差別発言が相次ぐ。「顔で

選んでくれたら、一番」と発言し

た参院議員を馬場伸幸維新共同代

表も「あまりに可愛いので名前を

間違えた」と発言していた。これ

が維新議員の本音であり、正体で

ある。この政党をこれ以上、勢力

拡大させてはならない。最後に改

めて、有名なブレヒトの言葉を引

用し、維新を格別な理由もなく支

持している層の人々に警鐘を鳴ら

したい。

「英雄のいない時代は確かに不幸

だ。しかし英雄を必要とする時代

がもっと不幸なのを忘れてはいけ

ない」
     【2022・6・7】

どうみても、政治資金規正法違反

事件ではないか。それなのに、検

察が動く気配がない。安倍晋三元

首相の後援会が主催した「桜を見

る会」前夜祭でサントリーホール

ディングが3年間も無償で酒類を

提供していたことが発覚した。安

倍元首相は、知らぬ顔を決め込み

、防衛予算の大幅拡大などを訴え

るが、釈明するのが先だろう。1

08回も虚偽答弁された国会も新

たに調査に乗り出し、検察は再捜

査に着手すべきではないか。

疑惑が出た当初、ホテルニューオ

ータニの宴会が会費5000円で

済むはずがないと思われていた。
連日の国会の質疑で、安倍元首相

は、ホテル側の領収書も出さず、

妥当な会費と言い張っていた。時

には追及する野党の質問者に食っ

てかかり、虚偽答弁を繰り返して

いたのは、記憶に新しい。今回東

京新聞の調査報道で、2017年

90本、18年170本、19年12

2本のビール、ウィスキー、焼酎

が無償で提供されたのが判明した。

合わせて約45万円の負担とサント

リーは説明するが、原価にすぎず

、高級ホテルの宴会での料金に換

算すれば、2、3倍以上の料金に

なるのは誰でも知っている。ホテ

ルもサントリーも隠していたが、

内部の「宴会ファイル」にしっか

り記載されていたのだ。元公設秘

書の調書には「飲食料金を抑える

ため酒を持ち込む努力をした」と

の供述内容が記されている。安倍

元首相側の求めに応じて、酒が提

供されてたのだから、何か見返り

があれば、一挙に贈収賄事件の様

相帯びてくる。

サントリー側は臆面もなく、子供

だましの釈明をして、笑ってしま

った。「自社製品を知っていただ

く良い機会と考え、協賛した」と

いう説明を誰が信じるのか。それ

では「政治家の後援会なら誰でも

タダで提供するのか」と問い返し

たい。「政商」の薄汚れたイメー

ジを放ち始めたサントリー側が整

合性ある説明などできるはずがな

い。他にも、たたけばほこりが一

杯出るのではないか。

新浪剛史社長は安倍政権時代、政

府の経済諮問会議の常連メンバー

で、以前から「取り巻き」の一人

だったことは広く知られていた。

首相との距離感の近さをビジネス

に生かし続けたのは間違いない。

「森友、加計、桜」にまつわる縁

故主義による利権政治のにおいが

またぷんぷん漂ってきた。一連の

経過を知っていながら、黙ったり

隠してきた安倍、新浪両氏、強制

捜査をせず、元公設秘書の軽微な

処分にとどめた検察…。不正を隠

蔽し腐敗を摘出することができな

い国にした罪の大きさは同じだ。

いずれもこの国に巣くう病巣であ

る。

政治資金規正法は企業から後援会

など「その他の政治団体」への寄

付行為を禁止しており、規制法に

抵触するのははっきりしている。

今回は心あるメディアの調査報道

によって、安倍政権時代の不正隠

蔽工作が暴かれたが、野党は何を

しているのか。疑惑追及に熱心だ

った立憲は泉健太代表が国会論戦

を「提案型」にすると、自ら質問

に立ったが、迫力不足でじり貧状

態をさらけ出している。

立憲が「生活に密着した党だ」と

アピールしても何ら説得力を持た

ない。先進国で唯一実質賃金が下

がり続ける国にした安倍政権以来

の失政の根本をもっとただすべき

ではないのか。1ドル130円近

くになった円安は国力が低下した

表れである。誰もが口にしなくな

った「トリクルダウン」など「ア

ベノミクス破綻」による罪状を並

べて、一部の者だけが利権をむさ

ぼる政治から転換させる戦略と政

策策を示さなければ、もう有権者

の共感を得られないだろう。


    【2022・6・2】

 

何年ぶりだろう。寄席から遠ざか

っていた物足りなさを埋めてくれ

るように物語の世界にひたること

ができた。。立川志の輔がプロデ

ュースした映画「大河への道」で

ある。江戸時代と現代をタイムス

リップした気分にさせる荒唐な筋

立てだが、作り手の丹念な仕事ぶ

りが伝わってきた。スクリーンな

のに、舞台で志の輔が語る姿も想

像できた。観客を独自の解釈で歴

史の一場面に引き込む「志の輔ワ

ールド」満開の2時間であった。

ずっと「志の輔ファン」を自認し

ている。故郷富山・射水市で、志

の輔が師匠の談志に手土産で持参

していた「丸龍庵」のます寿司に

何度も訪れ取り寄せもしていたく

らいだ。志の輔落語は古典も新作

もすべて独自の解釈を盛り込みす

べて一級品に仕上げている。TB

Sの落語研究会で演じた「蜆売り

」の名演は忘れ難く、何度見入っ

たことか。名人と呼ばれる噺家は

数多おり、彼らに比べて、志の輔

の語り口はけっしてなめらかとは

言いがたい。では何に魅せられる

かというと、噺の芯になる「おか

しみ」をどう表現するかに、心配

りをしている点である。

志の輔は古典を演じるとき、よく

噺の途中で「皆さん、ここまでつ

いて来られていますか。大丈夫で

すか」と客をいじって楽しませる

。数年前、東京・TBS近くの「

赤坂actシアター」で「中村仲蔵」

を演じたときは、前半が歌舞伎を

知らない観客に向けて前半を「解

説」にあて本番に入っていた。そ

の時も何度も「皆さん、ここまで

ついて来られていますか」を聞い

た。嫌みがなく、それが語りのア

クセントにもなっていた。

今回の「大河への道」は志の輔の

真骨頂である今昔ミックス版であ

る。主演の中井貴一は生の落語を

聞いて、熱心にスクリーン化を志

の輔に願い出たという。最初はた

めらっていた志の輔も中井の「時

代劇再興の思いを込めたい」とい

う言葉にほだされて、了解したと

いう。脚本は「JIN-仁」「花

戦さ」「義母と娘のブルース」な

どで知られる森下佳子が担当した

が、志の輔は20回以上も書き直し

を求めたという楽屋話まで伝わっ

てきた。それだけ、作者から演者

まで気持ちが込められた作品にな

っていた。


映画は初の日本地図を作ったとさ

れる伊能忠敬の死後の弟子たちの

人間模様を描いている。ネタバレ

の筋立ては省略するが、志の輔が

着眼して創作した世界は「もしか

したらそうだったかもしれない」

と想像させながら展開する。出演

者は中井貴一、橋爪功、松山ケン

イチら芸達者ばかりで、皆見事に

登場人物になりきっている。

中でも、匂い立つ美しさを放って

いたのが北川景子だ。着物が似合

う女優では屈指に入る。さすがの

志の輔も噺では表現できない存在

感をみせた。北川景子は藤沢周平

の秀作短編「花のあと」で、武芸

に秀でた武家娘の敵討ちを演じた

ことがあり、この映画は何度も再

放送された。その実績が評価され

たうえでの起用だったのではない

か。

志の輔自身も医者として登場、落

語ほどうまくはなかったが、愛嬌

ある演技をみせてくれた。「よく

ぞ物語を作り上げてくれた」とい

う気持ちが募った。玉置浩二が書

き下ろしたエンディング曲も心に

しみて、心地よかった。

否応なく時代劇が衰退する中、大

人が楽しめる世界に誘ってくれた

スタッフ全員に拍手を送りたい。
 

       【2022・5・28】

 

(写真は「大河への道」の宣伝

パンフレットから)

どこか有権者の思考停止ぶりを思

わせ、悲しくなる。岸田内閣の支

持率が発足以来最高の59%(前回

55%)になったと今朝の朝日新聞

朝刊が報じた。新型コロナウイル

ス対策のワクチン接種が遅れ、令

和版所得倍増政策も何ら具体策を

うちだせないままだ。ウクライナ

侵攻に乗じて米国へのすり寄りが

際立つばかり。敵基地攻撃、防衛

費のGDP2%……。どれも空疎

で中身をつめた議論はない。中国

包囲網を強めるだけの米国の軍事

戦略に取り込まれ、独自の近隣外

交を展開する知恵もない。知らぬ

間に、国全体に強硬な好戦的気分

が高揚している。

「ウクライナは明日の東アジアか

もしれない」。最近の岸田首相の

口癖である。これさえ言っておけ

ば、国民が恐怖心を高め、強硬な

防衛政策への支持が得られるとい

う思惑がみえる。直接関係のない

NATOの首脳会議にわざわざ出

かけなければならない切迫した事

情は何もなかった。この期に乗じ

て防衛費の大幅増や敵基地攻撃能

力保有を狙っている目論見が透け

て見える。


まず政権が緊急に取り組むべき課

題は、物価高による生活不安の解

消であるべきはずだ。政府は物価

高騰に対応するため緊急対策に予

備費を積み増すとしているが、そ

の補正予算案の規模や内容は何も

明らかになっていない。会期末ま

で残り1カ月になっているのに、

国会で実のある審議が行われなか

ったのは異常事態だ。今年上半期

、テレビの国会中継で予算案に対

する質疑を見たことがない。長く

メディアの世界に身を置いてきた

が、こんなに国会が軽視されたこ

とはなかった。はたして議会制民

主主義国家と言えるのか。こんな

異常事態を安易に許してきた野党

の責任も大きい。

朝日の世論調査でもう一つ驚いた

のは、ついに立憲の支持率が10%

にとどまり、維新が11%で上回っ

たことだ。「闘わない立憲」はつ

いに存亡の危機に立った。「提案

型野党」を掲げた泉健太代表を選

んだ立憲議員は、早くも猛省が必

要だろう。今さら代表選をやり直

すわけにはいかず、もう残された

時間は少ないが、予算委審議では

軌道修正し、有権者の共感を得ら

れる争点を打ち出さなければなら

ない。


20日の毎日新聞夕刊で、政治評論

家の角谷浩一さんが貴重と思える

提言をしている。

「今国会で野党の追及で審議がス

トップしたのは見たことがない。

もしも『どうせ法案は通っちゃう

よ』と野党議員が思っているとし

たら、国民はたまったもんじゃな

い」

争点について「政権与党の問題点

を指摘し、争点を作るのは野党の

仕事ですよ」と指摘。その例とし

て旧民主の長妻昭議員が追及した

「消えた年金」問題が参院選の争

点になり、与野党逆転を招いたこ

とを挙げた。

争点とすべき課題は山とある。原

発再稼働、汚染水放出、国の借金

1千兆円超え、沖縄・辺野古の新

基地建設と環境破壊……。野党は

新たな対立軸を明確にアピールす

べきだろう。当面は細田博之衆院

議長のセクハラ行為に焦点を絞り

議員資質を糾弾するのも戦術では

ないか。大事なのは、長期政権の

腐敗体質と驕りをただす覚悟と戦

術だ。ラストチャンスを生かさな

ければ、半永久的に政権交代でき

ない専制国家になるだろう。

    【2022・5・23】

 

元立憲の参院議員がJRの無料パ

スをだまし取ったと思ったら、今

度はコロナの感染拡大に無策を続

けた元コロナ担当相の西村康稔衆

院議員が自画自賛本を出してネッ

トで大バッシングを受けている。

さらに維新の女性議員は選挙公報

に経歴を詐称した。議員資質だけ

でなく、人間性をも疑わせる振る

舞いの数々は与野党問わない。こ

の国の国会議員はどこまで劣化し

ているのか。「月給100万円し

かもらってない」と発言した衆院

議長に続く不祥事の連鎖は腐敗し

た政治風土の表れでもある。

JRパスをだまし取った山下八州

夫元参院議員は詐欺の疑いで逮捕

され刑事事件になったが、ほかの

ケースはまだ政治倫理が問われて

いるだけだが、悪事の内実はもっ

と罪深いかもしれない。特に西村

元担当相のフェイク本は、安倍、

菅政権による失敗続きのコロナ政

策の反省もなく「コロナとの死闘

」とタイトルが付けられた。ワク

チン接種、アベノマスク、唐突な

一斉休校、わずかな給付金……ど

れをとっても首相以下閣僚の失態

と判断ミスののせいだった。それ

を糊塗して、中身のなかった58

4回の記者会見を自慢している。

本の帯に「総理、緊急事態宣言を

出すべきです」とあたかも自分が

総理に宣言を迫ったかのようの誇

張しているが、どの宣言も遅れに

遅れて、野党やメディアの批判が

高まった後だった。

西村担当相とは以前ラジオの報道

番組でクロストークを交わしたこ

とがあるが、対談中も人の話も聞

かず、携帯電話の画面に見入って

いる姿を何度も見た。「おれはこ

の番組に出てやっている」と思わ

せる傲慢な言動に辟易したことが

あり、安倍元首相がコロナ担当相

に起用したときは、正直「そんな

大役が務まるのか」と疑念を高め

た記憶がある。今回の自賛本発行

で、改めてその厚顔ぶりに驚くと

共に、もう二度と重要閣僚に起用

できない議員であること思い知っ

た。

さて、維新議員に続く不祥事の連

鎖はこの党の本質をよく表してい

る。岬麻紀衆院議員はまったく勤

務実績がないのに、二つの大学の

「非常勤講師」と詐称して公報に

載せていた。大学が肩書きを否定

しているのに、岬議員はまだ「単

位取得の科目の講師をしていた」

と言い張り、維新は重い処分をし

ないという。

維新にはさらに議員資質を疑わせ

る発言が飛び出した。石井章参院

議員が各党から5人の女性候補が

立候補を予定している今夏の栃木

選挙区について、自党の女性候補

を「5人、女性が出る。年齢が若

く、顔で選んでくれれば、1番を

とるのは決まっている」と持ち上

げた。女性を顔で判断する不当な

セクハラ発言が大きな反発を招い

ている。

今朝の朝日新聞による3千人の有

権者調査によれば、「何党よりか」

という質問に、維新は13%と2年

前から2倍以上伸び、立憲の11%

を上回った。しかし、維新のスキ

ャンダルの多さを見れば、はたし

て有権者が冷静に維新という党の

本質を見極めているのか、大いに

疑問だ。大阪市政だけをみても、

カジノに巨大な公的資金投入、

コロナ感染拡大の失敗など、なぜ
好感度が高いのか分からない。

夏の参院選が約2カ月先に迫って

きた。ロシアのウクライナ侵攻で
防衛強化をアピールする岸田政権

が支持を伸ばし、維新が勢力を拡

大、立憲の埋没ぶりが鮮明になり

つつある。その最大要因は、泉健

太代表のリーダーシップの欠如に

ある。立憲がこのまま与党との明

白な対立軸を打ち出せないなら、

勝ち目はないだろう。


     【2022・5・18】

やはり予想通りのランクダウンだ

った。毎年春に発表される「世界

の報道の自由度ランキング」で日

本は今年4つ順位を下げて、71位

だった。政権批判をためらうメデ

ィアばかりのこの国の現状をみれ

ば、もっと下がるのかと考えてい

たが、この順位によくとどまった

ものだ。ウクライナ侵攻一色の報

道に隠れて無批判な政治報道がた

れ流され、読者・視聴者の政治意

識が日増しに下がり続けて入るの

は、無策が目立つ現政権にとって

最も好ましいことかもしれない。

政治の劣化を示すような暴言が自

民党が送り出した細田博之衆院議

長から飛び出した。

「議員を減らせば良いかどうか、

この辺で考えた方がいい。一人当

たり月額100万円未満であるよ

うな手取りだ。(議員を)多少増

やしてもバチは当たらない」


何という驕りきった主張か。細田

議長は1票の格差を是正するため

衆院小選挙区の定数を「10増10

減」にする与野党合意について、

自身の選挙区が減らされることか

らずっと否定的発言を繰り返して

きた。さすがに与党内部からも「

議長がポジションにいる立場でそ

んな発言をすべきでない」と批判

も出ているが、反省する素振りも

みせない。この暴言は自民党の政

治資金パーティーで飛び出したが

、他にも政治家としての資質を疑

わすもっとひどい内容もあった。

「議長になっても毎月もらう歳費

は100万円しかない。上場企業

の社長は必ず1億円をもらう」と

不満を言い募っていた。こんな人

物が「三権の長」ツラすることに

反吐が出るような思いにさせられ

る。細田議長のような驕りきった

特権意識に市民は新聞の川柳欄で

紙つぶてをぶつけるしか術がない。

「名前を変えて自由に使う100

万円」(毎日)

「まだ言うとるか、このバチ当た

り」(朝日)

国会の合意事項を議長自身が踏み

にじろうとしているのだから、メ

ディアはもっと強く指弾して、退

任を迫るべきなのに、政治欄の隅

にで小さく報じるだけである。社

説で堂々と「看過できぬ衆院議長

の暴言」と題して、正論を展開す

るのが本来の使命ではないのか。

フランスパリにある国際ジャーナ

リスト組織「国境なき記者団」は

各国のメディアの現状をよく検証

している。日本のジャーナリズム

の衰退ぶりが今年も報道の自由度

ランキングに表れている。メディ

アで働く一人一人が71位という位

置を深く自省しなければ、政治・

社会の質を向上させることは無理

である。岸田政権が発足して以来

、コロナワクチンの接種遅れ、円

安に伴う物価上昇への無策、予備

費使途のどんぶり勘定……ピジョ

ンもなく無策と無定見ぶりをずっ

とさらし続け、市民生活は疲弊し

て行くばかりだ。政権批判ができ

ないメディアの罪は大きい。

「国境なき記者団」は今回日本を

「記者や編集部が都合の悪い情報

を報じない『自己検閲』する国の

例として、韓国、オーストラリア

と共に挙げた。

日本のメディアの劣化はテレビの

情報番組によく表れている。ネッ

トのニュースランキングをそのま

ま紹介するなどかつてはなかった

。安易で自ら取材し検証する基本

的作業を放棄しているとしか思え

ない。また同じテーマを何度も繰

り返し伝える過熱・画一報道も目

に余る。視聴者は問題意識を持ち

続け番組選択をしなければ、ネッ

ト社会の進行と重なって、いつの

間にか同じ方向に流される。思考

を麻痺させる「害毒」をできるだ

け浴びないように、これまで以上

に自覚すること重要な時代に入っ

た。
    【2022・5・13】

 

 

 

 

ハナミズキとツツジが六甲山麓の

青葉に映える。明治期のレンガ作

り建物に入る神戸文学館=神戸市

灘区王子町2=付近は近所の絶好

の散歩コースだ。5月の連休前、

薫風に誘われて、神戸ゆかりの作

家たちが描いた世界を知ろうと、

同館を訪ねた。名だたる作品を手

に取り、ページをめくると、コロ

ナや戦争などリスクの高まる今、

自分がどう身を処すべきか様々な

教えがあった。この連休、手軽な

散歩コースとしてお薦めしたい。

 



JR神戸線灘駅、阪急神戸線王子

公園駅からそれぞれ10分北西に歩

くと、歴史を感じる教会風の尖塔

が見えてくる。1889年、神戸

・原田の森の一角に創立された関

西学院のチャペル(1993年復

元)である。現在は神戸文学館と

して使われいる。


紹介されている神戸ゆかりの作家

らは100人近くにのぼり、多彩

だ。泉鏡花、谷崎潤一郎、横溝正

史、井上靖、村上春樹らジャンル

を問わず時代を代表する作家ばか

り。入館者は自由に作品を手にす

ることができ、陳列棚にはきら星

の如く名作が並んでいる。高校時

代から特に井上靖が歴史小説で描

いた西域の世界に魅せられたこと

がある。「楼蘭」「蒼き狼」……

。このうち元、高麗を舞台にした

「風濤」は大国に蹂躙された小国

の王朝の悲哀がひしひしと胸に迫

って、読後しばらく余韻が収まら

なかった記憶をよみがえった。

 

 




そんな読書体験を思い出し、久し

ぶりに「風濤」冒頭のページをめ

くった。格調の高い書き出しであ

る。

「高麗の太子が蒙古に入朝するた

め降表を捧げて江華島を出たのは

、西紀一二五九年四月二十一日で

あった」


元が日本征討のため高麗に押しつ

けた軍役は苛烈を極め、元に降伏

した高麗が臣下になるための節目

の旅であった。終始感情を抑制し

淡々と屈服せざるをえなかった太

子の行動を淡々と書いた井上靖の

文章はかえって元の暴虐ぶりをク

ローズアップする。ふと現在のロ

シア軍とウクライナ政権に重ね合

わしていた。戦火に見舞われた高

麗の民はウクライナの民と見立て

ることもできる。圧倒的な武力を

背景とした他国への侵略の形が時

空を超えて浮かびあがってくる。


ロシア軍はウクライナ東部を切り

取り、直轄地にしようとしている

が、「風濤」の中でも高麗の北部

を元が高麗王朝の反逆者を味方に

引き入れる様子が詳細に描かれて

いる。古今東西、覇権国家のたど

る道は同じにみえる。そうだとし

たら、ウクライナの苦難をかわす

知恵は過去の歴史にあるかもしれ

ない。そんな思いで、全編を読み

返している。

文学館はちょうど企画展「蘇る神

戸ゆかりの文豪たち」が開かれて

いる。アニメのキャラクターたち

が正義のために立ち上がる「文豪

とアルケミスト」というシュミレ

ーションゲームも紹介され、若い

学生たちが文豪の作品に親しめる

仕掛けが展開されており、好評と

いう。同館は無料(水曜休み)。
200円でコーヒーも飲める。六

甲山麓の散歩に立ち寄ると、きっ

とリフレッシュできるだろう。

 

   【2022・4・28】

 

(写真は教会風の尖塔が六甲

山に映える神戸文学館。館内

の様子と企画展・文豪とアル

ケミストの展示)


(都合で次回は5月13日に掲

載します))

 

懲りもせずまた意味不明の妄言を

吐いた。「プーチンは信長みたい

なもの。力の信奉者だ」。安倍晋

三元首相が仲の良さを誇示した相

手を批判した。数年前「同じ未来

をみている」と親密さを演じたは

ずが、都合が悪くなると、驚くよ

うな手のひら返しの振る舞いをす

る。そんな人物が今度は「敵基地

攻撃」を提唱。それを受けて自民

党は憲法批判の批判をかわそうと

「反撃能力」と言い換える提言を

まとめた。この動きは「専守防衛

」をうたう憲法9条を逸脱するど

ころか、この国をさらに「戦争を

する国」に進み始めようとしてい

る。ウクライナ戦争を政治利用す

る軍拡をどう阻止するか、正念場

でもある。

政府の防衛政策を事前に策定する

自民党の安全保障調査会はロシア

のウクライナ侵攻での危機感をあ

おり、「敵基地攻撃」の必要性を

露骨に強調している。文言では言

葉を「反撃能力」に言い換えてい

るだけで、迎撃が困難な場合、先

に敵のミサイル基地に限らず、指

揮統制の中枢攻撃まで容認する内

容である。

これは憲法9条が許容できる「専

守防衛」の逸脱であり、「先制攻

撃」をこちら側から仕掛けること

と受け取られてかねず、本格戦争

への火のつきやすい導火線になる

。「撃たれる前に撃つ」という前

提の防衛策は相手の軍備もどんど

んエスカレートさせ「終わりなき

軍拡競争」を招く。

いくら「敵基地攻撃」を「反撃能

力」に言い換えても、敵と想定し

た相手がそう受け止めなければ無

意味である。かつて中国への侵略

戦争を「事変」と表現したり、現

代でも原発事故による「汚染水」

を「処理水」などと言い換えるこ

とと同じごまかしにすぎない。不

都合な表現避けても、実体は同じ

であることはすぐ分かる。それで

も、ごまかそうとするのは有権者

らを愚民視しているからだ。

そもそも事前に敵国の攻撃を見破

れことなど至難なことだ。敵と想

定している北朝鮮や中国などは飛

躍的にミサイル攻撃力を向上させ

ている。特に北朝鮮は鉄道の走行

車両からのミサイル発射に成功し

ている。その車両がトンネルに入

ると、撃たれる側から事前に発射

地点特定は容易ではない。軍事専

門家らは口を揃えて難しさを強調

している。相手の「中枢攻撃」も
どう事前に攻撃意思を察知できる

のかも疑問だ。その確認もできな

いのに「反撃能力」という文言は

意味をなさない。

与党の同調査会は、防衛費の「国

内総生産(GDP)費2%以上」

の達成を目指すとあからさまに言

い始めた。現在の0・96%(5・

4兆円)からの6兆円増額になる

。これはウクライナ戦争による危

機感に乗じた「火事場泥棒」的な

政策変更だ。メディアや野党はも

っと批判的に分析して、その危う

さを有権者に示し、外交の重要さ

よりアピールする務めがある。

安倍元首相は米国の核兵器を日本

に配備して共同運用する「核共有

(シェアリング)」まで提唱した

が、非核三原則という国是を無視

した暴論には与党内から批判が出

たほどだった。「信長発言」をし

た安倍元首相はこの時「たとえば

織田信長に人権を守れといっても

全然通用しないのと同じ」と理由

を述べたという。

まさに「どの口が言うか」である

。共謀罪導入など数々人権無視の

政策を重ね、森友事件では昭恵夫

人を関与させ近畿財務局職員の自

死まで招いてしまった。そんな罪

の自覚の欠片さえ感じさせない昨

今の驕りぶりである。
       【2022・4・24】

政治やメディアの世界で「御用」と

いう言葉は否定的に使われることが

多い。権力者にへつらい、言いなり

になったり媚びたりする姿が醜く軽

蔑されるからである。自民党の「人

生100年時代戦略本部」の会合に

労働組合の中央組織「連合」の芳野

友子会長が出席、まさに連合が「御

用組合」に成り下がった実態を見せ

つけた。選挙で立憲民主や国民民主

を支援してきた連合のトップが権力

にすり寄るという異様な振る舞いで

ある。参院選を前に、野党第一党の

立憲はもう連合と決別して対立軸を

強固にする時ではないか。

この会合は男女格差の解消や非正規

雇用労働者の支援などが話し合われ

たという。芳野会長は「お呼びいた

だけたら意見交換していきたい」と

述べている。そもそもなぜ男女・賃

金格差が生じているかを真摯に思考

すれば、「富める者を好遇し、貧し

き者に過酷な社会構造」をもたらし

たのは自公による長期政権であるこ

とは明白だ。その経済性政策を転換

させることが労働者組織と野党の使

命であることが分かるはずだ。

それを忘れて芳野会長は今年1月か

ら政権に媚びを売り続けている。連

合新年会に岸田文雄首相を9年ぶり

に現職首相として招待。自身は麻生

太郎自民副総裁ら自民幹部と豪華な

会食を重ねている。19日付けの毎日

新聞によると、麻生氏は講演で「政

策を実現するのは自民党が一番でし

ょう、と正面から申し上げている」

と述べたという。芳野会長を自民に

取り込んだ自信が言わせたのだろう

。自民党内では「連合の中は既に割

れている。票を引き剥がすチャンス

だ」と語られているという。かつて

国民民主の政権入りを嫌がった公明

も「自公国」政権を容認していると

一部報道で伝えられた。理由は創価

学会の集票力に陰りが見える中「連

合が分裂すれば好都合」との思惑が

あるからだ。

芳野会長や玉木代表の振る舞いは、

政権与党の「思う壺」であり、格差

社会による生活苦に見舞われる人た

ちへの背信であろう。かつて「労働

貴族」いわれた体制内組合の醜態を

存分に見せつける。それでも芳野会

長は記者らから「異例ではないか」

と問われ、「過去もあった」と答え

、悪びれた様子も見せなかったとい

う。厚顔無恥とはこのことを指すの

だろう。

野党第1党もだらしない。立憲の小

川淳也政調会長は「自民のしたたか

な悪宣伝に利用されないように気を

つけていただきたい」と注文を付け

たが生ぬるすぎる。もう芳野会長は

悪宣伝に使われているではないか。

連合だけでなく野党の分断も深刻で

ある。国民民主の玉木雄一郎代表は

政府の今年度当初予算案について、

政権がガソリン税などを約25円減

税する「トリガー条項」発動を条件

に賛成、事実上与党入りしてしまっ

た。

これでは3カ月後に迫った参院選で

野党が勝利する展望は見いだせない

。岸田政権はロシアのウクライナ侵

攻に対米追従するだけで、為替で1

ドル130円台に近づきつつある「

悪い円安」を止められず手を拱いて

いるだけだ。コロナの感染拡大防止

にも無策……。野党は攻めどころ満

載なのにまったく存在感を示せてい

ない。立憲は「政策立案型政党への

転換」(泉健太代表)を掲げても、

有権者から「闘う気をなくした」と

受け止められ支持をさらに失ってい

るように映る。ロシアのウクライナ

侵攻のニュースに隠れて、一段と政

権監視勢力の劣化が進行しており頭

を抱えたくなる。
        【2022・4・19】