すり寄りだけで支持率アップか | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

どこか有権者の思考停止ぶりを思

わせ、悲しくなる。岸田内閣の支

持率が発足以来最高の59%(前回

55%)になったと今朝の朝日新聞

朝刊が報じた。新型コロナウイル

ス対策のワクチン接種が遅れ、令

和版所得倍増政策も何ら具体策を

うちだせないままだ。ウクライナ

侵攻に乗じて米国へのすり寄りが

際立つばかり。敵基地攻撃、防衛

費のGDP2%……。どれも空疎

で中身をつめた議論はない。中国

包囲網を強めるだけの米国の軍事

戦略に取り込まれ、独自の近隣外

交を展開する知恵もない。知らぬ

間に、国全体に強硬な好戦的気分

が高揚している。

「ウクライナは明日の東アジアか

もしれない」。最近の岸田首相の

口癖である。これさえ言っておけ

ば、国民が恐怖心を高め、強硬な

防衛政策への支持が得られるとい

う思惑がみえる。直接関係のない

NATOの首脳会議にわざわざ出

かけなければならない切迫した事

情は何もなかった。この期に乗じ

て防衛費の大幅増や敵基地攻撃能

力保有を狙っている目論見が透け

て見える。


まず政権が緊急に取り組むべき課

題は、物価高による生活不安の解

消であるべきはずだ。政府は物価

高騰に対応するため緊急対策に予

備費を積み増すとしているが、そ

の補正予算案の規模や内容は何も

明らかになっていない。会期末ま

で残り1カ月になっているのに、

国会で実のある審議が行われなか

ったのは異常事態だ。今年上半期

、テレビの国会中継で予算案に対

する質疑を見たことがない。長く

メディアの世界に身を置いてきた

が、こんなに国会が軽視されたこ

とはなかった。はたして議会制民

主主義国家と言えるのか。こんな

異常事態を安易に許してきた野党

の責任も大きい。

朝日の世論調査でもう一つ驚いた

のは、ついに立憲の支持率が10%

にとどまり、維新が11%で上回っ

たことだ。「闘わない立憲」はつ

いに存亡の危機に立った。「提案

型野党」を掲げた泉健太代表を選

んだ立憲議員は、早くも猛省が必

要だろう。今さら代表選をやり直

すわけにはいかず、もう残された

時間は少ないが、予算委審議では

軌道修正し、有権者の共感を得ら

れる争点を打ち出さなければなら

ない。


20日の毎日新聞夕刊で、政治評論

家の角谷浩一さんが貴重と思える

提言をしている。

「今国会で野党の追及で審議がス

トップしたのは見たことがない。

もしも『どうせ法案は通っちゃう

よ』と野党議員が思っているとし

たら、国民はたまったもんじゃな

い」

争点について「政権与党の問題点

を指摘し、争点を作るのは野党の

仕事ですよ」と指摘。その例とし

て旧民主の長妻昭議員が追及した

「消えた年金」問題が参院選の争

点になり、与野党逆転を招いたこ

とを挙げた。

争点とすべき課題は山とある。原

発再稼働、汚染水放出、国の借金

1千兆円超え、沖縄・辺野古の新

基地建設と環境破壊……。野党は

新たな対立軸を明確にアピールす

べきだろう。当面は細田博之衆院

議長のセクハラ行為に焦点を絞り

議員資質を糾弾するのも戦術では

ないか。大事なのは、長期政権の

腐敗体質と驕りをただす覚悟と戦

術だ。ラストチャンスを生かさな

ければ、半永久的に政権交代でき

ない専制国家になるだろう。

    【2022・5・23】