平野幸夫のブログ -7ページ目

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

まさか最高とされる学問の府でこ

んな「妄言」がまかり通るとは思

わなかった。東京大の入学式に来

賓に招かれた映画監督の河瀨直美

氏が暴虐な戦争犯罪が絶えないク

ライナ侵攻に「ロシアという国を

悪者にするのは簡単である」と見

解を述べた。まるで隣国に侵攻し

た側にも理があるとでも受け取ら

れても仕方ない物言いだった。こ

の国を集団的自衛権による「戦争

をできる国」にした安倍晋三元首

相は安全保障論議の高まりに乗じ

て「相手国の中枢攻撃」を提起し

た。憲法が制約する専守防衛を無

視した「暴言」だった。いずれも

、好戦的な言説をまき散らす振る

舞いで、メディアはもっと批判的

に伝えるべきである。

河瀨発言は今回の侵攻を「正義と

正義のぶつかりあい」と見立て、

一方に組みするなという警鐘を込

めたつもりだったかもしれないが

どう見ても一方的に主権を侵害し

て無辜の市民を殺戮するロシア軍

の非道な行為も正当化すると受け

止められる。「悪を存在させるこ

とで安心していないだろうか」と

新入生に問いかけた河瀨発言は自

分が対話した奈良・金峯山寺管長

の引用だった。一方的意見に左右

されないことの教え説いたつもり

だろうが、東京大の教授や他の国

際政治学者らから一斉に批判がわ

き起こったのは当然だろう。



「ハフポスト日本版」によれば東

京大の池内恵教授は「侵略戦争を

悪と言えない大学なんて必要ない

でしょう」と至極当たり前の反論

をしている。慶応大の細谷雄一教

授は河瀨発言の根本的誤りを突い

ている。ロシア軍が一般市民を殺

戮している点を重視、「(侵略軍)

との違いを見分けられない人は、

人間としての重要な感性の何かが

欠けているか、ウクライナ戦争に

無知か、そのどちらかでは」と強

烈に批判している。

また東京外国語大の篠田英朗教授

も「『どっちもどっち』論を、超

越的な正義として押しつけようと

している人々が、この社会で力を

っている」とツイッター上で述べ

て、同じ思いになってうなづいた。

東京五輪公式映画監督に起用され

た河瀨監督にはこれまでに何度も

その資質に疑問の声が出ていた。

NHKの五輪抗議デモの参加者の

声をねつ造したドキュメンタリー

番組も河瀨監督の了解がなかった

とみるには不自然である。自身が

中心の番組内容を「まったく知ら

なかった」と釈明しても、にわか

に信じがたい。ねつ造したスタッ

フが河瀨監督の翼賛的価値観を忖

度した結果ではなかったか。河瀨

監督を来賓に呼んだ東京大の責任

者の声を聞きたい。

秀作「あん」を制作した河瀨監督

には一時期待したことことはあっ

たが、その後の変貌ぶりには心底

がっかりさせられた。東大での「

妄言」も自身の「知」への底浅さ

が招いたと推察する。夏に公開さ

れる東京五輪公式記録映画が一面

的な価値観による映像表現になっ

ていないか危惧する。

プーチン大統領と「ウラジミール

」「シンゾ-」と呼び合って27回

も会談、「君と僕は同じ未来を見

ている」と二人で約束した安倍元

首相の最近の「暴言」はもっとた

ちが悪い。G7の首脳中、最も親

しかったと自慢した仲であったの

なら、特使としてロシアに行って

、「戦争を止めて」と諫める立場

なのに知らぬ顔をして、自民党の

会合で火事場泥棒のような発言を

繰り返している。

自民党の会合で使われていた「敵

基地攻撃能力」が誤解されやすい

として「自衛反撃能力」などに言

い換える意見が出されたという。

そんな時に飛び出した「中核攻撃」

という安倍元首相の好戦的な言葉。

為政者なら戦争に至らない道を探

るのが本来の務めなのに、まるで

幼児のように「戦争ごっこ」に興

じているように映る。

   【2022・4・14】

まさに鬼畜の所業である。ウクラ

イナのゼレンスキー大統領による

国連報告はロシア軍の凄惨きわ

まる虐殺行為を詳細に語り、ずっ

と胸が締付けられ続けた。首都

郊外ブチャの市民らの惨状に「手

首を切り落とされた人。自分の子

供の目の前でレイプされ、殺され

た人。舌を切り裂かれた人は彼

らの聞きたいことを言わなかった

だけの理由だった」と怒りをあら

わにした。プーチン大統領は「ウ

クライナの挑発行為」と反発した

が、米調査報道などからついに

政権内部から崩壊の兆しも見え

始めた。

今、プーチン大統領が最も恐れる

のがクーデターか暗殺であること

は大方のロシア政治研究者の一

致した見方である。その兆しとして

注目したいのが、米誌「ニューズ

ウイーク」のディミアン・シャルコフ

記者の7日付け署名記事だ。その

取材によると、プーチン大統領は

直属の治安部隊「国家親衛隊」を

創設し、自分の元警護責任者をト

ップにすえた。その関連法案にも

署名、逮捕状なしで容疑者を拘束

できることになったという。国家親

衛隊はこれまでの治安部隊を上回

る強権を付与され、反政府活動と

みなされれば、隊員は事前の警告

なしに発砲できる。約40万人もの直

属の治安部隊が信用できなくなって

、クーデーター阻止の体制を強化し

たのである。見方を変えれば、それ

だけ警戒感を高めなければならな

くなっているとも言えよう。

同誌は既にウクライナ国防省情報

総局長による「プーチンとロシア連

邦保安局(FSB)のポルトニコフ長

官の関係が悪化、同長官はエリー

ト層と手を組んでプーチン排除を模

索している」との分析を紹介してい

る。さらに極東シベリアの徴集兵が

ウクライナ戦線への配転を拒否した

との動きが伝えられた。

強がれば、強がるほど不信と不安

が募るというプーチン大統領の心中

が「特別軍事作戦」と名付けたその

唐突なににじみ出ている。プーチン

大統領があがめるスターリンは「大

祖国戦争」と名付けてヒトラーとの「

絶滅戦争」(双方の死者約4000万

人)に導いた。大木毅著「独ソ戦」に

よれば、スターリンはこの戦争を道

徳的・倫理的に許されない敵を滅ぼ

す聖戦であるとの認識を民衆レベル

まで広めたと同時に、ドイツ側が住

民虐殺などの犯罪行為を繰り返した

ことと相俟って、報復感情を正当化

した。

ウクライナで起きている「生き地獄」

はスターリンを崇めるプーチン大統

領自身が自らもたらしているのだ。

この現代史の皮肉な巡り合わせを

考えれば、プーチンは自ら引いて、

中途半端に妥協することはないの

ではないか。1941年9月の「キエ

フ会戦」ではスターリンがキエフ死

守を命じたことがあって、ソ連軍は

45万人と3800門の火砲が壊滅し

た。

「疑を以って疑を決すれば決必ず当

たらず」

中国の思想家・荀子が説いた為政

者への警句である。「あやふやな根

拠にもとづき、あやふやな心によっ

て判断を下せば、必ず見当はずれ

な結果になる」という意味だ。大義な

き「プーチンの戦争」にも当てはまる

のではないか。

歴史の教訓から学ぶことができない

プーチン大統領は必ず自国民から

強烈な報復を受けるだろう。独善的

な一人の指導者の暴虐な振る舞い

を変えられるのは、ロシア国民の覚

醒を待つしかない。国際刑事裁判所

が「戦争犯罪者・プーチン」を訴追し

、出廷命令を出せば、やがて自分た

ちの指導者が今世紀最悪の悪行を

知ることにつながる。これからさらな

る内部崩壊が表れるか注視し続け

たい。
                    【2022・4・9】


ウクライナの惨状に気が滅入る日

々が続く。コロナ感染も収まらず年

度が変わり、少しは気分を変えた

くなって、神戸から京都・伏見の醍

醐寺に花見に出かけた。栄華を極

めた豊臣秀吉が最晩年に「醍醐の

花見」を催した寺の境内は、ちょう

どしだれ桜が咲き誇っていた。は

かなく散る花びらを見て秀吉は何

を思ったか。人の生涯ははかない

。年を重ねた自分も毎年春になる

と「あと何度花見ができるだろうか

」との思いが募る。今年は格別に

平穏日々へのいとおしさが高まる

。このブログではグラフフィックス

をしばらく控えていたが、「久しぶ

りに視覚だけでも遠出気分を味

わってもらえたら」と願って画像を

並べてみた。

 



874年に創建された醍醐寺は加

持祈祷で現世利益を願う祈りの寺

でもあったが、時の為政者の興亡

とともに盛衰の歴史を歩んだとされ

る。国宝6万千点が保存され、19

94年にユネスコの世界遺産に登

録されており、お勧めしたいのは

霊宝館に保存されている薬師三尊

像(国宝)などの多彩な仏像群であ

る。それらの静謐な顔立ちに見入

るうちに、いつか気持ちを穏やか

になった。

 

 




外の庭はしだれ桜が満開に咲きほ

こる。秀吉が「醍醐の花見」を催した

時に、自らが設計し整備したといい

、豪放なたたずまいは見て飽きない

。唐門は豊臣家の家紋「五七桐」と

菊のご紋が金粉で施され、格調高

くその栄華をしのばせた。


しだれ桜ばかりをみて、街のソメイ

ヨシノも見たくなった。地下鉄で京阪

三条まで出向き、近くの」高瀬川沿

いを歩いた。ちょうどカモのつがいが

浅い清流で仲良くえさを探しており、

ほほえましくて、ずっと見入ってしま

った。わずか半日だけだったが、し

ばらくコロナもウクライナも忘れさせ

てくれた。きっと何年後かには内外

の苦境の結末と共に「記憶に残る京

の春」として振り返るだろう。

 

 


        【2022・4・4】

 

(写真は五重塔前、三宝館前のしだれ桜、唐門、高瀬川

沿いのソメイヨシノの順)

「NATOがロシアと交渉しないか

ら市民の犠牲が増えている」。テ

レビの情報番組で、橋下徹元維

新代表がしたり顔でロシアのウ

クライナ侵攻による市民の犠牲

者拡大をあたかも「NATO不介

入のせい」と言い続けている。強

い組織を「敵」に作り上げて、自

分が立ち向かっている風を装うい

つものやり口だが、悲しいほどの

論理破綻がみえる。その視点か

らは理不尽なロシアの主権侵害

に対するウクライナ市民の怒りの

覚醒を過小評価している。首都キ

エフへの侵攻をはね返しロシア軍

を退却させた今、放送会社は改

めて人心を迷わす「橋下フェイク」

を検証し、安易にたれ流すのは

やめてもらいたい。

橋下発言は増え続ける市民の犠

牲者は大国ロシアと対峙するNA

TO加盟諸国が交渉に応じないか

らだという趣旨である。主権侵害し

たロシアの大罪を十分糾弾せず、

NATO側のせいばかりにする一

方的な意見である。そもそもNAT

Oにはロシアと交渉する権限など

何もなく、理不尽な言いがかりを

つけるロシアと自国を侵害された

ウクライナの救国戦争であるとの

認識にも欠けている。NATOを責

めれば、視聴者の共感を得られる

のでは、という邪な思惑が透けて

みえる。

番組中、司会者に橋下氏の発言

の評価を問われた軍事研究家の

黒井文太郎さんが「(犠牲者が増

えているのは)ウクライナの市民

自身が犠牲覚悟で立ち上がって

いるため」と冷静な表情で語って

いたのが印象的だった。橋下発

言は逆に大国同士の交渉で戦争

はどうにでも動くという傲慢で偏狭

な見方に塗り固められている。橋

下氏は「国際社会のウクライナ支

援など戦争を止めるには役にも

立たない」と言い放っていたのも国

際世論を過小評価する物言いであ

る。


情けないのは、黒井氏以外のスタ

ジオのひな壇に並ぶお笑いタレン

トや解説委員らが橋下発言に何の

異論も述べられなかったことである

。反対意見を述べれば、橋下氏が

必ずかみつくように逆襲するのが分

かっているからと推察したくなる。一

方的な価値観ばかり強弁するコメン

テーターの起用にはようやく様々批

判が広がり始めた。

今年正月のバラエティー番組に橋下

氏、吉村洋文大阪府知事、松井一郎

大阪市長を起用した毎日放送には視

聴者から「偏っている」と強い批判が

寄せられた。社内調査で「組織的検討

が不足していた」との結論が出された

。担当局長は「視聴率を狙いにいった

番組である」と認めていたのに、相変

わらず維新色の強い政治家やコメンテ

ーターの起用が絶えない。多くの局で、

橋下氏を起用し続けているのは、その

発言の真偽をジャーナリズムの視点で

放送局自身がチェックできていないか

らだ。

ウクライナの戦況はロシア軍がキエフ

包囲網を解くという新たな節目を迎えた

。ウクライナ国民の祖国防衛戦争への

強い意志と欧米の武器支援などが重

なって、ロシア軍は停戦協議に応じざる

を得なくなった。特筆したいのは、既に

ロシア軍戦車二百数十台を壊滅させた

手動の対戦車ミサイル「ジャベリン」の

効力である。1発約2千万円もするが

、その戦果は絶大である。

プーチン大統領がほのめかせた核使

用に至らせないため、NATOの直接介

入はできないのは自明で、武器援助は

第三次世界大戦にならないためのギリ

ギリの選択だろう。戦況を見誤って世

界が破局を迎えないためにも、国際社

会の努力を不当に非難するような「橋

下フェイク」は排除されなくてはならない

                       【2022・3・30】

無差別に民間人3000人が殺さ

れたウクライナ・マリウプリ市で依

然市民20万人がロシア軍に包囲

されている。首都キエフも市街戦

が迫っている。人道を無視し続け

るプーチン大統領がもたらした悲

惨なウクライナの戦況はソ連時代

のスターリンとナチスのヒトラーが

正面から向き合った凄惨な独ソ戦

と重なる。第二次世界大戦で最悪

の「絶滅戦争」と呼ばれたこの戦い

の実相を顧みると、プーチンの旧ソ

連時代への郷愁と西側への限りな

い復讐心が見えてくる。追い詰めら

れたプーチンが何をしでかすか結

末が読めず、空恐ろしくなる。

既に誤算続きのロシア軍はウクラ

イナ各地で無差別に学校、病院な

ど公共施設を攻撃、マリウプリ市

では犠牲になった市民の遺体が散

乱しているという惨状だ。市民が居

住する建物8割が破壊され、地獄

絵のような様相という。「これは絶

滅戦争だ」と言って、ソ連に攻め入

ったヒトラーのドイツ軍。赤軍を率い

たスターリンを相手にした独ソ戦は

数百万人の大軍が激突、ソ連の戦

死者は680万人にのぼり、450万

人が行方不明になった。合わせて

1千万人を上回った人的被害はロ

シア民族に末代まで復讐心を駆り

立てた。ドイツも5百万人を上回る

戦死者を出した。この戦争でスター

リンは「大祖国戦争」と規定、防衛

戦争として士気を鼓舞した。ナチス

の侵攻をはね返したスターリン時代

の栄光を信奉するプーチンが今、

立場を逆にし、主権国家ウクライナ

に侵攻した。その心の底に「西側へ

の復讐心」がなかったか。ゼレンス

キー大統領が「祖国防衛戦争」と呼

んでで戦意を高めたウクライナ軍に

手を焼き、泥沼にはまったのは歴

史の皮肉でもある。

どんな戦争でも始めた側はもっとも

らしい大義名分を掲げるが、ウクラ

イナ侵攻を「ネオナチ排除のため」

とした「偽旗」は何の根拠もなく説得

力を持たなかった。それゆえ国際

社会から強い経済制裁を受けたの

は当然だろう。末路がどうあろうと、

プーチンは後の歴史家によって戦

争犯罪人として記されるのは明白

である。

挙げたこぶしを下ろす時が分から

ないように見えるプーチンに、ドイ

ツの哲学者、ニーチェの言葉を投

げかけたい。

「敵を抹殺しようというのか。本気

か。本当に滅ぼしてしまっていいの

か。敵は抹殺されるかもしれない。

しかし、そのことによって、敵がお

まえの中で永遠のものになってし

まわないかどうかよく考えてみたの

か」(超訳「ニーチェの言葉」曙光・

永遠の敵より)

今キエフを包囲しようとしているロ

シア軍を指揮する将官は、1941

年8月の独ソ戦でのキエフの戦い

で、双方にどれだけの損害が出た

のか知っているだろうか。ソ連・赤

軍がドイツ軍に包囲されたこの戦

いは、ソ連側は16万人が死傷、45

万人が捕虜になった。ドイツ側も10

万人が死傷した。キエフ攻略まで

4週間もかかり、将兵は消耗し、や

がて厳寒にが襲い、後の敗戦につ

ながっていった。

歴史の教訓を真摯に読み取れば、

都市包囲戦争に真の勝利者はい

ない。包囲する側の損傷が多大に

なるのは必至である。1万人近い

将兵が死んだとされるロシア軍が

今退却の時であることは専門家で

なくても分かることだ。かつての帝

国主義国家のような暴走する独裁

者。残忍、非道を尽くすプーチンは

自らの「絶滅戦争」に突き進んでい

るように映る。
               【2022・3・23】
(次回は都合で30日に掲載します)

高齢者に5千円給付、コロナのま

ん延防止期間全面解除、新年度予

算にのロシア経済支援関連事業計

上……。ウクライナでの第二次世

界大戦以降最大の戦争に目が向い

ているうちに、岸田政権の迷走が止

まらない。どの政治判断も行き当た

りばったりに見える。批判が出ると

、岸田首相は「様々な状況を見て検

討したい」と常套句を繰り返す。野

党の追及には意地になって見当違

いの答弁でかわすだけ。菅義偉前

首相と比べて言語明瞭だが、意味

不明のごまかしが際立つ。独自の世

界観を持たないせいか、そこかしこ

に岸田首相がもたらす「だらだら感

」が横溢する。

さすがに自民党内部からも疑問の

声が出始めたのが、高齢者2600

万人に一律5千円を給付する案で

ある。昨日の参院予算委で立憲の

蓮舫議員が「時期が参院選前の6

月といい、選挙目当てではないか」

と強い調子で岸田首相をただした

のは、大方の有権者の声を代弁し

ていた。首相は他人事のように「様

々な政策を用意していますが、対

応が及んでいない方がおられるか

どうか、こういった議論だと思う」と

答えた。3日前、自民、公明両党幹

部が首相に要望した給付案だが、

所得の低い高齢者は除かれるとい

い、弱者救済にも逆行する。

なぜ高齢者に限るのか。若い世代

からそんな反発が出るのは当然だ

。まるで「5千円で票を買う」と思わ

す野卑な発想ではないか。政権幹

部が「5千円渡しておけば、与党に

投票するはず」とでも考えていると

したら、思い違いも甚だしい。今年

度予算の予備費を財源にするとい

うが、今のコロナ対策が不十分の

まま予算を消化しなかった証しでも

ある。

コロナの感染拡大が高止まりして

いる中、明確な基準もなくまん延防

止期間を全面解除したことにも不

安が募る。3回目のワクチン接種

率はまだ32%にとどまる。卒業、

入学・入社シーズンを迎え人流が

増大するこの先、リバウンドがあ

れば、どう政治責任をとるのか。

とるべき選択はせめて期間延長

し、さらなる注意喚起をすることで

はないか。緩慢な拡大防止策によ

って、隣国韓国は1日60万人とい

う感染爆発を招いてしまった。中国

も「ゼロコロナ政策」がきかなくなっ

て、ロックアウトをする省も出た。コ

ロナは油断すると、必ずしっぺ返し

をしてくる。そんな警戒心を維持し

なければ、いつまでたっても同じ失

敗を繰り返すことになる。この政権

も教訓を生かせていない。

昨日の参院予算委で最も憤りが募

ったのは、新年度予算にロシア支

援関連事業をめぐる質疑だった。ロ

シアのウクライナ侵攻前に策定され

た予算項目を何ら修正しないと言い

張った岸田首相の答弁には空いた

口がふさがらなかった。欧米と共同

歩調をとって経済制裁を強化する中

、日本企業からロシアへの投資を促

す協力プランに21億円も投入される

ことになっている。安倍晋三元首相

がプーチン元大統領に媚びるように

策定した経済協力が軌道修正もさ

れず、堂々と新年度予算に含まれ

ているのは、外務、経済産業省など

関連省庁の官僚らの無思考と隷属

ぶりも表している。

蓮舫議員が問いただしたロシアへの

協力プランには「肥満予防医療プロ

グラム」が含まれているといい、「人

道支援なのか」という質問に岸田首

相は「人道予算ということで用意した

」と答え、修正を拒否した。「肥満予防

のどこが人道なのか」と、改めて聞き

たくなる。間違いだったらただせば良

い。それができないのは、独断で侵

略戦争に突き進んだプーチン大統領

と同じでないか。専横と驕りが国をや

がて国を亡ぼす。
                     【2022・3・18】

ウクライナの戦局が見通せない中

逼迫する世界のエネルギー需給

に乗じて「原発を再稼働させよう」

という声が政権与党から上がり始

めた。福島の原発事故から11年

が過ぎた今なお、格納容器内の

デブリさえ何一つ処理できない深

刻さに知らぬ顔を決め込む暴論

である。ウクライナでは原発関連

施設が次々砲撃され、欧州だけ

でなく世界全体に核物質拡散の恐

怖が募る。そんな時に再稼働を口

にする無節操さを厳しく指弾したい



自民党の細田博之衆院議長は10

日、「石油価格は高騰している。(

党の電力安定供給推進委は)原

発再稼働に向けて努力していきた

い」と訴え、近く政府に決議書を提

出すると表明した。歩調を合わせ

るように松井一郎維新代表や玉

木雄一郎国民代表も相次いで再

稼働容認の声を上げた。今も続く

「3・11」の原発事故の惨状に気配

りさえ忘れた振る舞いだった。

思わずこの3人の鼻面をつかんで

、廃炉作業が続く福島第一原発の

作業現場に連れて行きたくなったほ

どだ。一度事故が起きれば、原発が

どれほど人々の生活を根底から覆

すかを、福島の事故が示している。

毎日新聞の12日付け記事によれば

、1~3号機では溶け落ちた燃料デ

ブリの総量は推定880トンにのぼる

が、取り出せたのは2号機内のたっ

た数グラムという。東電の作業員は

格納容器に近寄れず、ロボットアー

ムを使う作業は難航を極めている。

放射線量は毎時3ミリシーベルトもあ

り、1人の作業時間は1日10~15分

に限られる。政府の廃炉工程によれ

ば、2051年12月に終了することに

なっているが、専門家でそれを信じ

る者は皆無に近い。福島の事故直

後から自分の出演したラジオ番組で

連日、事故の内実を語ってもらった

小出裕章・元京大助教は「燃料デブ

リの取り出しはこのままでは100年

経っても不可能」と述べていた。その

後の現状は言葉通りの推移を見せ

ている。


溶融した炉心には広島型原発の約

7800発分のセシウム137が存在

しているという現実。小出さんは当

初から「福島の原発は石棺で閉じ込

めるしかない」と指摘していたことを

思い出した。11年後もこの提言は

変わっていない。

細田衆院議長ら原発再稼働賛成議

員がウクライナ侵攻によるエネルギ

ー供給危機を持ち出すのであれば、

その前に福島と同じレベルの事故を

起き、石棺で覆ったチェルノブイリ原

発がロシア軍の砲撃を受け、核拡散

の危機にさらされていることに注意を

向けるべきではないか。一時は全電

源供給停止の事態に追い込まれて

しまった。いったんことあらば、原発は

「制御できないエネルギー」を発するこ

とを改めて痛感させる。

ウクライナの3基の原発を砲撃させ

たプーチン大統領は「悪魔の所業」

として歴史に断罪されるのは明白だ

。そこからくみ取るべきは原発の脆

弱性でもある。上空から攻撃されれ

ば、為す術もない。仕方なく、再稼働

推進議員らは「自衛隊で常時警備を

」と言い始めた。血税を使って、また

さらなるコスト増を招くのは必至だ。

国内で稼働する原発は6基。福島の

事故前、原発による発電量は年間

の発電量の26%だったが、昨年度

は3・7%に低下できた。危険な原発

への認識が広がったせいでもあり、

この流れを逆回転させてはならない

。福島県飯舘村に住む田尾陽一・元

工学院大教授は「原発を作るという

のは、自分で爆弾を作ることと同じ。

エネルギーの安全保障のために動

かすというのは子供だましの話」と

指摘した(ロイター電)。生活を根こ

そぎ奪われた地域の一被災者の叫

びとして重く受け止めたい。


              【2022・3・13】

プーチン露大統領は自らの所業を

棚に上げて、ウクライナ政権を「ネ

オナチ」と罵倒する。その手法は不

確かな偽情報を拡散して人心をつ

かんだ末、人類史上最悪の虐殺を

なしたナチスドイツの政治手法と酷

似している。プーチン大統領は独裁

体制のほころびが露呈するのを恐

れ、さらに報道統制を強化したが、

国際社会の耳目を封じることなどで

きないのは自明だ。今、「ロシアの

戦争」から我々が学ぶべきことは民

主主義の根幹である「報道の自由」

を守る気概と過去の戦争が教える

歴史の教訓である。これを不断に

続ければ、破滅に導かれることは

必ず防げると信じたい。

キエフ陥落が思うように進まず、経

済制裁によってロシア国民の生活

が困窮し始めた。厭戦気分が高ま

るのを恐れて、急遽打ち出したの

が報道統制である。そこにプーチ

ン大統領の焦りが見える。ウクラ

イナの惨状が的確に伝われば、ロ

シア国民の「プーチン離れ」が起き

るのは必至だ。ロシア当局が偽情

報と見なした場合、記者らに最大

15年の禁固刑を科せる法案は改

めてロシアが「プーチン強権国家」

であることを示したが、外国人記

者も処罰対象にされ、英米のテレ

ビ局は報道活動を断念せざるを

えなくなった。それでもSNS時代

に完璧な言論封じなどできるはず

はない。様々な手段で新たなネッ

トワークを構築しなければならない

。容赦なく隣国民の人命を奪い続

けるプーチン大統領の酷薄ぶりを

広く流布するための知恵が求めら

れている。今はロシアの内部崩壊

しか戦争をやめさせる手段はない

からである。


しかし、残念ながらこんな異常事態

をもたらしたのは、クリミア陥落以

後、ナショナリズムを高揚させ「プ

ーチン独裁」を許容したロシア国民

のせいでもある。首相就任以来、批

判的な報道を続けた記者や野党指

導者の暗殺が続いたのに、その政

治責任が糾弾されることはなかった

。「プーチンの増長」は長い期間に

わたって高揚させた愛国心によって

培養されてきたのである。今回、国

際社会から経済制裁が強化され、

ルーブルの価値が半減され、ようや

く国外からの批判の高まりを多くの

国民が気づき始めたが、あまりに

も遅すぎる。権力監視を怠ったツ

ケが身に降りかかって窮状に追い

込まれた。

一国の主権を圧倒的な武力で侵害

、数万人の死傷者と150万人もの

戦争難民をもたらした現状について

プーチン大統領は先週末、女性だ

けに囲まれた会議で「難しい選択

だった」と述べた。いつもの強面の

表情とは違って、いわば「身内」だ

けに見せる釈明めいたその様子は

臆病さを隠せなかった。

ナチスドイツの悪事を鋭い視点で

指弾したドイツの女性哲学者、ハン

ナ・アーレントは「過去に例がない

ほど残虐行為に走るのは、人間の

大切な質を放棄することから生じる

。それは『思考する能力』です」と論

考した。プーチンがいくら「難しい選

択だった」と弁明しても、冷静に思

考した結果とは思えない。以前か

ら根拠もなく「ロシアとウクライナは

兄弟」と言い続け、NAT0(北大西

洋条約機構)に被害妄想的な脅威

を表明し続けてきた。その言動に

横溢するのは自ら不都合な真実に

目をつむる歴史修正主義である。「

米ソ二大大国」とされた過去のソ連

時代の栄光を取り戻そうと、敵愾心

をあおり、ナショナリズムを高揚させ

た。今も「ウクライナの核保有」など

をデッチ上げ、恐怖心をあおってい

る罪は深い。

日本でもプーチン大統領に長年媚

びへつらってきた安倍晋三首相が

歴史修正主義的思考によって近隣

国との外交関係を悪化させた。そ

れに影響されてか、一段と中韓両

国を敵国視する気分が国内で強ま

っている。「ロシアの戦争」はこの

国の足元を見直し、身をただす機

会でもある。
                   【2022・3・8】

目論見通りに進まなかったウクラ

イナの戦況にいら立ったプーチン

露大統領がこけ脅かしにちらつか

せた核使用に乗じて、日本で「核

兵器シェアリング(共有)論」が頭

をもたげ始めた。米国の核を国内

に配備し、共同配備するという提

言で、安倍晋三元首相や松井一

郎維新代表が立て続けに議論を

要求したのである。唯一の被爆国

であるこの国の国是ともいうべき「

非核3原則」(持たず、つくらず、持

ち込ませず)を踏みにじる暴論であ

り、寒気を催す思いだ。まるで他国

の窮状に乗じた「火事場泥棒」のよ

うにも映る。安倍元首相は領土交

渉で長くプーチン大統領に手玉にと

られ続けた失敗をわびるのが先で

はないか。

BSフジの番組に橋下徹元維新代

表と共に出演した安倍元首相はウ

クライナが侵攻されたのは「核を放

棄したから」と根拠のない意見を述

べた。そのうえで、核シェアリングを

まるで「カーシェアリング」でも語る

ように言及し、橋下元代表も核武装

を「次の参院選の争点にすべき」と

応じた。

「核なき世界」を指向して来日したオ

バマ元米大統領と広島の原爆資料

館を訪れた安倍元首相の姿は「幻

影だったのか」とも思わせる軽薄ぶ

りである。広島の被爆者団体などか

ら強い批判だ出たのは当然だ。核

の悲惨さを世界に発信すべき立場

を忘れた振る舞いに暗然とする。

自分の古巣の毎日新聞に安倍元首

相に呼応するようなコラムが掲載さ

れ、苦々しい気分にさせられた。ど

ちらかというとリベラルな言説を貫く

毎日の論説の中で、政権寄りの言

説が目立つ山田孝男元政治部長が

「軍事のリアル」と題して書いたコラ

ムである。(2月28日付)。積極的に

この核共用論を紹介。元内閣官房

長官補の著書を取り上げ「政府に

核戦略がない」という慨嘆する記述

に共感していた。まるで身近な道具

でも使うように核使用を持ち出し、行

間から「核武装必要論」が見え隠れ

していた。末尾で「各種兵器を合わ

せて防衛網を整え、攻撃すれば報

復に遭うーーと相手に思わせること

は必要である」と主張していた。こん

な記事がチェックもなく通っているこ

とが改めて情けなくなる。

一方、テレビ出演する橋下氏を見

ると、いつも瞬時にチャンネルを切

り替えることにしているが、たまたま

そのままにして聞いていると、相変

わらず行き当たりばったりの空虚な

意見を述べていた。苦境にあるウク

ライナの市民に青と黄色の国旗を

立て支援する各国の市民の姿を見

下して切り捨てるような発言をしてい

た。SNSでは「クソの役にも立たな

い」と罵倒までしていた。

松井一郎維新代表も「非核3原則」

について「核を持っている国が戦争

を仕掛けている。昭和のままの価

値観で令和もいくのか」と発言した。

核使用と元号を並べる空疎で軽薄

な主張を聞き、その頭の中をのぞ

きたくなった。

核使用関連の発言をする時間があ

るなら大阪市長として、カジノに巨

額投入をする試算をただす住民説

明会に出席して本務を尽くしてもら

いたい。候補地の大阪・夢洲は活

断層があり、未知の大阪湾断層帯

への対策として当初計画より248

2億円のコスト増が見込まれる。公

費負担は増加する一方で、日に日

に批判が高まっているが、松井市

長や吉村洋文大阪府知事は公聴

会に姿を見せないままだ。不都合

なことには耳を塞ぎ、同じ価値観を

共有する安倍元首相のような「仲

間」には迎合する意見を発すること

をいとわない。首長になっても強い

権力者に媚びり続ける卑しい本性

が際立つ。 

                  【2022・3・3】

「すべての戦争は自衛の名の下に

行われる」。今世紀最大の愚行とも

いえるロシアのウクライナ侵攻はこ

の古今の歴史の教訓があてはまる

。プーチン大統領は「これしかとる

べき道はなかった」と演説したが、

選択する道はまだ多くあったはず

で、何の説得力もない。一国の主

権を踏みにじり罪のない多数の市

民を死傷させる事態を招いたプー

チンをここまで増長させたのは何

か。「ならず者の所業」と断じるべ

き事態だが、国内ではいたずらに

危機感をあおり、国防意識を高揚

させたい輩が早くもうごめき出した。

増長というフレーズから真っ先に思

い浮かんだのは、あの安倍晋三元

首相である。北方領土交渉を手柄

話にしようとしてプーチンのファース

トネームを使って「ウラジミール」と

親しげに語りかけた。そんな媚びる

ような姿をみせてもプーチンは歯牙

にもかけないようだった。結局、合わ

せて24回もの日ロ首脳会談は何の

成果も得られなかった。それどころ

か「日ロ平和条約締結」をちらつか

されて、日本側にメリットが少ない経

済協力まで約束してしまった。後日

「まるで赤子の手をひねるようだった

」と外交通から酷評されたのである

。領土交渉は当初目論んでいた「2

島返還」どころか、北方領土にロシ

アのミサイル基地まで建設されたの

に、十分な抗議もできなかったので

ある。

プーチンをここまで増長させた非

難の矛先が自分に向かわないよ

うに、安倍元首相は今回の侵攻

について、友達呼ばわりから一転

して「断じて許すわけにはいかな

い」と非難したが、プーチン個人を

責める言葉は発しなかった。20

14年のクリミア併合時、欧米の経

済制裁に比べ、日本の制裁は限

定的で有名無実の内容にとどめた

。その後の日ロ首脳会談ではプー

チンからそれを見透かされ、主導

権を握られ通しだった。

今回の侵攻を国内で国防意識を

高める好機として、政治利用する

動きが目立ち始めた。安倍政権で

防衛相を務めた小野寺五典・自民

党安保調査会長は中国の台湾侵

攻を想定、「実はもうすでに東アジ

ア、台湾周辺ではハイブリット戦が

行われていると考えるべきだ」と述

べ、「自国は自国で守るというスタ

ンスがなければ、日本はウクライナ

と同じようになる」と危機感をあおっ

た。

安倍元首相は先日「台湾有事は

日本有事」と演説しており、小野寺

発言はそれに呼応するような中身

だった。警戒すべきは、日本が台

湾有事の場合、日米安保条約に

よって自動的に戦争に組みするの

が当たり前のような雰囲気が強ま

ることである。2015年、安倍政権

は憲法で制約された専守防衛を骨

抜きにするため集団的自衛権を容

認する安保法制を施行させた。安

倍発言は台湾侵攻が実際にあっ

て米中戦争が始まった場合、日本

は出兵を求められ中国の敵国とな

る。国内の米軍基地などを攻撃さ

れても仕方ない状況にされた。

「ならず者国家ロシア」と同じ専制

国家の指導者・習近平主席にも警

戒を怠ることはできないが、声高

に中国を敵視する発言を繰り返す

のは愚かな振る舞いである。仮に

台湾侵攻があっても、日本人の血

が一滴たりとも流れるような防衛政

策は回避するのが、政治の最重要

な使命である。相手が強権的な国

家であっても、目指すべきはしたた

かな知恵を駆使して、良好な外交

関係を構築することではないか。

ウクライナの首都キエフにロシア軍

が近づく中、頭に浮かぶのは映画

「ひまわり」の一シーンにあった大

地のひまわり畑だ。ヒロインを演じ

たソフィア・ローレンが出征して帰

還しない夫を探しまわるあの悲しい

場面は、戦争のむごさを鮮烈に伝

えてくれた。今回国外に避難した50

万人の姿と重なって悲痛な思いに

なる。こんな時だからこそ、敵を想

定させる勇ましい言葉には耳を塞

ぎたい。
               【2022・2・26】