岸田政権の現職閣僚の口から、ま
たとんでもない暴言が飛び出した
。「野党の人からくる話は、我々
は何一つ聞かない」。議会制民主
主義を根幹から否定するような山
際大志郎経済再生相の演説である
。岸田文雄首相がアピールする「
聞く力」がどれほど空疎であるか
を示している。参院選の情勢調査
で、「与党過半数を超す勢い」と
報じられ、気が緩んだのか、与党
幹部から驕りと無知に染まった発
言が相次いだ。「山際発言」と合
わせた3連発は有権者を愚弄しき
っており、見過ごせない。こんな
政権への怒りが鉄槌に変わるかも
しれない。
有権者意識がわずかながら変化す
る予兆はあった。選挙中盤で、自
民の茂木敏充幹事長がNHKのテ
レビ討論で「消費税を減税したら
年金は3割カットになる」と恫喝
発言をして以来、年金を受給して
いる高齢者が離反し始めた。参院
選の焦点である1人区は野党共闘
が進まなかったため、与党の草刈
場状態だったのが、「茂木発言」
を許しがたいとする声が強まった
。先週末の毎日新聞の選挙情勢分
析では、3つの1人区で野党議員
が盛り返し、接戦になっていると
いう。
元々国会の質疑で、閣僚席から野
党議員に野次を飛ばしたり、質問
を遮ったりして評判が悪かった茂
木幹事長。年金支給と消費税は別
項目であり、リンクさせること自
体に無理がある。野党は消費税の
使途が社会保障の財源になるとい
う政府の説明自体が嘘だったと責
めていた。その追及は的を射てお
り、消費増税分の8割が借金返済
に充てられていたのである。痛い
ところを衝かれた茂木幹事長が追
及逃れに、恫喝に転じたのが経過
だ。有権者は現役世代も先進国中
で最下位の平均賃金であることを
改めて認識し、各党の賃上げ政策
をよく吟味して投票行動につなげ
てもらいたい。
3番目の暴言はいつもの麻生太郎
副総裁が口にした。「子どもの時
にいじめられたのはどんな子だっ
たか。弱いのがいじめられる。強
いやつはいじめられない。国も同
じだ」。ウクライナの侵攻を例え
て、あたかも攻められる側にも責
任があるかのような発言にへきへ
きする。いじめをどこかで正当化
するゆがんだ価値観を持つ男が首
相だったことを思い、改めてこの
国の政治の退廃ぶりを嘆きたくな
る。
もちろん岸田首相自身が「暴言3
連発」を注意した気配はない。ま
さかこちらで「聞く力」を発揮し
て、その言い分を聞いてうなずい
てはいないだろうな、と問いかけ
たくなった。自身はG7とNAT
Oの会議に出席したくらいで、帰
国後は何の存在感も感じさせない
。「中身が空疎だから、ビジョン
や国の将来像を語れないのではな
いか。国政選挙は政治家としての
抱負を熱く語る絶好の機会なのに
、まるでその熱気が伝わらない。
どんどん高くなる物価と円安に何
も手を打たないリーダーなど退場
してもらいたい。
このまま与党が勝てば、与党化す
る維新、国民を吸収し改憲の道が
一挙に開かれることになる。岸田
首相は安倍元首相ら極右勢力に押
されて、防衛費倍増、敵基地攻撃
などを進め、一段と軍事・外交で
対米従属色が強まるのは明白だ。
そうなれば、憲法のおかげで戦後
77年間一滴の血も戦争で流さなく
て済んだ平和国家が瓦解してしま
う。この参院選はそれを止める正
念場である。
【2022・7・7】